資金決済法

資金決済法を勉強しよう|前払式支払手段ー情報提供に関する規制

著作者:ijeab/出典:Freepik

今回は、資金決済法を勉強しようということで、前払式支払手段のうち情報提供に関する規制について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

利用者に対する情報提供義務(法13条1項)

前払式支払手段の発行者には、利用者に対して情報提供義務がある(法13条1項)。

利用者からみれば、商品やサービスの対価を前払いしておくものであるので、与信をしている(信用を供与している=わかりやすくいえば、お金を貸しているようなもの)ことになるため、利用者保護の観点から、誰にどのような与信をしているのかわかるようにする趣旨である。

(利用者の保護等に関する措置)
第十三条
 前払式支払手段発行者は、前払式支払手段を発行する場合には、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項に関する情報を利用者に提供しなければならない
 (略)

情報提供の方法(前払府令21条)

方法①:前払式支払手段に表示する方法(1項)

情報提供の方法は、権利行使にあたって必要となる物理デバイスが利用者に交付される場合は、その物理デバイス自体に表示する方法とされている(前払府令21条1項)。

例えば、商品券、プリペイドカードなどであり、また、サーバー型であっても、権利行使にあたって必要な何らかの物理デバイスが交付される場合も同様である。

(情報の提供の方法)
第二十一条
 前払式支払手段発行者は、前払式支払手段を発行する場合(当該前払式支払手段に係る証票等又は当該前払式支払手段と一体となっている書面その他の物を利用者に対し交付することがない場合を除く。)には、法第十三条第一項各号に掲げる事項に関する情報を、その発行する前払式支払手段(当該前払式支払手段と一体となっている書面その他の物を含む。)に表示する方法により、利用者に提供しなければならない。

括弧書きの中の「前払式支払手段と一体となっている書面その他の物」は、権利行使にあたって必要なもの、に限られている(前払ガイドラインⅡ-2-1-1)。

▽前払ガイドラインⅡ-2-1-1

(注2)内閣府令第21条第1項に規定する「前払式支払手段と一体となっている書面その他の物」とは、利用者が当該前払式支払手段を使用する際に提示又は交付する必要があるものを指し、単に、前払式支払手段となる番号、記号その他の符号が記載されているだけで、利用者が当該前払式支払手段を利用する際に、当該書面その他の物を提示又は交付することを要しないものは含まれないことに留意する。

また、ここでいう「交付」には、物理的に交付する場合に限られず、利用者がすでに保有している物理デバイスに機能を追加する場合も含まれる。

平成29年3月24日パブコメNo.5(▷掲載ページはこちら

 前払式支払手段府令第21条第2項について、利用者の保有する識別子を用いて証票等に利用する場合(例:ICカードの製造番号、その他独自の識別番号等を電子的に認証し証票として使用する場合)、利用者の保有物を利用することから新たな証票等の交付はないので、第21条第2項の「当該前払式支払手段に係る証票等又は当該前払式支払手段と一体となっている書面その他の物を利用者に対し交付することがない場合」に該当すると理解してよいか。

 前払式支払手段府令第21条第1項の「交付する」とは、前払式支払手段発行者自身が前払式支払手段に係る証票等又は当該前払式支払手段と一体となっている書面その他の物を物理的に交付する場合に限られません
 そのため、例えば、利用者が保有するクレジットカードやキャッシュカードに、新たに前払式支払手段(電子マネー)を付加する場合は、同条第2項の「当該前払式支払手段に係る証票等又は当該前払式支払と一体となっている書面その他の物を利用者に対し交付することがない場合」には該当しないものと考えられます。

方法②:電気通信回線を利用して提供する方法(2項)

以上に対し、サーバー型で、かつ上記のような物理デバイスが何も交付されない場合は、表示の対象にできる物がないので、インターネットなどの電気通信回線を利用して情報提供する方法とされている(前払府令21条2項)。

