犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|「犯罪による収益」とは

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、この法律でいう「犯罪による収益」について書いてみたいと思います。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線などは管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

「犯罪による収益」とは

「犯罪による収益」とは、簡単にいうと、犯罪によって得た財産のことである。

 

JAFICの「犯罪収益移転防止法の概要(令和2年10月1日時点)」42頁にわかりやすい文章があるので、以下抜粋して引用する。
(※疑わしい取引の届出(法8条)に関する解説のなかの文章)

 

 「犯罪による収益」については以下で説明しますが、簡単に言えば、犯罪によって得た財産(お金に限らない。)ということになります。
 例えば、詐欺や恐喝等の犯罪により得たお金で不動産や宝石を購入する場合や、詐欺によりだまし取った現金の受取窓口として郵便物受取サービス業者を利用する場合等が考えられます。
 また、窃盗や強盗によって奪った宝石を古物商で売却する場合や、詐欺によりだまし取った不動産を宅地建物取引業者に売却するような場合も届出の対象であり、「犯罪による収益」はお金であるとは限りません

 

このように、

「詐欺や恐喝等の犯罪により得たお金」
「詐欺によりだまし取った現金」
「窃盗や強盗によって奪った宝石」
「詐欺によりだまし取った不動産」

といったものが、「犯罪による収益」のイメージである。

 

犯罪による収益の移転(マネー・ロンダリング。略してマネロン)を防止するための法律なので(法1条)、「犯罪による収益」の言葉のイメージを掴んでおくことは理解のために有用だと思う。

 

もうひとつ、「マネー・ロンダリング」という言葉の意味もつかんでおきたい。JAFICのページにわかりやすい解説がある。

 

マネー・ローンダリング対策の沿革|JAFICホームページ

1 マネー・ローンダリングとは
 マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)とは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為を言います。このような行為を放置すると、犯罪による収益が、将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用され、組織的な犯罪及びテロリズムを助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えることから、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与するため、マネー・ローンダリングを防止することが重要です。
 (以下略)

 

つまり、犯罪によって得た財産を、転々と転がして、財産の形態を変えていっているうちに、出元(もともとは犯罪によって得た財産であるということ)をわからなくしようとすることが、マネロンである。

 

「犯罪による収益」の定義(法2条1項)

「犯罪による収益」や「マネロン」のイメージはこのあたりにして、定義を見てみる。法2条1項である。

 

(定義)
第二条 この法律において「犯罪による収益」とは、組織的犯罪処罰法第二条第四項に規定する犯罪収益等又は麻薬特例法第二条第五項に規定する薬物犯罪収益等をいう。

 

「犯罪による収益」には、①組織的犯罪処罰法2条4項の「犯罪収益等」と、②麻薬特例法2条5項の「薬物犯罪収益等」の2つがあることがわかる。

 

途端に、何を言ってるのかわからん…という感じになるが、簡単にいうと、

犯罪収益等 = ①犯罪収益 + ②犯罪収益に由来する財産 + ③混和財産

薬物犯罪収益等 = ①薬物犯罪収益 + ②薬物犯罪収益に由来する財産 + ③混和財産

という風になっている。

 

①の犯罪収益でいう犯罪は、どのような犯罪から生じる収益かということで、一般に前提犯罪と呼ばれている。
犯罪収益が生じる前提となる犯罪、の意。「逐条解説 犯罪収益移転防止法」(犯罪収益移転防止制度研究会)24頁)

 

前提犯罪には、極めて広範なものが含まれており、組織的犯罪処罰法の本文に個別に挙げられているもののほか、同法の別表に多くの対象犯罪が掲げられている。別表には、刑法、商法、郵便法、外為法、関税法等に規定する犯罪も含まれる。

 

これらの前提犯罪の基準は、犯罪の重大性(法定刑)が基準ではなく、当該犯罪行為によって収益を得られる可能性があるかどうかが基準となっており、いわゆる経済犯については概ね網羅されている。
(「よくわかるマネーロンダリング対策ー犯罪収益移転防止法の実務」(手塚崇史)121頁)

 

