迷惑メール防止法

迷惑メール防止法を勉強しよう|措置命令と刑事罰

著作者:pressfoto/出典:Freepik

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、違反に対する措置(措置命令と刑事罰)について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

措置命令(法7条)

迷惑メール防止法上の措置命令(法7条)とは、迷惑メール防止法に違反した送信者に対して、総務大臣と内閣総理大臣が行う行政処分のことである。

措置命令は、規制法には一般的に存在するもので、語感からはイメージしにくいが、要するに業務改善命令である。

(措置命令)
第七条
 総務大臣及び内閣総理大臣(架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信に係る場合にあっては、総務大臣)は、送信者が一時に多数の者に対してする特定電子メールの送信その他の電子メールの送信につき、第三条若しくは第四条の規定を遵守していないと認める場合又は送信者情報を偽った電子メール若しくは架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしたと認める場合において、電子メールの送受信上の支障を防止するため必要があると認めるときは、当該送信者(これらの電子メールに係る送信委託者が当該電子メールの送信に係る第三条第一項第一号又は第二号の通知の受領、同条第二項の記録の保存その他の当該電子メールの送信に係る業務の一部を行った場合であって、当該電子メールの送信につき、当該送信委託者の責めに帰すべき事由があると認められるときは、当該送信者及び当該送信委託者)に対し、電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

簡略化しつつ分節すると、

【措置命令の主体】
○総務大臣および内閣総理大臣(架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信に係る場合にあっては、総務大臣)は、

【措置命令の対象行為】
○送信者が電子メールの送信(一時に多数の者に対してする特定電子メールの送信など)につき、
第三条(オプトイン規制)もしくは第四条(オプトアウト規制)の規定を遵守していないと認める場合
 又は
送信者情報を偽った電子メール若しくは架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしたと認める場合
 において、

【措置命令の要件】
電子メールの送受信上の支障を防止するため必要があると認めるときは、

【措置命令の対象者】
○その送信者
○これらの電子メールに係る送信委託者がその電子メールの送信に係る業務の一部(その電子メールの送信に係るオプトインの通知または電子メールアドレスの通知の受領、同意の記録保存など)を行った場合であって、その電子メールの送信につき、その送信委託者の責めに帰すべき事由があると認められるときは、その送信者及びその送信委託者
 に対し

【措置命令の内容】
電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

という感じである。

以下、順に見てみる。

措置命令の対象行為

措置命令の対象となる送信者の行為は、

  • オプトイン規制(同意がない場合の送信禁止、同意の記録保存義務)の違反【法3条】
  • オプトアウト規制(受信拒否の場合の送信禁止)の違反【法3条】
  • 表示義務の違反【法4条】
  • 送信者情報を偽った電子メールの送信【法5条】
  • 架空電子メールアドレス宛ての送信【法6条】

となっている。

措置命令の要件

措置命令の要件は、「電子メールの送受信上の支障を防止するため必要がある」と認められることである。

電子メールの送受信上の支障としては、例えば、

  • 電子メールが遅配する等の支障が生じる場合
    【=電気通信事業者側で電子メール通信サービスの提供に支障が生じる場合】
  • 電子メールの通常の利用に支障をきたし、電子メールの利用に不便が生じるとともに私的生活領域が侵害され、それによりプライバシーやコミュニケーションに係る正当な利益が侵害されているような場合
    【=受信者側での支障が生じる場合】

などが想定されている(ガイドライン6-②参照)。

措置命令の対象者

措置命令の対象者は、基本的に、送信者である。

このほか、送信委託者が広告宣伝メールの送信に係る業務の一部を行った場合であって、その送信委託者の責めに帰すべき事由があると認められるときは、送信者のみならず、送信委託者に対しても、措置命令を発することができることとなっている。

送信委託者の責めに帰すべき事由とは、不適正な電子メールの送信の原因が送信委託者にある場合をいうとされている。

例えば、オプトインの通知(法3条1項1号)や電子メールアドレスの通知(同2号)を受けていないにもかかわらず、通知を受けた者であるとして、送信者に送信先となる電子メールアドレス等を提供して送信をさせた場合が挙げられている(ガイドライン6-③参照)。

措置命令の内容

措置命令の内容は、「電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置をとるべきこと」である。

電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置が、具体的にどのようなものであるかは、送信行為の具体的態様によって異なる。

例えば、

  • 表示義務(法4条)違反の特定電子メールの送信をした場合
    表示義務を遵守した電子メールの送信を行うべき旨の命令を発出すること
  • 送信者情報を偽った電子メールの送信(法5条)をした場合
    送信者情報を正確に記載した電子メールの送信を行うべき旨の命令を発出すること

が挙げられている(ガイドライン6-④参照)。

刑事罰(法34条等)

措置命令の違反に対しては、刑事罰がある(法34条2号、法35条1号)。

なお、送信者情報を偽った電子メールの送信(法5条違反)については、措置命令のほか、直罰(措置命令を経ないで刑事罰が科される)もできるようになっている(法34条1号)。

また、行為者のほか、法人等にも刑事罰を科すものとなっている(いわゆる両罰規定)。

刑事罰の内容をまとめると、以下のとおりである。

禁止事項と義務刑事罰が科される場合行為者
(「違反した者」)
法人等
(「法人」または「人」)
同意がない場合の送信禁止(法3条)措置命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条2号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)
同意の記録保存義務(法3条)措置命令違反100万円以下の罰金
(法35条1号)
法人は100万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条2号)
受信拒否の場合の送信禁止(法3条)措置命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条2号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)
表示義務(法4条)措置命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条2号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)
送信者情報を偽った送信(法5条)措置命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条2号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)
直罰1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条1号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)
架空電子メールアドレス宛ての送信(法6条)措置命令違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金
(法34条2号)
法人は3000万円以下の罰金、人は100万円以下の罰金
(法37条1号)

条文も確認してみる。

▽行為者に対する刑事罰(法34条、35条)

第三十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五条の規定【=送信者情報を偽った送信】に違反した者
二 第七条の規定による命令(第三条第二項の規定による記録の保存に係るものを除く。)【=同意がない場合の送信、受信拒否の場合の送信、表示義務違反、送信者情報を偽った送信、架空電子メールアドレス宛ての送信に対する措置命令】に違反した者

第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定による命令(第三条第二項の規定による記録の保存に係るものに限る。)【=同意の記録保存義務違反に対する措置命令】に違反した者
二 (略)

▽法人等に対する刑事罰(法37条)

第三十七条 法人の代表者又は法人若しくはの代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、そのに対して各本条の罰金刑を科する。
一 第三十四条 三千万円以下の罰金刑
二 第三十三条、第三十五条又は前条 各本条の罰金刑

結び

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、違反に対する措置(措置命令と刑事罰)について見てみました。

迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。

▽総務省HP

総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策

www.soumu.go.jp

▽消費者庁HP

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法) | 消費者庁
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

www.caa.go.jp

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Govまたは該当資料に遷移します(▷掲載ページは総務省HP消費者庁HP
  • 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
  • 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
  • ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
  • 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
【法改正資料等】

関連団体

一般財産法人 日本データ通信協会(https://www.dekyo.or.jp/

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