今回は、景品表示法ということで、総付景品規制の適用除外について見てみたいと思います。
なお、懸賞景品規制には適用除外といったものはないので、総付景品規制に特有のものになります。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
総付景品規制の適用除外(総付制限告示第2項)
総付景品規制については、景品類に該当する場合であっても一定の場合には規制を適用しない、とする適用除外があります。
全部で4つの除外事由があり、
- 商品の販売・使用やサービス提供のため必要なもの
- 見本その他宣伝用の物品又はサービス
- 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票
- 開店披露・創業記念等の行事に際して提供するもの
となっています。
総付制限告示(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」)で定められていますので、確認してみます。
▽総付制限告示第2項
2 次に掲げる経済上の利益については、景品類に該当する場合であつても、前項の規定を適用しない。
一 商品の販売若しくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
二 見本その他宣伝用の物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
三 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
四 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
”正常な商慣習に照らして適当と認められるもの”というのは、すべてに共通する要素となっています。
そして、①~④の具体的な解釈は、総付制限運用基準(「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準」)に定められていますので、以下、順に見てみます。
商品の販売・使用やサービス提供のため必要なもの(1号)
これについては、運用基準第2項に具体的な解釈が記載されています。
▽総付制限運用基準第2項
2 告示第二項第一号の「商品の販売若しくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービス」について
当該物品又はサービスの特徴、その必要性の程度、当該物品又はサービスが通常別に対価を支払って購入されるものであるか否か、関連業種におけるその物品又はサービスの提供の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する
例えば、
- 重量家具の配送
- 講習の教材
- 交通の不便な場所にある旅館の送迎サービス
- ポータブルラジオの電池
- 劇場内で配布する筋書等を書いたパンフレット
等が挙げられており、これらで適当な限度内のものは、原則として「商品の販売・使用やサービス提供のため必要なもの」に当たる、とされています。
消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。
▽景品に関するQ&A-総付景品について【Q117】|消費者庁HP
当店は、最寄り駅から一定程度距離がある場所に所在しており、車、バス等の交通手段を利用して来店いただく必要があります。しかしながら、当店にはお客様用の駐車場がないため、車での来店者には、近隣の時間貸し駐車場を御利用いただいています。
このような場合に、当店が来店者に対し、駐車料金を負担する、又は最寄り駅から当店までのバス等の交通手段の利用券を提供することは、総付景品の規制が適用されるのでしょうか。商品の販売若しくは使用のため又はサービスの提供のため必要な物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものについては、景品類に該当する場合であっても、総付景品の規制は適用されません。…(略)…。
本件のような駐車場料金の負担や、交通利用券の提供は、通常、お店の利用のために必要なサービスであると考えられますので、正常な商慣習に照らして適当であると認められ、景品類であっても総付景品の規制は適用されません。
見本その他宣伝用の物品又はサービス(2号)
見本等については、運用基準第3項に具体的な解釈が記載されています。
▽総付制限運用基準第3項
3 告示第二項第二号の「見本その他宣伝用の物品又はサービス」について
⑴ 見本等の内容、その提供の方法、その必要性の限度、関連業種における見本等の提供の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。
具体的には、以下の3つが挙げられています。
見本・宣伝①自己の供給する商品又は役務についてその内容等を知らせ購買を促すために提供する物品又はサービス
1つめは、試食・試用等であり、
⑵ 自己の供給する商品又は役務について、その内容、特徴、風味、品質等を試食、試用等によって知らせ、購買を促すために提供する物品又はサービスで、適当な限度のものは、原則として、告示第二項第二号に当たる
とされ、例えば、
- 食品や日用品の小型の見本・試供品
- 食品売場の試食品
- 化粧品売場におけるメイクアップサービス
- スポーツスクールの一日無料体験
が挙げられています。
ただし、
商品又は役務そのものを提供する場合には、最小取引単位のものであって、試食、試用等のためのものである旨が明確に表示されていなければならない。
