犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|取引時確認等を的確に行うための措置ー主務省令で定める措置

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、取引時確認等を的確に行うための措置(法11条)について書いてみたいと思います。

 

法律で定める措置については別記事にて書いたので、本記事はその続きで、主務省令で定める措置(4号→規則32条)についてになります。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線などは管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

取引時確認等を的確に行うための措置ー主務省令で定める措置(4号)

(取引時確認等を的確に行うための措置)
第十一条 特定事業者は、取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置(以下この条において「取引時確認等の措置」という。)を的確に行うため、当該取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずるものとするほか、次に掲げる措置講ずるように努めなければならない。
一~三 (略)
 その他第三条第三項に規定する犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案して講ずべきものとして主務省令で定める措置

 

4号の「その他…主務省令で定める措置」は、規則32条で定められている。「努め」なので、努力義務である。

 

全体像をざっと先に見ておくと、

  法11条 規則32条1項  
取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置(柱書)   法的義務
使用人に対する教育訓練の実施(1号)   努力義務
取引時確認等の措置の実施に関する規程の作成(2号)  
統括管理者の選任(3号)  
主務省令で定める措置(4号) 自らが行う取引についてのリスク評価(1号)
必要な情報収集・分析(2号)
保存している確認記録・取引記録等の継続的精査(3号)
リスクの高い取引を行う際の統括管理者の承認(4号)
リスクの高い取引について行った情報収集・分析の書面化・保存(5号)
必要な能力を有する職員の採用(6号)
取引時確認等に係る監査の実施(7号)

という感じである。

 

なお、法律で定める措置(上記➀~④)について、詳しくは以下の記事で書いている。

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|取引時確認等を的確に行うための措置

続きを見る

 

規則32条で定める措置(全体像)

(取引時確認等を的確に行うための措置)
第三十二条 法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置は、次の各号に掲げる措置とする。
一~七 (略)

 

規則32条は1項~4項まであるが、1項が一般的なものなので、本記事ではここだけ取り上げる。

 

1号~7号まである。全体観の解説としては、平成27年パブコメNo.178がある。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.178|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新法第11条第4号に規定する主務省令で定める措置が例示されているが、 同条が努力義務規定であるところ、特定事業者が処置しなければならない程度、水準はどのようなものであるか。

意見・質問に対する考え方 新規則第32条第1項各号に規定されている措置は、いずれも努力義務であり、例えば同項第2号に規定する情報の収集等をどの程度まで行うべきかについては、各特定事業者の業態や事業規模等に応じて個別に判断されるものです。
 その前提の下、新規則第32条第1項各号に掲げる措置について詳述すると、同項第1号において作成することとされている書面等には、各特定事業者において、自らが行う取引についてのマネー・ローンダリングのリスクを評価したものを記載することとされています。具体的には、 国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書の関係部分を基に、必要に応じて各事業者特有のリスク要因を加味したものを作成することが想定されます。
 同項第2号及び第3号は、特定事業者が、第1号の規定により作成した特定事業者作成書面等の内容を勘案し、自ら行う取引のリスクの高低に応じて、必要な情報の収集や整理・分析を行ったり、確認記録・取引記録等を継続的に精査したりすることを規定しています。
 同項第4号は、高リスクの取引を行うに際しては、統括管理者の承認を受けるべきことを規定しています。 このとき、統括管理者は、承認に当たり、犯罪収益移転危険度調査書の内容(例えば、当該取引がいかなる理由で高リスク取引とされているかといったことなど)を勘案することとなります。
 同項第5号は、高リスク取引に係る情報を収集、整理及び分析したものの結果を記載した書面等の作成・ 保存について規定しています。このとき、犯罪収益移転危険度調査書において、当該取引がいかなる理由で高リスク取引とされているかといったことに着目して、情報収集の分析結果等を作成することとなります。
 同項第6号は、取引時確認等の措置を的確に行うために必要な能力を有する者を採用することを規定しています。具体的には、犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し、例えば、属性としてリスクが高いとされる反社会的勢力を採用しないことや、 採用後の教育訓練と相まって犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案した取引時確認等の措置を的確に行う能力を身に付ける素養のある者を採用することが考えられます。
 同項第7号は、監査について規定しています。例えば、犯罪収益移転危険度調査書において高リスクとされる取引を扱う部署を重点的に監査することなどが想定されます。

