今回は、フリーランス法ということで、適用対象取引のうち業務委託の期間について見てみたいと思います。
前の記事では、フリーランス法の対象となる業務委託の3つの類型(物品・情報成果物・役務)について解説しました。続きとなる本記事では、もう一つの適用要件である業務委託の期間について解説していきます。
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フリーランス法|どんな仕事が対象?法律が適用される「業務委託の類型」を解説
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フリーランス法では、取引の期間が長くなればなるほど、発注者が守るべきルール(義務や禁止行為)も厳しくなるという段階的な仕組みが採用されています。具体的に、どのくらいの期間でどんなルールが適用されるのか、そして期間の正しい数え方はどうなっているのか、一緒に確認していきましょう。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
発注者が守るべき3段階の義務
フリーランス法において特定業務委託事業者(従業員を使用する発注事業者)が守るべきルールは、業務委託の期間によって以下の3段階に分かれています。
レベル1:期間に関係なくすべての業務委託に適用
たとえ1日だけの単発の仕事であっても、必ず守らなければならない基本ルールです。
- 取引条件の明示義務(書面やメール等で条件を伝える)
- 期日における報酬支払義務(納品から60日以内に支払う)
- 募集情報の的確表示義務(ウソの求人を出さない)
- ハラスメント対策に係る体制整備義務(相談窓口を作るなど)
レベル2:1か月以上の業務委託に適用
期間が1か月以上になると、発注者の強い立場を利用した不当な扱いを防ぐため、以下の7つの禁止行為が追加で適用されます(法5条)。
- ①受領拒否の禁止、②報酬の減額の禁止、③返品の禁止、④買いたたきの禁止、⑤購入・利用強制の禁止、⑥不当な経済上の利益の提供要請の禁止、⑦不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
▽フルーランス法5条
(特定業務委託事業者の遵守事項)
第五条 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。
一~五 (略)
2 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。
一~二 (略)
▽フリーランス法施行令1条
(法第五条第一項の政令で定める期間)
第一条 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第五条第一項の政令で定める期間は、一月とする。
レベル3:6か月以上の業務委託に適用
期間が半年以上にも及ぶと、フリーランスの生活や働き方に深く関わってくるため、さらに手厚い保護ルールが追加されます。
- 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(※6か月未満の場合は努力義務となります)
- 中途解除等の事前予告・理由開示義務(契約を打ち切るなら30日前までに予告する)
つまり、就業環境整備に関する義務のうち、育児介護等と業務の両立に対する配慮(法13条1項)と、中途解除等の事前予告・理由開示(法16条1項)については、業務委託の期間が6か月以上の場合に適用があります。
この場合、継続的業務委託という略称がついています。
▽フリーランス法13条1項
(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)
第十三条 特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下この条において「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。
▽フリーランス法16条1項
(解除等の予告)
第十六条 特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
▽フリーランス法施行令3条
(法第十三条第一項の政令で定める期間)
第三条 法第十三条第一項の政令で定める期間は、六月とする。
まとめ
特定業務委託事業者以外も含めて表にまとめてみると、以下のようになります。
フリーランス法の義務と適用場面
| 特定業務委託事業者以外 | 特定業務委託事業者 | ||||
| 期間に無関係 | 1か月以上 | 6か月以上 | |||
| 取引適正化に関する義務 | ①取引条件の明示 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| ②報酬支払期日の設定/期日内の支払い | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| ③7つの禁止行為 | 〇 | 〇 | |||
| 就業環境整備に関する義務 | ④募集情報の的確表示 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| ⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 〇 | ||||
| ⑥ハラスメント対策に係る体制整備 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| ⑦中途解除等の事前予告・理由開示 | 〇 | ||||
