個人情報法務

電気通信事業法による外部送信規律|適用対象事業者

著作者:Freepik

今回は、個人情報法務ということで、電気通信事業法による外部送信規律のうち適用対象事業者について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

適用対象事業者

外部送信規律の適用対象事業者は、

電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)

とされている(法27条の12)。

簡略化しつつ分節すると、

  • 電気通信事業者又は第三号事業を営む者で、かつ、
  • 利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務を提供する者、

ということになる。

条文も確認してみる(冒頭の部分が該当部分)。

(情報送信指令通信に係る通知等)
第二十七条の十二
 電気通信事業者又は第三号事業を営む者内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)は、その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。ただし、当該情報が次に掲げるものである場合は、この限りでない。
一~四 (略)

▽外部送信規律FAQ 問1-8

 外部送信規律に従わなければならない事業者はどのような事業者ですか。

 電気通信事業者又は第三号事業を営む者(いずれも電気通信事業を営む者)で、「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供している電気通信事業者です。「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」については、「1-9」に記載しているとおりです。
 なお、「電気通信事業(電気通信事業法(以下「法」という。)第2条第4号)」を営んでいない場合は、法の適用を受けないので、仮に情報の外部送信が行われていたとしても、外部送信規律の対象にはなりません。

上記②(利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務)が、外部送信規律の適用対象にしたいサービスを指定しているイメージなので、ニュアンスとしては、

”上記②のようなサービスが対象なんだけれども、そもそも上記①のような事業者(電気通信事業者または第三号事業を営む者)であることが前提ですよ”

という感じである(管理人の理解)。

そこで、以下、②→①の順に見てみる。

「利用者に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供する者

「電気通信役務」(法2条3号)

まずそもそも「電気通信役務」が何なのかというと、法2条3号に定義があり、

 電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。

とされている。

イメージとしては、とにかく電気通信設備を他人の通信の用に供していれば、「電気通信役務」にあたる。

他人の通信を媒介するタイプの電気通信役務が、古典的に中核であったため(わかりやすい例では電話)、文言でもその記載があるが、他人の通信を媒介するものに限られない。

memo

 「他人の通信を媒介する」というのは、事業者からみて、他人と他人の通信を媒介する、という意味です。

 「他人の通信の用に供する」には、上記のほか、他人の通信を媒介しないタイプ、つまり、事業者からみて、自分(事業者)と他人との間の通信も含まれます。
(例えば、ユーザーからすれば、事業者のサーバに行って帰ってくるだけの通信。インターネットを利用したデータ通信サービスにはこのようなタイプのものも多い)

 要するに、他人の通信を媒介するものも(比較的古典的なもの)、そうでないものも(比較的新しいもの)、電気通信設備を他人の通信の用に供していれば、「電気通信役務」になります。

「利用者に及ぼす影響が少なくない」(規則22条の2の27)

この電気通信役務のなかで、「利用者に及ぼす影響が少なくない」電気通信役務とは、

  • メッセージ媒介サービス(1号)
    メッセージングアプリなど、特定の利用者間のメッセージ交換をテキスト、音声、画像、動画によって媒介するもの(ビジネスマッチングサイトやオンラインゲームなど、サービスの一部として特定の利用者間でのダイレクトメッセージ機能を提供している場合も含む)
  • SNS、電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等(2号)
    不特定多数の利用者間での、テキスト、音声、画像、動画の投稿・閲覧機能により発信者と閲覧者がやりとりを行う「場」を提供するもの
  • オンライン検索サービス(3号)
    広範なWebサイトのデータベースを構築し、検索語を含むWebサイトのURL等を、利用者に提供するもの
  • ホームページの運営(ニュースサイト、まとめサイト等各種情報のオンライン提供)(4号)
    インターネット経由で天気予報やニュース、映像などの情報を利用者へ提供するもの

とされている(規則22条の2の27)。

概ね、上記①は、他人の通信を媒介するタイプの電気通信役務、上記②~④は、他人の通信を媒介しないタイプの電気通信役務である。

上記②は、いわゆるプラットフォーム型のインターネットビジネスをイメージすればよいと思う。

これらを、ブラウザやアプリケーションを通じて提供しているものが、「利用者に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」である。

「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない」に該当するかどうかは、このように定性的な形で規則に定められているので、ユーザー数が少ないといった定量的な事情では左右されない。

▽外部送信規律FAQ 問1-9、問1-11

 「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」とは、どのような電気通信役務を指していますか。(法第27条の12柱書)

