景品表示法

景品表示法を勉強しよう|景品類の要件ー景品類非該当

今回は、景品表示法を勉強しようということで、景品類の要件のうち景品類非該当の要件について見てみたいと思います。

景品類該当性の判定で検討すべき要件には、以下の4つがありますが、

① 顧客誘引性
② 取引付随性
③ 経済上の利益
景品類非該当 ←本記事

その中で、本記事は④に関するものです。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

景品類非該当(定義告示第1項但書)

景品類の要件のうち①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益を満たす場合であっても、④値引・アフターサービス・附属物については、景品類に該当しない、とされています。

法令上の根拠としては、定義告示第1項の但書で、景品類に含まないとされています。

▽定義告示第1項

1 不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第二条第三項に規定する景品類とは、顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、次に掲げるものをいう。ただし,正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない

このように、景品類非該当には、

  1. 値引と認められる経済上の利益
  2. アフターサービスと認められる経済上の利益
  3. 商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益

という3つの類型があります。

具体的な解釈は、定義告示運用基準(以下「運用基準」)に定められていますので、以下、順に見てみます。

値引と認められる経済上の利益(運用基準第6項)

基本的な考え方(第6項⑴⑵)

基本的な考え方は、以下のとおりです。

▽定義告示運用基準第6項⑴・⑵

6 「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」について
⑴ 「値引と認められる経済上の利益」に当たるか否かについては、当該取引の内容、その経済上の利益の内容及び提供の方法等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。
⑵ これに関し、公正競争規約が設定されている業種については、当該公正競争規約の定めるところを参酌する。

能率競争

 ちなみに、そもそもなぜ値引であれば景品類に該当しないのか?というと、簡単にいうと、取引本来の内容をなすものだからです。

 つまり、景表法の親みたいな法律である独占禁止法の基本的な考え方は、”公正な競争というのは、品質価格で勝負することだ”、というものです(能率競争といいます)。

 景品規制というのは、”品質と価格で勝負せず、過大なオマケで勝負するのは、一定限度を超えた行き過ぎはNGだぞ”と言っているわけですが、よく考えてみると、値引はこの価格を下げることですよね。

 つまり公正な競争という概念のなかでの取引本来の内容をなすものなので(つまり、普通に価格で勝負しているという話)、景品類とは見なくていい、と言っているわけです。

値引に当たる場合(第6項⑶)

原則として値引に当たる場合としては、以下のように、ア~ウまで3つの場合が挙げられています。つまり、3類型です。

▽定義告示運用基準第6項⑶

⑶ 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる

類型①:減額

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

これはそのままで、一番わかりやすいと思います。減額を値引と呼ぶことに何の違和感もないですので。

減額の例としては、

  • 「×個以上買う方には、○○円引き」
  • 「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」
  • 「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」
  • 「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」

が挙げられています。

消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。

景品に関するQ&A【Q49】|消費者庁HP

Q49 当店で商品を2,000円分以上買ってくれた顧客に対し、次回の買い物の際に当店で使用できる30%割引券を差し上げようと考えていますが、この割引券は景品類に該当するのでしょうか。

A 自己の供給する商品・サービスの取引において用いられる割引券その他割引を約する証票により対価を減額することは、それが自己との取引に用いられ、取引通念上妥当と認められる基準に従っているものである場合は、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」となり、そもそも景品類には該当しません。これは、商品・サービスの購入時に対価を減額する場合だけでなく、次回以降に商品・サービスを購入する際に対価を減額する場合も含み、また、同一の商品だけでなく、別の種類の商品について対価を減額する場合も含みます。

類型②:割戻し(キャッシュバック)

イ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払った代金について割戻しをすること(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む。)

いわゆるキャッシュバックです。いったん代金は全部払ってもらうけど、その後に一部を戻すということです。

割戻し(キャッシュバック)の例としては、

  • 「レシート合計金額の○%割戻し」
  • 「商品シール○枚ためて送付すれば○○円キャッシュバック」

が挙げられています。

減額と違うのは、あくまでもいったんは全額払わないといけない、という点です。その後に戻ってくるので、経済的実質は一緒ですが。

類型③:同じ対価で同一の商品又は役務を付加して提供(増量値引)

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること(実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合及び複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む

これは増量値引と呼ばれます。この呼び方の方が、語感としてもわかりやすいかと思います。

増量値引の例としては、

  • 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」
  • 「背広一着買ったらスペアズボン無料」
  • 「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」
  • 「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」
  • 「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」

が挙げられています。

ただし、続きの部分で、

ただし、「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない

とされています。

これは、増量値引には全く同一の商品のほか実質的に同一の商品も含まれることとしますが、”コーヒー”と”ジュース”はあくまでも別の商品ですよ、”ハンバーガー”と”フライドポテト"もあくまでも別の商品ですよ、つまり増量値引としては見ませんので、景品類に該当しますよ、ということです。

そうすると、どういう場合に「実質的に同一」になるのか?という疑問が湧きますが、一般消費者が増量値引と認識するか否かという観点から、取引の実態に応じて判断するとされています。

消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。

景品に関するQ&A【Q22】|消費者庁HP

Q22 同じ商品を5個買ってくれた人に、更にもう1個同じ商品をプレゼントする場合、景品規制の対象となりますか。

A 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品・サービスの購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品・サービスを付加して提供することは、値引と認められる経済上の利益に該当し、景品規制の対象とはなりません。例えば、「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」などもこれに該当します。
 本件については、上記コーヒーの例と同様と考えられますので、景品規制は適用されません。