(※)上記のほか、報復措置の禁止は、取引適正化の義務につき業務委託事業者に適用(法6条3項)、就業環境整備の義務につき特定業務委託事業者に適用(法17条3項)
始期と終期の考え方
では、この期間はいつからいつまでをカウントするのでしょうか。これには、解釈ガイドライン上の基準があります。
更新のある・なしで、大きく2パターンに分かれています。
単一の契約の場合
基本的な考え方は、契約の締結日から、契約の終了日(納期日or別途定められた契約終了日のいずれか遅い日)までです。
- 始期:業務委託に係る契約を締結した日
=3条通知で明示する「業務委託をした日」 - 終期:業務委託に係る契約が終了する日
=3条通知で明示する「給付を受領する期日」(いわゆる納期)か、別途定めた「業務委託に係る契約の終了日」(納期と別に契約終了日が定められている場合)のうち、どちらか遅い方の日
ポイントは、実際の納品日がズレても期間は変わらないということです。終期は、あくまでも、納期(納品予定日)または別途定められた契約終了日という予定日で判断します。そのため、フリーランスの作業が遅れて実際の納品日が予定より後になったとしても、あるいは逆に早く納品が終わったとしても、法律上の「業務委託の期間」が延びたり縮んだりすることはありません。
また、契約が終了する日を定めなかった場合は、1か月(または6か月)以上の期間と扱うとされています。
以上につき、解釈ガイドラインを確認してみます。単一というのは、後述のような契約の更新にあたるものがないという意味です。
▽解釈ガイドライン 第2部-第2-2-⑴-ア
(ア) 始期
単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の始期は、次の日のいずれか早い日である。
① 業務委託に係る契約を締結した日(3条通知により明示する「業務委託をした日」)
② 基本契約を締結する場合には、基本契約を締結した日
(イ) 終期
単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の終期は、業務委託に係る契約が終了する日又は基本契約が終了する日のいずれか遅い日であり、具体的には次の日のいずれか遅い日である。
なお、実際に給付を受領した日が、3条通知により明示する期日等よりも前倒し又は後ろ倒しとなることがあるが、これによって終期は変動しない。
① 3条通知により明示する「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日」(ただし、期間を定めるものにあっては、当該期間の最終日)
② 特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合には同日
③ 基本契約を締結する場合には、当該基本契約が終了する日
例えば、基本契約がある場合、基本契約の期間が個別契約の期間を包むような関係になっている場合が多いかと思いますが、そのような場合は、以下のように始期・終期とも基本契約のそれとして業務委託期間がカウントされます。
▽フリーランス法Q&A【Q60】
特定業務委託事業者は、特定受託事業者との間で、2か月間有効となる基本契約を締結し、その2週間後に、給付を受領する期日を業務委託の日から10日後とする個別の業務委託を行いました。この場合、当該個別の業務委託は、1か月以上の期間行う業務委託に該当するのでしょうか。
上記の事例において、個別の業務委託を行うより早く基本契約を締結しているため、業務委託の期間の計算に当たっての始期は、当該基本契約を締結した日となります。そして、当該個別の業務委託の給付を受領する日より後に基本契約の終了日が到来するため、当該業務委託の期間の計算に当たっての終期は、当該基本契約が終了する日となります。
当該基本契約を締結した日から終了する日までの期間は、1か月以上となりますので、当該個別の業務委託は、1か月以上の期間行う業務委託に該当します。
(以下略)
更新により継続して行うこととなる場合
たとえ1回の契約期間が短くても、契約を更新して継続して行う場合は、通算した期間で判断されます(つまり、最初の業務委託等の始期から、最後の業務委託等の終期まで)。
業務委託期間を通算すると1か月(または6か月)以上継続して行うこととなる場合は、更新後の業務委託が適用対象となります。
▽解釈ガイドライン 第2部-第2-2-⑴-イ
イ 契約の更新により継続して行うこととなる場合
特定業務委託事業者が、特定受託事業者に対して複数の業務委託を連続して行うことが契約の更新により継続して行うこととなる場合に該当し、業務委託を通算して1か月以上継続して行うこととなる場合は、更新後の業務委託は本条の対象となる。
契約の更新とみなされるには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります。
①契約の同一性があること
契約の同一性は、「契約当事者の同一性」と「給付内容の同一性」から判断します。
契約当事者の同一性は、法人の場合は、法人単位で判断されます。
例えば、近接した時期に同じグループ会社の別の会社が業務委託するときであっても、同一の法人ではないため、契約当事者の同一性は否定されます(フリーランス法Q&A【Q64】参照)。
給付内容の同一性の判断にあたっては、機能、効用、態様などを考慮要素として判断し 、その際は、原則として日本標準産業分類の小分類(3桁分類)を参照するとされています。つまり、日本標準産業分類の小分類(3桁分類)が同じかどうかで判断されます。
日本標準産業分類-統計基準等|総務省HP
例えば、同じフリーランスに「データベースの設計」を依頼した後、次に「サーバーの運用・保守」を依頼した場合、どちらも同じ分類(インターネット附随サービス業)になるため、同一性があるとみなされます。
