弁護士の転職

【弁護士の転職】面接の準備②|FAQ(想定問答)の準備

著作者:DCStudio/出典:Freepik

今回は、弁護士の転職活動ということで、転職面接にあたっての面接の想定問答づくり、つまりFAQについて書いてみたいと思います。

すでに転職活動を何度かしていて慣れている人にとって、目新しいことは書かれていないと思いますが、

転職活動を始めて間もないとか、これから初めての転職活動をしようと思って悩んでいる方(つまり過去の管理人自身)にとって、何かの参考になれば幸いです。

なお、受け答えの柱となる事前準備として、「転職の一貫性」(転職のストーリー)については以下の記事に書いています。

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【弁護士の転職】面接の準備①|「転職の一貫性」を言語化する

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面接準備はしんどいもの

正直しんどいな…と思っている方に、自分だけではないのだなと思ってもらうために、面接準備は(おそらくみな)多かれ少なかれしんどい、という話を最初にしたい。

初めて面接に行くときは緊張するし、自分も初めての転職活動のときは「突撃!」という感じだった。

でも、2、3回も行けば急速に緊張はとれてくるし、だいたいこんな感じか、というのが自分で掴めてくるので、それほど心配は要らないと思う。むしろ会社ごとの事前準備が若干面倒になってくるぐらい。

最近はビデオ面接でOKのところも多く、以前よりもやりやすくなっていると思う(業界によってはコロナの前からやってるので、業界によるような気もするけど)。

面接準備が精神的にツラいのは、ある程度会社情報のリサーチやFAQづくりに労力をかけないといけないけど、パスできなければ、準備の努力は基本的に見返りゼロになることである。

転職活動は仕事ではないから、けっこうキツい。つまり、現職をしながら、結実するかどうかわからない努力を続けるのはけっこうキツい。ただ、多かれ少なかれ皆そうなので、自分だけではない、と言い聞かせつつ、一社あたりにかける労力を上手にコントロールしながら、やっていくのがいいと思う。

面接準備のコア

FAQづくり

面接準備のコアは、ひとことでいえば、FAQづくりである(もうひとつは、「会社情報の具体的調査」なのだけど、別記事に譲る)。

面接FAQはだいたい決まっている。「徹底起案FAQ!」ぐらいの気持ちで準備するのがいいと思う。エクセルで書いてもいいし、脳内でもいい。

ちなみに自分の場合は、転職活動の最初の頃は、エクセルで左側の列に想定質問、右側の列に答えを書いて、大項目・中項目ぐらいでグループ化したものを作っていた。それで、面接に行って、ああこういうことも聞かれるのかというのを想定質問に足していった。

とはいえ作るのは面倒なので、お好みで。ただ、頭がごちゃごちゃして混乱するぐらいなら、作った方がスッキリすると思う。慣れてくれば、要らなくなる。また混乱するようになったら、再開してもいいし。

で、このように想定問答を準備しておき、想定内の質問にはそれで答え、想定外の質問に対しては原則(=転職の一貫性、ストーリー)からアドリブで考えて答える。これが基本になる。

基本的な心構えは「期日」と一緒

なお、面接の基本的な心構えについては、弁護士は既に知っているはずで、つまり裁判の「期日」と一緒だと思えばいい。

期日は、行く前にFAQを考える、帰るときに依頼者への報告事項を考える、とか、期日の内容について、その前後で脳内で練る習慣をもつ人が多いと思いますけど、それと一緒だと思う。

しかし転職活動の最初の頃は、こういった期日の準備と期日後の処理のように、普段やってることと同じはずなのに、同じことであると意外と気づかないので(自分はそうだった)、ここで気づきというか、ヒントになればと思う。

ありのままの自分を見せるのは必ずしも良いことではない

FAQを作り込んでおく、ということを聞いて、自分を偽るということですか?と思う方や、そんなに作り込んでいくものなんですか?という疑問(あるいは罪悪感?)を感じる方のために、ちょっとだけ書いておきたい。

