景品表示法

景品表示法を勉強しよう|景品類の定義

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今回は、景品表示法を勉強しようということで、景品類の定義について書いてみたいと思います。

景品類に該当すれば基本的には景品額の上限規制がかかってきますが、そもそも景品類に該当しなければ規制はかかってこないということになります。なので、一般的な法務実務での諸々の判断においても、最初の入りとして、景品類の該当性判断は重要になります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

景品類の定義

景表法2条3項

景品類の定義は、景表法2条3項に定められている。

 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

分節すると、

①顧客誘引の手段として(目的)=顧客誘引性
②取引に付随して提供する(提供方法)=取引付随性
③経済上の利益(内容)

という感じである。

そして、具体的な内容は、告示で定められることになっている。景表法3条2項による。

▽景表法3条2項

 前項に規定する指定並びにその変更及び廃止は、告示によって行うものとする。

定義告示第1項

これを受けて、告示で、「景品類」の詳しい内容が定められている。

この告示は、指定告示と略称されるが、管理人的には定義告示と呼んだ方がわかりやすいと思うので、当ブログではこれで表記したいと思う。
(正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)。

▽定義告示第1項

 不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第二条第三項に規定する景品類とは、顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、次に掲げるものをいう。ただし,正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない
 物品及び土地、建物その他の工作物
 金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
 きょう応(映画,演劇,スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
 便益、労務その他の役務

長くなった分、何を書いているのかよくわからない。そこで、これも簡略的に図示してみると、以下のようになる。

顧客誘引の手段として顧客誘引性
取引に付随して提供する取引付随性
経済上の利益
 ┗⑴物品及び土地、建物その他の工作物
 ┗⑵金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
 ┗⑶きょう応(映画,演劇,スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
 ┗⑷便益、労務その他の役務
景品類非該当(by但書)
 ┗ⅰ)値引
 ┗ⅱ)アフターサービス
 ┗ⅲ)附属物

景表法2条3項の定義と同じ内容も書かれているので、一見同じように見えるが、1~4号が具体的に列挙されている点と、但書で値引等が景品類に該当しないとされている点が、新たに追加されている。

というわけで、つまるところ、「景品類」該当性の判定で検討すべき要件は、①~④までの4つである。

以下、順に見てみる。

さらに厳密に分節すれば実は6要件ほどに分節されますが、一般の法務実務ではそこまで必要ないように思われ、またかえってわかりにくため、本記事では4つにしています。

景品類の要件

①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益

景品類の定義については、消費者庁HPのQ&Aに、以下のような解説が掲載されている。

景品に関するQ&A【Q1】|消費者庁HP

Q1 景品表示法上の「景品類」の定義を教えてください。

A 景品表示法上の「景品類」については、同法第2条第3項において、
1 顧客を誘引するための手段として
2 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
3 取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
であって、内閣総理大臣が指定するものをいうと定義されています。

内閣総理大臣は、この規定に基づき、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号)において、法第2条第3項と同様に上記1~3のとおり規定した上で、具体的にどのようなものが「景品類」に当たるかを指定しています。
(続く)

要するに、定義告示上も、景表法2条3項とほぼ同じ内容(要件①~③)が改めて再言されているということである。

「経済上の利益」の具体例

先ほどのQ&Aの続きを見てみる。

内閣総理大臣は、この規定に基づき、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号)において、法第2条第3項と同様に上記1~3のとおり規定した上で、具体的にどのようなものが「景品類」に当たるかを指定しています。

その内容は次のとおりです。

物品及び土地、建物その他の工作物
金銭、金券、預金証書、当選金付き証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
便益、労務その他の役務
(続く)

このように、③の要件(経済上の利益)について、定義告示では、上記の4つが具体的に列挙されているが、意味合いとしては、通常、経済的対価を支払って取得するものすべてを含む趣旨である。

景表法のパンフレットで、以下のように解説されている。

▽事例でわかる景品表示法〔平成28年7月改訂〕(消費者庁)14頁

 事業者が、そのための特段の出費を要しないで提供できる物品や市販されていない物品等であっても、提供を受ける者の側からみて、通常、経済的対価を支払って取得すると認められるものは、「経済上の利益」に含まれます
 他方、経済的対価を支払って取得すると認められないもの(例:表彰状などのように相手方の名誉を表するもの)は、「経済上の利益」に含まれません

④景品類非該当(景品類に該当しない経済上の利益)

先ほどのQ&Aの続きを見てみる。

ただし、正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含まないこととされています。

ほぼ告示の文章そのままだが、ここには、以下の3つのカテゴリーが記載されている。

ⅰ)正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益(値引
ⅱ)正常な商慣習に照らしてアフターサービスと認められる経済上の利益(アフターサービス
ⅲ)正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益(附属物

意味合いとしては、①~③の要件を満たすものであっても、これらのカテゴリーのどれかに当たる経済上の利益は、景品類には含まれない(非該当)、ということである。

各要件の具体的解釈ー定義告示運用基準

①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益、④景品類非該当の各要件については、それぞれ、定義告示運用基準具体的な解釈が定められている。

要するに、景表法⇒定義告示⇒定義告示運用基準と進むに従って、ルールがより具体化されていくわけです。

定義告示運用基準では、以下のように、8項目に分けて、具体的な解釈が記載されている。各要件との関係を管理人的に整理すると、以下のとおりである。

景品類の要件(景表法、定義告示) 具体的解釈(定義告示運用基準)
①顧客誘引性 第1項(1「顧客を誘引するための手段として」について)
第2項(2「事業者」について)
②取引付随性 第3項(3「自己の供給する商品又は役務の取引」について)
第4項(4「取引に附随して」について)
③経済上の利益 第5項(5 「物品、金銭その他の経済上の利益」について)
④景品類非該当 第6項(6「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」について)
第7項(7「正常な商慣習に照らしてアフターサービスと認められる経済上の利益」について)
第8項(8「正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」について)

一般の法務実務で主に検討することになるのは、②取引付随性と④景品類非該当であると思うが、具体的な検討の際は、まずもって定義告示運用基準を見ていくことになる。

各要件の具体的な検討は、細かいので別記事に譲る。

景表法と定義告示と運用基準

改めて規制全体の構成を見ておくと、景品規制における「景品類」表示規制における「表示」という2つの基本的な概念については、景表法のほか、定義告示に定めがあり、定義告示運用基準に具体的解釈がある、という構成になっています。

表にすると以下のとおりです。

定義法律告示等
「景品類」の定義景表法2条3項定義告示第1項
(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)
定義告示運用基準
(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)
「表示」の定義景表法2条4項定義告示第第2項
(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)
定義告示運用基準
(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)

定義告示運用基準は、景品類の定義について書かれているようなので、表示の定義については関係ないのでは?と思うかもしれませんが、運用基準の第1項~第3項(「顧客を誘引するための手段として」「事業者」「自己の供給する商品又は役務の取引」)は表示の定義にも出てくる文言ですので、これらの項目については、表示の定義についても解釈として機能しています。

結び

今回は、景品表示法を勉強しようということで、景品類の定義について書いてみました。

本記事では景品類の定義と要件全体をざっと見てみました。本記事のハイライトをまとめます。

  • 景品類該当性の判定で検討すべき要件は、①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益、④景品類非該当、である
  • ①~③を満たすものであっても、④景品類非該当(景品類に該当しない経済上の利益)に当たれば、景品類には該当しない
  • ④景品類非該当には、ⅰ)値引、ⅱ)アフターサービス、ⅲ)附属物、がある
  • 各要件の具体的な解釈は、定義告示運用基準に記載されている

主要法令等

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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