▽フリーランス法Q&A【Q66】
「給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有する」と認められる事例は、例えばどういったものがあるのでしょうか。
例えば、以下のような事例が挙げられます。
<一定程度の同一性を有すると考えられる例>
- レコード会社がフリーランスに歌手Aの楽曲Xの編曲を委託し、その後、歌手Bの楽曲Yの編曲を委託する(日本標準産業分類では、いずれも「412 音声情報制作業」に該当すると考えられます。)。
- 宿泊サービス会社がフリーランスにサーバーの設計を委託し、完成後、改めてそのサーバーの運用・保守を委託する(日本標準産業分類では、いずれも「401 インターネット附随サービス業」に該当すると考えられます。)。
- 工務店がフリーランスに対し、現場Aのとび工事について委託し、その後、別の現場Bの土工工事について委託する(日本標準産業分類では、いずれも「072 とび・土工・コンクリート工事業」に該当すると考えられます。)。
- 人材派遣会社がフリーランスに対し、給与計算・経理業務を委託し、契約期間終了後に、総務業務を委託する(日本標準産業分類では、いずれも「920 管理、補助的経済活動を行う事業所」に該当すると考えられます。)。
- 小売業者がフリーランスに対し、経営コンサルタントとしての業務を委託し、契約終了後に、人事コンサルタントとしての業務を委託する(日本標準産業分類では、いずれも「728 経営コンサルタント業、純粋持株会社」に該当すると考えられます。)。
②空白期間が1か月未満であること
空白期間の始期は、前の業務委託等(業務委託又は基本契約)に関する終期(※)の翌日であり、空白期間の終期は、次の業務委託等に関する始期の前日となっています。
(※)の部分の「終期」は、実際の受領が給付受領予定日よりも遅かった場合は、その実際の受領日も含めて、最も遅い日を判断します
この間が1か月未満であれば、更新に該当します。
▽フリーランス法Q&A【Q70】
例えば、特定業務委託事業者が、特定受託事業者に対して、4月1日から6月10日までを契約期間とする1回目の業務委託をし、実際には6月15日に給付を受領した後、新たに6月21日から10月31日までを契約期間とする2回目の業務委託をした場合、この2つの業務委託の間の空白期間は、どのように計算すればよいでしょうか。
…(略)…。
上記の事例において、空白期間は、6月16日(実際に給付を受領した日である6月15日の翌日)から、6月20日(次の業務委託に係る契約を締結した日の前日)までの5日間となります。
上記のQ&Aは、実際の受領が納期や契約終了日よりも遅かった場合であり、実際の受領日も含めて判断すると、最も遅い日は実際の受領日となります。そのため、実際の受領日が「前の業務委託等に関する終期」であり、その翌日が、「空白期間の始期」となっています。
なお、更新により通算される場合の業務委託期間は、最初の業務委託等の始期から、最後の業務委託等の終期までとなります。つまり、空白期間も含まれます。
▽フリーランス法Q&A【Q71】
契約の更新により継続して行うこととなる業務委託の期間について、前の業務委託に係る契約又は基本契約が終了した日の翌日から、次の業務委託に係る契約又は基本契約を締結した日の前日までの期間の日数(空白期間)を含めて計算するのでしょうか。
契約の更新により継続して行うこととなる業務委託の期間は、空白期間を含めた始期から終期までの間をいいます。
(以下略)
結び
フリーランス法の適用対象となる業務委託の期間のポイントをまとめます。
「業務委託の期間」のポイント
- 期間が長くなるにつれて、発注者が守るべきルールが厳しくなる(1か月以上、6か月以上が分かれ道)
- 期間のカウントは、実際の作業日数や納品日ではなく、契約上の締結日と予定日(終了日)で決まる
- 単発契約でも、同じような仕事を1か月未満の間隔で更新していれば、期間は通算される
自分が結んでいる契約がどのレベルにあてはまるのかを正しく把握することは、フリーランスが自らの身を守るためにも、発注者が法律違反とならないためにも、ともに重要です。必要に応じて、ご自身の契約書や発注書を見直して、期間の要件をチェックしてみてください。
次の記事は、取引適正化に関する遵守事項のひとつめ、取引条件の明示(3条通知)についてです。
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フリーランス法|取引適正化に関する義務-取引条件の明示義務
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文)
- 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
- 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ)
- 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
- フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ)
参考資料
参考文献
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室)
- 実務逐条解説 フリーランス・事業者間取引適正化等法(那須勇太、益原大亮 編著)
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