景品表示法

景品表示法を勉強しよう|二重価格表示ー将来の販売価格を比較対照価格とする場合

著作者:xvector/出典:Freepik

今回は、景品表示法を勉強しようということで、二重価格表示のうち、将来の販売価格を比較対照価格とする場合について書いてみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

二重価格表示とは

有利誤認表示の検討問題

二重価格表示とは、要するに、”何かの価格と比較して、価格がそれよりも安いとする表示”のことである。

価格その他の取引条件について有利性を偽った表示は有利誤認表示といい、景表法5条2号で禁止されている。

では、二重価格表示はどういう場合に有利誤認表示になってしまうのか?あるいはならないのか?というのが、ここでの検討問題である。

消費者庁HPにも、簡潔にまとめられた解説ページがある。

▽二重価格表示|消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/double_price/

価格表示ガイドライン

二重価格表示についての詳しい考え方は、価格表示ガイドライン(「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」)に記載されている。

このガイドラインのなかで、何と比較するかによって、以下のような種類に分類して解説されている。

  • 「過去の販売価格」を比較対照価格とする二重価格表示
  • 「将来の販売価格」を比較対照価格とする二重価格表示
  • 「希望小売価格」を比較対照価格とする二重価格表示
  • 「競争事業者の販売価格」を比較対照価格とする二重価格表示
  • 「他の顧客向けの販売価格」を比較対照価格とする二重価格表示

本記事は、上記のうち、「将来の販売価格」を比較対照価格とする場合についてである。

将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示(ガイドライン 第4-2-(1)-イ)

基本的考え方

将来の販売価格を比較対照価格とする場合については、過去の販売価格と比較するときと違って、あまり細かい解説はない。

▽価格表示ガイドライン(第4-2-(1)-イ)

 販売当初の段階における需要喚起等を目的に、将来の時点における販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがある。
 このような二重価格表示については、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないときなど)には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある

表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないときは、不当表示に該当するおそれがあるとされ、例えば、

  • 実際に販売することのない価格であるとき
  • ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないとき

の2つが、例として挙げられている。

過去の販売価格と比較するときと違って、こういう場合はOK・こういう場合はNG、という細かい解説はなく、以下のように、基本的に否定的なスタンスが示されている。

 将来の価格設定は、将来の不確定な需給状況等に応じて変動するものであることから、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合(需給状況等が変化しても表示価格で販売することとしている場合など)以外において、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことは、適切でないと考えられる。

将来は不確かなので、そもそも本当にその価格で販売するの?という確度が元々低いからである。

逆の言い方をすれば、将来の販売価格を引き合いに出すときは、よくよく考えて出しなさいよ、ということです(「需給状況等が変化しても表示価格で販売することとしている場合」が例として挙げられているというニュアンス)。

不当表示に該当するおそれのある表示

不当表示に該当するおそれのある具体例としては、以下のようなものが挙げられている。

▽価格表示ガイドライン(第4-2-(2)-イ)

 セール期間経過後も販売価格を引き上げる予定がないにもかかわらず、又はセール期間経過後ごく短期間しか表示された価格で販売しないにもかかわらず、セール期間経過後の将来の販売価格を比較対照価格に用いること。
(事例)
 A衣料品店が、「婦人ブラウス お試し価格 4,800 円 ○月○日以降は 6,000円になります」と表示しているが、実際には、当該商品と同一の商品について、○月○日以降も 4,800 円で販売するとき。

(事例)は、上記の例①に当たる。実際に販売することのない価格であった、ということである。

この事例であればそんなに難しい話ではなく、そりゃそうだよな、という感じかと思います。

実務的なポイント

将来の販売価格を比較対照価格とするというのは、どういう場合を指しているのか、一瞬、イメージがしにくいのではないかと思う。

これは、商品の販売開始やサービスリリースを行う場合に、初期に一定の勢いをつけて顧客を増やす・ユーザーを増やすといった囲い込みのために、スタートから一定期間は安くしますよ、という広告宣伝を行うわけである。そのときに、将来の販売価格を引き合いに出す、ということである。

「将来的には定価になりますが、販売開始(orサービス開始)当初の今は安くしておきますので、おトクに始められますよ!」というニュアンスで訴求するのが典型である。

先ほど見た価格表示ガイドラインの該当部分に、

 販売当初の段階における需要喚起等を目的に、将来の時点における販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがある。

とあるのは、そういう意味である。

これに対して、すでに販売活動実績があるケースもあり得るとは思いますが(上記ガイドラインも「」といっているように、販売初期の局面に限られるわけではない)、「後日に値上げする予定なので、いまの価格で買えるのはいついつまでですよ、それ以降はこれこれの値段になっちゃいますよ!」といった表示をしようとする場合というのは、あまり見ないように思います(管理人の個人的意見)。

実際的には、しばらく定価で販売した後に、またキャンペーンを打つことを検討することもあるが、そのようなときに、この定価での価格が見せかけの価格として不当表示とされないか、というのが検討の切り口となる場合が多いだろうと思う。

このようなときに糸口になるのは、ガイドラインの例②である「ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないとき」に当たらないかどうか、である。

この「ごく短期間」の具体的長さについては、セール期間とその後の販売期間との関係や、一般的な販売価格の変動状況を考慮して、個別に判断されるとされている(「景品表示法」〔第6版〕(西川康一)129頁、「景品表示法の法律相談」〔改定版〕(加藤公司、伊藤憲二、内田清人、石井崇、薮内俊輔)232頁等参照)。

また、令和2年12月25日に「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」が公表されており、価格表示ガイドラインよりも詳しい解説がなされている。

▽将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針(案)に関する意見募集の結果の公示及び同執行方針の成案の公表について|消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/notice/entry/022622/

執行方針については細かくなるので、別記事に譲る。

結び

今回は、景品表示法を勉強しようということで、二重価格表示のうち、将来の販売価格を比較対照価格とする場合について書いてみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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