犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|代表者等と顧客等との関係の確認方法

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、代表者等と顧客等との関係を確認するときの方法について書いてみたいと思います。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線などは管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

代表者等と顧客等との関係の確認(規則12条5項)

これは、代理を介した取引である場合は、

代理人などと顧客等の関係

についても確認しないといけないということである。

 

代理の一般的な図にあてはめていうと、

【本人】
「顧客等」
  |
  | ←ココの関係を確認
  |
【代理人】ーーー取引ーーー【事業者】
「代表者等」)     (「特定事業者」

というイメージ。(※「 」付きの部分は、犯罪収益移転防止法上の文言をあてはめたもの)

 

犯罪収益移転防止法上、代表者等についても本人確認が必要なのだが、その前提として顧客等との関係についても確認義務が課されているわけである。

 

条文を見てみる。

 

顧客等との関係の確認が必要との根拠条文は、規則12条5項である。

 

(代表者等の本人特定事項の確認方法)
第十二条
5 第一項の代表者等は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に該当することにより当該顧客等のために特定取引等の任に当たっていると認められる代表者等をいうものとする。

 

文言としては、顧客等のために取引の任に当たっていると認められる事由」というのが、顧客等との関係のことになる。

 

条文上の文言とちょっと違うが、ちゃんとした解説では概ねこのような言い回しになっているように思う(管理人の私見)。

 

その確認方法は、”次の各号に該当することにより”ということで、1号(自然人の場合)と2号(法人の場合)に分けて規定されている。

 

以下、どういう方法で関係を確認するのか見ていきたい。

 

顧客等(自然人)との関係の確認方法(5項1号)

顧客等が自然人であるときは、顧客等との関係は、

〇同居の親族又は法定代理人
〇委任状その他の書類
〇電話その他これに類する方法
〇認識その他の理由により明らか

いずれかによって確認すべし、とされている。

 

条文を見てみる。

 

▽規則12条5項1号

(代表者等の本人特定事項の確認方法)
第十二条
5 (略)
一 顧客等が自然人である場合 次のいずれかに該当すること。
 イ 当該代表者等が、当該顧客等の同居の親族又は法定代理人であること。
 ロ 当該代表者等が、当該顧客等が作成した委任状その他の当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることを証する書面を有していること。
 ハ 当該顧客等に電話をかけることその他これに類する方法により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが確認できること。
 ニ イからハまでに掲げるもののほか、特定事業者(令第十三条第一項第一号に掲げる取引にあっては、同号に規定する他の特定事業者。次号ニ及び第十六条第二項において同じ。)が当該顧客等と当該代表者等との関係を認識していることその他の理由により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが明らかであること。

 

具体的な解釈は平成24年パブコメに記載されているので、以下見てみる。

 

①同居の親族又は法定代理人(1号イ)

同居の親族又は法定代理人であることの確認は、単に申告では認められない。書類や訪問とされている。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.77|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 新規則第11条第4項第1号イの「同居の親族又は法定代理人」であることの確認は、申告によることとしてもよいか。

質問に対する考え方 単に申告によることは認められず、何らかの方法により「同居の親族又は法定代理人」であることを確認することが必要となります。
 具体的には、住民票、戸籍謄本等の書類により関係を確認すること、顧客等と代表者等の本人確認書類により同一の姓・住所であることを確認すること、実際に顧客等の住居に赴いて代表者等との関係を確認すること等が想定されます。

 

②委任状その他の書類(1号ロ)

委任状については、顧客等が作成したと認められるものであればよく、実印や印鑑証明までは求められていない。

 

その他の書類については、委任状という名称でなくともよいが、顧客等が取引の任に当たらせていることが明らかになるものである必要がある。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.78、79|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 委任状の確認に当たっては、実印の押印があることや、印鑑登録証明書も併せて提出されることまでは求められないという理解でよいか。

