広告法務

No.1表示と最上級表現

著作者:macrovector/出典:Freepik

今回は、広告法務ということで、No.1表示と関連するトピックである最上級表現について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

最上級表現とは

最良性・絶対性・唯一性などを示す表現は、「No.1」表示(one(数値)、topを意味する表現)だけではなく、例えば、以下のようなものが広告にはたくさんあります。

<例>
「最高級」「最高峰」「最強」(best)
「日本初」「業界初」「最初」「元祖」(first)
「唯一」「当社だけ」(only)
「完全」「完璧」(perfect)

“最上級表現”という言い方や定義がはっきり決まっているわけではないですが、No.1表示も含めておよそこういった表現について、最上級表現とか、最優良表現とか、絶対的表現とか言ったりします。

本記事では、まとめて「最上級表現」と呼ぶことにしたいと思います。

No.1表示報告書によれば、No.1表示が不当表示とならないための要件は、

  • No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
  • 調査結果を正確かつ適正に引用していること

とされていますが、では、最上級表現に関しての広告ルールは?というのが本記事のテーマになります。

No.1表示の広告ルールは、平成20年6月13日に公正取引委員会からリリースされている「No.1表示に関する実態調査報告書」に記載されています。

No.1表示についてまず参照すべき資料は、これになります。

公正取引委員会事務総局「No.1表示に関する実態調査報告書」(平成20年6月13日)
(掲載ページはこちら

No.1表示報告書における「No.1表示」の定義

No.1表示報告書での「No.1表示」の定義を見ると、最上級表現まで含むものかは、一見はっきりしません。

▽No.1表示報告書1頁

 なお、本調査の対象とした表示とは事業者が自ら供給する商品等について、他の競争事業者との比較において優良性・有利性を示すために「No.1」、「第1位」、「トップ」、「日本一」などと表示するものであり、本調査では、このような表示を「No.1表示」と定義している。

なので、No.1表示報告書での議論が、最上級表現全般に関して適用されるのかは明らかではないですが、事柄の性質上、同じ議論があてはまるものがほとんどであるはずなので、基本的には同様の扱いと考えた方が良いように思われます。

管理人の私見ですが、例えば、「業界初」(first)、「当社だけ」(only)、「完璧」(perfect)などを念頭にNo.1表示報告書を読むと、多少違和感もあるかな…という感じはします。

参考:用語の範囲や問題意識

 「最上級表現」という用語が指し示す範囲や問題意識については、例えば、健康増進法上の留意事項の中に以下のような記載があり、参考になります。
 ※直接には、景品表示法上の不当表示の話ではなく、健康増進法上の虚偽誇大表示等の話ですので、ご注意ください

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 第4-2-⑷(▷掲載ページはこちら

⑷ 最上級又はこれに類する表現を用いている場合
 通常、健康の保持増進の効果は、個々人の健康状態や生活習慣等多くの要因により異なっており、現存する製品など一定の範囲の中で最高の効果を発揮することは立証できない。したがって、「最高級」、「最高レベル」、「日本一」、「ベスト」といった最上級の表現を用いる広告等は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。また、「絶対」、「誰でも簡単に」等の表現を用いて、どのような場合でも必ず効果があると一般消費者に認識される表示についても、最上級を用いた表示と同様、客観的に立証することが困難であるため、虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。
 また、健康食品の広告等において、例えば「ダイエット部門売上 No.1」、「顧客満足度ランキング第1位」などと強調する表示(いわゆる「No.1表示」)が行われることがあるが、その商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を表す No.1表示が合理的な根拠に基づかないなど、事実と異なる場合には、虚偽誇大表示等に該当するおそれがある。さらに、No.1表示の根拠となる具体的な調査条件や出典等が明瞭に記載されておらず、一般消費者に実際のものよりも著しく優良又は有利なものと誤認させる表示をする場合には、虚偽誇大表示等に該当するおそれがある。

