今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制の例外について見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
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このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
オプトイン規制の例外(法3条1項2号~4号)
オプトイン規制(同意がない場合の送信禁止)については、いくつかの例外があり、
- 自己の電子メールアドレスを通知した者(2号)
- 取引関係にある者(3号)
- 自己の電子メールアドレスを公表している団体又は営業を営む個人(4号)
に対しては、同意なく送信することができます。
これらは、明示的な同意の通知がない場合であっても、特定電子メールの送信が許容される場合があることに鑑みて、例外が定められたものです。
条文上は原則も例外も同列の号として並んでいますが、考え方としては、1号が原則(オプトイン)であり、2号から4号までがオプトイン規制の例外となっています。
(特定電子メールの送信の制限)
第三条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
一 あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)に対し通知した者
二 前号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者
三 前二号に掲げるもののほか、当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者
四 前三号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)
以下、2号~4号を順に見てみます。
自己の電子メールアドレスを通知した者(2号)
これは、自己の電子メールアドレスを通知した者に対して、特定電子メールを送信する場合です(法3条1項2号)。
二 前号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者
以下で見るように、自己の電子メールアドレスの通知方法によって、その後同意なく送信できる特定電子メールの範囲に違いがあります。
自己の電子メールアドレスの通知方法(規則2条1項)
書面による通知(本文)
自己の電子メールアドレスの通知方法は、原則として、書面による通知とされています(規則2条1項本文)。
書面で自己の電子メールアドレスを通知した者は、書面の通知を受けた者から電子メールの送信が行われることについて一定の予測可能性があると考えられるため、送信を認めてもよいとの趣旨です。
例えば、名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した者に対しては、同意なく特定電子メールを送信することができます。
▽規則2条1項
(自己の電子メールアドレスの通知の方法)
第二条 法第三条第一項第二号の規定による送信者又は送信委託者に対する自己の電子メールアドレスの通知の方法は、書面により通知する方法とする。…(略)…
ただ、特商法の規制は別途あり得ます。送信される電子メールが通信販売などの電子メール広告の場合には、請求・承諾なしに送信することはできません。
任意の方法による通知(但書)
他方、①契約のやりとり等において広告・宣伝が付随的に行われる電子メールや、②同意の取得や確認をするための電子メールの場合には、自己の電子メールアドレスの通知方法は、適宜の方法(ウェブページなど)でよいとされています(但書1号・2号)。
これらの場合は、送信の必要性と比較して、送受信上の支障の程度は軽微であると考えられるため、書面以外の通知方法を含めて、送信を認めてもよいとの趣旨です。
▽規則2条1項但書(※【 】は管理人注)
(自己の電子メールアドレスの通知の方法)
第二条 …ただし、次の各号に掲げる特定電子メールを受信する場合の通知の方法は、任意の方法とする。
一 第六条各号のいずれかに掲げる場合【=オプトアウトの例外】に該当する特定電子メール
二 法第三条第一項第一号の通知【=同意の通知】の受領のために送信がされる一の特定電子メール
①オプトアウトの例外に該当する特定電子メール
オプトアウトの例外に該当する特定電子メールというのは、広告・宣伝以外を主たる目的として送信されるけれども、付随的に広告・宣伝が含まれる特定電子メールのことです。
具体的には、
- 契約や取引の履行に関する事項を通知する電子メールにおいて、付随的に広告宣伝が行われる場合(1号)
- フリーメールサービスを用いた電子メールなどにおいて、付随的に広告宣伝が行われる場合(2号)
- その他、広告または宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(受信者の意思に反することなく送信されるものに限る)において、付随的に広告宣伝が行われる場合(3号)
があります(法3条3項但書、規則6条各号)。
例えば、以下のような電子メールです。
▽付随的に広告・宣伝が行われるメールの例(事務局資料5頁より)
宛先:yoshida@example.jp
引用元:平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局)5頁
差出人:ogiyashouten@example.com
題名:ご連絡=======================
吉田 様
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利用者が自己の電子メールアドレスを通知した後に、このような特定電子メールを受信するケースでは、自己の電子メールアドレスの通知は適宜の方法でよい、ということです。
なお、上記②のフリーメールについてくる広告は送信者のものではなく第三者の広告なのでは?という気もしますが、他人の営業のために送信される広告宣伝メールも、特定電子メールに該当します(法2条2号)。
とはいえ、その送信が禁止されるとフリーメールが使えなくなるため、例外として認められています。
②同意確認の特定電子メール
これは、同意の取得や確認をするための特定電子メールです。
例えば、単純に自社からの情報提供の電子メール配信を希望する場合の案内を記載している電子メールや、ダブルオプトインにおいてメールアドレスの登録後に事業者から送信される確認用URLの記載された電子メール、などがあります。
▽オプトインの同意の取得・確認メールの例(事務局資料5頁より)
宛先:yoshida@example.jp
引用元:平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局)5頁