1号~3号まで定められているが、イメージ的には、

  • 電子メールで送信する方法(1号)
  • 発行者のホームページに掲載する方法(2号)
  • 発行者が提供するチャージ機等に表示する方法(3号)

である。

条文も確認してみる。

 前払式支払手段発行者は、前払式支払手段を発行する場合(当該前払式支払手段に係る証票等又は当該前払式支払手段と一体となっている書面その他の物を利用者に対し交付することがない場合に限る。)には、法第十三条第一項各号に掲げる事項に関する情報を、次に掲げるいずれかの方法により、利用者に提供しなければならない。
 前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器と利用者の使用に係る電子機器とを接続する電気通信回線を通じて送信し、当該利用者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに記録する方法
 前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて利用者の閲覧に供し、当該利用者の使用に係る電子機器に備えられたファイルに当該情報を記録する方法
 利用者の使用に係る電子機器に情報を記録するためのファイルが備えられていない場合に、前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器に備えられたファイル(専ら利用者の用に供するものに限る。第四項第二号において「利用者ファイル」という。)に記録された当該情報を電気通信回線を通じて利用者の閲覧に供する方法

「利用者の使用に係る電子機器」は、自律的に情報処理を行う機器を指し、情報を保存しているだけの単なるメモリのことではない。

平成29年3月24日パブコメNo.4(▷掲載ページはこちら

 利用者の使用に係る電子機器(ウェアラブル機器(アームバンド、指輪等)、非接触ICカード等)に関し、情報を保存するメモリ(ファイル)は備えているが、表示機能を持たない場合は、前払式支払手段府令第21条第2項第2号又は第3号どちらに該当するのか。

 本法令における「電子機器」とは、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等の自律的に情報処理を行う機器をいうと考えており、例示いただいたウェアラブル機器等が「電子機器」に該当するかどうかは、個別の判断になります。
 また、前払式支払手段府令第21条第2項各号における「情報」とは、資金決済法第13条第1項各号に掲げる事項に関する情報を指すものであり、その提供方法については、個別事例ごとに判断することとなりますが、利用者が当該情報を記録し閲覧することができる電子機器(パソコン、スマートフォン等)を保有していることが想定される場合には前払式支払手段府令第21条第2項第1号又は第2号により、想定されない場合には同項第3号により情報提供をすることになると考えられます。

利用者の使用する電子機器の操作が必要である場合(3項)

権利行使にあたって必要となる物理デバイスが利用者に交付される場合であっても、前払式支払手段を使用するために、発行者のサーバーとインターネットで接続される利用者の電子機器(例えばスマートフォン等)の操作が必要である場合は、電気通信回線を利用して提供する方法によることができる。

つまり、1項のシチュエーションであっても、利用者の使用する上記の電子機器の操作を要する場合は、2項の情報提供方法によることが認められている、ということである。

 第一項の規定にかかわらず、発行する前払式支払手段について、その使用の開始前に前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器と電気通信回線を介して接続される利用者の使用に係る電子機器に当該前払式支払手段発行者から提供を受ける番号等を入力することその他の当該前払式支払手段を使用するための当該電子機器の操作が必要である場合には、法第十三条第一項各号に掲げる事項に関する情報を、前項各号に掲げるいずれかの方法により、利用者に提供することができる。

平成29年3月24日パブコメNo.7(▷掲載ページはこちら

 非接触ICチップを搭載した媒体(指輪等※)で、媒体上での情報提供が困難なほど極小な媒体の場合、必要項目をインターネット上のホームページ等に記載することで情報提供義務を果たすことは可能か。可能であるならば、内閣府令を当該解釈が可能な文言に修正いただきたい。
 なお、媒体上への表示義務の課されていないクレジットカードやデビットカードでは、このようなイノベーションが可能である。
 ※指輪等のみを店舗に設置された非接触IC読み取り端末に提示することで利用するものであり、スマートフォンなどと連動させて利用するものではないものの、利用履歴等はスマートフォンやパソコンなどを使って確認する想定。

