犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|ハイリスク取引時の確認事項

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、ハイリスク取引の際の確認事項について書いてみたいと思います。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線などは管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

ハイリスク取引とは

ハイリスク取引というのは、ひとことで言うと、マネー・ロンダリングに利用されるおそれが特に高い取引のことで、

①なりすましの疑いがある取引又は本人特定事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引

②特定国等に居住・所在している顧客等との取引

③外国PEPs(Politically Exposed Personsの略。重要な公的地位にある者、の意)との取引

である。

 

ハイリスク取引が何かについて、詳しくはこちらの記事に書いているので、本記事では割愛する。

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|ハイリスク取引とは

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ハイリスク取引の際の確認事項

ハイリスク取引のときは、厳格な顧客管理が必要とされ、具体的には、

〇取引時確認のうち本人特定事項と実質的支配者の確認を、より厳格な方法で行う

〇その取引が200万円を超える財産の移転を伴うものである場合には資産及び収入の状況の確認

をすることになっている。

 

ただ、これだけでは、まだいまひとつピンと来ないと思う。

 

この部分の説明で管理人的にわかりやすいと思うのは、犯収法のリーフレットに書いている文章である(「平成28年10月1日施行 改正犯罪収益移転防止法リーフレット」2枚目の右下の方)。ちなみに、リーフレットはJAFICのトップページの下の方に置いてある。

 

該当部分を引用する。

 

▽ 平成28年10月施行 改正犯罪収益移転防止法リーフレット

ハイリスク取引時の確認
マネー・ローンダリングのリスクの高い取引(ハイリスク取引※)を行う際には、改めて確認が必要です。
また、当該取引が200万円を超える財産の移転を伴う場合には、資産及び収入の状況の確認も必要です(司法書士等士業者を除く)。

 

改めて確認が必要」なのは何について?というと、本人特定事項などの取引時確認事項についてである。プラス、資産及び収入の状況も確認が必要とされている。

 

つまり、表にすると以下のようになる。

 

  確認事項 通常の取引時確認 ハイリスク取引時の取引時確認
顧客等に関するもの(A) ①顧客等の本人特定事項
②取引を行う目的
③職業(自然人)又は事業の内容(法人)
④実質的支配者
⑤資産及び収入の状況 ×
(200万円超の財産移転の場合)
代表者等に関するもの(B) ①代表者等の本人特定事項
②代表者等が取引の任に当たっていること

 

(A)①~④と(B)①②について、改めて確認が必要で、プラス、(A)⑤の資産及び収入の状況も確認が必要、ということである。

 

 

条文を見てみる

条文の方も確認してみたい。ハイリスク取引は法4条2項に定められていて、これが基本となる条文である。

 

条文のうち「特定業務のうち次の各号のいずれかに該当する取引」というのが、ハイリスク取引のことである。また、「前項各号に掲げる事項」というのが、表の(A)①~④のことで、「資産及び収入の状況」というのが、表の(A)⑤のことである。

 

▽法4条2項

(取引時確認等)
第四条 (略)
2 特定事業者は、顧客等との間で、特定業務のうち次の各号のいずれかに該当する取引を行うに際しては、主務省令で定めるところにより、当該顧客等について、前項各号に掲げる事項並びに当該取引がその価額が政令で定める額を超える財産の移転を伴う場合にあっては、資産及び収入の状況(第二条第二項第四十四号から第四十七号までに掲げる特定事業者にあっては、前項第一号に掲げる事項)の確認を行わなければならない。(以下略)
一 次のいずれかに該当する取引として政令で定めるもの
 イ 取引の相手方が、その取引に関連する他の取引の際に行われた前項若しくはこの項(これらの規定を第五項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第四項の規定による確認(ロにおいて「関連取引時確認」という。)に係る顧客等又は代表者等(第六項に規定する代表者等をいう。ロにおいて同じ。)になりすましている疑いがある場合における当該取引
 ロ 関連取引時確認が行われた際に当該関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等(その代表者等が当該事項を偽っていた疑いがある顧客等を含む。)との取引
二 特定取引のうち、犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域として政令で定めるもの(以下この号において「特定国等」という。)に居住し又は所在する顧客等との間におけるものその他特定国等に居住し又は所在する者に対する財産の移転を伴うもの
三 前二号に掲げるもののほか、犯罪による収益の移転防止のために厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引として政令で定めるもの
3~6 (略)

 

政令で定める額を超える財産の移転」、つまりこれを超えると資産及び収入の状況の確認が必要となる額は、施行令11条で「200万円」とされている。

 

▽施行令11条

(法第四条第二項に規定する政令で定める額)
第十一条 法第四条第二項に規定する政令で定める額は、二百万円とする。

 

ちなみに、表の(B)①②の根拠条文は、それぞれ、法4条4項と、施行規則12条5項である。

 

法4条4項のうち「第二項の規定による確認を行う場合」というのが、ハイリスク取引時の確認を行う場合、のことである。

 

▽法4条4項

(取引時確認等)
第四条 (略)
2~3 (略) 
4 特定事業者は、顧客等について第一項又は第二項の規定による確認を行う場合において、会社の代表者が当該会社のために当該特定事業者との間で第一項又は第二項前段に規定する取引(以下「特定取引等」という。)を行うときその他の当該特定事業者との間で現に特定取引等の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき(次項に規定する場合を除く。)は、当該顧客等の当該確認に加え、当該特定取引等の任に当たっている自然人についても、主務省令で定めるところにより、その者の本人特定事項の確認を行わなければならない。
5~6 (略)

 

▽施行規則12条5項

(代表者等の本人特定事項の確認方法)
第十二条 (略)
2~4 (略)
5 第一項の代表者等は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に該当することにより当該顧客等のために特定取引等の任に当たっていると認められる代表者等をいうものとする。
一 顧客等が自然人である場合 次のいずれかに該当すること。
 イ 当該代表者等が、当該顧客等の同居の親族又は法定代理人であること。
 ロ 当該代表者等が、当該顧客等が作成した委任状その他の当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることを証する書面を有していること。
 ハ 当該顧客等に電話をかけることその他これに類する方法により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが確認できること。
 ニ (略)
二 前号に掲げる場合以外の場合(顧客等が人格のない社団又は財団である場合を除く。) 次のいずれかに該当すること。
 イ 前号ロに掲げること。
 ロ 当該代表者等が、当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていること。
 ハ 当該顧客等の本店等若しくは営業所又は当該代表者等が所属すると認められる官公署に電話をかけることその他これに類する方法により当該代表者等が当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっていることが確認できること。
 ニ (略)

 

結び

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、ハイリスク取引時の確認事項について書いてみました。

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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