 利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」は、以下のいずれかの電気通信役務のうち、ブラウザやアプリケーションを通じて提供されているものが該当します(電気通信事業法施行規則(以下「規則」という。)第22条の2の27)。
(1) 利用者間のメッセージ媒介等(同条第1号)
(2) SNS、電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等(同条第2号)
(3) オンライン検索サービス(同条第3号)
(4) ニュース配信、気象情報配信、動画配信、地図等の各種情報のオンライン提供(同条第4号)

 当社は先頃新たにニュース配信サイトの運営を開始しましたが、今のところ利用者は多くありません。そのため、当社サービスは「利用者の利益に及ぼす影響」が少ないと考えますがどうでしょうか。(法第27条の12柱書、第4号)

 「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」は、役務の性質により規則第22条の2の27各号で定められています。ニュース配信は、各種情報のオンライン提供として「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」に該当し(規則第22条の2の27第4号)、外部送信規律が適用されます。当該機能を利用するユーザーが少ないことは、「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」であるか否かの判断に影響しません

条文も確認してみる(※【 】は管理人注)。

(利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務)
第二十二条の二の二十七
 法第二十七条の十二の総務省令で定める電気通信役務は、次の各号のいずれかに該当する電気通信役務であつて、ブラウザその他のソフトウェア(利用者が使用するパーソナルコンピュータ、携帯電話端末又はこれらに類する端末機器においてオペレーティングシステムを通じて実行されるものに限る。次条において同じ。)により提供されるものとする。
 他人の通信を媒介する電気通信役務【=メッセージ媒介サービス
 その記録媒体に情報を記録し【=SNSなどサーバに記録し蓄積するタイプ】、又はその送信装置に情報を入力する電気通信を利用者から受信し【=ライブストリーミングなど受信した情報をリアルタイムで送信するタイプ】、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の利用者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務【=電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等
 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して、当該検索情報が記録された全てのウェブページ(通常の方法により閲覧ができるものに限る。次条第三項第一号において同じ。)のドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務【=オンライン検索サービス
 前号に掲げるもののほか、不特定の利用者の求めに応じて情報を送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であつて、不特定の利用者による情報の閲覧に供することを目的とするもの【=ホームページ運営(ニュースサイト、まとめサイト等各種情報のオンライン提供)

なお、事業者が提供するいくつかのサービスのなかに「利用者に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」があるからといって、これ以外の電気通信サービスを提供するときにまで、外部送信規律が適用されるわけではない。

▽外部送信規律FAQ 問1-10

 「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供している事業者は、その事業者の他の電気通信役務(利用者の利益に及ぼす影響が少ない電気通信役務)についても、法第27条の12に基づく義務を負うのでしょうか。(法第27条の12柱書)

 外部送信規律は、「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供する際に情報送信指令通信を行う行為を規律するものであり、他の電気通信役務(利用者の利益に及ぼす影響が少ない電気通信役務)を提供する際の外部送信に関して規律を課すものではありません

「電気通信事業者又は第三号事業を営む者」

以上のような電気通信役務を提供する者であっても、「電気通信事業者」または「第三号事業を営む者」であることが前提である。

外部送信規律の適用対象事業者を見ていくときに一番ややこしいのは、実はこの部分である。

なぜかというと、ここは外部通信規律に限って設けたルールではなく、電気通信事業法の一般的な参入規制の部分なので、電気通信事業法を普通に理解しないとわからないためである。

しかもそれがかなりややこしいが、なるだけコンパクトに全体観を整理してみると、以下のとおりである。

「電気通信事業」と用語の整理

電気通信事業法は、(当然ながら)電気通信事業に関する参入手続を定めているので、まず「電気通信事業」という用語を見てみる(法2条4号)。

「電気通信事業」は、前述の電気通信役務(他人の通信を媒介するものでも、それ以外でも、電気通信設備を他人の通信の用に供すること)を、他人の需要に応ずるために提供する事業である。

 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第百十八条第一項に規定する放送局設備供給役務に係る事業を除く。)をいう。

この「電気通信事業」は、規制をかけようとする内容に応じていろいろな内容に分けられているが、1番目の分岐点は、「回線を設置するかしないか」である。

回線を設置する場合、必ず参入手続が必要で、大規模な回線だと登録が必要、小規模な回線だと届出で足りることになっている。

そして、2番目の分岐点は、「適用除外にあたるか否か」である。

3つの適用除外があるが、そのなかで最も重要なのは、他人の通信を媒介しないことを特徴とする第3号事業なので、実質的には「他人の通信を媒介するかしないか」と言い換えてもいい。