 このように、それぞれの用語の範囲としては、
・「最高級」などbestを意味する表現=最上級表現
・「絶対」などperfectや100%を意味する表現=※呼び名は書かれていないですが、絶対的表現と呼ばれることが多いと思います
・「売上No.1」などone(数値), topを意味する表現=いわゆるNo.1表示
のように使い分けられていることがわかります。

 また、問題意識としても、最上級表現、絶対的表現ともに、客観的な立証(の困難性)が問題とされていることがわかります。

最上級表現に関して参考となるルール

No.1表示報告書のほか、最上級表現に関して参考になりそうなルールとしては、表示規約における特定用語と、媒体の広告掲載掲載基準があります。

表示規約における特定用語

最上級表現については、「特定用語」の一種として、公正競争規約(業界別の自主規制)に使用基準が定められている場合があります。

特定用語」というのは、特定の用語について、特定の使用基準を定めたもののことです(“この用語は、こういう意味で、こういうときに使うようにしましょう”という風に)。

公正競争規約への参加事業者は、使用基準を守りつつ、その特定用語を使用することになります。

公正競争規約は、表示に関する規約と景品に関する規約に分かれていて、前者のことを「表示規約」と呼びます。

No.1表示報告書の中でも、以下のように触れられています。

▽No.1表示報告書5頁

4 No.1表示に関する自主規制ルール
 景品表示法第12条の規定に基づき公正取引委員会の認定を受けて、業界において設定している景品類又は表示に関する自主ルールである公正競争規約(以下「規約」という。)には、No.1表示を規制する規定が含まれているものがある(規約の施行規則等に規定があるものを含む。)。
 規制の内容としては、客観的な事実に基づく根拠なしにNo.1表示をすることを不当表示の一類型として定めている場合(ビール、はっ酵乳・乳酸菌飲料等)と、特定用語の使用基準として客観的な事実に基づく根拠がある場合にのみNo.1表示をすることができると定めている場合(化粧品、不動産等)がある。また、後者については、更に客観的な事実に基づく具体的数値又は根拠を付記することまで求めているもの(自動車、タイヤ等)がある。

自動車表示規約

そこで、上記でも紹介されている自動車表示規約を見てみます(▷掲載ページはこちら)。

▽自動車業における表示に関する公正競争規約第4条(一般社団法人自動車公正取引協議会「自動車公正競争規約集」(2023年4月)より)

(1) 最上級を意味する用語
「首位」、「第1位」、「トップ」、「最高」、「最長」、「BIGGEST」その他の最上級を意味する用語を表示する場合は、その裏付けとなる客観的数値等又は根拠を付記すること。

(2) 「完全な…」等の用語
「完全な…」、「完璧な…」、「絶対的な…」 等の用語は、その内容が社会通念上、妥当な範囲を超えない程度において表示すること。

(3)~(4) (略)

「第1位」(No.1)や「最高」(best)については、根拠の付記まで要求されています。

一方、「完全」(perfect)については、社会通念上妥当な範囲を超えない程度において、とされているのみです。

ただ、「完全」(perfect)についても、表示規約の施行規則において、「計測可能な条件を100パーセント満足する場合においては、社会通念上妥当な範囲をこえないものと判断できるため、その表示を妨げない」とされているので、業界的に、計測可能なケースがある(その場合にはOK)ということだろうと思います。

不動産表示規約

また、不動産表示規約を見てみると(▷掲載ページはこちら)、幅広く最上級表現が挙げられています。

▽不動産の表示に関する公正競争規約(不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」(2022年9月1日施行)より)

(特定用語の使用基準)
第18条

2.事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第1号及び第2号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。

(1) 物件の形質その他の内容又は価格その他の取引条件に関する事項について、「最高」、「最高級」、 「」、「特級」等、最上級を意味する用語

(2) (略)

(3) 物件の形質その他の内容又は役務の内容について、「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語

(4) 物件の形質その他の内容、価格その他の取引条件又は事業者の属性に関する事項について、「日本一」、「日本初」、「業界一」、「」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語

(5)~(6) (略)

