今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制(同意がない場合の送信禁止)について見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
オプトイン規制(法3条1項1号)
特定電子メール(広告宣伝メール)は、原則として、あらかじめ送信の同意を得た者以外に対して送信してはならないとされています。
あらかじめメールの受信を承諾している者に対してのみ送信を認める方式、です。利用者が同意するかどうかを決める(inするかどうかを決める(=opt))ので、いわゆる”オプトイン(opt-in)方式"の規制と呼ばれます。
(特定電子メールの送信の制限)
第三条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
一 あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)に対し通知した者
二~四 (略)
オプトイン規制(同意がない場合の送信禁止)にはいくつかの例外がありますが、別の記事にしています(▷別記事はこちら)。
同意の取得
同意とは
ここでいう「同意」があるかどうかは、
- 通常の人間であれば広告・宣伝メールの送信が行われることが認識されるような形で説明等が行われていること
- 賛成の意思表示があったといえること
という観点から判断されます(ガイドライン2-①-⑴)。
つまり、①受信者の認識があったこと、②賛成の意思表示があったこと、という2つの要素が必要となっています。
同意とは、”他の者がある行為をすることについて賛成の意思を表示すること”と解されるので、ここでは、①受信者が広告・宣伝メールの送信が行われることを認識したうえで、②それについて賛成の意思を表示すること、が必要と考えられるためです。
同意の対象
同意の対象は、条文の文言上、特定電子メールの「送信をすること」です。
送信する電子メールの種類や内容についてまでは、法的義務とはされていません(ガイドライン2-①-⑴参照)。
ただ、これも文言上、「送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者…(略)…に対し通知した者」とされていることからすると、同意通知の相手方となる送信者または送信委託者が特定されており、その名称等が認識できることも必要です。
つまり、
同意(=認識・賛成)の対象 | 要否 |
---|---|
広告・宣伝メールが送信されること | 〇 |
送信される広告・宣伝メールの種類や内容 | ✕ |
同意通知の相手方(送信者または送信委託者)の名称等 | 〇 |
ということになります。
同意取得時の表示事項と表示方法
上記のような同意の内容からすると、同意の取得にあたっては、「広告・宣伝メールの送信が行われること」と「その送信を行う者が誰であるか」を認識できるように示す必要があります(表示事項)。
なお、送信される広告・宣伝メールの頻度が多い場合や、容量が大きい場合などは、受信者にとって負担が大きくなることが想定されますので、そのような内容も伝えることが推奨されています。
表示方法としては、通常の人間であれば認識できるような形でなければなりません。
例えば、
- 極めて小さい文字又は極めて目立たない色の文字で記載されている場合
- 約款や利用規約が長くウェブサイトを膨大にスクロールして、注意しないと認識できないような場所に記載されている場合
などのように、通常の受信者であればそれに気付くとは考えにくい場合は、受信者が認識できるように表示されているとはいえません。
また、
- 電子メールアドレスの登録時に、「関連サイトから広告・宣伝メールが送信される」旨の記載を行っている場合
もありますが、「関連サイト」「姉妹サイト」といった記載だけでは、広告・宣伝メールの送信者又は送信委託者を具体的に特定することができないので、適切に同意が取得されているとはいえません。
また、利用者の見落としを防ぐために、
- 最後の確認画面などにおいて、利用者に対して、広告・宣伝メールの送信について同意した状態となっていることや、送信される広告・宣伝メールのタイトル等を表示すること
が望ましいとされています(以上につき、ガイドライン2-①-⑵参照)。
同意の取得経路
第三者を通じた同意の取得
同意の取得経路としては、例えば、広告媒体事業者(メディア事業者)、プラットフォーム事業者、イベントの主催者といった第三者を通じて取得することも可能ですが、その場合、送信者・送信委託者を受信者が明確に認識できるように表示しておく必要があります。
実際の広告・宣伝メールは、その送信者・送信委託者の名前で送信されるためです。
例えば、
- 第三者を通じた同意の取得に際し、その第三者とは別の特定の送信者・送信委託者から広告・宣伝メールが送信される旨を表示していない場合
- そうした表示があったとしても、通常の利用者が認識できるようには表示していない場合
については、法律で定めている送信者・送信委託者に対する同意の通知には該当しません。
また、
- 第三者を通じた同意の取得の際に、同意の通知が同時に複数の送信者・送信委託者に対し行われることになる場合
については、それら複数の送信者・送信委託者を利用者が明確に認識できるように表示されていなければ、法律で定めている送信者・送信委託者に対する同意の通知には該当しません。
また、上記のような複数の同時同意があまりに多数にわたる場合、そもそも利用者が個々の送信者・送信委託者を認識しづらくなるため、正確に認識できる範囲にとどめることが推奨されています(以上につき、ガイドライン2-①-⑶参照)。
合併・事業承継等の場合
送信者・送信委託者の名称に変更があったにすぎない場合は、送信者・送信委託者の同一性に変更はありませんので(法人格は同一)、取得した同意は引き続き有効です。
送信者・送信委託者において合併や事業承継等があった場合も、特定電子メールの送信に関する権利義務を承継していれば(包括承継ないし有機的一体としての特定承継)、取得した同意は引き続き有効です。
ただ、受信者側としては、以後、広告・宣伝メールを受信する際、同意の通知をした送信者・送信委託者であるのかがわからなくなるおそれがあります。
そのため、上記のように名称の変更や合併・事業承継等があった場合には、事業者はその旨を通知して、受信者にその事実を認識させることが必要であるとされています(以上につき、ガイドライン2-①-⑷参照)。
同意の取得方式
シングルオプトインとダブルオプトイン
同意の取得方式として、シングルオプトインとダブルオプトインがあります。
ダブルオプトインとは、