 

以下、順に見てみる。

 

①自らが行う取引についてのリスク評価(1号)

一 自らが行う取引(新たな技術を活用して行う取引その他新たな態様による取引を含む。)について調査し、及び分析し、並びに当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(以下この項において「特定事業者作成書面等」という。)を作成し、必要に応じて、見直しを行い、必要な変更を加えること。

 

自らが行う取引についてのマネー・ロンダリングのリスクを調査・分析して、その結果を書面化しておくよう努めるべし、ということである。

 

冒頭のパブコメにもあったように、具体的には、犯罪収益移転危険度調査書をベースにしつつ、自社特有のリスクについて加味した書面等を作成しましょう、ということが想定されている。
(「特定事業者作成書面等」と略称されている)

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.180|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 自らが行う取引に係る調査及び分析の結果を書面等に残すことになっているが、どのような種類の書面又は記録方法が想定されているのか。

意見・質問に対する考え方 新規則第32条第1項第1号で作成することとされている「特定事業者作成書面等」には、各特定事業者において、自らが行う取引についてのマネー・ローンダリングのリスクを評価したものを記載することとされています。具体的には、国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書の関係部分を基に、必要に応じて各特定事業者のリスク要因加味したものを作成することが想定さ れます。

 

なお、犯罪収益移転危険度調査書は、JAFICホームページで、平成27年から毎年分が公表されている。

年次報告書|JAFIC 警察庁
年次報告書|JAFIC 警察庁

www.npa.go.jp

 

もう少し詳しく見てみる。

 

作成した書面等について、保存期間管理方法の定めは特にない。記録方法についても、事業者ごとの個別の判断とされている。

 

また、括弧書きの「新たな技術を活用して行う取引その他新たな態様による取引を含む。」については、

新たな情報通信技術を用いた取引等であってマネー・ロ ーンダリングに悪用されるおそれのある取引

・手続の一部をインターネットを介して行うこととするなど、 取引の態様が従前と異なるためにマネー・ローンダリングに悪用されるおそれに変化が生じた取引

制度改正等により新たに取扱いが可能となった金融商品等のマネー ・ローンダリングに悪用されるおそれのある商品の取引

などが例として挙げられている。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.179、181|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第1号の「特定事業者作成書面等」には、保存期間の定め管理方法について法令上定めは置かれていないという理解でよいか。

意見・質問に対する考え方 そのとおりです。

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第1号の「新たな技術を活用して行う取引その他新たな態様による取引」につき、それぞれもう少し詳細な定義があると望ましい。また、調査、分析及び分析結果の記録方法は各特定業者に委ねられているということか。

意見・質問に対する考え方 「新たな技術を活用して行う取引その他新たな態様による取引」としては、例えば、新たな情報通信技術を用いた取引等であってマネー・ロ ーンダリングに悪用されるおそれのある取引、手続の一部をインターネットを介して行うこととするなど、 取引の態様が従前と異なるためにマネー・ローンダリングに悪用されるおそれに変化が生じた取引、あるいは、制度改正等により新たに取扱いが可能となった金融商品等のマネー ・ローンダリングに悪用されるおそれのある商品の取引等が想定されます。
 また、特定事業者が自ら行う取引 について行ったリスク評価の結果を記載する、特定事業者作成書面等の記載方法等については、御質問のとおり、事業者の業態、業務、規模、 リスク等に応じ、事業者において個別に判断されるものと考えています。

 

②必要な情報収集・分析(2号)