それは、ありのままの自分を見せるのは必ずしも良いことではないということである。

つまり、ありのままの自分を見せようとして、面接のその場で自然に口をついて出たものだけで答えるという方針は、ほぼ間違いなくアウトである。事前に準備していて然るべき質問に対して、えっとですね、うーんそうだなあ、と言ってる時点でアウトで、その後何を答えようと内容に関わりなく、事前に準備していないこと自体がダメと判定されると思ってよいと思う。

人事がいればほぼ100%聞かれる質問の類。ただ、面接官が部門の人だけの場合に、すっとばされることもたまにあるけど…。

なにも嘘を言ってもよいとか、虚像を作り上げろと言っているわけではなく、想定問答を事前に準備しておくことは何も悪いことではない。

この点に関しては、ちゃんと自分を事前に「調理」しておきましょうという喩え話も交え、以前にこちらの記事でもう少し詳しく書いている。

弁護士の転職物語④-面接で大事なこと-

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よくある質問

絶対ある質問

では、まず絶対ある質問からいってみたい。

Q. なんでいまのところやめるんですか?

これである。この質問は基本中の基本なので、これへの答えを考えていない時点でアウトといっていいようなものだが、最初の転職活動の初期段階ではそれもわからなかったので(私はそうだった)、ここで書いておきたい。

必ず、転職の一貫性に基づいて答えるのが重要である。

NGアンサーは、前職のネガティブ面である。弁護士の場合は、ブラックのやばいところだったとか、言ってもやむを得ないというかむしろ出るのが適切な場合もないことはないので場合によりけりだが、あくまで原則的には、自分の志向性で説明できるのが一番きれいである(つまり、前向きの側面を取り上げる)。

なお、この「最も重要な質問」については、以前にこちらの記事でも書いた。

弁護士の転職物語③-最も重要な質問- 

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その他の代表的な質問

Q. 自分の職歴に関してよく聞かれる質問

これの具体的な質問は、人による。

つまり、違う会社の面接で、同じ質問が出れば、「なるほど、そこは自分の職務経歴書を見た人は共通して気になるところなのだな」とわかる。

実戦を踏まえてこれを抽出していってもいいし、事前に予測できるなら(たぶんここは気になるんだろうな、と予測される部分)、あらかじめそこの答え方をつくっておく。

ここも、転職の一貫性に基づいて答える(転職の軸に関する質問ならば)。

Q. なぜ我が社に?

聞かれることは実際にはあまり多くない気もするが、たまに聞かれることもある。未来に関する質問。

ここも、転職の一貫性に基づいて答える。

Q. 法務として大事にしていることはなんですか?

これは法務に固有の質問だが、6割強ぐらいの確率で出てくる質問と思う(←管理人の感覚値)。これ、ぶっちゃけてしまうと、模範解答は決まっていて、「ノーはノーと言うこと(ダメならダメと言うこと)」である。

なので、これを踏まえつつ、「とはいっても、こういう風に事業のために最大限に実現を考えて、それでもダメなら…」というニュアンスをつけるとか、「結論を伝えるにしても、検討プロセスもなるだけ丁寧に示して、腹落ちしてもらうよう工夫してます」とかの自分なりのこだわりをつけるとか、いくらかのバリエーションは考えられる。そこは自分で実際に大事にしていること(あるいは大事にしようと思っていること)を答えればよいと思う。

ちなみに、なぜこの質問が出るかというと、ここは法務の人にとって多かれ少なかれ共通する悩みどころだから、である。

Q. 知識のテスト的質問

これは、その場で考えて答えるしかない。知識のテストについては、面接の前または後にペーパーテストがあることもある(弁護士だと下駄をはかせてもらって省略のケースもある)が、面接の場で突然、知識に関する質問が出ることもある。

小賢しいテクだが、すぐ浮かばなかったら時間稼ぎでちょっとだけ聞き返してその間に考える、とかぐらいならしても大丈夫。

Q. 入ったらどんな仕事をしたいですか?

これは、転職活動の初期に頭の中で想像すると聞かれそうな気もするが、実際にはあまり聞かれない気がする(あまり記憶にない)。

ちなみに、採用側に回った後も、聞いたことはない。中途採用の場合、多くの場合は即戦力なので(ポテンシャル採用もあるにはあるが)、どういう業務をやってもらいたいかという目算が採用側にすでに一定程度あるからかもしれない。

