迷惑メール防止法

迷惑メール防止法を勉強しよう|送信者の表示義務

著作者:wayhomestudio/出典:Freepik

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、特定電子メールの送信者の表示義務について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

送信者の表示義務(法4条)

特定電子メールを送信するとき、送信者は、受信者の通信端末デバイスの映像面に所定事項を表示する義務がある(法4条)。

(表示義務)
第四条
 送信者は、特定電子メールの送信に当たっては、総務省令・内閣府令で定めるところにより、その受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に次に掲げる事項(前条第三項ただし書の総務省令・内閣府令で定める場合においては、第二号に掲げる事項を除く。)が正しく表示されるようにしなければならない
 (略)

以下、表示事項と表示方法について、順に見てみる。

表示事項(法4条各号)

表示事項は、法4条各号に定められており、

  • 特定電子メール送信者の氏名・名称(1号)
  • 受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたはURL・リンク(2号)
  • その他総務省令・内閣府令で定める事項(3号)
    1. 受信拒否の通知ができる旨の記載(規則9条1号)
    2. 特定電子メール送信者の住所(2号)
    3. 苦情や問合せ等を受け付けるための電話番号、電子メールアドレスまたはURL・リンク(3号)

とされている。

特定電子メール送信者の氏名・名称(1号)

 当該送信者(当該電子メールの送信につき送信委託者がいる場合は、当該送信者又は当該送信委託者のうち当該送信に責任を有する者)の氏名又は名称

まず、特定電子メール送信者の氏名・名称であるが、これは、特定電子メールはオプトイン方式(=あらかじめメールの受信を承諾している者に対してのみ送信を認める方式)の規制をしているので、送られてきた特定電子メールが、自分が送信について同意した事業者なのかどうか確認できるようにするためである。

「オプトイン」とか「オプトアウト」とかいう言葉が出てきますが、これらはそれぞれ英語の“opt in”と“opt out”を語源としています。

“opt”は動詞で、“選ぶ”とか“決める”という意味です。 “in”と“out”は、“入る”“出る”という意味ですが、法制との関係では、”許諾する””許諾しない(拒否する)”という意味でイメージしておけばよいかと思います。
▷参考サイト:オプトインとは - 意味をわかりやすく|IT用語辞典 e-Words

この送信者の氏名・名称は、正式名称でなければならない。サービス名等の表示では不可とされている。

▽ガイドライン5-③

注) ①の当該送信者の氏名又は名称は、送信者の正式な氏名又は名称でなければならない。サービスを提供しているウェブサイト名、サービス名(例:○○運営事務局)や屋号、ブランド名称の表示では、送信者名を表示したことにはならない。

受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたはURL・リンク(2号→施行規則8条)

 前条第三項本文の通知【=受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス又は電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号であって総務省令・内閣府令で定めるもの
(※【 】は管理人注)

次に、受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたはURL・リンクであるが、これは、特定電子メールはオプトアウト方式(=メールの送信者に受信拒否の意思を伝えた場合、以後の送信を認めない方式)の規制もしているので、受信者がこのようなオプトアウト措置をとれるようにするためである。

「電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号」は、規則8条により、URL(1号)またはURLに対応するハイパーリンク(2号)とされている。

URL・リンクにより表示する場合は、リンク先において、受信拒否に必要な情報が明確かつ平易な表現で提供されるなど、受信者が受信拒否の通知を容易に行うことができるよう必要な措置が講じられていなければならないとされている(1号括弧書き)。

▽施行規則8条(※【 】は管理人注)

(電気通信設備を識別するための符号)
第八条
 法第四条第二号の総務省令・内閣府令で定める文字、番号、記号その他の符号は、次の各号のいずれかとする。
一 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)の用に供される電気通信設備(次条において「特定電気通信設備」という。)のうち法第三条第三項本文の通知【=受信拒否の通知を受けるための用に供する部分(当該通知をするために必要な情報の明確かつ平易な表現による提供その他の方法により特定電子メールの受信をする者が当該通知を容易に行うことを可能とするために必要な電磁的記録を保存したものを含むものに限る。以下この条において「通知受領部分」という。)をインターネットにおいて識別するための文字、番号、記号その他の符号
二 前号に規定する符号に対応させた文字、番号、記号その他の符号であって、特定電子メールの受信をする者が当該符号を用いてその使用する通信端末機器により通知受領部分に接続できるもの【=URLに対応するハイパーリンク

その他総務省令・内閣府令で定める事項(3号→施行規則9条)

 その他総務省令・内閣府令で定める事項

その他総務省令・内閣府令で定める事項は、規則9条で定められており、

  1. 受信拒否の通知を、受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス(法4条2号)またはURL・リンク(規則8条)宛てに行うことができる旨(1号)
  2. 特定電子メール送信者の住所(2号)
  3. 苦情や問合せ等を受け付けるための電話番号、電子メールアドレスまたはURL・リンク(3号)

である。

1号の記載は、送信された電子メール宛てに送信すること(つまり返信)で通知できる場合は、その旨の記載となる(規則7条1項2号の括弧書き参照)。

3号の問合せ等受付先に関しては、法文上は、電話番号or電子メールアドレスorURL・リンク、という書きぶりであるが、可能な限り、電子メールアドレスやURL・リンクだけでなく、電話番号についても記載することが望ましいとされている(ガイドライン5-②参照)。