②の犯罪収益に由来する財産というのは、犯罪によって得た財産を対価として得た財産のことである。先ほど見たマネロンの言葉のイメージからいうと、財産の形態が変換された後の財産のことである。

 

③の混和財産というのは、犯罪収益や犯罪収益に由来する財産と、そうでない財産が混ざっていても、全体として「犯罪収益等」として扱いますよ、ということである。

 

なお、「由来」とか「混和」の意味は、薬物犯罪収益等の方も同様である。

 

条文を確認してみる。

 

▽組織的犯罪処罰法2条4項

4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

 

▽麻薬特例法2条5項

5 この法律において「薬物犯罪収益等」とは、薬物犯罪収益薬物犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

 

ということで、全体をざっと整理すると、

犯収法上の「犯罪による収益」 種類 内容 条文
「犯罪収益等」
(組織的犯罪処罰法2条4項)
犯罪収益 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
 イ 死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪(ロに掲げる罪及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)第二条第二項各号に掲げる罪を除く。)
 ロ 別表第一(第三号を除く。)又は別表第二に掲げる罪
二~五 (略)
組織的犯罪処罰法2条2項
犯罪収益に由来する財産 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。 同条3項
混和財産    
「薬物犯罪収益等」
(麻薬特例法2条5項)
薬物犯罪収益 この法律において「薬物犯罪収益」とは、薬物犯罪の犯罪行為により得た財産若しくは当該犯罪行為の報酬として得た財産又は前項第七号に掲げる罪に係る資金をいう。 麻薬特例法2条3項
薬物犯罪収益に由来する財産 この法律において「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、薬物犯罪収益の果実として得た財産、薬物犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他薬物犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。 同条4項
混和財産    

という感じである。

 

いろいろ細かく書かれているが、組織的犯罪処罰法の別表で非常に広い範囲の犯罪が対象になっているので、およそ犯罪によって得られた財産は該当する、と理解しておいた方が早いと思う(管理人の個人的意見)。

 

「犯罪収益」における前提犯罪と、「薬物犯罪」について、もう少しだけ詳しく見てみる。

 

①「犯罪収益」における前提犯罪(組織的犯罪処罰法2条2項)

「犯罪収益」における前提犯罪は、組織的犯罪処罰法2条2項のなかで1号~5号まで出てくるが、本記事では1号以外は割愛する。

 

1号は、

財産上の不正な利益を得る目的で犯した次に掲げる罪の犯罪行為
イ 死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 ロ 別表第一(第三号を除く。)又は別表第二に掲げる罪

という風になっている。

 

先ほど触れたように、別表で非常に広い範囲の犯罪が定められているので、以下転載する。

 

細かく見るというより、「広いな」と確認すればとりあえずOKかと思う。

 

別表第一(第二条、第七条の二関係)

別表第二(第二条関係)

 

②「薬物犯罪収益」における「薬物犯罪」(麻薬特例法2条2項)

「薬物犯罪収益」では、前提犯罪にあたるのは「薬物犯罪」であるが、大まかにいうと、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等に係る薬物犯罪である。

 

▽麻薬特例法2条2項

2 この法律において「薬物犯罪」とは、次に掲げる罪をいう。
一 第五条、第八条又は第九条の罪
二 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条、第六十四条の二、第六十五条、第六十六条、第六十六条の三、第六十六条の四、第六十八条の二又は第六十九条の五の罪
三 大麻取締法第二十四条、第二十四条の二又は第二十四条の七の罪
四 あへん法第五十一条、第五十二条又は第五十四条の三の罪
五 覚醒剤取締法第四十一条、第四十一条の二又は第四十一条の十一の罪
六 麻薬及び向精神薬取締法第六十七条若しくは第六十九条の二、大麻取締法第二十四条の四、あへん法第五十三条又は覚醒剤取締法第四十一条の六の罪
七 麻薬及び向精神薬取締法第六十八条若しくは第六十九条の四、大麻取締法第二十四条の六、あへん法第五十四条の二又は覚醒剤取締法第四十一条の九の罪

 

結び

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、犯収法上の「犯罪による収益」とは何かについて書いてみました。

 

なお、当ブログの犯罪収益移転防止法の記事については、以下のページにまとめています。

犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ
犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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