何のことかわかりにくいので、いったん表で整理してみる。

電気通信事業の内容 参入手続 主体を示す用語
電気通信事業
(法2条4号)
回線設置事業 大規模 登録が必要 ”事業者”(「電気通信事業者」)
小規模 届出が必要
回線非設置事業 届出が必要
適用除外(法164条1項) 1号
(専ら一の者に電気通信役務を提供)
登録も届出も不要 ”営む者”(「電気通信事業を営む者」)
2号
(小規模設備等)
登録も届出も不要 ”営む者”(「電気通信事業を営む者」)
3号
(他人の通信を媒介しない、かつ回線非設置)
登録も届出も不要 ”営む者”(「電気通信事業を営む者」)
※特に「第3号事業者」と呼ばれる

概念としては、回線設置事業・非設置事業のなかに適用除外があるので、上記のような並べ方は正確ではないが、一列に並べた方が個人的にはイメージしやすいので、このようにしている(回線を設置しようがしまいが、適用除外にあたれば表の下半分にくる、と思えばいい)。

もうひとつわかりにくのが、「電気通信事業者」と「電気通信事業を営む者」は意味が違う(”事業者”と”営む者”は意味が違う)、という点である。

”事業者”は、登録または届出の参入手続を行った者のことで、「電気通信事業者」である。”営む者”は、参入手続が不要な電気通信事業を営んでいる者のことで、「電気通信事業を営む者」である。

”営む者”のなかでも、3号が重要であるため、特に「第3号事業」という用語が、法文のなかでも定義されている(※1号と2号はそのような定義はされていない)。

このような理解で、「電気通信事業者」と「第3号事業を営む者」の位置づけを視覚的にイメージしてみると、上記の表の黄色アンダーライン部分になる。

そして、表の一番左の列が「電気通信事業」であるように、両者とも電気通信事業を行うことは共通しているわけだが、そこで重要なのは、「他人の需要に応ずるために」電気通信役務を提供していることである。

「電気通信事業者」(法2条5号)と「第3号事業を営む者」(法2条7号イ)

上記の表から、外部送信規律に関する部分に絞って、さらに大ざっぱに整理すると、

  • 「電気通信事業者」
    • 他人の通信を媒介するタイプの電気通信事業を行う者で、そのために登録または届出の参入手続を済ませた”事業者”
  • 「第3号事業を営む者」
    • 他人の通信を媒介しないタイプの電気通信事業を行う者で、それは適用除外にあたるため参入手続が不要なので、参入手続をせずにそのまま事業を”営む者”

ということになる。

条文も確認してみる。

電気通信事業者」は、電気通信事業を営むことについて、登録を受けた者または届出をした者、である(法2条5号)。

 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による届出をした者をいう。

第3号事業を営む者」は、法2条7号イで定義されており、

第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下「第三号事業」という。)を営む者

とされている(該当部分のみ抜粋)。

では、法164条1項は何かというと、電気通信事業法の適用除外を定めている条文で、1号~3号までの適用除外がある。このうち3号が第3号事業と呼ばれるものである。

「あれ?電気通信事業法の適用除外というと、外部送信規律も適用除外になるのでは?」という気もするが、3項で、適用除外であっても適用される条文がいくつか定められており、外部送信規律(法27条の12)もそのなかに入っている。

▽法164条1項、3項(※【 】は管理人注)

(適用除外等)
第百六十四条
 この法律の規定は、次に掲げる電気通信事業については、適用しない
 専ら一の者に電気通信役務(当該一の者が電気通信事業者であるときは、当該一の者の電気通信事業の用に供する電気通信役務を除く。)を提供する電気通信事業【=専ら一の者に電気通信役務を提供する電気通信事業
 その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。)又は同一の建物内である電気通信設備その他総務省令で定める基準に満たない規模の電気通信設備により電気通信役務を提供する電気通信事業【=小規模設備等による電気通信事業
 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務(次に掲げる電気通信役務(ロ及びハに掲げる電気通信役務にあつては、当該電気通信役務を提供する者として総務大臣が総務省令で定めるところにより指定する者により提供されるものに限る。)を除く。)を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業【=他人の通信を媒介するタイプ以外の電気通信事業で、かつ、回線非設置事業
イ ドメイン名電気通信役務
ロ 検索情報電気通信役務
ハ 媒介相当電気通信役務【=利用者登録が必要で、アクティブ利用者数が1000万以上である場合】

