迷惑メール防止法

迷惑メール防止法を勉強しよう|同意の記録保存義務

著作者:rawpixel.com/出典:Freepik

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制における同意を証する記録の保存義務について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

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 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

同意を証する記録の保存義務(法3条2項)

オプトイン規制においては、事前の同意の有無が、適法か否かを分ける重要な判断基準となるため、同意を証する記録の保存が義務づけられている(法3条2項)。

 前項第一号の通知を受けた者は、総務省令・内閣府令で定めるところにより特定電子メールの送信をするように求めがあったこと又は送信をすることに同意があったことを証する記録を保存しなければならない

記録の保存義務についての基本的な考え方は、法執行にとって必要なものとする必要がある一方、保存を義務づけられる事業者にとって、実施可能であり、かつ過剰な負担とならない範囲とすることが適当である、というものである。

具体的にどのようにすべきか(保存方法と保存期間)は、規則4条に定められている。

保存方法(施行規則4条1項)

ここでいう保存方法とは、保存内容をどうするかという話である。

その基本的な考え方は、同意を取得した送信先の電子メールアドレスを保存することは当然として、

  • 個別の電子メールアドレスに関し、送信の同意を取得した際の時期、方法等の状況を示す記録を保存内容とする、または、
  • 同意の取得をウェブサイト等から行う場合には、その同意の取得に際して示すウェブサイトの画面構成等を保存内容とする

ことが適当と考えられる、というものである。

そこで、記録の保存方法は、以下の①②のいずれかを必要に応じて提示できる方法、とされている(規則4条1項)。

②は、受信者から同意の通知を受ける際に示した書面、電子メールまたはウェブサイトの同意取得のための画面を保存する方法である。

  • 個別の電子メールアドレスについて、同意を受けた際の状況を示す記録(同意を受けた時期と方法など)
  • 同意の取得に際し、送信者などが書面の提示、電子メールの送信、ウェブサイトから通信文の伝達をしていた場合は、電子メールアドレスのリストに加え、以下の事項
    1. 同意の取得に際し、書面(FAXを含む)の提示をしていた場合
      →その書面に記載した定型的な事項
    2. 同意の取得に際し、電子メールの送信をしていた場合
      →その電子メールの通信文のうち定型的な事項
    3. 同意の取得に際し、ウェブサイトから通信文の伝達をしていた場合
      →その通信文(ウェブサイトに表示された事項)のうち定型的な事項

②は、1~3まで、受信者から同意の通知を受ける前段階の行為によって分類されている。

条文も確認してみる(※以下の【 】は管理人注)。

(同意を証する記録の保存方法等)
第四条
 法第三条第二項の規定による特定電子メールの送信をするように求めがあったこと又は送信をすることに同意があったことを証する記録の保存の方法は、次の各号に掲げるいずれかの記録を必要に応じ提示することができる方法とする。
 法第三条第一項第一号の通知をした者の個別の電子メールアドレス(特定電子メールの送信に当たってのあて先とするものに限る。)に係る当該通知を受けた時期及び方法その他の当該通知を受けた際の状況を示す記録
 特定電子メールの送信に当たってのあて先とすることができる電子メールアドレスが特定できるようにされている記録【=電子メールアドレスのリスト】及び次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ当該区分に掲げる事項のうち法第三条第一項第一号の規定による特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨の通知に係る事項の記録
 イ 書面を提示し、又は交付すること(ファクシミリ装置を用いて書面を提示することを含む。)により法第三条第一項第一号の通知を受けた場合 当該書面に記載した定型的な事項
 ロ 特定電子メールの送信をすることにより法第三条第一項第一号の通知を受けた場合 当該特定電子メールの通信文のうち定型的な事項
 ハ ロに掲げる場合のほか、インターネットを利用して通信文を伝達することにより法第三条第一項第一号の通知を受けた場合 当該通信文のうち定型的な事項

ややイメージが湧きにくいように思うので補足すると、立法検討時には、以下のような検討がされている(迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第9回))。

最終とりまとめに向けた論点整理(案)9~10頁

○ 受信者から同意の通知を受ける際に示した書面又はウェブサイトの同意取得のための画面を保存する方法が適当ではないか。同意取得の形態や日時を含めたリストの作成・保存は、送信者・受信者間のトラブルを回避するためには望ましいものの、実効性と比べ過剰な負担となるのではないか。

➢オプトインの記録を日時等まで詳細に保存しておくことについてはサーバにログを残す仕組みを入れたり、管理データベースを全面変更する必要性などが生じたり、多額の費用を要することが想定され、実効性に照らすと不要な規制ではないか。