二 特定事業者作成書面等の内容を勘案し、取引時確認等の措置(法第十一条に規定する取引時確認等の措置をいう。以下この条において同じ。)を行うに際して必要な情報を収集するとともに、当該情報を整理し、及び分析すること。

 

冒頭のパブコメにもあったように、特定事業者が、第1号の規定により作成した特定事業者作成書面等の内容を勘案し、自ら行う取引のリスクの高低に応じて、必要な情報の収集や整理・分析を行うことが想定されている。

 

その他のパブコメでは、以下のとおり、収集・分析などについていくつかの例が挙げられている。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.182、183、184|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 情報を最新に保つための「必要な情報の収集」(新規則第32条第1項第2号)とは、具体的にどのような情報を収集すべきなのか。

意見・質問に対する考え方 新規則第32条第1項第2号の規定に基づき収集すべき情報とは、取引時確認等の措置(取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置)を的確に行うために必要となる情報であり、例えば、取引時確認の際に顧客等から申告を受けた職業等の真偽を確認すること外国PEPsであるか否かの情報収集を行うこと実質的支配者と顧客等との関係を把握することなどがあります。

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第2号において 「当該情報を整理し、及び分析すること」と規定されているが、どのような着眼点で分析を行えばよいのか。

意見・質問に対する考え方 例えば、新法第8条に基づく疑わしい取引の届出を行うべき取引に該当するか否かを的確に判断するため、 収集した情報について、取引と矛盾する点はないか、当該取引に疑わしい点がないかなどの観点から、分析することが考えられます。

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第2号の「取引時確認等の措置」は、新法第11条第4号で「取引時確認、取引記録等の保存、 疑わしい取引の届出等の措置」としている。新規則第32条第1項第2号において「取引時確認等の措置を行うに際して必要な情報を収集するとともに、 当該情報を整理し、及び分析すること」 とされているが、「取引時確認等の措置」のうち「取引記録等の保存」における情報の収集・整理・分析とは具体的にどのようなことを指すのか。

意見・質問に対する考え方 取引記録等を的確に保存するためには、新規則第24条各号に掲げる事項が適切に記載された取引記録等を作成する必要があります。具体的には、取引記録等を適切に作成するために必要な情報を収集し、これを整理・分析することが考えられます。

 

③保存している確認記録・取引記録等の継続的精査(3号)

三 特定事業者作成書面等の内容を勘案し、確認記録及び取引記録等を継続的に精査すること。

 

冒頭のパブコメにもあったように、特定事業者が、第1号の規定により作成した特定事業者作成書面等の内容を勘案し、自ら行う取引のリスクの高低に応じて、確認記録・取引記録等を継続的に精査することが想定されている。

 

その他のパブコメでは、以下のとおり、継続的精査を実施する取引方法内容は一律の基準はなく、事業者ごとの自主判断とされており、頻度も、合理的に判断される範囲で行われるものとされる。

 

精査は、例えば、記録との整合性から取引の異常を見つけるために行われるが、目視による確認でもよいし、システム的な検知でもよい。

 

ただ、サンプリングチェック(全体から一部のみを取り出す無作為抽出)では不十分であるとされている。また、7号に定める監査による確認とは別モノなので、7号の実施が3号の実施になるというわけではない、とされている。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.185、186、187|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新法第11条は努力義務規定でもあり、特定事業者作成書面等の内容を勘案し高リスクの場合に実施する新規則第32条第1項第2号、同項第3号の措置は、実施する取引実施する方法実施する内容のいずれも、事業者の業態、業務、規模、リスク等に応じて、 事業者の自主判断で行うとの理解でよいか。

意見・質問に対する考え方 そのとおりです。

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第3号の「確認記録及び取引記録等を継続的に精査する」であるが、「継続的に」の趣旨を教えてほしい。例えば、比較的危険性の高い取引について、社内の定期的な内部検査時期において、確認記録・取引記録をサンプリングチェックするという対応は、「確認記録及び取引記録等を継続的に精査する」に該当し得るという理解でよいか。
 また、確認記録及び取引記録等の継続的な精査は、新規則第32条第1項第7号の監査を定期的に実施することにより具備することも可と解してよいか。

