迷惑メール防止法

迷惑メール防止法を勉強しよう|特定電子メールとは

著作者:wayhomestudio/出典:Freepik

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、特定電子メールの定義について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

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 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

特定電子メールとは

特定電子メール」とは、迷惑メール防止法において、規制の対象となる電子メールを指す用語である。

感覚的にいうと要するに広告宣伝メールであるが、定義は法2条2号に定められている。

 特定電子メール  電子メールの送信(国内にある電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)からの送信又は国内にある電気通信設備への送信に限る。以下同じ。)をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。

括弧書きが多くて読みにくいが、簡略化しつつ分節すると、

〇「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が、
〇「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする」
〇「電子メール」

である。

なお、広告宣伝メールの宛先は、特に限定されていない。個人の私的なメールアドレス宛ての送信だけでなく、事業用メールアドレス宛ての送信も規制対象となる(=個人事業主や、会社の従業員等にあてて送信される広告宣伝メールについても、迷惑メール防止法の規制は及ぶ)。

以下、順に見てみる。

「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」

送信者は、「営利を目的とする団体」または「営業を営む場合における個人」に限られる。

逆にいうと、非営利団体や、営業を営まない個人が送信する電子メールは、規制の対象外である。

「広告又は宣伝を行うための手段として」

まず、電子メールの内容自体が商品やサービスに関する情報を広告・宣伝するものである場合、「広告又は宣伝を行うための手段として」にあたることは明らかである。

また、「手段として」行われていればよいため、広告・宣伝等を行うページに誘導しようとする場合も、「広告又は宣伝を行うための手段として」に該当する。

例えば、

ア)営業上のサービス・商品等に関する情報を広告又は宣伝しようとするウェブサイトへ誘導することがその送信目的に含まれる電子メール
イ)SNS(Social Network Service)への招待や懸賞当選の通知、友達からのメールや会員制サイトでの他の会員からの連絡などを装って営業目的のウェブサイトへ誘導しようとする電子メール

なども、特定電子メールに該当するとされている(ガイドライン1-①-⑴)。

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 なお、「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」とされているので、他人の営業のために送信される広告宣伝メールも、規制の対象となります。

「電子メール」

電子メール」の定義は、法2条1号に定められている。

 電子メール 特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)であって、総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。

通信方式を定める省令は、以下である。いわゆるeメールだけではなく、電話番号による送受信(SMS)も「電子メール」に含まれる点に留意が必要である。

▽特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令

 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号の規定に基づき、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令を次のように定める。
 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の総務省令で定める通信方式は、次に掲げるものとする。
 その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式
 携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式

1号は、SMTP(シンプルメールトランスファープロトコル)を用いて、電子メールアドレスをあて先としてメッセージ等をやり取りする方式で、こちらがいわゆるeメールである。インターネット網のなかで送受信がされる。

これに加えて、2号に定められているように、携帯して使用する端末デバイス同士で電話番号によりメッセージを送受信するサービス(例えばショートメッセージサービス(SMS))も、「電子メール」に含まれている。こちらは、携帯電話網のなかで比較的短いメッセージの送受信がなされるものである。

政治活動・非営利活動等との関係

政治団体・宗教団体・NPO法人・労働組合等の非営利団体が送信する電子メールは、特定電子メールには該当しないとされている(ガイドライン1-①-⑵)。

上記のように、「特定電子メール」の定義として、主体に関しては営利性が、手段性に関しては広告宣伝性が、それぞれ求められているからである。

規制の対象者

迷惑メール防止法の規制の対象者は、電子メールの「送信者」と「送信委託者」である。

送信者

送信者」の定義は、冒頭で見た法2条2号のなかに出てきており、電子メールの送信をする者営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る)である。

▽法2条2号(抜粋)

電子メールの送信…(略)…をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)

もう少し実質的な解釈として、ガイドラインでは、電気通信としての電子メールを発信する操作の主体となる者(団体を含む)、と解釈されている(ガイドライン1-②)。

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 「送信」について、「国内にある電気通信設備…(略)…からの送信又は国内にある電気通信設備への送信に限る」とされているので(法2条2号括弧書き)、例えば、海外から送信され日本に着信する広告宣伝メールも、規制の対象となります。

送信委託者

送信委託者は、禁止事項や表示義務などの名宛人にはなっていないが、電子メールの送信に係る業務の一部を行った場合で、かつ送信委託者に帰責性が認められるときは、送信者とともに措置命令(法7条)を受ける場合がある。

送信委託者」の定義は、法3条1項本文のなかに出てきており、電子メールの送信を委託した者営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る)である。

▽法3条1項本文(抜粋)

送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)…

もう少し実質的な解釈として、ガイドラインでは、電子メールの送信に関し送信先や送信事項について一定の指示をしている者、と解釈されている(ガイドライン1-②)。

以上から、例えば、単に広告の依頼を行っているだけの者や、自らは電子メールを発信する操作をせずに他人に電子メール送信のためのシステムを提供しているだけのメール配信サービス事業者・配信ASP(Application Service Provider)事業者は、送信者や送信委託者には該当しない、とされている(ガイドライン1-②)。

結び

今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、特定電子メールの定義について見てみました。

迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。

▽総務省HP

総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策

www.soumu.go.jp

▽消費者庁HP

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法) | 消費者庁
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

www.caa.go.jp

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Govまたは該当資料に遷移します(▷掲載ページは総務省HP消費者庁HP
  • 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
  • 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
  • ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
  • 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
【法改正資料等】

関連団体

一般財産法人 日本データ通信協会(https://www.dekyo.or.jp/

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