とされています。
消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。
▽景品に関するQ&A-総付景品について【Q119】|消費者庁HP
当店では、飲料Aをメーカーから仕入れて販売しています。この飲料Aは、350ml入り(150円)、500ml入り(250円)、1L入り(350円)のものがあります。
このたび、メーカーと共同の販売促進企画として、350ml入りのものを見本品と明記して来店者に提供したいのですが、問題ないでしょうか。見本その他宣伝用の物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものは、景品類に該当する場合であっても、総付景品の規制は適用されません。商品又は役務について、その内容、特徴、風味、品質等を試食、試用等によって知らせ、購買を促すために提供する物品又はサービスで適当な限度のものはこれに当たります。また、市販されている商品又は役務そのものを提供する場合は、最小取引単位のものであって、試食、試用等のためのものである旨が明確に表示されている必要があります。これらについては、見本品等の内容、その提供の方法、その必要性の限度、関連業種における見本等の提供の実態等を勘案し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択の確保の観点から判断されます。
本件は、飲料Aのうち容量の最も小さい350ml入りのものの容器に、見本品であることを明記していますので、この飲料を見本品として提供することが正常な商慣習に照らして適当と認められるものであれば、総付景品の規制は適用されません。
見本・宣伝②事業者名を広告するために提供する物品又はサービス
2つめは、事業者名の広告であり、
⑶ 事業者名を広告するために提供する物品又はサービスで、適当な限度のものは、原則として、告示第二項第二号に当たる
とされ、例えば、
- 社名入りのカレンダーやメモ帳
が挙げられています。
見本・宣伝③他の事業者の依頼を受けて配布する、その事業者が供給する見本その他宣伝用の物品又はサービス
3つめは、他の事業者の見本・宣伝であり、
⑷ 他の事業者の依頼を受けてその事業者が供給する見本その他宣伝用の物品又はサービスを配布するものである場合も、原則として、告示第二項第二号に当たる。
とされています。
自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票(金額証・自他共通割引券を含む)(3号)
これについては、運用基準第4項に具体的な解釈が記載されています。
▽総付制限運用基準第4項
4 告示第二項第三号の「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」について
⑴ 「証票」の提供方法、割引の程度又は方法、関連業種における割引の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。
⑵ 「証票」には、金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証(特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)並びに自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票を含む。
上記⑵で書かれているように、運用基準では、「その他割引を約する証票」として、
- 金額証(※注:引換券を除く)
- 自他共通割引券(※注:同額の割引を約するものに限る)
も含む、とされています。
金額証
①は、「割引券」というと典型的には「○○%オフ」のようなものを思い浮かべますが、「○○円」といった金額を示した金額証(ex.「1000円サービス券」)も含みますよ、ということです。
注意点
ただし、金額証についても、特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないもの(いわゆる引換券)を除くとされています。
特定の商品等と引換えにするのみの金額証ということは、結局その商品等を交付しているのと同じことなので、景品出し放題になってしまう(結局、引換券の方法にするだけで規制を潜脱できることになってしまう)からです。
自他共通割引券
②は、「自己の供給する~」という部分があるので、自己との取引に用いられるものであることは前提であるものの、自己との取引にプラスして他の事業者との取引にも共通して用いることができるもの(自他共通割引券という)も含むことにしますよ、ということです。
消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。
▽景品に関するQ&A-総付景品について【Q122】|消費者庁HP
当店で2,000円以上購入してくれた顧客に対し、次回の買い物の際に当店だけではなく他店でも共通して使用できる500円分の割引券を差し上げようと考えていますが、この割引券は景品類に該当し、総付景品の規制が適用されますか。
自己の供給する商品又は役務の取引だけではなく他の事業者の供給する商品又は役務の取引においても共通して用いられる割引券は、「値引と認められる経済上の利益」には該当せず、景品類に該当します。しかしながら、自己と他の事業者の取引において同額の割引を約する証票であって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものについては、総付景品の規制は適用されません。