Q. その他、想定外の質問

その他、どんなに事前に想定しても、実際の面接では想定していない質問は出る。なので、くり返しになるが、アドリブな質問については、転職の軸をベースにしてアドリブで答える。

質問のグルーピング(3類型)

ちなみに、聞かれる質問の種類は、大きな括りにすると、以下の3グループに分かれると思う。

①スキルセットに関すること【スキル系】

⇒中途採用なので、採用側が求めるスキルと応募者のスキルセットが合うのか当然見られる(ただし、大枠は職務経歴書で把握済み)

②転職動機に関すること【転職の軸系】

⇒ミスマッチにならないかどうか、お互いのニーズが合っているかどうかを見られる。この中心となる質問が、「なんで今のところやめるんですか?」である。

③労働条件に関すること【労働条件系】

⇒ここはリアルなお話で、正直ベースで重要。

の3つになると思う。

このへんが織り交ぜられながら聞かれつつ、面接が進んでいく。

①のスキル系については、基本的には職務経歴書に既に書いていて、一定のチェックは終わっている。書類選考を通った結果、面接の場にいるわけだから、採用側の求めるスキルに応えられている部分がある、又は、ポテンシャルであれば一定の素養は満たしている、との判断がある。

なので、職務経歴書の内容を掘り下げるような話になる。基本的には、掘り下げ質問に対して、淡々と答えればよいと思う(というか、そうする以外にない)。

ここでのベターは、もし可能であれば、なんとなく面接官の反応を見ながら、「おっ、ここはなんかいい反応してる(響いてる)っぽいぞ」とか、「あれっ、ここはたぶん訴求するとこだと思ってたのに、食いつきが悪い気がするな」とか、相手の反応を見ながら、強弱をつけられればベターかなと思う。難しいけど。

②の転職の軸系については、ここがFAQの中心になる。応募者の考え方とか、ミスマッチにならないかのチェックである。

③の労働条件系は、年収レンジとか、ワークライフバランスとか、入社可能時期とかの質問である。

Tips:マインド系

 なお、「マインド系」とでもいうべき、第4の質問グループもなくはない(仕事に対する姿勢や価値観を聞く)。

 前述の「法務として大事にしていることは何ですか?」というのも、このタイプである。「弁護士を目指したのはどうしてですか?」といった質問もある。

 が、予想しにくいものは事前に準備するのが難しいし、ある意味情緒的なところなので、スキルや転職軸の方が重要で、それほど多く質問されることはないので、あまり気にしなくていいと思う。

応募者側からの質問

最後に、だいたいの場合は、「なにか質問はありますか?」というのが出てくる(もしかしたら、最初からずっと応募者に質問させるとか、珍しいパターンもあるかもしれないけど)。

これもある意味、必ず出てくる「質問」なので、あらかじめ用意しておくのがいいと思う。

「なにを質問するか」という点を逆にアピール材料にする、という視点もあるかと思うが、まずは単純に、聞きたいことを素直に聞けばいいと思う。ミスマッチを防ぐ意味でも大事かなと。

そのうえで、採用側としては、質問事項によって自社に対する関心の強さがわかることもあるので、そこのアピールという面も意識できればなおいい、という感じで。

応募者側からの一般的な質問

一般的には、以下のようなものが考えられるかなと思う。

(職場についての質問)

✓メンバー構成

✓具体的な職務内容

✓仕事の割り振り方

✓ジョブローテの有無・方法

(会社についての質問)

✓事業の内容や今後の展開

(労働条件についての質問)

