広告法務

No.1表示の適法要件①ー客観的な調査

著作者:ijeab/出典:Freepik

今回は、広告法務ということで、No.1表示の適法要件のうち「客観的な調査」について書いてみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

No.1表示の適法要件

No.1表示が不当表示とならないための要件は、以下の2つとされています。

  • No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
  • 調査結果を正確かつ適正に引用していること

本記事では、このうち要件①の「客観的な調査」について見てみます。

イメージとしては、こういう感じです。

これが要件とされているのはどういうことなのかを、感覚的にわかりやすくいうと、

結論ありきの恣意的な調査が行われる場合

がありますが、それはNGですよ、ということです。

参照すべき資料

No.1表示についての広告ルールは、公正取引委員会からリリースされている以下の実態調査報告書に記載されています(本記事では「No.1表示報告書」と略)。

客観的な調査とは

では、「客観的な調査」とはどういうものか?というと、以下の2つが挙げられています。

⑴ 当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること
又は
⑵ 社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

つまり、その専門分野で一般的に認められた方法か、社会通念上妥当な方法でやりなさい、ということです。

原文も確認してみます。

▽「No.1表示報告書」7頁

⑴ 客観的な調査
ア 客観的な調査といえるためには、①当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること、又は、②社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていることが必要であり、これらを満たさない場合には、No.1表示の根拠の客観性・信頼性を欠き、景品表示法上問題となるおそれがある。

社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法

とはいえ、専門的に確立された方法がない場合も多いと思うので、実際には、「社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法」が気になることの方が多いのではないかと思います。

では、「社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法」とはどういうものか?というと、この点については、

  • 表示の内容商品等の特性関連分野の専門家が妥当と判断するか否かなどを総合的に勘案して判断する

とされており、総合判断となっています。

総合判断なので、自ずとグレーな領域は残ることになります。

客観的な調査と認められない例

これだけではよくわかりませんが、No.1表示報告書では、例として、顧客満足度調査を取り上げて、以下のように、客観的な調査といえない場合が挙げられていて、参考になります。

<客観的な調査といえない場合>

(a) 調査対象者が関係者であったり無作為に抽出されていない
 →【無作為抽出】が必要
(b) 調査対象者の数が統計的に不十分
 →【母数の確保】が必要
(c) 調査項目が恣意的に設定されている
 →【調査方法の公平性】が必要

原文も確認してみます。

▽「No.1表示報告書」7頁

イ 例えば、「顧客満足度No.1」と表示する広告は、収集した広告物の中でも比較的多数であるが(全体の15.2%)、この中には、どのような手法の調査を行ったのか必ずしも明確ではないものもあるところ、以下のような場合には、客観的な調査とはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある。

① 顧客満足度調査の調査対象者が自社の社員や関係者である場合又は調査対象者を自社に有利になるように選定するなど無作為に抽出されていない場合

② 調査対象者数が統計的に客観性が十分確保されるほど多くない場合

③ 自社に有利になるような調査項目を設定するなど調査方法の公平性を欠く場合

非公正な「No.1調査」への抗議状(JMRA)

もう少し具体的に、「客観的な調査」というのが何なのかを見てみます。

日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)は、ざっくりいうと調査会社の業界団体ですが、No.1を謳うために結果ありきの調査を誘導する姿勢に抗議するために、「非公正な『No.1 調査』への抗議状」(2022年1月18日)という声明を発表しています。

非公正な『No.1 調査』への抗議状(▷掲載ページはこちら

 …しかしながら、「No.1 調査」を請け負う事業者やこれらをあっせんする事業者の中には、「No.1 を取れる自信がないが、相談に乗ってもらえるのか」、「No.1 表記を行いたいが、どの条件であればNo.1 の獲得ができるのか相談したい」といった顧客をターゲットとして、あたかも「No.1 を取得させる」という「結論先にありき」で、調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査の実施をうかがわせる者が散見されます。
 このような「No.1 を取得させる」という「結論先にありき」で、調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査は、マーケティング・リサーチ綱領に違反し、「市場調査」に対する社会的信頼を損なうものであるため、当協会としては到底看過できません。…

この声明を読むと、No.1表示報告書でいう「客観的な調査とはいえない場合」がどういう感じなのか、イメージがよりクリアになるように思います。

事業部門の人とのよくあるやり取りは、

✓とりあえず「法務チェックよろ!」
 →根拠あるんですか?

✓「調査会社に頼めばいいんですよね?」
 →合理的な根拠があるかどうかが問題なので、ちゃんとした調査会社に頼みましょう(結論ありきの調査だと意味がないです)

という感じですね(管理人の個人的感覚)。

No.1表示報告書やJMRAの声明などに、いろいろ書かれていますが、考えてみれば、どれも常識的な内容だと思います。

それをあえて強調しなければならないほど、事業者にはNo.1表示への誘引が強く働く、ということなのでしょうが。

結び

今回は、広告法務ということで、No.1表示の適法要件のうち「客観的な調査」について見てみました。

JMRAの声明なども併せて見ると、「客観的な調査」が要件とされていることの感覚、イメージづくりがしやすいように思います(そもそも常識的な内容ともいえますが)。

本記事のハイライトをまとめます。

本記事のまとめ

  • No.1表示の適法要件の1つめは、「客観的な調査」に基づいていること
  • 客観的な調査といえるためには、その専門分野で一般的に認められた方法か、社会通念上妥当な方法による必要がある
  • 社会通念上妥当な方法は総合判断であり、グレーゾーンは残る
  • 例えば、顧客満足度調査であれば、(a)無作為抽出、(b)母数の確保、(c)調査項目など調査方法の公平性は、客観的な調査といえるために必要である
  • 要するに、結論ありきの恣意的な調査ではダメですよ、ということを言っている

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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