意見・質問に対する考え方 「確認記録及び取引記録等を継続的に精査すること」とは、例えば、 取引時確認等の措置(取引時確認、 取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置)を的確に行うため、 保存している確認記録及び取引記録等を目視により確認して取引時確認を行った結果把握した職業や取引を行う目的と整合的かなどといった観点から取引の異常の有無を確認したり、システムにより取引の異常を検知したりすることが考えられます。
 その精査の頻度については、一律に定められるものではなく、各特定事業者が取引のリスクの程度、取引の態様等を踏まえ、合理的に判断される範囲で行うこととなります。例えば、年1回の精査で十分であるか否かについても、取引が当該年に行われていないのであれば、必ずしも年1回の精査が必要となるわけではありませんが、取引が当該年に複数回行われているのであれば、取引のリスクや態様によっては、年1回では不十分であると考えられることもあります。
 また、サンプリングチェックでは、 取引時確認等の措置を的確に実施するには不十分であると考えられます。
 さらに、監査による確認と本規定に基づく精査では趣旨が異なり、監査による確認をもって本規定に基づく精査を行ったとすることは不適当と考えます。

意見・質問の概要 確認記録の精査とは、確認の後、有効期限切れとなった本人確認書類の再受入等も必要とする趣旨か。

意見・質問に対する考え方 御質問のような場合には、新規則第32条第1項第2号の規定に基づく必要な情報の収集として、有効な本人確認書類を顧客等から入手することも1つの方法であると考えられます。

 

④リスクの高い取引を行う際の統括管理者の承認(4号)

四 顧客等との取引が第二十七条第三号に規定する取引に該当する場合には、当該取引を行うに際して、当該取引の任に当たっている職員に当該取引を行うことについて法第十一条第三号の規定により選任した者の承認を受けさせること。

 

冒頭のパブコメにもあったように、4号は、高リスクの取引(規則27条3号)を行うに際しては、統括管理者の承認を受けるべきことを規定している。

 

「リスクの高い取引」というのは、

・ハイリスク取引(法第4条第2項前段)

・特別の注意を要する取引(規則5条)

・高リスク国(犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備の状況から注意を要するとされた国若しくは地域)に居住・所在する顧客等との取引

・その他犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案してマネーロンダリングに悪用されるリスクが高いと認められる取引

のことである。

 

「リスクの高い取引」という言い方は一般的な略称であり、法文には出てこないことに注意。また、ややこしいが、「ハイリスク取引」(法4条2項)のことではなく、これを含みつつ、もう少し広い概念である。

 

承認は、統括管理者から委任を受けた者が承認をすることも否定されるものではないとされている。

 

また、取引時確認の対象となる取引だけでなく、継続的な取引においても、取引が発生する都度、統括管理者の承認を要するとされる。
(的確な措置をとるための体制整備は、取引時確認の措置だけでなく、疑わしい取引の届出の措置など、後日の継続的な取引に関する措置についても対象になっているため)

 

なお、承認について証跡(エビデンス)を残すことは義務づけられていない(そもそも承認自体が努力義務だが)。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.189、190、191|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第4号では「法第11条第3号の規定により選任した者」(統括管理者)の承認が必要となっている。統括管理者が出張・休暇等の理由により、常時承認(あるいは不承認)の手続を行なうことができないことも想定される。そこで、少なくとも新規則第27条第3号にあるように、 「これに相当する者」にも承認を認めることが必要と考える。
 実務対応に鑑みて、「選任した者」 を複数名任命することは可能か。
 また、特定事業者によっては「これに相当する者」を配置することが困難な場合も想定される。「法第11条第3号の規定により選任した者又はその者が法第11条第3号の業務を委任した者」が承認するという態勢が実務的には必要と考えられる。

