今回は、弁護士の転職活動ということで、転職面接にあたっての面接の想定問答づくり、つまりFAQについて書いてみたいと思います。
すでに転職活動を何度かしていて慣れている人にとって、目新しいことは書かれていないと思いますが、転職活動を始めて間もないとか、これから初めての転職活動をしようと思って悩んでいる方(つまり過去の管理人自身)にとって、何かの参考になれば幸いです。
なお、受け答えの柱となる事前準備として、転職の一貫性の言語化については以下の記事に書いています。
面接準備はしんどいもの
面接準備、正直しんどいな…と思っている方に、自分だけではないのだなと思ってもらうために、面接準備は(おそらくみな)多かれ少なかれしんどい、という話を最初にしたいと思います。
初めて面接に行くときは緊張しますし、管理人も初めての転職活動のときは「突撃!」という感じでした。
でも、2、3回も行けば急速に緊張はとれてきますし、だいたいこんな感じか、というのが自分で掴めてくるので、それほど心配は要らないと思います。むしろ会社ごとの事前準備を若干面倒に感じてくるぐらい、そのうち慣れてきます。
最近はビデオ面接でOKのところも多く、以前よりもやりやすくなっているとは思います(業界によってはコロナの前からやっているので、業界によるような気もしますが)。
面接準備が精神的にツラいのは、ある程度会社情報のリサーチやFAQづくりに労力をかけないといけないけど、パスできなければ、準備の努力は基本的に見返りゼロになることです。
転職活動は仕事ではないので、けっこうキツい。つまり、現職をしながら、結実するかどうかわからない努力を続けるのはけっこうキツいです。ただ、多かれ少なかれ皆そうなので、自分だけではない、と言い聞かせつつ、一社あたりにかける労力を上手にコントロールしながら、やっていくのがいいと思います。
面接準備のコア
FAQづくり
面接準備のコアは、ひとことでいえば、FAQづくりになります(もうひとつは、「会社情報の具体的調査」です。参考記事はこちら)。
面接FAQはだいたい決まっているような面もあります。最初の方は、「徹底起案FAQ!」ぐらいの気持ちで準備するのがいいと思います。エクセルで書いてもいいし、脳内でもいいです。
ちなみに管理人の場合は、転職活動の最初の頃は、エクセルで左側の列に想定質問、右側の列に答えを書いて、大項目・中項目ぐらいでグループ化したものを作っていました。それで、面接に行って、ああこういうことも聞かれるのかというのを、想定質問に足していっていました。
とはいえ作るのは面倒なので、お好みで。ただ、頭がごちゃごちゃして混乱するぐらいなら、作った方がスッキリすると思います。慣れてくれば、要らなくなります。また混乱するようになったら、再開してもいいですし。
それで、このように想定問答を準備しておき、
想定内の質問にはそれで答え、想定外の質問に対しては原則(=転職の一貫性、ストーリー)からアドリブで考えて答える
というのが基本になります。
基本的な心構えは「期日」と一緒
なお、面接の基本的な心構えについては、弁護士は既に知っているはずで、つまり、裁判の「期日」と一緒だと考えればよいと思います。
期日は、行く前にFAQを考える、帰るときに依頼者への報告事項を考える、とか、期日の内容について、その前後で脳内で練る習慣をもつ人が多いと思いますが、それと一緒です。
でも、転職活動の最初の頃は、こういった期日の準備と期日後の処理のように、普段やってることと基本的に同じであるはずなのに、同じであることに意外と気づきませんので(管理人自身はそうだった)、ここで気づきというか、ヒントにでもなればと思います。
ありのままの自分を見せるのは必ずしも良いことではない
FAQを作り込んでおく、ということを聞いて、自分を偽るということですか?と思う方や、そんなに作り込んでいくものなんですか?という疑問(あるいは罪悪感?)を感じる方のために、ちょっとだけ書いておきたいと思います。
それは、ありのままの自分を見せるのは必ずしも良いことではないということです。
つまり、ありのままの自分を見せようとして、面接のその場で自然に口をついて出たものだけで答えるという方針は、ほぼ間違いなくアウトだと考えた方がよいと思います。
事前に準備していて然るべき質問に対して、えっとですね、うーんそうだなあ、と言ってる時点でアウトで、その後何を答えようと、内容に関わりなく、事前に準備していないこと自体がダメと判定されると思ってよいです。