✓残業時間

✓副業可否

✓離職率

このあたりかなと。くり返しになるが、まずは素直に聞きたいことを聞けばいいと思う。

採用側に回って見聞した分でも、採用側の「なにかご質問ありますか?」にそれほど深い意味はなく、言葉どおり、普通に聞きたいことを聞いてくれればいいと思っている。

「そんなこと聞くんか!!」とか激オコになることは100%ないといっていい(これまでの経験では)。

管理人のオリジナル質問

以下では、管理人の個人的体験から生まれた、わりと有用な質問テンプレ(若干変化球が入ったオリジナルなもの)も、参考までに書いてみたい。

Q. 募集背景は何ですか?

これは、ぶっちゃけ離職者が多発したとか、中間管理職が突然いなくなったとか、ゴタついて「急募!」ってなっているのではないかのチェックである。

一般論的には、そういう職場は、あまり良い職場ではないことが多い(※そういうところで一旗上げよう!と思う野心的な人は、これをポジティブに見てもいい。そこはお好みで。)

しかし、「人員の補強のためです」という無難な回答で済ませられることもあり、この質問で詳らか(つまびらか)になるかどうかは、ケースバイケースである。

なにかあやしいものを感じることがあったら、ちょっと掘り下げて聞いてみる。ただし、当然、変な勘繰りしているとかイヤな雰囲気が出ないように注意。あくまでさらっと聞く。

Q. 私に期待されている役割は何ですか?

入ったらどういう仕事が想定されているのか、という具体的な意味合いもあるし、もう少し抽象的には、「自分の何が需要に響いたんだろう」という、相手の自分に対する期待内容を知るためである。

応募者側からチェックするミスマッチの可能性、という感じである。

Q. 面接官の職歴、入社経緯はどんなものですか?

逆質問のような感じだが、人というのは自分のことは喜んで話すものなので、面接官の警戒心が緩む。ポロッと変な話が出てきて、もしかしたらやばいところかも?とわかったりすることもある。

逆に、単純に面接官の人となりがわかって、「なんていい会社なんだ!」と思うこともある。たとえば、面接官2人が税理士の先生で、事業再生スキームのコンサルをしているところだったが、2人揃って、”伝統的な税理士業務より、その知識を使ってビジネスがやりたいんだ、この会社で”ということを熱弁しておられ、感動したこともある。

そういう風に、「人」が見えることによって、「集合体」である会社の雰囲気を推測することもできる。(コンサルそのものになりたいわけではないな、と思って最終的には行かなかったが。)

※ただ、面接官は、応募者という重要な人財と最初に接する人であって、会社もそれなりにちゃんとした人を選んでいるので、面接官が素晴らしい人だと思っても、入ってみると他の人はそうでもないという可能性もあるので、過信は禁物。

ちなみに、以前に面接に行ったところの会社で、面接官の法務責任者(弁護士)に、この質問をしたことがある。そうしたら

「〇〇法律事務所にいて、留学もしたんだけど、リーマンショックがあったし、ここらでインハウスやっとくのもいいかなと思って」

という答えだったのだが、その答えで、

”ああ、この人はローファームから仕方なくドロップアウトしてインハウスローヤーになったパターン(ポジティブな動機ではない)なのだな”、

とわかった。

ちなみに、もう一人の面接官(人事系の責任者)が、”そうなん??”みたいな顔をしていたので、ちょっと可笑しかった記憶がある。

でも、人もよかったし、いい会社だったなあ(遠い目)。あそこに行ってたらどうなっていたんだろう。

Q. 決算動画の話を振る

これも、話が弾みやすい。ただ、欠点は、動画を見たり資料を見たりの、準備の時間をくうことである。

なお、決算動画の話は、「応募者側からの質問」のときだけでなく、それ以外の場面でも、さりげなく触れられるチャンスがあれば話に出してみるのもいいと思う(わざとらしいのはダメ)。会社の、最もホットな問題意識がわかる。

結び

長くなりましたが、面接のFAQ(想定問答)の準備について書いてみました。

一言でまとめると、「なんでいまのところやめるんですか?」への答えを中心にFAQをつくっておき、あとは実際の面接に行くなかで想定質問と答えを随時足していけばOK、という話です。

何かの参考になれば幸いです。

次の記事は、面接準備の最後として、会社情報の調査について書いています。

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[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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