質問に対する考え方 そのとおりです。ただし、顧客等が作成したものであると認められることが必要となります。

質問の概要 「当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることを証する書面」とは、具体的にはどのような書類が想定されるのか。

質問に対する考え方 委任状という名称でなくとも、顧客等が代表者等に取引の任に当たらせていることが明らかになる書類をいいます。
 具体的には、顧客等が作成した申請書であって、取引に当たらせている者の氏名等を記載されているもの等が想定されます。

 

③電話その他これに類する方法(1号ハ)

その他これに類する方法については、FAX、eメール、訪問などが想定されている。

 

その点の解説は、法人の③の場合と同様なので、後述の部分を参照してほしい。

 

④認識その他の理由により明らか(1号ニ)

認識については、たとえば、営業担当者がすでに訪問して面談をしている場合などが含まれるとされている。

 

その他の理由については、たとえば、複数の書類を提示させること(委任状と再委任状など)が考えられるが、顧客等の本人確認書類を持っているだけではダメだとされている。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.86、87|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 「関係を認識していること」については、例えば、営業担当者が契約の締結前に顧客等を訪問し、顧客等及び代表者等と面談を行っている場合が含まれるという理解でよいか。

質問に対する考え方 そのとおりです。

質問の概要 「その他顧客等のために取引の任に当たっていることが明らかであること」には、どのような場合が想定されるのか。
 また、代表者等が顧客等の本人確認書類を有している場合には、「顧客等のために特定取引等の任に当たっていることが明らか」といえるか。

質問に対する考え方 例えば、委任状と再委任状のような複数の書類を確認すること等により顧客等と代表者等との関係を明らかにすることを想定しております。
 また、代表者等が顧客等の本人確認書類を有していることのみをもっては、顧客等のための取引の任に当たっていることが明らかであるとは認められないと考えております。

 

顧客等(法人)との関係の確認方法(5項2号)

顧客等が法人であるときは、顧客等との関係は、

〇委任状その他の書類
〇代表役員としての登記
〇電話その他の方法
〇認識その他の理由により明らか

いずれかによって確認すべし、とされている。

 

条文を見てみる。

 

▽規則12条5項2号

(代表者等の本人特定事項の確認方法)
第十二条
5 (略)
二 前号に掲げる場合以外の場合(顧客等が人格のない社団又は財団である場合を除く。) 次のいずれかに該当すること。
 イ 前号ロに掲げること。
 ロ 当該代表者等が、当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていること。
 ハ 当該顧客等の本店等若しくは営業所又は当該代表者等が所属すると認められる官公署に電話をかけることその他これに類する方法により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが確認できること。
 ニ イからハまでに掲げるもののほか、特定事業者が当該顧客等と当該代表者等との関係を認識していることその他の理由により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが明らかであること。

 

①委任状その他の書類(2号イ)

この点については、自然人の②の場合と同様なので、前述の部分を参照してほしい。

 

②代表役員としての登記(2号ロ)

顧客から登記事項証明書の提示を受ける場合だけでなく、特定事業が自ら登記事項証明書を確認する方法でもよいとされている。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.85|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 代表者等が役員として登記されていることについては、特定事業者において登記事項証明書を確認する方法でもよいか。

質問に対する考え方 そのとおりです。

 

また、単なる役員としての登記ではダメであり、代表権を有する役員としての登記が必要である。たとえば、代表取締役、代表執行役、代表理事などの登記である。

 

昔は単なる役員の登記でもよかったのだが、平成26年改正で、代表権を有する役員に限定された。

 

改正当時の参考になりそうなパブコメは、以下のとおりである。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo. 134、137|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 新規則第12条第4項第2号ロの「権限を有する役員として登記されていること」について、登記簿に「執行役員」の表記があれば「権限を有する役員」として考えてよいか。

質問に対する考え方 いわゆる執行役員であることをもって、顧客等を代表する権限を有する役員となるわけではありません。

質問の概要 …(一部省略)…役員としての登記は代表権を有する場合に限定となるが、代表権を有する場合の登記というのは代表○○という肩書が載っている場合のみなのか。全て取締役で記載、全て理事と記載の場合は登記事項証明での確認は不可なのか。

