法務転職

【弁護士の転職】面接の準備①|「転職の一貫性」を言語化する

著作者:creativeart/出典:Freepik

今回は、弁護士の転職ということで、転職の一貫性転職ストーリー)について書いてみたいと思います。

転職の面接を準備しようとして本を読んだりしていると、だいたい「転職の一貫性」というキーワードを目にすることになると思います(管理人はそうでした)。

最初の転職のころに出くわす2大ハードルは、職務経歴書の作成と、この転職の一貫性というものだと思うので、今回はこれについて書いてみたいと思います。

職務経歴書の書き方については、以下の関連記事でくわしく書いています。

「一貫性」って自分にあるのか?という迷い

よく言われる「転職の一貫性」についてですが(面接での受け答えとして多かれ少なかれ必ず聞かれる事柄)、非常に迷うと思います。

自分にそんなものがあるのか?と、見えない人も多いと思いますし、最初の転職のころ、管理人もそう思っていました。

ただ、いま時点で振り返ってみると、個人的な意見としては、これは思い込みであるような気がします。つまり、一貫性がない人間というのはいない、のではないかと。

例えばホテルマンをやったり小説家をやったりガソリンスタンドで働いてみたり証券会社で働いてみたりした、という人がいたとして、でもこの場合ですら、なにか一貫性はあるのではないかと思います。例えば、いまはとにかく自分に性分の合う仕事を探して、試行錯誤しているのです、といったような。

1人の人間が一生懸命生きているのだから(あるいは一生懸命でなく普通にでもいいんですが)、変な言い方ですが人格が分裂でもしていない限り、一貫性がないという事は逆にありえないように思います。

とすれば、一貫性は無いのではなく、見出せていないだけといえます。ただ、転職活動時は、これをはっきりさせることを、ある意味で「強いられ」ます。

でもそれは、逆に人生にとって良いことなのかもしれません。自分を振り返って自覚するという事は、こういうシチュエーションでもないと、普通はわざわざやりませんので。

転職活動をしなければそんなことを言葉にする必要はないですが、転職活動する上では、自分の軸と言うものを(求められれば)説明する必要があるので、解像度を上げないといけないわけです。

なお、最初の転職のときは職歴がひとつしかありませんので、最初の就職のとき以前も含めて(つまり遡って)、自分の志向性と、シンプルにいま転職したいと思っている動機はなにかを説明することになります。最初の転職のときも、自分の軸みたいなものを考える悩みは、やっぱりあります。

他人に見てもらうという方法はどうか

これについて、自己分析の方法として、他人に見てもらうと言う方法も見かけます。新卒のときの就職活動で、友人はそういうことをしていました。

ただ、これも1つの方法であるとは思いますが、個人的にはそれほど役立たないのではと思います。

意外な視点を提供してくれることもあるかもしれないので、試しにやってみるのはいいと思います。見出すきっかけや、一材料にはなるだろうと。ただ、ある意味で所詮他人なので、深いところまでは見えないことが多いのではと思います。

一貫性というのは、主には、自分の原動力みたいなものを内部に見つけ出す作業だと思いますので、そういった部分は他人からは見通せないのではと思います。もし変わった原動力を持っている場合は、なおさら他人には見つけられないとも思います。

なので、他人に自己像を見てもらうというのは、表面的な部分について他人からどう見えているかという情報だけで、それ以上でもそれ以下でもないように思います。自分ではなかなかわからない側面というのも事実ですので、自分の枠外からやってくる情報という意味で1つの良い情報ではありますが、ただそれは表層的な部分だけであって、自分の内面と向き合うような作業は、自分にしかできないことだと思います。

ちょっと表現が良くなかったかもしれないです。自分と向き合うとかいうと、ひどく億劫でめんどくさいものにしか聞こえないですが、そういうことではなくて、

  • 今自分には見えていなくても、必ず一貫性というものは誰にでも存在するので、そのことを前提に眺める
  • 今までの足跡と、これからこんなことをやりたいと今何となく思っていることをぼんやりと眺めて、そこにある帯(おび。線みたいなものだが、線よりはもう少し幅がある、という感じ)みたいなものに気付いていく

というイメージですね。

いちどきに解像度をはっきりさせようとするとしんどいですので、転職活動する少しの期間(2・3カ月間)、ぼんやりと考え続ける、ぐらいの、肩の力を抜いた感じの心構えでいくのがよいと思います。

ここで言いたいのは、一貫性というのは、おそらくほぼ誰にでも存在するということと、それを見つけ出したときには我ながらなるほどって思うこともあり得る、ということです。

