商標法

商標法を勉強しよう|商標の登録要件

著作者:drobotdean/出典:Freepik

今回は、商標法を勉強しようということで、商標の登録要件について書いてみたいと思います。

本記事では、細かいところには入らず、全体をざざっと眺めたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

商標の登録要件

商標の登録要件は、商標法の3条4条に規定されている。

登録要件は、大きくいって、以下の3つである。

  • 自己の業務に係る商品役務について使用をする商標であること(3条1項柱書)
  • 自他識別力があること(3条1項各号参照)
  • 不登録事由(4条1項各号)に該当しないこと

以下、順に見てみる。

①自己の業務に係る商品役務について使用をする商標であること(3条1項柱書)

一つ目の要件は、3条1項柱書である。

(商標登録の要件)
第三条
 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一~六 (略) 

ここには、2つのポイントが含まれている。①自己使用と、②使用の意思、である。

自己使用

商標登録を受けるには、「自己の業務に係る」商品又は役務について使用をする商標、でなければならない。

つまり、自己使用である。

自他識別するためのマークが商標なのだから、なんだか当たり前のことのように思えるが、たとえば、

(1) グループ企業の場合に子会社が使用する商標を親会社が登録することはできるのか?

といった疑問はあり得たり、

(2) 実務上、アサインバックと呼ばれる論点

などがあったりと、一応、議論の対象になるものは存在する。

(1)については、商標審査基準に、「『自己の業務』には、出願人本人の業務に加え、出願人の支配下にあると実質的に認められる者の業務を含む」と、明確に解説があります。(改訂第15版 2頁)

(2)については、たとえば、以下のような記事があります。
アサインバックと弁理士法(山口朔生)

使用の意思

商標登録を受けるには、「使用をする」商標でなければならない。

これは、「使用をする」という少しフワッとした言い方になっているように、現に使用している商標のみならず、(現に使用していなくても)将来使用しようとする商標も含まれる。

つまり、実際の使用ではなく、使用の意思で足りる、ということである。

”現に使用している商標”とか、”使用中の商標”とは書かれていないです。

商標審査基準において、以下のように解説されている。

商標審査基準〔改訂第15版〕(特許庁)2頁

2. 「使用をする商標」について
(1) 「使用をする」とは、指定商品又は指定役務について、出願人又は出願人の支配下にあると実質的に認められる者(以下「出願人等」という。)が、出願商標を現に使用している場合のみならず、将来において出願商標を使用する意思(以下「使用の意思」という。)を有している場合を含む。

②自他識別力があること(3条1項各号参照)

二つ目の要件は、先ほど見た3条1項の、各号である。

自他識別力を欠く商標が各号に規定されており、”これらの商標を除き”、商標登録を受けることができる、という定め方になっている。

(商標登録の要件)
第三条
 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 その商品又は役務について慣用されている商標
 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

自他識別力を欠く商標を除外する、という形で、いわば裏側から規定しているような定め方です。

自他識別力を欠くとされている商標は、以下のとおり。

自他識別力を欠く商標(※簡略的に表記)
1号商品やサービスの普通名称
2号慣用商標
3号記述的商標(品質等を記述しているだけの商標)
4号ありふれた氏・名称
5号極めて簡単でかつありふれた標章
6号バスケット条項(1~5号以外で自他識別力を欠くもの全て)

③不登録事由(4条1項各号)に該当しないこと

三つ目の要件は、4条1項である。

これも、各号に定める不登録事由に該当する場合は、商標登録を受けることができない、という定め方になっている。

(商標登録を受けることができない商標)
第四条
 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない
一~十九 (略)

1号から19号まである。

不登録事由は、公益的理由によるものと、私益的理由によるものに、大きく分かれる。概観は以下のとおり。

分類 不登録事由(※簡略的に表記)
公益的な理由での不登録事由 1号 国旗等と同一又は類似の商標
2号 パリ条約の同盟国等の記章と同一又は類似の商標
3号 国際機関を表示する標章と同一又は類似の商標
4号 赤十字等の標章又は名称と同一又は類似の商標
5号 政府又は自治体が使用する監督用・証明用の印章・記号と同一又は類似の商標
6号 国や自治体又は公益団体等を表示する著名標章と同一又は類似の商標
7号 公序良俗を害するおそれがある商標
9号 博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標
16号 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
18号 商品等が当然に備える特徴のみからなる商標
私益的な理由での不登録事由 8号 他人の肖像・氏名・著名な略称等を含む商標
10号 他人の周知商標と同一又は類似の商標
11号 他人の先願登録商標と同一又は類似の商標
12号 他人の登録防護標章と同一の商標
14号 登録品種の名称と同一又は類似の商標
15号 出所混同を生ずるおそれがある商標
17号 ぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章を有する商標
19号 他人の著名商標を不正の目的で使用する商標

結び

今回は、商標法を勉強しようということで、商標の登録要件について書いてみました。


主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム又は特許庁HPの掲載ページに飛びます

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

  • この記事を書いた人

とある法律職

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。
経歴:イソ弁、複数社でのインハウスローヤー、独立開業など。
自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

-商標法