 「非接触ICチップ」を搭載した媒体が、その使用の開始前に、又は、その使用に際して、「前払式支払手段発行者の使用に係る電子機器と電気通信回線を介して接続される利用者の使用に係る電子機器」(スマートフォン等)と無線通信等により接続することが必要となる場合には、当該媒体は、前払式支払手段府令第21条第3項の「証票等の使用の開始前に、又は証票等の使用に際して、当該電子機器と接続される場合における当該証票等」に該当するため、同条第2項各号に掲げる方法による情報提供が可能となります。

電気通信回線を利用して提供する場合の技術的水準(4項)

電気通信回線を利用して提供する方法(2項の方法)による場合には、技術的水準として、プリントアウトできるものであることや、発行者側で当該利用者のファイルに記録された情報を3か月間は消去・改変できないことが必要とされる。

▽前払府令21条4項(※【 】は管理人注)

 第二項各号に掲げる方法は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。
 第二項第一号【=例えば電子メールで送信する方法】又は第二号【=例えば発行者のホームページに掲載する方法】に掲げる方法にあっては、利用者がファイルへの記録を出力すること(当該記録を他の電子機器に送信することその他の方法を用いて出力することを含む。)により書面を作成することができるものであること。
 第二項第三号【=例えば発行者が提供するチャージ機等に表示する方法】に掲げる方法にあっては、利用者ファイルへの記録がされた情報を、当該利用者ファイルに記録された時から起算して三月間、消去し、又は改変できないものであること。

情報提供事項等(前払府令22条)

情報提供の態様(1項)

情報提供の態様としては、わかりやすい用語で、正確に提供しなければならないとされている(前払府令22条1項本文)。

ただし、ギフトカードなど、支払可能金額等を明示することが社会通念上不適当な場合もあるため、専ら贈答用のために購入されるなど一定の要件を満たす場合は、支払可能金額等(2号)に関しては、符号、図画その他の方法により情報を提供することで足りるとされている(但書)。

(情報提供する事項等)
第二十二条
 法第十三条第一項各号に掲げる事項は、前払式支払手段を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語により、正確に情報を提供しなければならない。ただし、専ら贈答用のために購入される前払式支払手段(前条第二項各号に掲げる方法により情報を提供する前払式支払手段を除く。)のうちその購入の目的に合わせて支払可能金額等を明示しないこととしているものに係る法第十三条第一項第二号に掲げる支払可能金額等については、符号、図画その他の方法により情報を提供することで足りる。

情報提供事項(2項)

情報提供事項は、法13条1項各号に定められており、

  • 発行者名(1号)
  • 支払可能金額等(2号)
  • 有効期限(3号)
  • 問合せ先(4号)
  • 内閣府令で定める事項(5号)
    1. 利用可能な場所(前払府令22条2項1号)
    2. 利用上の注意(2号)
    3. 未使用残高又はその確認方法(電磁的方法により金額又は数量を記録している前払式支払手段の場合)(3号)
    4. 約款、説明書など(4号)

となっている。

このうち①~③は、基本事項(=誰に、いくら、いつまで)として、重要性が高い。そのため、④⑤と異なり、認定協会への周知委託による省略(後述)が認められておらず、常に利用者に対して情報提供が必要となっている。

条文も確認してみる。

▽法13条1項各号

 氏名、商号又は名称
 前払式支払手段の支払可能金額
 物品等の購入若しくは借受けを行い、若しくは役務の提供を受ける場合にこれらの代価の弁済のために使用し、又は物品等の給付若しくは役務の提供を請求することができる期間又は期限が設けられているときは、当該期間又は期限
 前払式支払手段の発行及び利用に関する利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先
 その他内閣府令で定める事項

