今回は、広告法務ということで、事業者が講ずべき管理上の措置の指針(以下「管理措置指針」)のうち、ステマ規制に関連する部分について見てみたいと思います。
直接的にはアフィリエイト広告を対象にした記述部分になりますが、「広告」である旨の表示の仕方の望ましい事例が取り上げられており、ステマ規制一般においても望ましい表示の仕方として参考になります。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示(管理措置指針 別添8)
基本的な考え方(別添8-(1))
「アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示」に関する望ましい表示の基本的な考え方としては、
アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示を行うためには、一般消費者が、当該表示がアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることを理解できる文言の使用や、当該文言を表示する位置、大きさ及び色等も含めた、アフィリエイトサイトにおける表示内容全体から、一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用する事業者の表示であることを容易に理解できるようなものとなっているかについて留意することが望ましい。
とされており、ステマ規制における判別困難性と同様の考え方が示されていることがわかる。
その上で、以下のように、文言、表示位置、文字の大きさ、文字の色、その他の対応などの項目に分けて、望ましい表示の例が挙げられているので、ステマ規制に関しても、判別困難性に関しては例えばこれらが着眼点になるという目線で、一度見ておくと有益かと思う。
管理措置指針では、以下の項目の例として、絵もつけてくれているので、見た目にも参考になります(▷リンクはこちら)
望ましい文言(別添8-(1)ア)
明示に関する望ましい文言としては、以下のような例が挙げられている(広告であることが一般消費者にわかりにくい言葉選びは、ネガティブに考慮される)。
- 一般消費者が広告である旨認識することが困難であると考えられる文言ではなく、例えば、「広告」という文言のように、アフィリエイトサイトにおける表示について、一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることを認識しやすい文言を使用すること
- その上で、当該事業者の具体的な名称等を記載するなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることについて更なる明示をすること
望ましい表示位置(別添8-(1)イ)
明示に関する望ましい表示位置としては、以下のような例が挙げられている(視野に最初に入る位置にない、他の情報に埋もれている、商品・サービスの表示と遠い位置にあることは、ネガティブに考慮される)。
- 一般消費者が当該表示を見る際の視線の動きの方向を踏まえた上で、視野に最初に入る画面内に表示すること
- 当該表示が他の表示の情報に埋もれないようにすること
- アフィリエイトサイトにおける当該事業者の商品又は役務についての表示と当該表示が近接していること
望ましい表示の大きさ(別添8-(1)ウ)
明示に関する望ましい表示の大きさとしては、以下のような例が挙げられている(広告である旨の文字が相対的に小さいことはネガティブに考慮される)。
- アフィリエイトサイトにおける表示において使用されている文字の平均的な大きさと比べて、少なくとも同程度の大きさにするなど、一般消費者が認識しやすい大きさにすること
望ましい表示の色(別添8-(1)エ)
明示に関する望ましい表示の色としては、以下のような例が挙げられている(背景に埋もれさせるような色使いはネガティブに考慮される)。
- 当該表示の背景等に使用されている色と比べて、区別しにくい色ではなく、明確に区別できる色にするなど、一般消費者が認識しやすい色にすること
その他の望ましい対応(別添8-(1)オ)
明示に関するその他の望ましい対応としては、以下のような例が挙げられている(表示内容全体から判断する、一般消費者を基準に判断する、画面の表示領域の制約から広告と広告以外の区別が困難となっていないかに気をつける)。
- 例えば、景品表示法において「著しく優良であると示す表示」か否かの判断に当たっては、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となることを踏まえると、アフィリエイトサイトにおいて一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用した事業者の広告であることを理解できるようにするための表示を行う場合も、表示内容全体から、一般消費者がそのように理解できる表示となっているかについて留意すること
- 特に、アフィリエイトサイトが、スマートフォンの利用におけるウェブサイト、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等の表示である場合には、画面全体の表示領域の制約等により、広告と広告以外の情報が明確に区別されにくい場合もあることから、一般消費者の理解を妨げないようになっていないかについて留意すること
参考:管理措置指針の位置づけ
管理措置義務と管理措置指針
補足として、この管理措置指針というのは何なのか、ということも見てみる。
景品表示法上、事業者には、景品表示法(表示規制や景品規制)違反を防ぐための管理措置の実施が義務づけられている(法26条1項)。
そして、管理措置指針は、この管理措置の実施義務を受けて、内閣総理大臣がそのために必要な指針を示したものである(同条2項)。
(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置)
第二十六条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。
3~5 (略)
簡単にいうと、1項は、管理措置義務、2項は、そのための管理措置指針、である。
管理措置指針の構成
管理措置指針は、基本的な考え方や管理措置の内容を示した本文と、具体的な事例を挙げた別添という2部構成になっており、以下の①~⑦までの7項目に分けて解説されているが、
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
- その他の措置
別添の事例の方では、上記⑧の「その他の措置」として、「アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示」が挙げられている。
この部分はステマ規制一般においても、「広告」である旨の望ましい表示の仕方として参考になる、ということである。
この部分は令和4年6月29日の管理措置指針改正で既に入っていたもので(※)、令和5年3月28日のステマ規制(指定告示)で入ったものではないですが、管理措置指針としてはそのまま維持されていますし、内容的にも関連はしています。
(※)参考サイト:「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正案及び「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定案に関する意見募集の結果の公示について|消費者庁HP
結び
今回は、広告法務ということで、景品表示法の管理措置指針のうち、ステマ規制に関連する部分について見てみました。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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