法務転職

インハウスローヤーに向いている人・向いていない人

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今回は、インハウスローヤーに向いている人・向いていない人、という話を書いてみたいと思います(もちろん、管理人の個人的意見)。

働き方で一般的に大事にされること

働き方については、一般的には、

○ 何をして働くのか

○ 誰と働くのか

○ 報酬(見返り)はなにか

が大事なのだろうと思っていますが、弁護士など士業の場合は、

○ 「一国一城の主」を重視するのか

というのを、前提条件的に重視している人も多いと思います。

「一国一城の主」は、その点を重視している人にとってインハウスローヤーは選択の余地がないわけですが、通常は、それ以外の3つが重要なのではないかと思います。

そして、インハウスローヤーに向いている人というのは、結論からいうと、その3つに関して伝統的な士業の業務がいまいちピンと来なかった人であるのではないか、と管理人的には考えています。

本記事ではこの点を掘り下げてみたいと思います。

インハウスを活動場所とする人の共通点

インハウスいろいろ

弁護士で転職活動していると、「インハウス」というともっぱら企業内弁護士を思い浮かべるかもしれませんが(過去の管理人)、インハウス自体は、別に弁護士に限った話ではないです。

厳密な定義とかはまた別にあるだろうと思いますが、「インハウス」というのは、フリーランスや自営として独立して働ける職種の人が、組織内(多くは企業だが、自治体や官庁や非営利法人などもある)で働くときの一般的な呼称かと思います。

弁護士のほかにも、司法書士のインハウス、社労士のインハウスなど、法律分野のインハウスは幅広いし、実際、管理人は幅広く会ったことがあります。職場が一緒だったことも多いです。税理士のインハウス、弁理士のインハウスもそうです。

また、当然、法律分野に限った話でもなく、建築分野では一級建築士のインハウスなどもいますし、デザイナーのインハウスなどもいるわけです。もちろん、会計分野では、会計士のインハウスも多いです。管理人が知らないだけで、他にもいくらでもあるのだろうと思います。

税理士の人で、「ビジネスがやりたいんだ!」ということで、ファンドコンサルで働いている人もいました。

また、一級建築士なども活動の仕方はいろいろあって、弁護士でいうと大型ローファームにあたるような超大型の設計事務所(日本設計とか)に行く人もいれば、自分で開業する人もいました。

インハウスとしては、企業内で働く人もいるし、さらには、また別の観点ですが、「街づくりに関わりたい」ということで、自治体で活動する人もいたりするわけですよね。

伝統的な基幹業務とそれ以外への広がり

そういう幅広い視野で見た場合、インハウスを活動場所とする人の共通点は、「伝統的な基幹業務がしっくりこなかった」あるいはそれより他にやりたいことが見つかった」ということではないだろうかと思います(もちろん私見)。

たとえば、法律分野のライセンスに関していえば、伝統的な基幹業務というのは、こういう感じかと思います(少々乱暴なまとめ方ですが)。

【法律士業の伝統的な基幹業務】

行政書士 →許認可取得業務などの代理

司法書士 →登記申請業務などの代理

社労士 →各種の社会保険上の届出などの代理

税理士 →記帳代行と税務申告の代理

弁理士 →工業所有権の登録申請などの代理

弁護士 →訴訟代理及び上記のほぼ全体

めちゃくちゃ端折っているので、そういう記述だとご容赦いただきたいのですが、わかりやすいように中核の業務だけ抜き出すと、こういう感じであるはずです。

こういう伝統的な基幹業務をしつつ、関連する手続(添付書類の作成、他の審査手続などなど)を全般やるし、また、そういった知識を活かしたアドバイス(コンサル)をする、というのが、伝統的な法律士業のイメージだろうと思います。

しかし、インハウスというのは、こういった伝統的な基幹業務よりも、たとえば「ビジネスがやりたいんだ!」といった、資格取得や士業実務での自己研鑽を活かしつつも、なにがしかのビジネス組織でないとできないことをやる、そういうものの方がおもしろいと思っている人たち、ということなのではないか、と思います。

法律職の全体像

上記のようにざざっと法律職の業務を並べてみましたが、参考までにいうと、弁護士は他の法律ライセンスとは位置付けというか、属性が違っています。

弁護士以外の法律士業は、すべて「行政の補完」になります。だから、一定期間、行政官として勤めていれば、実務経験があるので、無試験や試験科目の一部免除で資格が取れたりするわけです。行政の世界で働く人といえます。

