景品表示法

景品表示法を勉強しよう|違反行為に対する措置

今回は、景品表示法を勉強しようということで、違反に対する措置について書いてみたいと思う。

 

なお、簡潔な解説が消費者庁のHPに載っている。

 

▽景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?|消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/violation/

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。

 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

 

調査

調査権限は29条に定められている。報告命令、提出命令、立入検査、質問調査などがある。

 

なお、相手方の協力が得られる場合には、これら法律に基づく調査権限を行使しないで調査することもできる(任意調査)。

 

第二十九条 内閣総理大臣は、第七条第一項の規定による命令、課徴金納付命令又は前条第一項の規定による勧告を行うため必要があると認めるときは、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者に対し、その業務若しくは財産に関して報告をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員に、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 

 

弁明の機会の付与

措置命令は不利益処分となるので、行政処分一般に必要な手続として、命令に先立って、弁明の機会が付与される(行政手続法13条1項)。

 

(不利益処分をしようとする場合の手続)
第十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与

 

課徴金納付命令に関しては、景表法に定めがある。

 

(課徴金納付命令に対する弁明の機会の付与)
第十三条 内閣総理大臣は、課徴金納付命令をしようとするときは、当該課徴金納付命令の名宛人となるべき者に対し、弁明の機会を与えなければならない。

(弁明の機会の付与の通知の方式)
第十五条 内閣総理大臣は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、課徴金納付命令の名宛人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 納付を命じようとする課徴金の額
二 課徴金の計算の基礎及び当該課徴金に係る課徴金対象行為
三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)
2 (略)

 

 

措置命令

違反行為があった場合、①違反行為の差止め、②再発防止に必要な事項、③これらの実施に関する公示その他必要な事項を命じることができる。

 

第七条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一~四 (略)

 

なお、地域的にきめこまかくまた迅速な規制ができるよう、調査や措置命令は、自治事務として都道府県知事にも権限があり、運用されている(地方自治法)。

 

 

課徴金納付命令

課徴金納付命令の内容

平成26年改正(平成28年4月1日施行)から、課徴金納付命令が導入された。

 

課徴金対象行為は、表示規制のうちの優良誤認表示と有利誤認表示の違反行為のみである。

 

ペナルティについては、かいつまんでいうと、課徴金の対象行為にかかる商品・役務の「売上額×3%」が賦課金額となる。

 

(課徴金納付命令)
第八条 事業者が、第五条の規定に違反する行為同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であること又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であることを示す表示
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であること又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であることを示す表示

 

当該改正については、詳しい解説が消費者庁HPに載っている。

 

▽「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」|景品表示法改正について|消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/

 

 

納付を命じられない場合や減額など

違反事業者が相当の注意を怠った者ではないとき等には課徴金の納付を命じられない(8条1項柱書但書)、違反行為を自主的に報告したときに課徴金額の2分の1を減額(9条)、消費者への返金措置を実施したときに課徴金額から返金相当額を減額または免除(10条)、といった規定もある。

 

返金措置については、認定されたものの一覧が消費者庁のHPに載っている。

 

▽認定された返金措置一覧|消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/authorization_list/

 

 

不服申立て

行政処分に対する、審査請求(行政不服審査法)と取消訴訟がある(行政事件訴訟法)。

 

 

行政措置以外の実効性確保

公正取引協議会等による措置

公正競争規約の参加者が公正競争規約に違反した場合、実施機関である公正取引協議会等が何らかの是正措置をとっているのが通常である。

 

 

適格消費者団体による差止請求

平成20年改正(平成21年4月1日施行)から、消費者契約法に基づく適格消費者団体による差止請求も認められている(30条)。

 

この対象も、課徴金納付命令と同じく、表示規制のうちの優良誤認表示と有利誤認表示の違反行為のみである。

 

行政機関によるエンフォースメントとはまた別のところから、不当表示の排除・防止を強化しようとするもの(不特定かつ多数の一般消費者に被害をもたらす表示)。①停止、②予防、③これらに必要な措置、を請求することができる。

 

第三章 適格消費者団体の差止請求権等
第三十条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下この条及び第四十一条において単に「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると誤認される表示をすること。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2 (略)
3 (略)

 

 

結び

景品表示法のうち、違反行為に対する措置については以上になります。

 

景品表示法の勉強記事は、本記事で終了です。

 

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景品表示法を勉強しよう|学習ロードマップ【記事一覧】

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。
経歴:イソ弁、複数社でのインハウスローヤー、独立開業など。
自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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