今回は、M&A法務ということで、株式譲渡契約(SPA)のうちファイナンス・アウト条項について見てみたいと思います。
※株式譲渡契約のSPAというのは、Stock Purchase Agreementの略です
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
ファイナンス・アウト条項とは
ファイナンス・アウト(Finance-out)とは、M&A(SPAでいうと株式譲渡)の代金支払いを資金調達によって行おうとしているケースで、その資金調達がうまくいかなかったときに買い手が取引から離脱することです。
要するに、代金支払いのための資金手当てがつかなくなった場合の取引の取りやめの事ですね。
具体的には、最終的に資金調達が可能であったことがクロージングの前提条件とされることがあり、これをファイナンス・アウト条項といったりすることがあります。
つまり、資金調達の成就が、買主の義務の前提条件となっているということです。
※前提条件一般については、以下の関連記事に書いています
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M&A法務|株式譲渡契約(SPA)-前提条件
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ファイナンス・アウト条項が設けられる趣旨(買主側の視点)
このような資金調達(=M&Aにおけるファイナンス)は、買収ファイナンスとも呼ばれ、主に金融機関や投資家からM&A実行に必要な買収資金を調達することを意味します。
買収は、普通は金額が巨大になることが多いので、自己資金のキャッシュ一括でポン、というふうにはいかないことも多いわけです。
そのためM&Aでは、買主側が自己資金だけでなく、金融機関からの融資や投資家からの出資を前提に買収資金を準備することが多いです。
しかし、株式譲渡契約の締結時点で資金調達が確定していないことももちろんあります。このときに、クロージングまでの間に資金調達の交渉がうまく進まなかった場合、買主側としては契約を履行できないリスクが生じます。
このような事態に備え、買主側が、取引から離脱できる選択肢を用意しておくのがファイナンス・アウト条項の役割です。
ファイナンス・アウト条項の懸念点(売主側の視点)
ファイナンス・アウト条項の懸念点としては、ちょっと考えてみるとすぐにわかりますが、買主側が内心(あるいは他の理由で)取引したくなくなったときに、”資金繰りがつきませんでした”というのを理由にして取りやめにすることができてしまうことになりますよね。つまり、資金調達の努力をあえて怠るということです。
だから売主側としては、買主側の一存で取引から離脱する可能性を認めることになってしまうため、難色を示すことも多いとされます。
この場合の売主側の対応としては、ファイナンスの成功に向けて努力する義務をプレクロ事項(コベナンツのプレ・クロージング事項)に入れ込むことが挙げられます。買主側の資金調達を、努力義務として義務付けするということです。
※コベナンツのうちプレクロ事項一般については以下の関連記事に書いています
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M&A法務|株式譲渡契約(SPA)-コベナンツ(プレ・クロージング事項)
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あるいは、金融機関から意向表明書のようなものを取り付けさせるといったような手段も考えられますし(コミットメントレター)、資金調達が可能であるにもかかわらず、買主側があえて資金調達しない場合には前提条件は充足したものとみなす旨を定めておくことも考えられます。
また、違約金条項を設けることが検討される場合もあり得ます。
なお、前提条件が充足されなかったということで実際にクロージングがなされなかった場合どうなるかというと、一般的に、一定の期日までにクロージングされないことが解除事由となっていますので、最終的には契約解除となります。
結び
このように、ファイナンス・アウト条項は、買主側にとっては資金調達リスクを軽減する条項ですが、売主側にとっては契約解除リスクを伴うものといえます。
今回は、M&A法務ということで、株式譲渡契約(SPA)のうちファイナンス・アウト条項について見てみました。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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参考文献
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