今回は、フリーランス法ということで、フリーランス法の適用範囲について見てみたいと思います。
本記事では基本に立ち返り、そもそもこの法律は、誰の、どんな取引に適用されるのかという適用範囲の全体像について整理していきます。
フリーランス法の適用範囲は、大きく適用対象となる事業者と適用対象となる取引の2つに分けることができます(※この点は、取適法も同様です)。さらに、適用対象となる取引には、取引の内容(類型)と業務委託の期間という2つの要素があります。自分(自社)があてはまるかどうか、わかりやすく解説していきますので、一緒にチェックしていきましょう。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
適用対象となる事業者:誰と誰の取引が対象なのか
まず、フリーランス法は仕事を依頼する側(発注事業者)と受ける側(フリーランス)が、それぞれ以下の定義にあてはまる場合に適用されます。
受託側:「特定受託事業者」(フリーランス)
業務委託を受ける事業者で、以下のどちらかにあてはまる人(フリーランス)が対象です。
- 個人の場合:従業員を使用していないこと
- 法人の場合:代表者以外に役員がおらず、かつ、従業員を使用していないこと(いわゆる一人社長)
ここでの「従業員を使用」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者を雇うことを指します。単発のアルバイトや、同居の親族だけを手伝わせている場合は「従業員を使用」にはならず、フリーランスとして守られます。
発注側:「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」(2つの区分)
発注事業者は、従業員を使っているかどうかで2つに分けられ、守るべきルールの範囲が変わります。
- 業務委託事業者:フリーランスに業務委託をするすべての事業者(フリーランスが発注側になる場合も含まれます)
→このカテゴリーには、取引条件の明示義務(3条通知)のみが課せられています。つまり、フリーランス同士の取引でも、条件の明示は必須です - 特定業務委託事業者:業務委託事業者のうち、従業員(または他の役員)がいる者(従業員を使用している企業や個人事業主)
→フリーランス法のすべてのルールを守る義務があります(※別途、業務委託期間の要件を満たす場合)

メインとなる適用対象は特定業務委託事業者の方で、簡単にいうと、従業員を使用している(または他の役員がいる)業務委託事業者、ということです。一般的な企業や、スタッフを雇っている個人事業主などはすべてこちらに該当します。
他方、発注側もフリーランスである場合は「特定業務委託事業者」にはあたりませんが、「業務委託事業者」にはなりますので、取引条件の明示義務(3条通知)は守る必要があります。
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フリーランス法|誰が対象?適用対象となる事業者を解説~特定受託事業者・特定業務委託事業者など
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適用対象となる取引
01|取引の内容(業務委託の類型)
次に、どんな取引(業務委託)が対象になるのかを見ていきましょう。
まず前提ですが、フリーランス法が適用されるのは、事業者がその事業のために他の事業者に業務を委託する取引、つまり事業者間の取引(B to B)です。そのため、一般の消費者から個人的に依頼される仕事(B to C)は、本法の対象外となります。
対象となる業務委託は、大きく以下の3つの類型に分けられています。
- 物品の製造・加工委託:
規格やデザインなどを指定して、物品(動産)の製造や加工を委託すること - 情報成果物の作成委託:
ソフトウェア、映像コンテンツ、デザイン、ライティングなどの作成を委託すること - 役務(サービス)の提供委託:
運送、コンサルティング、イベント司会など、役務の提供を委託すること- 発注者が他者に提供するサービスの委託(つまり再委託)だけでなく、自社の社員向け研修のように発注者自身が使うサービス(自家利用役務)を外注する場合も対象になります
フリーランス法には業種の限定がないため、この3つのどれかにあてはまるB to Bの仕事であれば、広く対象となります。
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フリーランス法|どんな仕事が対象?法律が適用される「業務委託の類型」を解説
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02|業務委託の期間
フリーランス法では、取引の期間が長くなるほど、発注者が守るべきルールも厳しくなるという仕組みになっています。期間の長さによって、以下の3段階に分かれています。
レベル1:期間に関係なくすべての業務委託に適用
たとえ1日だけの単発の仕事であっても適用される基本ルールです。
- 取引条件の明示義務
- 期日における報酬支払義務(原則60日以内)
- 募集情報の的確表示義務
- ハラスメント対策に係る体制整備義務
レベル2:1か月以上の業務委託に適用
期間が1か月以上になると、発注者の強い立場を利用した不当な扱いを防ぐため、以下の7つの禁止行為が追加されます。
- 7つの禁止行為:
受領拒否の禁止、報酬の減額の禁止、返品の禁止、買いたたきの禁止、購入・利用強制の禁止、不当な経済上の利益の提供要請の禁止、不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
レベル3:6か月以上の業務委託に適用
期間が半年以上に及ぶと、さらに手厚い保護ルールが追加されます。
- 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(※6か月未満は努力義務)
- 中途解除等の事前予告・理由開示義務(打ち切りの30日前までに予告)
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フリーランス法|期間が長いほどルールが増える?法律が適用される「業務委託の期間」を解説
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結び
フリーランス法の適用範囲は、以下の掛け合わせで決まります。
自分が受けている仕事は対象になるのか(フリーランス側)、自社が発注する際はどのルールを守るべきか(発注者側)、これらを正しく把握することが、適正な取引の第一歩です。ぜひご自身の契約内容と照らし合わせて、チェックしてみてくださいね。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文)
- 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
- 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ)
- 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
- フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ)
参考資料
- フリーランス法パンフレット(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
- 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
参考文献
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室)
- 実務逐条解説 フリーランス・事業者間取引適正化等法(那須勇太、益原大亮 編著)
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