差出人:ogiyashouten@example.com
題名:最新ワイン情報の配信について
吉田 様
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利用者が自己の電子メールアドレスを通知した後に、このような同意確認の電子メールを受信し、オプトインの通知があった場合にのみ特定電子メールを受信するケースでは、自己の電子メールアドレスの通知は、適宜の方法でよい、ということです。
なお、同意の確認のための特定電子メールの送信は、送信自体を認めることは必要と考えられる一方で、無制限に送信されることになると迷惑メールの温床になるおそれがあるので、1通に限られています(「一の特定電子メール」との文言)。
オプトアウト通知の除外(2項)
オプトアウト(受信拒否)を行うための通知が、形式的に自己の電子メールアドレスの通知に該当することがあり得ますが、オプトイン規制の例外となる自己の電子メールアドレスの通知からは除外されています。
2 前項の規定にかかわらず、同項の方法による送信者又は送信委託者に対する自己の電子メールアドレスの通知が法第三条第三項本文の規定による特定電子メールの送信をしないように求める旨(一定の事項に係る特定電子メールの送信をしないように求める場合にあっては、その旨)の通知に該当する場合は、当該通知は法第三条第一項第二号の規定による自己の電子メールアドレスの通知に該当しないものとする。
取引関係にある者(3号)
3号は、取引関係にある者に対して、特定電子メールを送信する場合です(法3条1項3号)。
三 前二号に掲げるもののほか、当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者
これは、
・取引関係にある者の間では実態として広告宣伝メールの送信が問題なく行われていること
・また、受信者にとっても、取引関係にある相手からその者の営業に関する広告・宣伝メールの送信が行われることは予想され得ること
から、送信を認めてよいとの趣旨です。
取引関係とは
取引関係にある者とは、社会通念上、明示の拒否がなければ広告・宣伝メールが送付されることを許容していると認められるような社会関係にある者と解されています。
例えば、事業者間(BtoB)で継続的な取引関係や一定の提携関係がある場合は、取引関係であると考えられます(「最終とりまとめに向けた論点整理(案)」9頁参照|掲載ページはこちら)。
また、事業者と消費者の間(BtoC)では、金融関係の顧客であって、その金融機関に口座を開設し継続的に金融商品等の購入を行っている場合は、取引関係であると考えられます。
商品・サービスの購入については、(a) 一度の購入のみでは必ずしも継続的な関係にあるとは言えませんが、(b) 以後の購入等の取引が予定されている場合には、外形的に判断して取引関係にあるといえる場合もあると考えられています(ガイドライン3-②-⑵参照)。
自己の電子メールアドレスを公表している団体又は営業を営む個人(4号)
最後の4号は、自己の電子メールアドレスを公表している者に対して、特定電子メールを送信する場合です。
四 前三号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)
これは、
・ウェブサイト等でメールアドレスを公開している事業者に対して広告・宣伝メールを送信することはビジネス慣習上認められていること
・また、電子メールアドレスの公表は、基本的に電子メールを受け取るために行われるものであること
から、送信を認めてよいとの趣旨です。
公表の方法
電子メールアドレスの公表の方法は、自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く方法とされています(規則3条本文)。
(自己の電子メールアドレスの公表の方法)
第三条 法第三条第一項第四号の規定による自己の電子メールアドレスの公表の方法は、自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く方法とする。ただし、自己の電子メールアドレスと併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いたときは、この限りではない。
ただし、電子メールアドレスの公表と併せて特定電子メールの受信を拒否する旨を表示している場合は除外されています(但書)。
受信を拒否する旨の表示に関しては、広告宣伝メールの送信をしないように求めることを目的とし、明確に拒否する旨の意思表示であることがわかる用語である必要がある、とされています。
例えば、
「特定電子メール」、「広告メール」、「宣伝メール」、「迷惑メール」等の文字
と、
「拒否」、「お断り」、「送信しない」等の文字
を組み合わせたものを用いて、電子メールアドレスの直前または直後など、公表する電子メールアドレスと併せて表示することが適当である、とされています(ガイドライン3-②-⑶参照)。
結び
今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制の例外について見てみました。
迷惑メール防止法については、総務省HPや消費者庁HPに解説ページがあります。
▽参考リンク
・電気通信消費者情報コーナー-迷惑メール対策|総務省HP
・特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)|消費者庁HP
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
- 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
- ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
- 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
- 平成17年改正法(平成17年法律第46号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成16年10月7日)~第9回会合(平成17年7月15日))
- 平成20年改正法(平成20年法律第54号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成19年7月24日)~第11回会合(平成20年8月28日))
- 事務局資料(平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局))(▷掲載ページはこちら)
関連団体
- 財団法人日本データ通信協会(※登録送信適正化機関)≫迷惑メール相談センター/特定電子メール法
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