意見・質問に対する考え方 取引時確認等の措置(取引時確認、 取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置)を的確に行う上で効果的かつ十分であると認められるのであれば、統括管理者から委任を受けた者が第4号に規定する承認を行うことも否定されるものではありません。また、統括管理者の選任は、 必ずしも一の特定事業者に一に限るものではなく、例えば、各支店・事業所ごとに統括管理者を選任することも有り得ると考えています。
 なお、新規則第27条第3号が「法第11条第3号の規定により選任した者又はこれに相当する者」としているのは、法第11条第3号が努力義務規定であり、必ずしも同項に規定する者が選任されているものではないことを踏まえ、義務である新規則第27条第3号については「これに相当する者」による確認も許容する趣旨です。

意見・質問の概要 「取引時確認等を的確に行うための措置」の1つとして、外国PEPs等厳格な顧客管理を要する取引や犯罪収益移転危険度調査書において、注意を要する国に居住する顧客等、あるいは、同調査書において、危険性の程度が高いと認められるものと、「取引を行うに際して」、統括管理者の承認を要するとされている。
 「取引時確認等を的確に行うための措置」に係る「取引時確認等」には、 疑わしい取引の届出等を含むとされていることから、取引時確認を行うに際してのみではなく、継続的な取引においても、取引が発生する都度、統括管理者の承認を要するということでよいか。
 また、個別の預貯金の払戻しや証券取引は新規則第27条第3号に規定する取引に該当し得るのか。

意見・質問に対する考え方 新規則第27条第3号に規定する取引に該当する場合には、取引が発生する都度、統括管理者の承認が必要となります。ただし、その承認は、取引を行うに際して受ければよく、 必ずしも取引の前に受ける必要はありません。
 なお、個別の預貯金の払戻し等についても、新規則第27条第3号に規定する取引に該当し得ます。

意見・質問の概要 ➀ 統括管理者は、複数名を選任とすることは可能であるとの認識でよいか。また、統括管理者の承認について証跡を求めるのか
② 統括管理者の職位等に関する制限はあるのか。

意見・質問に対する考え方 統括管理者とは、取引時確認等の措置(取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置) の的確な実施のために必要な業務を統括管理する者のことですが、具体的にこれに該当する者については、 特定事業者の規模や内部の組織構成により様々な者が想定されるとともに、その選任は、必ずしも一の特定事業者に一に限るものではなく、例えば、各支店・事業所ごとに統括管理者を選任することも有り得ると考えています。
 また、統括管理者による承認の有無の証跡を残すことは義務付けられていません。

 

➄リスクの高い取引について行った情報収集・分析の書面化・保存(5号)

五 前号に規定する取引について、第二号に規定するところにより情報の収集、整理及び分析を行ったときは、その結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成し、確認記録又は取引記録等と共に保存すること。

 

冒頭のパブコメにもあったように、5号は、高リスク取引に係る情報を収集、整理及び分析したものの結果を記載した書面等の作成・ 保存について規定している。

 

その際、犯罪収益移転危険度調査書において、当該取引がいかなる理由で高リスク取引とされているかといったことに着目すべしとされる。

 

その他のパブコメでは、以下のとおり、保存期間や、規則27条3号の「必要な調査」との共通点・相違点などが説明されている。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.193、194|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第5号に基づき、「確認記録又は取引記録等と共に保存すること」の保存年限は何年になるのか。どの条文で保存年限が規定されているのか。

意見・質問に対する考え方 確認記録及び取引記録等は、それぞれ新法第6条第2項及び第7条第3項の規定により、7年間保存しなければならないことから、新規則第32条第1項第5号の規定に基づき作成した書面又は電磁的記録媒体についても、これらと同じ期間保存するよう努めなければならないこととなります。

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第5号に規定する「情報の収集、整理及び分析」と、新規則第27条第3号「必要な調査」 は、顧客等への確認や質問も含め、実施するケース、タイミング、収集等又は調査する内容と目的に特段の違いはなく、事業者の合理的な判断で行えばよいとの理解でよいか。