 第一項の規定にかかわらず、第三条及び第四条の規定は同項各号に掲げる電気通信事業を営む者の取扱中に係る通信について、第二十七条の十二、第二十九条第二項(第四号に係る部分に限る。)、第百五十七条の二、第百六十六条第一項、第百六十七条の二、第百八十六条(第三号中第二十九条第二項に係る部分に限る。)及び第百八十八条(第十七号中第百六十六条第一項に係る部分に限る。)の規定は第三号事業を営む者について、それぞれ適用する

具体例

最後に、適用対象事業者に関する2つの要件の対応関係をまとめてみると、概ね、

「利用者に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供する者 電気通信事業者又は第三号事業を営む者
①メッセージ媒介サービス(1号) 他人の通信を媒介するタイプの電気通信事業
(参入手続要)
「電気通信事業者」
②SNS、電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等(2号) 他人の通信を媒介するタイプ以外の電気通信事業
(第3号事業)
「第三号事業を営む者」
③オンライン検索サービス(3号)
④ホームページの運営(ニュースサイト、まとめサイト等各種情報のオンライン提供)(4号)

のようになっている。

以上のような理解を前提に、いくつかの例を見てみる。

外部送信規律FAQの具体例

▽外部送信規律FAQ 問1-12、問1-13

 当社は家電小売業者です。実店舗における商品販売が主ですが、自社ウェブサイト上でも商品販売を行っています。当社の業務に、外部送信規律は適用されますか。(法第27条の12柱書)

 外部送信規律は、「電気通信事業者又は第三号事業を営む者」に適用されるため(法第27条の12柱書)、「電気通信事業」を営んでいない場合は、規律対象となりません。 小売業者がウェブサイトを開設して商品販売を行う場合は、本来業務である小売業の遂行の手段として電気通信を用いているに過ぎず、自己の需要のために電気通信サービスを提供しているため、「電気通信事業に該当せず、外部送信規律も適用されません。

 当社は家電小売業者です。実店舗における商品販売は行っておらず専ら自社ウェブサイト上で商品販売を行っています。当社の業務に、外部送信規律は適用されますか。(法第27条の12柱書)

 実店舗における商品販売を行っていない場合であっても、本来業務である小売業の遂行の手段として電気通信を用いているに過ぎないことには変わりはないため、Q1-12のケースと同様、外部送信規律は適用されません。

これらは、上記④の「ホームページの運営」にあたるかどうかが気になる事例だが、いずれも、他人の需要に応ずるために電気通信役務を提供するものとはいえないので、「電気通信事業」に該当せず、「第三号事業を営む者」にあたらないので、適用対象事業者とならない、という話である。

▽外部送信規律FAQ 問1-14

 当社は家電小売業者ですが、家電小売業とともに、オンラインショッピングモールも運営しています。当社の業務に、外部送信規律は適用されますか。(法第27条の12柱書)

 オンラインショッピングモールのような、インターネット経由で複数の店舗でネットショッピングを行うことができる又は複数の出品者の商品等を購入できる「場」を提供するサービスは「電気通信事業に該当し、さらに、「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務にも該当しますので(規則第22条の2の27第2号)、外部送信規律が適用されます。なお、ここでいう「複数の店舗」については、当該店舗がグループ企業等限定的なものであっても、同様です。

これは普通に、上記②の「オンラインショッピングモール」にあたる事例で、かつ、他人の需要に応ずるために電気通信事業を提供しているので「電気通信事業」に該当し、「第三号事業を営む者」にあたる。したがって、適用対象事業者となる。

電気通信ガイドライン解説の具体例

電気通信ガイドライン解説にもいくつかの具体例が示されており、まとめると以下のようになる(電気通信ガイドライン7-1-2-⑷参照)。

【該当しない例】

  1. 情報発信を行う企業・個人・自治会等のホームページについて、自己の情報発信のために運営している場合
    • 自己の需要のために電気通信役務を提供しているのであって、「他人の需要に応ずるために提供」しているものではないから、「電気通信事業」に該当せず、電気通信事業法の規律の適用対象とならない
  2. 金融事業者による証券・金融商品等についてのオンライン販売
  3. 金融事業者によるオンライン取引等及びその取引等に必要な株価等のオンライン情報提供
  4. 小売事業者によるモノ・商品についてのオンライン販売
  5. メーカーによる製造した商品についてのオンライン販売
    • 電気通信役務の提供を必ずしも前提としない、別の自らの本来業務の遂行手段としてオンラインを活用している場合(ネット専業など実店舗を有していない場合を含む)は、自己の需要のために電気通信役務を提供しているため、同様に「電気通信事業」に該当せず、電気通信事業法の規律の適用対象とならない

【該当する例】

  1. 金融事業者が証券・金融商品等についてのオンライン販売のウェブサイトにおいて、オンライン取引等とは独立した金融情報のニュース配信を行っている場合
    • 本来業務の遂行手段としての範囲を超えて、独立した事業としてオンラインサービスを提供している場合には、そのオンラインサービスは「電気通信事業」に該当する可能性もある
    • 上記のようなニュース配信は、情報の送信(電気通信役務の提供)の事業として独立していると考えられ、「電気通信事業」に該当する

「他人の需要に応ずるため」とは?