➢オプトインの記録として登録画面等を保存しておくことについても、恒常的なサービスでなく広告キャンペーンなどの場合は、掲載期間の終了などにより登録画面の確保が技術的に困難なケースが想定され、実態を考慮すべきではないか。

➢受信者からの同意を取得した日時や同意を取得した事業者を広告・宣伝メールに個別に表示させることは、広告・宣伝メールの大量性に鑑みると技術的に不可能な規制ではないか。

➢配信業者に委託する等、全てをシステムで管理していれば、同意取得の形態や日時まで含めたリストの作成・保存は可能であるが、十分な周知期間が必要ではないか。

➢簡単な配信ソフトを使って自社で配信している場合、通常は、「同意のあった顧客」のアドレスリストがあるのみであり、同意取得の立証のためだけに、取得日時まで管理するのは非常に負担が重いのではないか。特にシステム外で取得したアドレスとの一元管理は過剰な負担となるのではないか。

➢顧客から問い合わせがあった場合、記録を示して同意があったことを主張するよりも、配信停止の希望に応じてすぐに停止する方が、事業者として望ましい行動(good practice)ではないか。

➢記録内容としては、一件ごとの記録までは不要であり、同意取得の際の画面構成等の保存で足りることを明確化すべきではないか。

➢オプトインの記録の保存義務(第3条第2項)については、保存の形式については様々なものが考えられる(例えば電子ログ)。保存形式には色々な方法を認めた上で、オプトインの立証責任は送信者側にあることから、それぞれがリスクを考慮した上で各社が適切と思う形式で記録の保存を行うのがよいのではないか。

保存期間(施行規則4条2項)

原則

保存期間についての基本的な考え方は、少なくともその同意に係る特定電子メールを送信する限りは保存する必要がある、というものである。

そこで、保存期間は、記録の保存に係る広告宣伝メールを最後に送信した日から1か月とされている(2号本文)。

▽規則4条2項2号本文

2 前項の記録の保存期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める期間とする。
 当該送信をした場合 当該送信を最後にした日から起算して一月を経過する日までの間。ただし、…(略)…

ただし、他に2つパターンがある。

措置命令を受けた場合

まず、迷惑メール防止法に基づく措置命令を受けた場合は、基本的に、最後の送信をした日から1年間である(2号但書)。

ただ、細かく見ると、最後の送信をした日がいつかによって、保存期間が異なってくる。

▽規則4条2項2号但書(※【 】は管理人注)

 …ただし、法第七条の規定による命令【=措置命令】を受けた場合であって、次に掲げる場合の区分のいずれかに該当するときは、当該区分に応じて、それぞれ当該区分に定める日までの間
 イ 法第七条の規定による命令【=措置命令】を受けた日から起算して一年を経過する日までの期間に当該送信をした場合 当該送信を当該期間内において最後にした日から起算して一年を経過する日又は当該送信を最後にした日から一月を経過する日のいずれか遅い日
 ロ 当該送信を最後にした日から起算して一月を経過する日までの期間に法第七条の規定による命令【=措置命令】を受けた場合 当該送信を最後にした日から起算して一年を経過する日

ひとつは、措置命令を受けた日以降に送信を行ったケースである(上記イ)。

このケースでは、措置命令を受けてから1年以内に最後の送信をした場合は、最後の送信をした日から1年間となる。

もうひとつは、措置命令を受けた日以降には送信を行わなかったケースである(上記ロ)。

このケースでは、措置命令を受けた日の1か月前までに最後の送信を行っている場合は、最後の送信をした日から1年間となる。

事前の同意を受けたが結局送信しない場合

もうひとつのパターンは、受信者の事前の同意の通知を受けていても、1度も広告・宣伝メールを送信することがない場合である(1号)。

この場合は、送信をしないこととした日まで保存するものとしている。

▽規則4条2項1号

2 前項の記録の保存期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める期間とする。
 当該記録に係る特定電子メールの送信(以下この項において「当該送信」という。)をしない場合 当該送信をしないこととした日までの間

結び

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制における同意を証する記録の保存義務について見てみました。

迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。

▽総務省HP

総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策

www.soumu.go.jp

▽消費者庁HP

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法) | 消費者庁
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

www.caa.go.jp

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Govまたは該当資料に遷移します(▷掲載ページは総務省HP消費者庁HP
  • 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
  • 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
  • ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
  • 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
【法改正資料等】

関連団体

一般財産法人 日本データ通信協会(https://www.dekyo.or.jp/

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