したがって、本件は、取引の価額2,000円の10分の2である400円を超えた500円分の割引券を提供することになりますが、この割引券が、正常な商慣習に照らして適当と認められるものであれば総付景品の規制は適用されず、問題となりません。ただし、特定の商品・サービスと引き換えることにしか用いることのできない証票(例えばドリンク1杯無料券、ケーキ1個引換券)や、他店でのみ使用できる割引券(例えば飲食店Aが提供する飲食店Bの割引券)等の場合は、総付景品の規制の対象となります。
上記Aの前半部分が何を言っているのかわかりにくいかもしれませんが、自他共通割引券は、景品類非該当のうちの値引には当たらないので、景品類には該当する(なので上限規制がかかりそうにも思える)ものの、総付景品規制の適用除外にあたるので、結局上限規制はかかってこない、ということです。
注意点
また、自他共通割引券については「同額の割引を約する」と書かれていますので、自己と他の事業者とで「同額」の割引となるものでなければならないことに注意が必要です。
なので、「○○%割引券」だと自己との取引での割引額と他の事業者との取引での割引額とが同額にならない(同率の割引を約しても、同額にはならない)のでそもそもダメですし、割引額が異なる(ex.自己との取引では500円分の割引になるが、他の事業者との取引では1000円分の割引になる)のもダメです。
▽景品に関するQ&A-総付景品について【Q123】|消費者庁HP
当店は、近隣2店舗と共同して、いずれかの店舗で1,000円以上購入してくれた顧客に対し、当店のほか近隣2店舗のどこでも使用できる「300円割引券」又は「30%割引券」のどちらかを提供しようと考えています。
割引券ですので、総付景品の規制は適用されないでしょうか。自己の供給する商品又は役務の取引だけではなく他の事業者の供給する商品又は役務の取引においても共通して用いられる割引券は、「値引と認められる経済上の利益」には該当せず、景品類に該当します。しかしながら、自己と他の事業者の取引において同額の割引を約する証票であって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものについては、総付景品の規制は適用されません。
「同額の割引を約する証票」ですので、「○○円割引券」のように、割引金額が一定の場合には、総付景品の規制は適用されませんが、「○○%割引券」のように、購入金額によって割引金額が異なる場合は、総付景品の規制が適用されることになります。
したがって、本件で、「30%割引券」を提供する場合には、総付景品の規制が適用されます。この場合、取引の価額1,000円の10分の2である200円が割引額の最高額となります。
開店披露・創業記念等の行事に際して提供するもの(4号)
開店披露等については、運用基準での別途の定めはありません。
消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。
▽景品に関するQ&A-総付景品について【Q127】|消費者庁HP
当店はこのたび新装開店を記念して、宣伝のために、来店者にもれなく景品を提供したいと考えています。この場合、総付景品の規制は適用されるのでしょうか。
また、当店への来店者ではなく、当店の商品等の購入者にもれなく提供する場合も、総付景品の規制が適用されるのでしょうか。開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものについては、景品類に該当する場合であっても総付景品の規制は適用されません。ただし、店舗改装のために休業した後のリニューアルオープンの場合には、それが開店披露と実質的に同視し得るような場合(例えば休業期間が⻑期にわたった場合など)でなければ、総付景品の規制が適用されます。
また、開店披露、創業記念等について、購入者にもれなく提供する場合であっても、これが正常な商慣習に照らして適当と認められるものであれば、総付景品の規制は適用されませんが、例えば、一定金額以上の購入や複数の条件を設定するなどして、極めて限定的に提供するような場合は、正常な商慣習に照らして適当と認めることは難しいと考えられ、その場合には、総付景品の規制が適用されます。
なお、この開店披露や創業記念以外の行事としては、旧仙台藩の地域等で行われているいわゆる「初売」が挙げられます。
新装開店は、文字どおりの開店披露ではないので、こういったQ&Aの解説がされています。
結び
今回は、景品表示法ということで、総付景品規制の適用除外について見てみました。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
参考文献
- エッセンス景品表示法(古川昌平)
- 景品表示法〔第6版〕(西川康一)
- 実務解説 景品表示法〔第2版〕(波光巌、鈴木恭蔵)
- 景品表示法の法律相談〔改定版〕(加藤公司、伊藤憲二、内田清人、石井崇、薮内俊輔)
- よくわかる景品表示法と公正競争規約〔令和6年7月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 事例でわかる景品表示法〔令和6年7月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 違反事例集(「景品表示法における違反事例集」)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
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