これに対して、弁護士は、他の法律士業の業務をほぼ全て含みつつ(※ライセンス的に、という意味で、実際の実務能力の意味ではない)、また、基本は「司法」の世界で働く人なわけです。裁判所の世界で働く人たち、「法曹」ということ。

ライセンスの範囲は法律分野に関して包括的であり、人が増えて一時期値崩れしたとはいえ、そこはさすがに法律分野における最高ライセンスということですかね。

なお、最近は規制緩和で、弁護士以外の法律士業でも、「認定〜」「特定〜」といった名称で、別途上乗せで試験に合格すれば、分野ごとに一定範囲で訴訟代理も出来るようになってきています。

このように考えれば、法律職の全体が見えやすいかと思います。

インハウスローヤーに向いている人・向いていない人

何をして働くのか

ということでちょっとまとめると、冒頭の「何をして働くのか」でいえば、インハウスローヤーに向いている人というのは、「訴訟代理ばっかりっていうのもちょっとなあ…」とか「むしろ、それ以外のこれこれの領域で働いてみたい」と実は内心薄々思っている人、ということになるのではないでしょうか。

逆に、インハウスローヤーに向いていない人というのは、伝統的な基幹業務を中核にして特に不満のない人であろうと思います(向いてない、というより、そもそもそれが天職ということですが)。

つらつらと書いてみましたけど、書いてみると、まあ、当然というか、当たり前ですかね…?(笑)

もちろん、この記事で書いてみたことも、「何をして働くか」という面のひとつの要素であって、それ以外にも、いろいろあると思います。

高度かつ最新の(つまり日経朝刊の一面に載るような)案件に関して、リーガル特化の仕事をしたい場合なども、そもそも外部から一択ということになるでしょうし。

誰と働くのか

もうひとつ、冒頭の誰と働くのか」でいえば、業界の人と常日頃会話したいというのであれば、インハウスが向いている気がします。

弁護士と議論する、会話するのもエキサイティングですけど、法律の話よりもっと広く、もっと業界の人と身近に喋りたい!という人などは、インハウス世界に飛び込んだ方が早いかもしれません。

特に、最近ますます勃興中のテック領域の仕事などは、飛び込んじゃう方がおもしろそう、という風に感じる人もいるだろうと思います。

あるいは、自分も弁護士になったものの、弁護士ってなんとなく肌に合わんのだよなあ…と密かに思っている人なども、インハウスもひとつの選択肢になるかもしれません(ちなみに管理人の場合などは、そういう面もありました)。

なお、インハウスに飛び込んだ場合のマイナス面でいうと、わかりやすくいえば、逆に、伝統的な基幹業務に弱くなるということではあります。

そこはトレードオフになるのかなと思います。

経済条件

最後に、冒頭の経済条件については、身も蓋もないですが、わかりやすく言ってしまえば、独立したりパートナーになったりは、ハイリスクハイリターンインハウスは、ローリスクローリターンということになるだろうと思います。

独立はハイリターンでない!とか、インハウスはローリスクでない!とかのご指摘もあるかと思いますが、あくまでも管理人の私見、かつ乱暴に単純化した場合の話ということで、ご容赦いただければと。

独立orパートナー、要するに自営は、やはり収入面でボラティリティが高い(=ばらつきが大きい)ことは否めないと思います。

案件の内容という意味合いではなく。あくまでも経済的にという意味合いですが、経済的には、顧問先を増やすなどして安定収益がある程度ない限り、個別事件の受任だけだと魚釣りみたいなものなので、不安定さはあります。

実際、売り上げがなかったときなどは「ボウズ」と言ったりしますよね(※釣りでいうボウズとは、魚が1匹も釣れなかったこと)。なお、当然ながら、これは自営業者としての経済的な面の喩えであって、案件の処理のことではないです。

昔、イソ弁でリーマンショックのときに初めて聞いたのだが、感覚としてはそういうものだと言われれば、今は理解できます。

もちろん、大物を釣り上げることもあるでしょうし。ばらつきが大きい、というのはそういうことです。

これに対して、インハウスの場合は、収入面でのばらつきは基本的にはもちろん起こらないですし、いわゆるワークライフバランスも、インハウスの方がとりやすいであろうと思います(あくまで一般的には、ですが)。

結び

というわけで、インハウス転身に興味がある人は、それぞれの状況に合わせて、志向的な側面と経済的な側面を合わせつつ、向き不向きを検討することになるのかなと思います。

今回は、「インハウスローヤーに向いている人・向いていない人」というテーマで、概ね3つの要素に分けて、管理人の個人的意見を書いてみました。

[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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