- 利用者が、例えばメールマガジンや会員登録のために、メールアドレスを事業者に通知した後に【一段階目のオプトイン(いわゆる仮登録)】、
- 事業者がそのメールアドレス宛てに確認用URLを記載した確認メール(これには広告・宣伝内容を含めない)を送信し、利用者がそのURLをクリックしたり必要な情報を入力すると登録が完了する【二段階目のオプトイン(いわゆる本登録)】、
といった二段階の同意(オプトイン)を得る方式のことです。
これに対して、一段階目のオプトインだけで登録が完了する方式が、シングルオプトインです。
シングルオプトインだと、他人のメールアドレスを知っている第三者がその他人になりすまして登録することも可能になりますが、ダブルオプトインだと、こういった悪意のある第三者からの不正な登録などを防ぐことができます。
こういったなりすましの同意を防止する必要性が高い場合などは、ダブルオプトインによることが推奨されています。
また、ダブルオプトインより簡便な方法として、登録をした覚えがない場合は返信を求める旨の電子メール(これには広告・宣伝内容を含めない)を送付したうえで、受信者からの返信がない場合に限って広告・宣伝メールを送信する方法も挙げられています(以上につき、ガイドライン2-①-⑸参照)。
確認のために送信される電子メールの扱い
ひとつ注意点として、ダブルオプトインの途中で送信されてくる確認メールのような、同意の取得や確認のために送信される電子メールも、特定電子メールに該当します。
なぜかというと、最終的に広告・宣伝メールを送信するために送信されるものであるため、広告・宣伝を行うための手段として送信される特定電子メールにあたると考えられているためです。
なので、こういった同意の取得や確認のための電子メールも、オプトイン規制の例外要件(電子メールアドレスの通知(2号)や公表(4号)の要件)を満たすようになっているかなど、気をつける必要があります(以上につき、ガイドライン2-①-⑹参照)。
デフォルトオンとデフォルトオフ
また、特にウェブページで入力フォームを活用して同意を取得する場合、同意の取得方式として、デフォルトオンとデフォルトオフがありますが、デフォルトオフによることが推奨されています。
デフォルトオンは、同意する旨のチェックボックスにあらかじめチェックがされている場合、デフォルトオフは、あらかじめチェックがされていない場合のことです。
同意の有無は、前述のように、①通常の人間であれば広告・宣伝メールの送信が行われることが認識されるような形で説明等が行われているか、②賛成の意思表示があったといえるか、により判断されるので、一概にデフォルトオンかオフかで決まるものではありませんが、利用者の作為を要するデフォルトオフの方が、受信者の意思がより明確にされることは確かであるためです(以上につき、ガイドライン2-①-⑺参照)。
デフォルトオンでの注意事項
デフォルトオンで同意を取得する場合、利用者による作為がなかった場合には同意したことになるため、例えば、説明の記載や、チェックを外す機能として、
- チェックボックスのチェックを外さない場合には送信に同意したこととなる旨の記載や、チェックの外し方に関する記載を、利用者が容易に認識できるようにわかりやすく表示すること
- チェックボックスが複数ある場合には、一括で全てのチェックを外す機能を有していること
が推奨されています。
また、チェックボックスの表示場所として、利用者が通常容易に認識できる場所に設置することが望ましいとされています。例えば、
- 利用者の入力や閲覧が必要のない事項などが長く記載され、チェックボックスがその下部に設置されていて利用者が一覧できないような表示の場合
には、利用者がチェックボックスにチェックがされていることを容易に認識することはできないので、その同意の意思表示の有効性には疑問が持たれます。
このような場合は、画面上で利用者が通常容易に認識することができる場所において、画面の下部に広告・宣伝メールの送信に同意することとなるチェックボックスがある旨の注意文を、利用者が明確に認識できる文字の大きさ・色等により表示させるなどの工夫を行うべきとされています。
また、ブラウザ等での「戻る」操作の仕様として、
- 利用者がチェックを外して次の画面に進んだにもかかわらず、「戻る」ボタン等で前の画面に戻ると、チェックボックスに再度チェックがされている状態に戻っているような場合
もありますが、チェックボックスに再度チェックがされている状態であることを利用者が認識することを期待できるとは限らず、適正な同意の取得という観点からは望ましくないとされています(特に、チェックボックス以外の部分に対する利用者による操作の結果が引き継がれているような場合は、なおさら期待できない)(以上につき、ガイドライン2-①-⑻参照)。
結び
今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトイン規制(同意がない場合の送信禁止)について見てみました。
迷惑メール防止法については、総務省HPと、消費者庁HPに、それぞれ以下の解説ページがあります。
▽総務省HP
-
総務省|電気通信消費者情報コーナー|迷惑メール対策
www.soumu.go.jp
▽消費者庁HP
-
消費者庁|特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)
www.caa.go.jp
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
- 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
- ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
- 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
- 平成17年改正法(平成17年法律第46号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成16年10月7日)~第9回会合(平成17年7月15日))
- 平成20年改正法(平成20年法律第54号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成19年7月24日)~第11回会合(平成20年8月28日))
- 事務局資料(平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局))(▷掲載ページはこちら)
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