広告法務

ステマ規制|規制の仕組み

著作者:rawpixel.com/出典:Freepik

今回は、広告法務ということで、ステルスマーケティング規制の概要について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

ステマ規制とは

ステルスマーケティング(略してステマ)とは、ざっくりいうと、実際は事業者の広告であるにもかかわらず、広告であることがわからないマーケティングのことである。

実際は広告であることをわからないように広告するので、その点が”ステルス”なわけである。

従来、景品表示法上、このステマを正面から扱う法規制はなかったが、2023 年3月28日に告示により新たに不当表示に指定され、法規制の対象となった(2023年10月1日施行)。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について|消費者庁HP

本記事では、世の中に存在するステマ関連のルール全般ではなく、この景品表示法上の不当表示として新たに指定されたステマ告示のことを、ステルスマーケティング規制(ステマ規制)と表記している。

従来の取り扱い

 従来は、ステマが、もともと景品表示法にある規制(優良誤認表示、有利誤認表示)で捕捉できるようなケースのみ、その違反として、措置命令などを出していました。

 また、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)や、一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)も、ガイドラインなどの指針を出していましたが(特にWOMJのガイドラインはステマを正面から取り上げたもの)、これらは、業界団体の自主ルールという性質のものになります。

 ということで、ステマを正面から扱った法規制は無かった、というのが従来の取り扱いでした。

告示によれば、ステルスマーケティング表示は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」とされている(以下「ステマ表示」)。

▽令和5年3月28日内閣府告示第19号

 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。

    一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示

 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

景品表示法上の位置づけ

ステマ規制の、景品表示法上の位置づけを確認してみる。

景品表示法5条は、事業者による不当表示を禁止したうえで、不当表示を、①優良誤認表示(1号)、②有利誤認表示(2号)、③その他の不当表示(3号)、の3つに分類している。

①は商品の内容(品質など)を著しく優良に見せる表示、②は価格などの取引条件を著しく有利に見せる表示、③はそれ以外で消費者の誤認を引き起こすような表示、である。

ステマ規制は、このうち③のその他の不当表示に新しく指定されたものである。

条文も確認してみる。ちなみに、3号の「内閣総理大臣が指定するもの」というのが、指定告示のことである。

(不当な表示の禁止)
第五条
 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

つまり、ステマ規制の位置づけを眺めてみると、

【不当表示の類型】

  • 優良誤認表示(1号)
  • 有利誤認表示(2号)
  • その他の不当表示(3号)
    • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
    • 商品の原産国に関する不当な表示
    • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
    • 不動産のおとり広告に関する表示
    • おとり広告に関する表示
    • 有料老人ホームに関する不当な表示
    • 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示 ←NEW!

という感じである。

例えば、おとり広告は、実際にはその商品を提供できない(在庫がないなど)のに、非常に魅力的な商品の広告だけを打って訪問・来店を促しておいて、別の商品を売りつける、というパターンなわけであるが、必ずしも商品の品質や、価格といった取引条件に関する誤認が生じているわけではない。

しかし、消費者には(実際には購入できないのに購入できるという)誤認があり、合理的な選択が阻害されていると考えられるので、③のカテゴリで指定することにより、不当表示にしている。

これと同じように、ステマ規制も、この③のカテゴリに指定することによってルール化した、ということである。

つまり、ステマ表示も、必ずしも商品の品質(優良誤認)や価格といった取引条件(有利誤認)に誤認が生じているわけではないが、(実際には広告であるのに広告ではないという)誤認があり、それが合理的な選択を阻害していると考えられるので、そのようにした、ということである。

他の規定との関係

 なお、ステマ規制に違反した表示が、優良誤認や有利誤認にも当たる場合もありますし、また、他の法令の適用がある場合にそれがステマ規制にも違反する場合もあります。

▽ステマ告示運用基準 第2

 なお、告示の対象となる事業者の表示において、景品表示法第5条第1号、第2号又は第3号の規定に基づく他の告示の規定に該当する表示がある場合には、これらの表示が景品表示法第5条違反とされる。
 また、他法令の適用がある場合であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる実態があるものについては、他法令だけでなく、告示の対象となる(例えば、特定商取引に関する法律における連鎖販売取引)。