  ↓ 前払府令22条2項

 法第十三条第一項第五号に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
 前払式支払手段を使用することができる施設又は場所の範囲
 前払式支払手段の利用上の必要な注意
 電磁的方法により金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第四項において同じ。)又は物品等若しくは役務の数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高(法第三条第一項第一号の前払式支払手段にあっては代価の弁済に充てることができる金額をいい、同項第二号の前払式支払手段にあっては給付又は提供を請求することができる物品等又は役務の数量をいう。)又は当該未使用残高を知ることができる方法
 前払式支払手段の利用に係る約款若しくは説明書又はこれらに類する書面(以下この条において「約款等」という。)が存する場合には、当該約款等の存する旨

「支払可能金額等」とは

 「支払可能金額等」というのが何なのかイメージしにくいような気がしますが、法3条3項に定義があります。わかりやすいイメージでいうと、商品券で10,000円と表示しているような例です。

▽法3条3項(※【 】は管理人注)

 この章において「支払可能金額等」とは、第一項第一号(=【金額表示タイプ】)の前払式支払手段にあってはその発行された時において代価の弁済に充てることができる金額をいい、同項第二号(=【数量表示タイプ】)の前払式支払手段にあってはその発行された時において給付又は提供を請求することができる物品等又は役務の数量をいう。

 ただし、電磁的方法により金額又は数量(=金額表示タイプにおける使用できる金額、数量表示タイプにおける請求できる数量)を記録している前払式支払手段の場合、残高を加算したり減算したりすることができるため、支払可能金額等は、その上限を示すことで足りるとされています(前払府令5条)。

▽前払府令5条

(電磁的方法により金額等を記録している前払式支払手段の支払可能金額等)
第五条
 前払式支払手段のうち電磁的方法により金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この条において同じ。)又は物品等若しくは役務の数量を記録している前払式支払手段に係る支払可能金額等は、記録される当該金額又は当該数量の上限とする。

 そして、資金決済法上、支払可能金額等の上限を画した規定はないため、支払可能金額等を無限として、上限を設定しないこともでき、その場合、上限はない旨の記載をすれば足りると考えられています(堀天子「実務解説 資金決済法」参照)。

 なので、例えば、サーバー型の前払式支払手段であるポイントやコインなどの場合、支払可能金額等としては「上限はありません」としつつ(上記②の情報提供事項)、発行者のホームページ(ログイン後画面など)やアプリで未使用残高を閲覧に供する(上記⑤-3の情報提供事項)、という風にしているパターンが多いかと思います。

表示面積が狭い場合の特則(3項)

情報提供の方法が物理デバイス自体に表示する方法である場合については、その表示面積が狭いケースのための特則がある。

表示面積が狭く情報提供する事項を明瞭に表示できないときは、利用可能な場所と利用上の注意については、購入の際にこれらが表示された約款が交付されることを要件に、主要なもののみを提供することで足りるとされている。

▽前払府令22条3項(※【 】は管理人注)

 前払式支払手段(前条第二項各号に掲げる方法により法第十三条第一項の規定による情報の提供をする前払式支払手段を除く。)の面積が狭いために同項各号に掲げる事項を明瞭に表示することができないときは、前二項の規定にかかわらず、次に掲げる要件の全てを満たす場合に限り、前項第一号【=利用可能な場所】又は第二号【=利用上の注意】に掲げる事項については、これらの事項のうち主要なものの情報を提供することで足りる
 約款等に前項第一号及び第二号に掲げる事項についての表示があること。
 前払式支払手段が一般に購入される際に当該約款等がその購入者に交付されること。

加算時の情報提供不要(4項)

また、加算型前払式支払手段のときに、加算時の情報提供は不要とされている。

 加算型前払式支払手段(前条第二項各号に掲げる方法により法第十三条第一項の規定による情報の提供をする加算型前払式支払手段を除く。)について金額又は物品等若しくは役務の数量の記録の加算が行われる場合において、前払式支払手段発行者が当該加算型前払式支払手段について既に同項の規定による情報の提供をしているときは、当該情報の提供をもって、同項の規定による情報の提供をしたものとみなす。