見つ出した一貫性が訴求しにくい場合

見つけ出した一貫性が「新しいこと探し中」みたいなものであった場合、転職時の説明としては困ったことになりますが(普通、相手方に需要は無い)、2つぐらい対応が考えられるかなと思います。

一つは、そういった部分も自分の一つという形で部分的に織り込むこと。

需要側の価値観は様々なので、そういった新しいことを見つけ出そうとして試行錯誤を繰り返している行動力を、プラスに評価するところもあるかもしれません。

最近のインフルエンサーなどを見ていると、長期目標を設定することより試行回数を増やすことが重要だと言っているような人もいるので、そういった自分の行動履歴をプラスに評価してくれる人もいるかもしれません(ただ、採用活動時にもそういう価値観で採用しているかどうかは、管理人もわからないですが)。

例えば、社長自身も若い頃にそういった試行錯誤の時期を経て、いまの会社をつくった、といった場合は、少なくともマイナスには見ない(全然気にしない)といったことは十分あり得ると思います。私も、司法試験に受かったときはだいぶ年がいっていましたが、ボス弁もわりとそうだったようで、年齢は特に気にされなかったように思います。需要側の価値観はさまざまです。

もう一つは、「新しいこと探し中」のように見えても、その中にも、やはり一定の傾向は見い出せるのではないかということです。

どんなに転職を繰り返しても、数にすればせいぜい10〜20くらいだろうと。世の中に数多ある仕事の中でそれらをチョイスしてきたというのは、不規則なように見えても、やはりそこに何らかの一貫性、傾向があるのではないか、と思います(自分の志向性、といったものは隠れて存在していると考える)。

それを言葉にします。

ちなみに管理人の場合としては、インハウスロイヤーをやったり複数社転職したり独立したりといろいろやっていますが、
・ロー時代からインハウスロイヤーに興味があり、新しい弁護士像だと思っていたことや、
・法律は面白いと思うこと、
・紛争処理だけやっていると時折不毛な気持ちになること、
・(広い目で見れば)突発事象である紛争処理よりも平時のコントロールに興味があること、
・過ごしやすい制度作りや働きやすい環境作り(仕組みづくり)にも意義を感じること、
・組織の中で働くか外で働くかに関しては、巷で思われているほど大きな違いは無い(距離感の違い)と思っていること、
・とはいえ弁護士である以上、紛争処理(依頼者への対応、裁判系書面の起案、証人尋問などひととおりの技術)も標準的にはできないといけないと思っていること、

などから、自分としては「従来の弁護士像も継承しつつ、法務の領域での活動を充実させたいと思ってやってきました」みたいな感じになります。

そしてここに業界プロパー、会社プロパーの理由を乗っけて行くような感じですかね。

この一貫性は、面接の際に、FAQにない質問に答えるときの指針にもなります。

採用側からの見え方

最初の転職のころは、「何でいまのところをやめるんですか?」というのは必ず聞かれる質問ですし、転職の一貫性を質問するのは、やばい奴(=何も考えていない行き当たりばったりの人)なんじゃないかとか、入ってもやめるんじゃないかとか、そういうことのために聞いてるんだろうな、と思っていました。

実際、採用側に回ってみても、まあそういう感じで、間違ってはいないです。

転職の一貫性は、現職をやめる理由と直にリンクしているので、

  • その人の考え方を知るという積極的な意味(プラスを知る意味)
  • 自社とのミスマッチを防ぐという消極的な意味(マイナスを防ぐ意味)

が質問する理由、という感じかなと思います。

ちなみに、何度か転職活動をしていろんな会社と話してみると、転職の一貫性とか辞める理由について、特に聞かれないこともたまにあります。

スキルの親和性が高ければ気にしない感じのところとか、人事担当者を含めた面接がないところ(あまり言い方はよくないかもですが、採用がまだ組織化されてない感じのところ)では、聞かれないこともありました。

 が、普通は聞いてくるところがほとんどなので、やはり準備はしておいた方が無難だと思います。

結び

今回は、弁護士の転職ということで、転職の一貫性(転職ストーリー)について書いてみました。

最後に、語感からすると誤解のおそれもありますので念のため書いておくと、「転職の一貫性」といっても、不変不動のものでないといけないという意味ではないです。その人の転職ストーリー、つまり「流れ」のことなので、変化はあってもいいわけで、その「流れ」を言葉にする、という意味です。

話が長くなってしまいましたが、本記事でいいたかった事は、「一貫性は誰にでもある」ということです。

次の記事は、面接準備の具体的な部分、FAQ(想定問答)づくりについて書いています。

▽次の記事

【弁護士の転職】面接の準備②|FAQ(想定問答)の準備

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【弁護士の転職】転職活動のロードマップ

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[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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