「最高」(best)については、合理的な根拠のほか、根拠の併記まで要求されています。

「完全」(perfect)や、「日本一」(No.1)、「日本初」(first)、「当社だけ」(only)などについては、合理的な根拠が要求されています。

媒体の広告掲載基準

そのほか、例えば、Yahoo!広告の広告掲載基準では、最大級・絶対的表現のある広告の掲載については、

  • クリエイティブ内の表示が省略されない箇所に第三者によるデータ出典・調査機関名および調査年が明記されていること
  • 調査データが最新の1年以内のデータであること

を満たす必要がある、とされています。

最大級・絶対的表現としては、以下のようなものが挙げられています。

7.最上級表示、No.1 表示【第3章3.関連】|Yahoo!広告ヘルプ

最大級・絶対的表現の例

・数値により優位性を示す言葉
 「世界一」「日本一」「ナンバー1」「第1位」「一番」「ピカイチ」など
・トップを表す言葉
 「トップ」「最初」「最大」「最大規模」「最小」「最安値」「最高」「最強」「最優秀」「最高峰」「首位」「ベスト」「チャンピオン」「ダントツ」「最も」「至高」など
・「初」を表す言葉
 「初めて」「最初に」「日本初」「世界初」「第一号の」「第一人者」「元祖」「これまでにない」など
・1つしかないことを表す言葉
 「唯一」「当社だけ(のみ)」「よそにはない」「独占」など

※上記は一例です。前後の文章によっては最上級、最大級表現に該当しない場合もあります。

BtoBの取引ルール上という文脈ではありますが(法令ではなく、法令を踏まえて特定の会社が策定した取引ルール)、このように、No.1表示も含めて基本的に同列の扱いがなされているようです。

ちなみに、広告掲載基準というのは何かというと、以下のような話です。

広告というのは、広告主がお金を払ってマスメディアやインターネットメディアなどの媒体に広告を出していくわけですが(そのときの広告主側のエージェントとして広告代理店がいるという構図)、

広告主側としては、変な媒体(違法なメディアや、社会通念的に質の良くないメディアなど)に出稿されてしまうと困る、
媒体側としても、変な広告(違法な広告、詐欺みたいな商品の広告など)を自分のメディアに出してしまうと困る、
という関係にあります。

なので、媒体側としては、掲載申込み・入稿された広告について広告審査を行い、掲載不可の箇所については修正させたり、掲載自体を不可としたりするわけです。広告掲載基準はそのときの基準です。

結び

今回は、広告法務ということで、No.1表示と関連するトピックである、最上級表現について見てみました。

No.1表示でも最上級表現でも、プレスリリース作成や広告制作の際には、世間一般ではこのぐらい注意のうえで使用されているんだ、ということをひとまず頭に入れておくのがよいのではないかと思います。

管理人の個人的なコツですが、最上級表現の具体例を全部頭に入れておくことなどは到底無理ですので、英語や数字(one,top,best,first,only,perfect,100%など)で頭に入れておく、というのがオススメです。

まずそれが最上級表現であることに気づかないことには、作成時に気をつけることも、法務チェックすることもできないですからね。

本記事のハイライトをまとめます。

本記事のまとめ

  • 最良性・絶対性・唯一性を示す表現は、No.1表示だけではない
  • 「最高級」(best)、「業界初」(first)、「唯一」(only)、「完全」(perfect)など様々なものがあり、最上級表現とでもいうべきもの
  • No.1表示報告書における「No.1表示」の定義は、No.1表示以外の最上級表現を含んでいるのかどうか明らかではない(が、基本的には同様の議論があてはまる)
  • 業界別の自主規制である表示規約(公正競争規約)では、No.1表示を含めた最上級表現を特定用語として定め、使用基準を決めているものがある
  • 媒体における広告掲載基準では、概ねNo.1表示と同様の扱いをしているものがある

No.1表示と最上級表現の概要については、動画でも解説しています。

▽広告ルールの基本|No.1表示と最上級表現
https://youtu.be/-6I5ruNNHA4?si=4M0TiQNjoXRiG3OH

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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本記事の参考資料

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