 そうすると気になるのは、電気通信事業の定義のなかにある「他人の需要に応ずるため」(他人性)とは何なのか?ということになりますが、一般論としては以下のように解説されています。

▽参入マニュアル追補版1-⑵ 用語の説明

 自らの業務のために電気通信役務を提供するのではなく、他人の需要に応ずるために電気通信役務を提供することをいう。
 一方で、ある者が自らの業務の遂行に当たって又はそれに付随して電気通信設備を業務上の関係を有する他人との通信の用に供することは、自己の需要に応ずるものと判断され、基本的には、「他人の需要に応ずるため」に当たらない。 つまり、自己の需要に応じて、電気通信役務を必ずしも前提としない本来業務の手段として利用していると判断される。

 自己の需要に応ずるとは、”自己の取引上の通信を扱っている”ということです。

 ただ、結局、続く以下の部分で、グレーな領域は残ることになります。

 ただし、営利目的で電気通信回線や端末機器を他人の通信の用に供する場合は、それにより結果として自らの業務上の通信を行っていても・・・・・・・・・・・・・・・・他人の需要に応ずるために行っていると判断されることがある
 具体的な判断基準としては、
①提供者にサービスの提供の誘因行為や宣言的行為があり、それを示す提供条件があること、
②提供者と利用者との社会的関係から、当該サービスの提供に積極的意思が認められること、
等が挙げられる。

参入マニュアルガイドブックで参考になる例

以上のほか、外部送信規律に的を絞ったものではないが、参入マニュアルガイドブックのなかの「主なオンラインサービスの考え方」において、参入手続が必要な電気通信事業なのか、不要な第3号事業なのか、そもそも電気通信事業に該当しないのか等について、かなり詳しく解説されているので、参考になる。

例えば、『個人のHP(ホームページ)、動画・ブログ等の投稿』については、

分類内容「電気通信事業」該当性
個人の情報発信の手段個人が自らの趣味や知識を発信するために、自らレンタルサーバを借りるなどして、HPを開設するもの。サーバ代の一部を賄うためにHPに少数の広告バナーを貼る場合を含む。自己の情報を発信する手段として電気通信役務を提供しており、電気通信事業に該当しないため、登録及び届出は不要です。
個人の事業として運営個人が、個人事業主として利益を上げる目的で、広告やアフィリエイトプログラムなどを利用した各種情報提供サイト等を運営するためにHPを開設するもの。情報の送信を事業としていると認められ、電気通信事業となります(登録及び届出が不要な電気通信事業(第3号事業))。
動画等の投稿個人が、他社が運営する動画プラットフォームやブログプラットフォームに、自ら作成した動画等のコンテンツを投稿するもの。閲覧数等に応じてプラットフォーム運営者等から報酬を得ている場合を含む。プラットフォーム運営者が提供する電気通信役務を利用しているに過ぎないことから、電気通信事業に該当しないため、登録及び届出は不要です。

とされている。

その他も、同程度の粒度で解説されている。

結び

今回は、個人情報法務ということで、電気通信事業法による外部送信規律のうち適用対象事業者について見てみました。

なお、外部送信規律の根拠法は、個人情報保護法ではなく、電気通信事業法ですが、個人情報保護法の特定分野ガイドラインである電気通信ガイドラインで解説されており、いわゆるCookie等の個人情報保護法でいえば個人関連情報に相当するものを取り扱っていますので、イメージ的には、個人情報法務の関連と捉えた方がわかりやすいように思います。

外部送信規律については、総務省HPの以下のページに解説があります。
外部送信規律|総務省HP

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

本記事に関する参考文献

参考文献

リンクをクリックすると、総務省HPの掲載ページに遷移します

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主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム又は総務省HPの掲載ページに遷移します

【法改正資料等】

  • 令和4年改正法(令和4年法律第70号「電気通信事業法の一部を改正する法律」)
  • 令和4年改正法案(令和4年3月4日提出「電気通信事業法の一部を改正する法律案」)
  • 省令パブコメ(令和5年1月16日付「電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令案等に対する意見募集の結果」)

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