認定協会への周知委託による省略(法13条2項)

発行者が認定資金決済事業者協会の会員である場合には、情報提供事項のうち、問合せ先(4号)と内閣府令で定める事項(5号)については、同協会に周知を委託することで、利用者への情報提供を省略する方法も認められている(法13条2項)。

具体的には、同協会HPの以下のページに掲載されている。

▽日本資金決済業協会HP

一般社団法人日本資金決済業協会|周知委託会員の前払式支払手段
一般社団法人日本資金決済業協会|周知委託会員の前払式支払手段

www.s-kessai.jp

条文も確認してみる。

▽法13条2項(※【 】は管理人注)

 前払式支払手段発行者が加入する認定資金決済事業者協会が当該前払式支払手段発行者に係る前項第四号に掲げる事項を前払式支払手段の利用者に周知する場合その他の内閣府令で定める場合には、当該前払式支払手段発行者は、同項の規定にかかわらず、当該事項について同項【=法13条1項】の規定による情報の提供をすることを要しない

  ↓ 前払府令23条

(情報の提供をすることを要しない場合)
第二十三条
 法第十三条第二項に規定する内閣府令で定める場合は、前払式支払手段発行者が加入する認定資金決済事業者協会が当該前払式支払手段発行者に係る同条第一項第四号及び前条第二項各号【=法第十三条第一項第五号に規定する内閣府令で定める事項】に掲げる事項を前払式支払手段の利用者に周知する場合とする。

認定資金決済事業者協会とは

 認定資金決済事業者協会とは何かというと、資金決済事業者が設立した一般社団法人で、内閣総理大臣から認定を受けた者のことです(法2条22項)。

 金融庁HPに、「一般社団法人日本資金決済業協会」と「一般社団法人日本暗号資産取引業協会」が掲載されています(▷認定資金決済事業者協会一覧|金融庁HP)。

▽法2条22項、87条

22 この法律において「認定資金決済事業者協会」とは、第八十七条の規定による認定を受けた一般社団法人をいう。

(認定資金決済事業者協会の認定)
第八十七条
 内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、前払式支払手段発行者、資金移動業者、電子決済手段等取引業者又は暗号資産交換業者が設立した一般社団法人であって、次に掲げる要件に該当すると認められるものを、その申請により、次条に規定する業務(以下この章において「認定業務」という。)を行う者として認定することができる。
 (略)

認定業務」というのは、会員(資金決済事業者)の業務適正化のための各種の業務のことです(法88条1号~8号)。

その他の利用者保護措置(法13条3項)

また、以上の情報提供のほかにも、利用者保護措置として、内閣府令で定める措置を実施しなければならないとされている(法13条3項)。

 前払式支払手段発行者は、第一項に規定するもののほか、内閣府令で定めるところにより、前払式支払手段の利用者の保護を図り、及び前払式支払手段の発行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置を講じなければならない。

利用者に対するその他の情報提供(前払府令23条の2)

法13条1項各号に定める情報提供事項のほかにも、

  • 利用者の資金の保全に関する事項(1号、2号)
  • 利用者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われたこと(無権限取引)により発生した利用者の損失の補償その他の対応に関する方針(3号)

について、利用者に情報を提供することとされている(前払府令23条の2第1項)。

これらに関しては、加算型前払式支払手段のときに、加算時の情報提供は不要とされており(2項)、また、認定協会に周知を委託することで、利用者への情報提供を省略する方法も認められている(3項)。