▽施行規則9条(※【 】は管理人注)

(その他の表示を要する事項)
第九条
 法第四条第三号の総務省令・内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。ただし、第六条各号のいずれかに掲げる場合における特定電子メールの送信をする場合は、この限りでない。
 第五条に定める方法により、特定電子メールの送信をしないように求める旨の通知を、法第四条第二号に掲げる電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をすることにより又は前条に定める文字、番号、記号その他の符号を用いることにより行うことができる旨【=受信拒否の通知ができる旨の記載
 法第四条第一号に規定する者の住所【=特定電子メール送信者の住所
 特定電子メールの送信についての苦情、問合せ等を受け付けることのできる電話番号、電子メールアドレス又は特定電気通信設備のうち苦情、問合せ等の受付の用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、番号、記号その他の符号【=苦情や問合せ等を受け付けるための電話番号、電子メールアドレス又はURL】若しくはそれに対応させた文字、番号、記号その他の符号であって特定電子メールの受信をする者が当該符号を用いてその使用する通信端末機器により当該部分に接続できるもの【=URLに対応するハイパーリンク

表示方法(施行規則7条)

表示方法としては、表示事項に応じて、特定電子メールにおける表示場所が指定されている(規則7条1項)。

表示事項(法4条各号)表示方法(表示の場所)
〇特定電子メール送信者の氏名・名称(1号)
〇受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたはURL・リンク(2号)
電子メールの中で、受信者が容易に認識することができる任意の場所(規則7条1項1号)
〇受信拒否の通知ができる旨の記載(3号→規則9条1号)受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス又はURLの前後(同2号)
※送信に用いられた電子メール宛てに送信することで通知できる場合は、その旨を、電子メールの中の受信者が容易に認識できる任意の場所に表示する必要がある(2号括弧書き)
〇特定電子メール送信者の住所(3号→規則9条2号)
〇苦情や問合せ等を受け付けるための電話番号、電子メールアドレスまたはURL・リンク(3号→規則9条3号)
電子メールの中で任意の場所。リンク先での表示とすることも可能。(同3号)
※リンク先での表示とする場合は、そのリンクを、電子メールの中の任意の場所に表示する必要がある(3号括弧書き)

ただ、このように任意の場所等とされているものの、受信者にとって判りやすく表示する観点から、ガイドライン上は、電子メール本文の最初又は最後に記載することが推奨されている。

また、リンク先に記載することが認められる表示事項についても、リンク先にその事項が表示されていることを受信者が容易に認識できるようにされていることが推奨されている。

リンク先のURLを記載することが認められる場合も、受信拒否の通知先をURLとする場合も、何度もクリックしないと必要な表示にたどりつかないようなときは、表示として不適当である(以上につきガイドライン5-③)。

条文も確認してみる。

▽施行規則7条1項(※【 】は管理人注)

(表示の方法等)
第七条
 法第四条各号に定める事項が表示されるようにしなければならない方法は、次の各号に掲げる事項の区分に応じ、当該各号に定める場所に表示する方法とする。
一 法第四条第一号及び第二号に掲げる事項  特定電子メールの任意の場所であって、当該特定電子メールの受信をする者が容易に当該事項を認識することのできる場所
二 法第四条第三号に掲げる事項(第九条第一号に掲げる事項に限る。)  法第四条第二号に掲げる事項【=受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス又はURL・リンクの表示がされた場所の直前又は直後(特定電子メールの受信をする者が当該特定電子メールの送信に用いられた電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をすることにより法第三条第三項本文の通知を行うことができる場合にあっては、当該特定電子メールの任意の場所であって、当該受信をする者が容易に当該事項を認識することのできる場所
三 法第四条第三号に掲げる事項(第九条第二号及び第三号に掲げる事項に限る。)  任意の場所(当該事項を特定電子メール以外の場所に表示されるようにするとき【=リンク先での表示とするとき】は、その場所を示す情報が当該特定電子メールの任意の場所に表示されるようにしなければならない。)

また、表示事項については、原則として、通信文で用いられるのと同じ文字コードを用いて表示しなければならないとされている(2項)。

 前項各号に掲げる事項(同項第二号に掲げる事項については、当該特定電子メールに係る任意の場所に表示されるようにするときに限る。)は、通信文で用いられるものと同一の文字コードを用いて符号化することにより表示されるようにしなければならない。ただし、特定電子メールの送信に必要な範囲において、他の符号化方法により重ねて符号化したものは、重ねて符号化する前の文字コードを用いて符号化しているものとみなす。

結び

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、特定電子メールの送信者の表示義務について見てみました。

迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。

▽総務省HP

総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策

www.soumu.go.jp

▽消費者庁HP

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法) | 消費者庁
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

www.caa.go.jp

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Govまたは該当資料に遷移します(▷掲載ページは総務省HP消費者庁HP
  • 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
  • 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
  • ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
  • 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
【法改正資料等】

関連団体

一般財産法人 日本データ通信協会(https://www.dekyo.or.jp/

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