人事がいれば、ほぼ100%聞かれるような類の質問ですね。ただ、会社によっては、面接官が部門の人だけの場合に、すっとばされることもたまにありますが…。
なにも嘘を言ってもよいとか、虚像を作り上げろと言っているわけではないです。単に想定問答を事前に準備しておくことは、何も悪いことではありません。
この点に関しては、ちゃんと自分を事前に「調理」しておきましょうという喩え話も交え、以前にこちらの関連記事でもう少し詳しく書いています。
▽関連記事
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弁護士の転職物語④|面接で大事なこと
続きを見る
よくある質問
以下、よくある質問について見てみます。
絶対ある質問
まず、絶対ある質問からいってみます。
Q. なんでいまのところやめるんですか?
これです。この質問は基本中の基本なので、これへの答えを考えていない時点でアウトといっていいようなものですが、はじめての転職活動の初期段階ではそれもわからなかったので(管理人はそうだった)、最初に書いてみました。
必ず、転職の一貫性に基づいて答えるのが重要です。
NGアンサーは、前職のネガティブ面です。弁護士の場合は、ブラックのやばいところだったとか、言ってもやむを得ないというか、むしろ出るのが適切な場合もないことはないかもしれないので、場合によりけりではありますが、あくまで原則的には、自分の志向性で説明できるのが一番きれいです(つまり、前向きの側面を取り上げる)。
なお、この「最も重要な質問」については、以前にこちらの関連記事でも書いたことがあります。
▽関連記事
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弁護士の転職物語③|最も重要な質問
続きを見る
その他の代表的な質問
Q. 自分の職歴に関してよく聞かれる質問
これの具体的な質問は、人によります。
つまり、違う会社の面接で、同じ質問が出れば、「なるほど、そこは自分の職務経歴書を見た人は共通して気になるところなのだな」とわかります。
実戦を踏まえてこれを抽出していってもいいですし、事前に予測できるなら(たぶんここは気になるんだろうな、と予測される部分)、あらかじめそこの答え方をつくっておきます。
ここも、転職の一貫性に基づいて答えます(転職の軸に関する質問ならば)。
Q. なぜ我が社に?
これは聞かれることは実際にはあまり多くない気もしますが、たまに聞かれることもあります。未来に関する質問です。
ここも、転職の一貫性に基づいて答えます。
Q. 法務として大事にしていることはなんですか?
これは法務に固有の質問ですが、6割強ぐらいの確率で出てくる質問と思います(管理人の感覚値)。これ、ぶっちゃけてしまうと、模範解答は決まっていて、「ノーはノーと言うこと(なるだけできる方法を考えるが、ダメならダメと言うこと)」です。
なので、これを踏まえつつ、「とはいっても、こういうふうに事業のために最大限に実現を考えて、それでもダメなら…」というニュアンスをつけるとか、「結論を伝えるにしても、検討プロセスもなるだけ丁寧に示して、腹落ちしてもらうよう工夫してます」とかの自分なりのこだわりをつけるとか、いくらかのバリエーションが考えられます。
そこは自分で実際に大事にしていること(あるいは大事にしようと思っていること)を答えればよいと思います。
ちなみに、なぜこの質問が出るかというと、ここは法務の人にとって多かれ少なかれ共通する悩みどころだから、だと思います。
Q. 知識のテスト的質問
これは、その場で考えて答えるしかないです。知識のテストについては、面接の前または後にペーパーテストがあることもあります(弁護士だと下駄をはかせてもらって(?)、省略のケースもある)が、面接の場で突然、知識に関する質問が出ることもあります。
