資金決済法

資金決済法を勉強しよう|第一種資金移動業における業務実施計画の認可

著作者:rawpixel.com/出典:Freepik

今回は、資金決済法を勉強しようということで、資金移動業のうち第一種資金移動業における業務実施計画の認可について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

業務実施計画の認可(法40条の2)

第一種資金移動業を営むには、資金移動業の登録(法37条)に加えて、さらに業務実施計画の認可が必要とされている(法40条の2)。

これは、第一種資金移動業は取扱送金額に上限がないため、そのような高額送金事業において、利用者保護の観点から、より厳格に業務の適正を確保する必要があるためである。

業務実施計画を変更する場合も、改めて変更の認可が必要である(1項後段)。ただし、内閣府令で定める軽微な変更は、事後の届出で足りるとされている(2項)。

また、サービス内容やリスク等に応じて、業務実施計画の認可に条件を付すことができるようになっている(3項)。

(業務実施計画の認可)
第四十条の二
 資金移動業者は、第一種資金移動業を営もうとするときは、次に掲げる事項を記載した業務実施計画を定め、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。その変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
一~三 (略)
 資金移動業者は、前項に規定する内閣府令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
 内閣総理大臣は、その必要の限度において、第一項の認可に条件を付し、及びこれを変更することができる。

業務実施計画の認可を受けずに第一種資金移動業を営んだ場合には、刑事罰が科せられる(法108条1号)(※以下の【 】は管理人注)。

第百八条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第四十条の二第一項の認可【=業務実施計画の認可】を受けないで第三十六条の二第一項に規定する第一種資金移動業を営んだとき。

認可申請方法(資金移動府令9条の2)

認可申請方法は、認可申請書を添付書類とともに提出することである(資金移動府令9条の2)(※以下の【 】は管理人注)。

認可申請書の様式は別紙様式9号の2、添付書類の様式は別紙様式9号の3(特定信託会社の場合は別紙様式9号の3の2)である。

(業務実施計画の認可の申請)
第九条の二
 資金移動業者等は、法第四十条の二第一項(法第三十七条の二第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)の認可【=業務実施計画の認可】を受けようとするときは、別紙様式第九号の二により作成した認可申請書に、別紙様式第九号の三(特定信託会社にあっては、別紙様式第九号の三の二)により作成した法第四十条の二第一項の業務実施計画及び当該業務実施計画に関し参考となる事項を記載した書類を添付して、金融庁長官に提出しなければならない。

認可申請事項(法40条の2第1項各号→資金移動府令9条の3)

認可申請事項は、法40条の2第1項各号に定められており、

  • 取扱送金額の上限額を定める場合は、その上限額(1号)
  • 送金を行うために使用する電子情報処理組織の管理の方法(2号)
  • その他内閣府令で定める事項(3号)
    1. 送金に係る業務の提供方法(資金移動府令9条の3第1号)
    2. 送金による資金の移動が生じる国および地域(2号)
    3. マネー・ロンダリング等のリスクに対応するために必要な体制に関する事項(3号)
    4. 第一種資金移動業における厳格な滞留規制を遵守するために必要な体制に関する事項(4号)
    5. 送金に関する事故等の支障事態が発生した場合の対応方針(5号)
    6. その他の重要な事項(6号)

とされている。

上記①は、事業者が自主的に上限額を定めた場合の、その上限額である。

上記②は、高額送金事業において、コンピューター・システムの運用・管理が特に重要であることから、認可申請事項とされている。

条文も確認してみる。

▽法40条の2第1項各号(※【 】は管理人注)

 為替取引により移動させる資金の額の上限額を定める場合にあっては、当該上限額
 為替取引を行うために使用する電子情報処理組織の管理の方法
 その他内閣府令で定める事項

  ↓ 資金移動府令9条の3

(業務実施計画のその他の記載事項)
第九条の三
 法第四十条の二第一項第三号に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項(特定信託会社にあっては、第四号に掲げる事項を除く。)とする。
 為替取引に係る業務の提供方法
 為替取引による資金の移動が生じる国及び地域
 犯罪による収益の移転防止(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第一条に規定する犯罪による収益の移転防止をいう。)及びテロリズムに対する資金供与の防止等を確保するために必要な体制に関する事項
 法第五十一条の二の規定【=第一種資金移動業の滞留規制】を遵守するために必要な体制に関する事項
 為替取引に関する事故その他の資金移動業(特定信託会社にあっては、特定資金移動業。第二十四条から第三十条まで、第三十一条、第三十二条、第三十三条、第三十八条第二項第五号及び第七号並びに第六項並びに第三十九条において同じ。)の適正かつ確実な遂行に支障を来す事態が発生した場合の対応に関する方針
 その他第一種資金移動業(特定信託会社にあっては、特定資金移動業)の適正かつ確実な遂行を確保するための重要な事項

なお、軽微な変更として事後の届出で足りるとされているのは、上記の認可申請事項のうち、①(取扱送金額の上限額を定める場合の上限額)を引き下げる変更と、③-2(送金による資金の移動が生じる国および地域)を減ずる変更、である。

▽資金移動府令9条の4第2項(※【 】は管理人注)

(業務実施計画の変更の認可の申請等)
第九条の四
 法第四十条の二第一項後段(法第三十七条の二第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する内閣府令で定める軽微な変更は、次に掲げる変更とする。
 法第四十条の二第一項第一号に規定する上限額(=【取扱送金額の上限額を定める場合の上限額】)を引き下げる変更
 前条第二号に規定する国及び地域(=【送金による資金の移動が生じる国および地域】)を減ずる変更

結び

今回は、資金決済法を勉強しようということで、資金移動業のうち第一種資金移動業における業務実施計画の認可について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

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  • 資金決済法(「資金決済に関する法律」)
  • 資金決済法施行令(「資金決済に関する法律施行令」)
  • 前払府令(「前払式支払手段に関する内閣府令」)
  • 資金移動府令(「資金移動業者に関する内閣府令」)
  • 協会府令(「認定資金決済事業者協会に関する内閣府令」)
  • 発行保証金規則(「前払式支払手段発行保証金規則」)
  • 前払ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5.前払式支払手段発行者関係)」)
  • 資金移動ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14.資金移動業者関係)」)
  • 令和2年パブコメ(令和2年4月3日付「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」)
  • 令和3年パブコメ(令和3年3月19日付「『令和2年資金決済法改正に係る政令・内閣府令案等』に関するパブリックコメントの結果等について」)

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