今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、その他の禁止事項について見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
送信者情報を偽った送信の禁止(法5条)
まず、特定電子メールの送信にあたり、送信元アドレスのなりすましは禁止されている。
送信元アドレスをなりすましたり、表示しないようにPCのソフトで設定して送信した場合は、違法となる。
(送信者情報を偽った送信の禁止)
第五条 送信者は、電子メールの送受信のために用いられる情報のうち送信者に関するものであって次に掲げるもの(以下「送信者情報」という。)を偽って特定電子メールの送信をしてはならない。
一 当該電子メールの送信に用いた電子メールアドレス
二 当該電子メールの送信に用いた電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号
★ 送信者情報の例としては、送信に用いた電子メールアドレス、IPアドレス、ドメイン名など
悪質な迷惑メールの送信手法として、メールアドレスの改ざんや他人のPCを踏み台にして送信するなどの方法により送信者の情報を偽って送信し、受信者による対応や政府による取締りを困難にしているものがほとんどである。
これを踏まえ、広告宣伝メールを送信する際に、from欄のメールアドレスの詐称など、送信者情報を偽って送信することを禁止したものである(平成17年7月「最終報告書(案)」25頁参照▷掲載ページはこちら)。
本条の違反については、違反に対する措置として、措置命令のほか、直罰(措置命令を経ないで刑事罰が科される)もできるようになっている(法34条1号)。
ほかの義務違反は、措置命令が出されて、それにも違反した場合にはじめて刑事罰が科されるようになっています。
架空電子メールアドレスを宛先とする送信の禁止(法6条)
次に、自動生成プログラムを用いて作成した架空電子メールアドレスに宛てて、電子メールを送信することは禁止されている(法6条)。
(架空電子メールアドレスによる送信の禁止)
第六条 送信者は、自己又は他人の営業のために多数の電子メールの送信をする目的で、架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしてはならない。
★「電子メールの送信をしてはならない」とされており、本条は特定電子メールに限定されていない(=営利目的で送信される空メールや友人を装ったメールも含まれる)
「架空電子メールアドレス」とは、プログラムにより自動的に作成された電子メールアドレスであって、利用者がいないものである(法2条4号)。
四 架空電子メールアドレス 次のいずれにも該当する電子メールアドレスをいう。
イ 多数の電子メールアドレスを自動的に作成する機能を有するプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)を用いて作成したものであること。
ロ 現に電子メールアドレスとして利用する者がないものであること。
これは、大量に自動生成したアドレスに、広告宣伝メールを大量送信することで、(ほとんどはエラーメールになるが)そのなかに実在するメールアドレス宛てに送りつける行為である。
あるいは、空メールや友人を装ったメールなどを大量送信することで、(ほとんどはエラーメールになるが)そのなかに実在するメールアドレスを見つけるために行われる(平成17年7月「最終報告書(案)」24頁参照▷掲載ページはこちら)。
エラーメールにならないものを抽出すること、あるいは、実在するアドレスから返信を受けることにより、実在するメールアドレスを特定する。実在するメールアドレスを特定したら、これをリスト化して流通させたり、広告宣伝メールを送り付けるという後続の行為が続くものである。
このような架空電子メールアドレスを宛先とする送信を禁止している、ということである。
電気通信役務の提供の拒否(法11条)
電気通信事業者は、上記のように、送信者情報を偽った送信がされたり、一時に多数の架空電子メールアドレスに宛てた電子メールが送信されたりした場合には、その電子メール通信サービスの提供を拒むことができる。
(電気通信役務の提供の拒否)
第十一条 電気通信事業者は、送信者情報を偽った電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生じ、又はその利用者における電子メールの送受信上の支障を生ずるおそれがあると認められるとき、一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合には、当該支障を防止するために必要な範囲内において、当該支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。
簡略化しつつ分節すると、
○ 電気通信事業者は、
① 送信者情報を偽った電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生じ、又はその利用者における電子メールの送受信上の支障を生ずるおそれがあると認められるとき、
② 一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、
③ その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合には、
○ その支障を防止するために必要な範囲内において、その支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。
と記載されている。
なお、上記③のようにバスケット文言もあるので、実在するアドレスへの大量送信の場合であっても、「正当な理由があると認められるとき」に該当すれば役務の提供を拒否できる(平成17年7月「最終報告書(案)」31頁参照▷掲載ページはこちら)。
結び
今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、その他の禁止事項について見てみました。
迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。
▽総務省HP
-
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
www.soumu.go.jp
▽消費者庁HP
-
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)
www.caa.go.jp
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
参考文献・主要法令等
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主要法令等
- 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
- 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
- ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
- 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
- 平成17年改正法(平成17年法律第46号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成16年10月7日)~第9回会合(平成17年7月15日))
- 平成20年改正法(平成20年法律第54号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成19年7月24日)~第11回会合(平成20年8月28日))
- 事務局資料(平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局))(▷掲載ページはこちら)
関連団体
- 財団法人日本データ通信協会(※登録送信適正化機関)≫迷惑メール相談センター/特定電子メール法