商標法

商標法を勉強しよう|類似性の判断

著作者:Freepik

今回は、商標法を勉強しようということで、類似性の判断について書いてみたいと思います。

一般法務では、先願登録商標と類似する商標は登録できない(拒絶される)ということで出くわす場面が最も多いかと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

類似性の判断

結論からいうと、商標法でいう類似性には「商標の類似」と「商品・役務の類似」の2つがあり、この両方ともが類似となってはじめて類似性肯定ということになります。

つまり、

商標の類似」+「商品・役務の類似」=類似性肯定

というイメージです。

類似性というと、名称なりロゴなりメロディーなりの、登録商標とされているマークと類似しているかどうかの問題でしょ?と思いがちですが、実は、登録時にその商標を使用するものとして指定している商品・役務とも類似でなければなりません。

単に名称等が似ているだけというでは、問題とされているものには引っ掛からないということです。

memo

 管理人が考えた適当な例ですが、例えば、「ポンペケポコペン」と商標登録している高級鞄ブランドがあったとして、普通は生鮮食品を指定商品にはしていないと思います。

 指定していなければ商標権の権利範囲にはなっていませんので、八百屋さんで「ポンペケコペン」という類似の名称を付して高級トマトを販売しても商標権侵害にはなりませんし、「ポンペケコペン」という類似の商標で出願しても、指定商品が生鮮食品(野菜)ならば、登録できる可能性はあるということです(同一名称でも同じです)。

 実質的根拠としては、商標は類似していても使用商品が全く別物であった場合は出所の混同が起こらないので、そのような場合は問題ないということです。

商標権は元々「マーク」の部分と「指定商品・指定役務」の2つから構成されていますが(以下の関連記事参照)、類似性も、その構成に応じて2つがあるわけです。

商標権は、マークだけを登録するわけではなく、「マーク」+「使用する商品・サービス(=指定商品・指定役務)のセットで登録されます。

▷関連記事:商標法を勉強しよう|商標権とは-商標権の構成

具体的な判断基準としては、商標の類似性は「商標審査基準」、商品・役務の類似性は「類似商品・役務審査基準」によって判断されます。どちらも特許庁HPに掲載されています。

まとめると、以下のようなイメージです。

類似性の判断
 ┗ 商標の類似性 ←「商標審査基準」により判断
 ┗ 商品・役務の類似性 ←「類似商品・役務審査基準」により判断

類似性が問題となる場面

類似性が問題になる場面は多数ありますが、一般法務で問題となる場面は、出願のとき商標権侵害のときの2つだろうと思います。

要するに、

  • 出願の場面:他人の登録済み商標と類似する商標の出願は登録できない(=拒絶査定
  • 商標権侵害の場面:他人の登録済み商標と類似する商標を使用したら商標権侵害になる

という場面です。

以下、この2つの場面について、実際に「商標の類似」と「商品・役務の類似」の両方が問題になっていることを見てみます。

出願の場面

これは、商標の登録要件のうち不登録事由(=これに該当すると商標登録を受けることができない)とされているものです(商標法4条1項)。

他人の登録済み商標と類似する商標は登録できないことになっています(11号)。

▽商標法4条1項11号

(商標登録を受けることができない商標)
第四条
 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

分節して読んでみると、

商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標
 であって、
商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務
 について使用をするもの

は商標登録を受けることができない、と書かれています。

前半部分は「他人の登録商標と同一又は類似」といっており、後半部分は「その他人の登録している指定商品指定役務と同一又は類似」といっています。

このように、「商標の類似」と「商品・役務の類似」の両方が問題になっていることがわかります。

商標権侵害の場面

これは、商標権侵害の要件のひとつになります(商標法37条1項)。

▽商標法37条1項

(侵害とみなす行為)
第三十七条
 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

これも分節して読んでみると、「又は」が大きい接続になりますので、まずはそこで区切って、それから小さい接続である「若しくは」の区切りを考えればよいです。

すると、

指定商品若しくは指定役務についての × 登録商標に類似する商標の使用(①)
 又は
指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての × 登録商標の使用(②) 若しくは 類似する商標の使用(③)

のようになっています。

まだわかりにくいので表にしてみると、以下のようになっています。

【商標権の侵害とみなす行為】

商標が同一商標が類似
商品・役務が同一
商品・役務が類似

表にするとこれだけのことですが(①~③の部分。要するに「ー」の部分を抜くように書いている)、文字で書くと中々ややこしくなります。

ちなみに、表の「ー」の部分は、別の条文(専用権。商標法25条)で埋められるようになっています

とりあえず、本記事の関係では、「商標の類似」と「商品・役務の類似」の両方が問題になっていることが見てとれればと思います。

結び

今回は、商標法を勉強しようということで、類似性の判断について書いてみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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