質問に対する考え方 例えば、特例有限会社の場合に、登記事項証明書において代表取締役の記載が確認できないときは、取締役が各自代表権を有すると考えられることから、登記事項証明書での確認は可能と考えます。

 

③電話その他の方法(2号ハ)

電話については、電話をかける先は本店等に限られない。現在は文言上もそうなっている。また、確認する電話相手の役職にも特に制限はない。

 

その他これに類する方法については、FAX、eメール、訪問などが想定されている。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.82、83、84|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 新規則第11条第4項第2号ニの電話先は、顧客等が法人である場合には、その本店等に限られるのか。(以下略) 

質問に対する考え方  「本店等」は電話をかける先の例示であり、営業所等の顧客等に関連する他の場所へ電話をかけることも「これに類する方法」として認められます。(以下略)

(※)管理人注:このパブコメ以降に改正で妥当しなくなった部分については省略している

質問の概要 新規則第11条第4項第2号ニの「これに類する方法」としては、どのような方法が含まれるのか。

質問に対する考え方 営業所等の場所に対しFAX、電子メールを送信して確認すること、実際に当該場所に赴いて確認すること等を想定しております。

質問の概要 電話をかけて代表者等が特定取引等の任に当たっていることを確認する場合に、確認の相手の役職に制限はあるのか。

質問に対する考え方 特段の制限はありません。

 

④認識その他の理由により明らか(2号ニ)

たとえば、法定の開示資料等の確認も、それで「明らか」となる事情があればOKとされている。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.88|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 GK-TK等の資産運用会社との取引については、法定の開示資料等を確認することにより、代表者等が「顧客等のために取引の任に当たっていることが明らか」とすることも認められるという理解でよいか。

質問に対する考え方 法定の開示資料等を確認することにより、当該代表者等が顧客等のために取引の任に当たっていることが明らかとなる事情があるのであれば、そのとおりです。

 

その他については、自然人の④の場合と同様なので、前述の部分を参照してほしい。

 

補足2点

最後に、2点ほど補足をしたいと思う。

 

補足①:「代表者等」は社長などに限られない

ひとつ注意すべきなのは、「代表者等」というと社長などを思い浮かべるが、犯罪収益移転防止法でいう「代表者等」とは、いわゆる社長に限られないということである。

 

つまり、自然人の場合の代理人も含まれるし、会社の場合は、社長でなくても、取引権限のある取引担当者も含まれる。

 

顧客等との関係の確認について、詳しくは以下の関連記事に書いている。

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|取引時確認ー本人特定事項の確認とは

続きを見る

 

補足②:正確にいうと、民法上の代理権の有無の確認ではない

また、正確にいうと、顧客等との関係の確認というのは、民法上の代理権の有無の確認とは異なるとされている。が、管理人的にはかえって理解しにくいと思うので、当ブログでは指摘だけにしておきたいと思う。

 

逐条解説(「逐条解説 犯罪収益移転防止法(犯罪収益移転防止制度研究会)」77頁)や、以下のパブコメにその旨の記載がある。

 

平成24年3月26日パブリックコメントNo.75|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

質問の概要 第11条第4項の規定は、代表者等が代理権を有していることの確認を義務付けるものであるのか。

質問に対する考え方 新規則第11条第4項は、代表者等が顧客等のために特定取引等の任に当たっていることが明らかであることを求めておりますが、これは民法上の代理権を有しているかの確認とは異なるものです。よって、代理権を有していることの確認を義務付けるものではありません。


(※)管理人注:11条4項というのは当時の条数で、現在は上記のとおり12条5項

 

結び

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、代表者等と顧客等との関係の確認方法について書いてみました。

 

なお、犯罪収益移転防止法の記事については、以下のページにまとめています。

犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ
犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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