意見・質問に対する考え方 新規則第27条第3号の規定に基づく「調査」は、新法第8条に基づく疑わしい取引の届出を行うか否かを判断するに当たり、顧客等との間で行う取引に疑わしい点があるかどうかを確認する観点から行うものである一方、新規則第32条第1項第5号の規定に基づく「情報の収集、整理及び分析」は、疑わしい取引の届出を含む、取引時確認等の措置(取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置)を的確に行うためのものであるという点で異なりますが、実施する内容がどのようなものであるかについては、御質問のとおり、事業者の業態、業務、規模、リスク等に応じて、特定事業者により個別に判断されることとなります。

 

⑥必要な能力を有する職員の採用(6号)

六 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な能力を有する者を特定業務に従事する職員として採用するために必要な措置を講ずること。

 

冒頭のパブコメにもあったように、6号は、取引時確認等の措置を的確に行うために必要な能力を有する者を採用することを規定していて、

・属性としてリスクが高いとされる反社会的勢力を採用しないこと

・採用後の教育訓練と相まって犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案した取引時確認等の措置を的確に行う能力を身に付ける素養のある者を採用すること

などが例として挙げられている。

 

その他のパブコメでも、同様の趣旨が説明されている。

 

つまり、専門的な知識を有する中途採用者を採用することのみを指しているのではなく、採用後の教育訓練と相まって必要な能力を有する者になる素養・適性を持つ者の採用も含まれる、とされている。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.195|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 新規則第32条第1項第6号は、犯罪収益移転防止法のプロを中途採用しろという条項に読まれかねないのではないか。例えば新卒一括採用をベースにした組織では、犯罪による収益の移転防止に関する法律等のコンプライアンスに優れた人材を中途採用する人事は行っていない。新卒一括採用で採用した労働者について、犯罪による収益の移転防止に関する法律等の業務に従事している職員や法務担当者が教育研修するという仕組みで犯罪による収益の移転防止に関する法律への対応を行っている。このような態勢では、同号を満たさないのか。

意見・質問に対する考え方 「必要な能力を有する者」の採用については、新法第11条第1号の規定による教育訓練と相まって、従業員が取引時確認等の措置を的確に行うことができるために行われるものであり、具体的な内容としては、例えば職員の採用に当たって面接等を行い、当該職員の適性を把握することなどが考えられます。
 したがって、一定の資格を有するなどの犯罪による収益の移転防止についての専門的な知識を有する者のみの採用を義務付ける趣旨ではありません。このため、従前から取引時確認等の措置が的確に行われている特定事業者であれば、これまでの採用基準等を必ずしも見直す必要はありません。

 

⑦取引時確認等に係る監査の実施(7号)

七 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な監査を実施すること。

 

冒頭のパブコメでは、例えば、犯罪収益移転危険度調査書において高リスクとされる取引を扱う部署を重点的に監査することなどが挙げられている。

 

なお、ここでいう監査は、外部監査に限られない。また、監査の頻度について一律の定めはなく、事業者ごとに効果的かつ十分であると認められる程度で行われるものとされる。

 

平成27年9月18日パブリックコメントNo.196|掲載ページはこちら(JAFICホームページ)

意見・質問の概要 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な監査とは、外部監査を指し、内部監査や社内検査は含まれないのか。また、監査の頻度は各特定事業者が定めることでよいか。

意見・質問に対する考え方 取引時確認等の措置の的確な実施に資するものであれば、監査は外部監査に限られるものではなく、内部監査や社内検査によりこれを行うことも否定されません。
 また、監査の頻度については、各特定事業の判断により、取引時確認等の措置を的確に行う上で効果的かつ十分であると認められる程度で行われるものと考えています。

 

結び

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、取引時確認等を的確に行うための措置のうち、主務省令で定める措置(4号)について書いてみました。

 

なお、当ブログの犯罪収益移転防止法の記事については、以下のページにまとめています。

犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ
犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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