値引に当たらない場合(値引非該当)(第6項⑷)

しかし、減額/割戻し/増量値引であっても、以下に見るケースでは、値引に当たらないとされます(値引非該当)。

ここからがややこしいところです。

なるほど、減額/割戻し/増量値引は値引に当たるんだな、フムフム…と思っていたら、ここから一部ひっくり返されます。

頭がこんがらがりそうですが、ひっくり返されて値引に当たらないとなると、結局、景品類に該当することになります。

▽定義告示運用基準第6項⑷

⑷ 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない

減額/割戻しについての値引非該当

ア 対価の減額又は割戻しであっても、懸賞による場合減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合(例 旅行費用に充当させる場合)又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合(例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)

ここには、以下の3つの場合が示されています。

  • 懸賞による場合
  • 減額・割戻した金銭の使途を制限する場合
    (例 旅行費用に充当させる場合)
  • 同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合
    (例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)

これらの場合には、減額又は割戻しであっても、値引には当たりません。

消費者庁HPに、以下のような関連Q&Aが掲載されています。

景品に関するQ&A【Q21】|消費者庁HP

Q21 当店では、期間を限定して、商品A(1,000円)を10個買ってくれた人を対象に、もれなく3,000円のキャッシュバックを行いたいと考えています。この場合、景品規制の対象となるのでしょうか。

A キャッシュバックなどの方法により、取引通念上妥当と認められる基準に従い、支払った代金の割戻しを行うことは、値引と認められる経済上の利益に該当し、景品規制の適用対象とはなりません。
 ただし、懸賞によりキャッシュバックを行う場合割り戻した金銭の使途を制限する場合、又は同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合は、景品規制の適用対象となります。

増量値引についての値引非該当

イ ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供する場合であっても、懸賞による場合又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合(例 A商品の購入者に対し、A商品又はB商品のいずれかを選択させてこれを付加して提供する場合)

ここには、以下の2つの場合が示されています。

  • 懸賞による場合
  • 同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合
    (例 A商品の購入者に対し、A商品又はB商品のいずれかを選択させてこれを付加して提供する場合)

これらの場合には、増量値引であっても、値引には当たりません。

余談(実際の事例についての考察記事)

なお、値引に当たらない例として、「以前にペイペイのキャッシュバックキャンペーンがあったが、これがなぜ値引き構成をとらなかったのか?」という考察記事を紹介したいと思います。あてはめの練習にどうぞ。

▽参考リンク
PayPayキャッシュバックの景表法上の整理その3|若手インハウスのひとりごと

アフターサービスと認められる経済上の利益(運用基準第7項)

アフターサービスと認められる経済上の利益は、景品類に該当しません。

アフターサービスは商品や役務の使用を全うするために行われるものですし、アフターサービスも含めて対価を支払っているといえるような場合は、取引本来の内容をなすものと考えられるからです(商品又は役務と別個の経済上の利益とはいえない)。

基本的な考え方は、以下のとおりです。

▽定義告示運用基準第7項

7 「正常な商慣習に照らしてアフターサービスと認められる経済上の利益」について
⑴ この「アフターサービスと認められる経済上の利益」に当たるか否かについては、当該商品又は役務の特徴、そのサービスの内容、必要性、当該取引の約定の内容等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。
⑵ これに関し、公正競争規約が設定されている業種については、当該公正競争規約の定めるところを参酌する。

アフターサービスというのは、日常生活でもよく使わせてもらっているように、一定期間の無料点検・修理や、無料の使用サポートのことで、例えば、

  • 建築や備品備付け後の一定期間の無料点検や修理
  • 家電製品の購入後の一定期間の無料修理
  • パソコン等の取扱いの無料サポート

などが挙げられます。(「エッセンス景品表示法」(古川昌平)157頁、「実務解説 景品表示法」〔第2版〕(波光巌、鈴木恭蔵)29頁など参照)

商品・役務に附属すると認められる経済上の利益(附属物)(運用基準第8項)

商品・役務に附属すると認められる経済上の利益(附属物)は、景品類に該当しません。

附属物も、取引本来の内容をなすものと考えられるからです(商品又は役務と別個の経済上の利益とはいえない)。

基本的な考え方は、以下のとおりです。

▽定義告示運用基準第8項

8 「正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」について
⑴ この「商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」に当たるか否かについては、当該商品又は役務の特徴、その経済上の利益の内容等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。
⑵ これに関し、公正競争規約が設定されている業種については、当該公正競争規約の定めるところを参酌する。
⑶ 商品の内容物の保護又は品質の保全に必要な限度内の容器包装は、景品類に当たらない。

例えば、

  • 弁当についてくる割り箸やナプキン
  • ケーキを買ったときについてくるドライアイス
  • 眼鏡のケースやレンズ拭き
  • 家電製品の電池
  • 喫茶店のコーヒーについている砂糖やクリーム
  • 大型の家具や家電製品の配送サービス
  • スーパー等で買物したときの無料駐車場利用

などが挙げられます。(「エッセンス景品表示法」(古川昌平)158頁、「実務解説 景品表示法」〔第2版〕(波光巌、鈴木恭蔵)30頁など参照)

結び

今回は、景品表示法を勉強しようということで、景品類の要件のうち、景品類非該当の要件について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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