具体的には、同協会HPの以下のページに掲載されている。

▽日本資金決済業協会HP

一般社団法人日本資金決済業協会|周知委託会員の利用者保護措置
一般社団法人日本資金決済業協会|周知委託会員の利用者保護措置

www.s-kessai.jp

(その他利用者保護を図るための措置等)
第二十三条の二
 前払式支払手段発行者は、前払式支払手段を発行する場合には、書面の交付その他の適切な方法により、次に掲げる事項に関する情報を利用者に提供しなければならない
一 法第十四条第一項の規定の趣旨及び法第三十一条第一項に規定する権利の内容
二 発行保証金の供託発行保証金保全契約(法第十五条に規定する発行保証金保全契約をいう。以下同じ。)又は発行保証金信託契約(法第十六条第一項に規定する発行保証金信託契約をいう。以下同じ。)の別及び発行保証金保全契約又は発行保証金信託契約を締結している場合にあっては、これらの契約の相手方の氏名、商号又は名称
三 前払式支払手段の発行の業務に関し利用者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われたことにより発生した利用者の損失の補償その他の対応に関する方針
 加算型前払式支払手段について金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。)又は物品等若しくは役務の数量の記録の加算が行われる場合において、前払式支払手段発行者が当該加算型前払式支払手段について既に前項の規定による情報の提供をしているときは、当該情報の提供をもって、同項の規定による情報の提供をしたものとみなす。
 前払式支払手段発行者が加入する認定資金決済事業者協会が当該前払式支払手段発行者に係る第一項各号に掲げる事項を前払式支払手段の利用者に周知する場合には、当該前払式支払手段発行者は、同項の規定にかかわらず、当該事項について同項の規定による情報の提供をすることを要しない

譲渡可能な前払式支払手段に関する適切な措置等(前払府令23条の3)

そのほか、譲渡可能な前払式支払手段など為替取引に類似する機能を持つものに関して不適切な利用を防止するための適切な措置を実施することや、前払式支払手段の利用者以外の者に損失が発生した場合における損失の補償等の対応に関する方針を必要に応じて周知すること、などが義務づけられている。

第二十三条の三 前払式支払手段発行者は、前払式支払手段の利用者の保護を図り、及び前払式支払手段の発行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため、次に掲げる措置を講じなければならない。
 残高譲渡型前払式支払手段を発行する場合にあっては、移転が可能な未使用残高の上限額の設定、移転の状況を監視するための体制の整備その他の当該残高譲渡型前払式支払手段の不適切な利用を防止するための適切な措置
 次に掲げる前払式支払手段を発行する場合にあっては、一般前払式支払手段記録口座に記録が可能な未使用残高の上限額の設定、不適切な移転を防止するための体制の整備その他の当該前払式支払手段の不適切な利用を防止するための適切な措置
 イ 番号通知型前払式支払手段
 ロ 第三者型前払式支払手段のうち、その未使用残高が一般前払式支払手段記録口座に記録されるものであって、第五条の二第二項各号(第一号及び第三号を除く。)に掲げる要件の全てに該当するもの
 電子決済手段に該当する前払式支払手段を発行しないための適切な措置
 前払式支払手段の発行の業務の内容及び方法に照らし必要があると認められる場合にあっては、当該業務に関し前払式支払手段の利用者以外の者に損失が発生した場合における当該損失の補償その他の対応に関する方針を当該者に周知するための適切な措置

結び

今回は、資金決済法を勉強しようということで、前払式支払手段のうち情報提供に関する規制について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Gov又は金融庁HPの資料(▷掲載ページはこちら)に遷移します

  • 資金決済法(「資金決済に関する法律」)
  • 資金決済法施行令(「資金決済に関する法律施行令」)
  • 前払府令(「前払式支払手段に関する内閣府令」)
  • 資金移動府令(「資金移動業者に関する内閣府令」)
  • 協会府令(「認定資金決済事業者協会に関する内閣府令」)
  • 発行保証金規則(「前払式支払手段発行保証金規則」)
  • 前払ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5.前払式支払手段発行者関係)」)
  • 資金移動ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14.資金移動業者関係)」)
  • 令和2年パブコメ(令和2年4月3日付「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」)
  • 令和3年パブコメ(令和3年3月19日付「『令和2年資金決済法改正に係る政令・内閣府令案等』に関するパブリックコメントの結果等について」)

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