適用範囲

適用対象者ー供給主体性と表示主体性

ステマ規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)である。

企業から広告・宣伝の依頼を受けた広告代理店、インフルエンサー、アフィリエイター等の第三者は規制の対象とはならない。また、マスメディア等の媒体事業者も、同様に対象とはならない。

つまり、違反があった場合に、景品表示法違反があったとして措置を受けるのは、インフルエンサー等ではなく、事業者(広告主)である。

これは、何かステマ規制に特有のルールが設けられてそうなっているのではなく、表示規制の適用対象者に関する景品表示法の従来の考え方(供給主体性表示主体性)どおりに判断するとこうなる、という話である。

簡単にいうと、インフルエンサー等は、自己の供給する商品・役務に関する表示をしているわけではないので供給主体性を欠き、表示規制の対象とならない。

事業者(広告主)は、自己の供給する商品・役務の表示をさせているので供給主体性があり、かつ、第三者に表示内容をゆだねている場合も表示内容の決定に関与した場合に含まれ、表示主体性も満たすので、表示規制の対象となる。

適用時点(時的範囲)

ステマ規制の施行日は、冒頭の告示の中でも書かれているように、2023年(令和5年)10月1日である。

ただし、施行日前に第三者に行わせた表示であっても、施行日後において事業者の表示であると判断される実態にある場合(例えば、施行日後も当該表示の作成者と連絡がつくなどして事業者が表示を管理できる状態にある場合等)は、施行日後の表示が本告示の対象となる可能性がある、とされている(ステマ告示パブコメNo.194、196)。

不当表示の該当要件

ステマ告示では、ステマ表示の定義を、

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

としているので、不当表示に該当するとして違法とされるのは、

  • 「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であること(事業者の表示であること
  • 「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」であること(事業者の表示であることの判別が困難であること

の両方の要件を満たす場合、ということになる。

要するに、実際は事業者の広告であること広告性)、しかし、一般消費者から見て広告であるとわからないこと判別困難性)、という2点である。
(逆からいうと、広告ではない場合つまり第三者の自由意思でやっているか、または、広告であるとしても一般消費者がそれとわかる場合は、不当表示にあたらないということ)

以下、順に見てみる。

該当要件①ー事業者の表示であること(広告性)

事業者の表示であると判断されるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合(つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合)とされている。

事業者の表示に該当する類型としては、

  • 事業者が自ら行う表示
  • 事業者が第三者になりすまして行う表示
  • 事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合
  • 事業者が明示的に依頼・指示していない場合であっても、第三者に表示させた場合となるもの

が挙げられている。

また、事業者の表示に該当しない類型としては、

  • 第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合
  • 媒体事業者が自主的な意思で行う表示

が挙げられている。

該当要件②ー事業者の表示であることの判別が困難であること(判別困難性)

一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか(逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうか)を、表示内容全体から判断する。

表示内容全体から、というのは、表示上の特定の・・・文章、図表、写真などから一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から・・・・一般消費者が受ける印象・認識が基準となる、ということである。

判別困難に該当する類型としては、

  • 事業者の表示であることが記載されていないもの
  • 事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの

が挙げられている。

判別困難に該当しない類型としては、

  • 広告である旨が一般消費者から見て分かりやすい表示になっているもの
  • 一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかなもの

が挙げられている。

結び

今回は、広告法務ということで、ステルスマーケティング規制の概要について見てみました。

消費者庁HPに、ステマ表示の解説ページがあります。

令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。|消費者庁HP

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考文献・主要法令等

業界団体のガイドライン等

一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA) 一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Gov又は消費者庁の該当資料に遷移します(▷消費者庁の掲載ページはこちら
  • 景品表示法(「不当景品類及び不当表示防止法」)
  • ステマ告示(「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」)
  • ステマ告示運用基準(「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」)
  • ステマ告示パブコメ(「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』告示案及び『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』運用基準案に関する御意見の概要及び当該御意見に対する考え方」)
  • 管理措置指針(「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」)

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