もしすぐ浮かばなかったら、時間稼ぎでちょっとだけ聞き返してその間に考える、とかぐらいならしても大丈夫だと思います(小賢しいテクですが)。
Q. 入ったらどんな仕事をしたいですか?
これは、転職活動の初期に頭の中で想像すると聞かれそうな気もするが、実際にはあまり聞かれない気がします(あまり記憶にない)。
ちなみに、採用側に回った後も、聞いたことはないです。中途採用の場合、多くの場合は即戦力なので(ポテンシャル採用もあるにはあるが)、どういう業務をやってもらいたいかという目算が採用側にすでに一定程度あるからかもしれません。
Q. その他、想定外の質問
その他、どんなに事前に想定しても、実際の面接では想定していない質問は出ます。
なので、くり返しになりますが、FAQ的に用意していない質問については、転職の軸をベースにしてアドリブで答えます。
質問のグルーピング(3類型)
ちなみに、聞かれる質問の種類は、大きな括りにすると、以下の3グループに分かれると思います。
- スキルセットに関すること【スキル系の質問】
⇒中途採用なので、採用側が求めるスキルと応募者のスキルセットが合うのか当然見られる(ただし、大枠は職務経歴書で把握済み) - 転職動機に関すること【転職の軸系の質問】
⇒ミスマッチにならないかどうか、お互いのニーズが合っているかどうかを見られる。この中心となる質問が、「なんで今のところやめるんですか?」です。 - 労働条件に関すること【労働条件系の質問】
⇒ここはリアルなお話で、正直ベースで重要。
このへんが織り交ぜられながら聞かれつつ、面接が進んでいきます。
①のスキル系については、基本的には職務経歴書に既に書いていて、一定のチェックは終わっています。書類選考を通った結果、面接の場にいるわけですので、採用側の求めるスキルに応えられている部分がある、又は、ポテンシャルであれば一定の素養は満たしている、との判断があります。
なので、職務経歴書の内容を掘り下げるような話になります。基本的には、掘り下げ質問に対して、淡々と答えればよいと思います(というか、そうする以外にない)。
ここでのベターは、もし可能であれば、なんとなく面接官の反応を見ながら、「おっ、ここはなんかいい反応してる(響いてる)っぽいぞ」とか、「あれっ、ここはたぶん訴求するとこだと思ってたのに、食いつきが悪い気がするな」とか、相手の反応を見ながら、強弱をつけられればベターかなと思います。難しいですが。
②の転職の軸系については、ここがFAQの中心になります。応募者の考え方とか、ミスマッチにならないかのチェックです。
③の労働条件系は、年収レンジとか、ワークライフバランスとか、入社可能時期とかの質問です。
マインド系の質問
なお、「マインド系」とでもいうべき、第4の質問グループもなくはないです(仕事に対する姿勢や価値観を聞く)。
前述の「法務として大事にしていることは何ですか?」というのも、このタイプといえます。「弁護士を目指したのはどうしてですか?」といった質問もあります。
が、予想しにくいものは事前に準備するのが難しいですし、ある意味情緒的なところなので、スキルや転職軸の方が重要で、それほど多く質問されることはないので、あまり気にしなくてよいような気がします。
応募者側からの質問
最後に、だいたいの場合は、「なにか質問はありますか?」というのが出てきます(もしかしたら、最初からずっと応募者に質問させるとか、珍しいパターンもあるかもしれないですが)。
これもある意味、必ず出てくる「質問」なので、あらかじめ用意しておくのがいいと思います。
「なにを質問するか」という点を逆にアピール材料にする、という視点もあるかと思いますが、まずは単純に、聞きたいことを素直に聞けばいいと思います。ミスマッチを防ぐ意味でも大事かなと。
そのうえで、採用側としては、質問事項によって自社に対する関心の強さがわかることもありますので、そこのアピールという面も意識できればなおいい、という感じです。
応募者側からの一般的な質問
一般的には、以下のようなものが考えられるかなと思います。
- 職場についての質問
- メンバー構成
- 具体的な職務内容
- 仕事の割り振り方
- ジョブローテの有無・方法
- 会社についての質問
- 事業の内容や今後の展開
- 労働条件についての質問
- 残業時間
- 副業可否
- 離職率
このあたりかなと。くり返しになりますが、まずは素直に聞きたいことを普通に聞けばいいと思います。
採用側に回って見聞きした分でも、採用側の「なにかご質問ありますか?」にそれほど深い意味はなく、言葉どおり、普通に聞きたいことを聞いてくれればいいと思っています。
「そんなこと聞くんか!」とか激オコになることはまず100%ないといっていいです(これまでの経験では)。
管理人のオリジナル質問
以下では、管理人の個人的体験から生まれた、わりと有用な質問テンプレ(若干変化球が入ったオリジナルなもの)も、参考までに書いてみます。
Q. 募集背景は何ですか?
これは、ぶっちゃけ離職者が多発したとか、中間管理職が突然いなくなったとか、ゴタついて「急募!」ってなっているのではないかのチェックです。
一般論的には、そういう職場は、あまり良い職場ではないことが多いだろうと思います(※そういうところで一旗上げよう!と思う野心的な人は、これをポジティブに見てもいいです。そこはお好みで。)
しかし、「人員の補強のためです」という無難な回答で済ませられることもあり、この質問で詳らか(つまびらか)になるかどうかは、ケースバイケースです。
なにかあやしいものを感じることがあったら、ちょっと掘り下げて聞いてみるのもよいです。ただし、当然、変な勘繰りしているとか、イヤな雰囲気が出ないように注意が必要です。あくまでさらっと聞きます。
Q. 私に期待されている役割は何ですか?
これは、入ったらどういう仕事が想定されているのか、という具体的な意味合いもありますし、もう少し抽象的には、「自分の何が需要に響いたんだろう」という、相手の自分に対する期待内容を知るためです。
応募者側からチェックするミスマッチの可能性、という感じですね。
Q. 面接官の職歴、入社経緯はどんなものですか?
これは、逆質問のような感じですが、人というのは自分のことは喜んで話すものなので、面接官の警戒心が緩みます。ポロッと変な話が出てきて、もしかしたらやばいところかも?とわかったりすることもあります。
逆に、単純に面接官の人となりがわかって、「なんていい会社なんだ!」と思うこともあります。たとえば、面接官2人が税理士の先生で、事業再生スキームのコンサルをしているところでしたが、2人揃って、”伝統的な税理士業務より、その知識を使ってビジネスがやりたいんだ、この会社で”ということを熱弁しておられ、感動したようなこともあります。
そういうふうに、「人」が見えることによって、「集合体」である会社の雰囲気を推測することもできるような気がします(コンサルそのものになりたいわけではないな、と思ってそこに最終的には行かなかったですが)。
ただ、面接官は、応募者という重要な人財と最初に接する人であって、会社もそれなりにちゃんとした人を選んでいるので、面接官が素晴らしい人だと思っても、入ってみると他の人はそうでもないという可能性もありますので、過信は禁物です。
ちなみに、以前に面接に行ったところの会社で、面接官の法務責任者(弁護士)に、この質問をしたことがあります。そうしたら
「〇〇法律事務所にいて、留学もしたんだけど、リーマンショックがあったし、ここらでインハウスやっとくのもいいかなと思って」
という答えだったのですが、その答えで、
”ああ、この人はローファームから仕方なくドロップアウトしてインハウスローヤーになったパターン(ポジティブな動機ではない)なのだな”、
と思ったことがあります。
ちなみに、そのときにいたもう一人の面接官(人事系の責任者)が、”そうなん??”みたいな顔をしていたので、ちょっと可笑しかった記憶があります。
でも、人もよかったし、いい会社でした(遠い目)。あそこに行ってたらどうなっていたんだろう、とか思ったりもします。
Q. 決算動画の話を振る
これも、話が弾みやすいです。その会社のホットな話題であることが多いからです。
ただ、欠点は、動画を見たり資料を見たりの、準備の時間をくうことです。
なお、決算動画の話は、「応募者側からの質問」のときだけでなく、それ以外の場面でも、さりげなく触れられるチャンスがあれば、話に出してみるのもいいと思います(わざとらしいのはダメですが)。
自分はその会社のホットな話題も知ってますよ、という関心度や、入ってもすぐ滑らかに活動できますよ、という人となりのアピールにもなりますし、また、そのときの会話で、その会社の、最もホットな問題意識がわかったりします。
結び
長くなりましたが、面接のFAQ(想定問答)の準備について書いてみました。
一言でまとめると、「なんでいまのところやめるんですか?」への答えを中心にFAQをつくっておき、あとは、実際の面接に行くなかで想定質問と答えを随時足していけばOK、という感じです。
何かの参考になれば幸いです。次の記事は、面接準備の最後として、会社情報の調査について書いています。
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