資金決済法

資金決済法を勉強しよう|資金移動業ー資産保全に関する義務(履行保証金)

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今回は、資金決済法を勉強しようということで、資金移動業のうち資産保全に関する義務(履行保証金)について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

資産保全義務

資金移動業者は、利用者から受け入れた資金の100%以上の額を、履行保証金として、供託等によって保全する義務を負っている(法43条1項等)。

資金移動業は、中身は、銀行等が行う為替取引と同じ為替取引であるが、銀行等と異なり財産的基礎に関する厳格な規制や預金者保護のための制度はないので、事業者が破綻した際の被害を抑えるために、資産保全義務を課している。

利用者は、この履行保証金から優先的に弁済を受けることができる(履行保証金の還付。法59条)。

要履行保証額(法43条2項)

要履行保証額(つまり資産保全義務の範囲)は、

要履行保証額=各営業日における未達債務の額+権利の実行の手続に関する費用の額

とされている(法43条2項)(※以下の【 】は管理人注)。

権利実行の手続(還付手続)に関する費用の額も加わっているのは、還付手続にも費用がかかるので、利用者が優先弁済を受ける際は速やかに手続ができるよう、その費用も含めて保全させているためである。

 前項各号の「要履行保証額」とは、資金移動業の種別ごとの各営業日における未達債務の額資金移動業者がその行う為替取引に関し負担する債務の額であって内閣府令で定めるところにより算出した額をいう。以下この章において同じ。)と第五十九条第一項の権利の実行の手続【=還付手続】に関する費用の額として内閣府令で定めるところにより算出した額の合計額(第四十五条の二第一項の規定の適用を受けている資金移動業者が営む第三種資金移動業にあっては、第三種資金移動業に係る各営業日における未達債務の額から当該各営業日における未達債務の額に同項に規定する預貯金等管理割合を乗じて得た額を控除した額と第五十九条第一項の権利の実行の手続に関する費用の額として内閣府令で定めるところにより算出した額の合計額)をいう。ただし、当該合計額が小規模な資金移動業者がその行う為替取引に関し負担する債務の履行を確保するために必要な額として政令で定める額以下である場合には、当該政令で定める額とする。

かなり読みにくいので、簡略化しつつ分節すると、

○資金移動業の種別ごとの各営業日における未達債務の額(資金移動業者が行う為替取引に関し負担する債務の額であって内閣府令で定めるところにより算出した額)
 と
権利の実行の手続に関する費用の額として内閣府令で定めるところにより算出した額
 の
合計額をいう(預貯金等による管理を行っている第三種資金移動業者の場合、各営業日における未達債務の額については、各営業日における預貯金等による管理を行っている額を控除する)
 ただし
○その合計額が最低要履行保証額以下である場合には、最低要履行保証額とする

と記載されている。

「未達債務の額」の算出(資金移動府令11条3項~5項)

要履行保証額のうち「未達債務の額」の算出方法は、原則として、全ての利用者に対して負担する為替取引に関する債務の合計である。

以下の条文で「各営業日における未達債務算出時点において」とされているように、未達債務の額は、営業日ごとに変動することになる。

未達債務算出時点というのは、例えば、17時に営業時間が終了して19時を未達債務算出時点とすることです。

例外的方法が3つあり、

  • 国内外の利用者に対してサービスを提供する場合(3項1号・2号参照)
    • 国内にある利用者に対して負担する債務の額と国外にある利用者に対して負担する債務の額を区分できる場合には、国内にある利用者に対する債務の額のみを未達債務の額とすることができる
  • 反対債権を有する場合(4項1号)
    • 未達債務の額から反対債権の額を控除することができる
  • 第一種資金移動業を営む場合で、未達債務算出時点から供託期限までの間に、資金移動業者が定める履行完了額算出時点を定めた場合(4項2号)
    • 未達債務算出時点での未達債務が履行完了額算出時点での未達債務を上回れば、上回った額を控除することができる

とされている。

条文も確認してみる。

▽資金移動府令11条3項・4項

 未達債務の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額(既に法第五十九条第一項の権利の実行の手続が終了した資金移動業がある場合にあっては当該資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務の額を、為替取引に関し負担する債務の履行を完了した場合として令第十七条第二項に定める場合に該当することとなった資金移動業がある場合にあっては当該資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務の額を、当該各号に定める額から控除した額)とする。
 国内にある利用者に対して負担する債務の額と国外にある利用者に対して負担する債務の額とを区分することができない場合  各営業日における未達債務算出時点において、資金移動業者が全ての利用者に対して負担する為替取引に関する債務の額
 前号に掲げる場合以外の場合  各営業日における未達債務算出時点において、資金移動業者が国内にある利用者に対して負担する為替取引に関する債務の額

 前項の規定にかかわらず、資金移動業者は、次の各号に掲げる場合には、前項各号に定める額から次の各号に定める額を控除した額を未達債務の額とすることができる。
 資金移動業者がその行う為替取引に関し負担する債務に係る債権者である利用者に対して当該為替取引に関する債権を有する場合  当該利用者ごとに算定した当該債権の額(当該債権の額が当該利用者に対し負担する当該債務の額を上回る場合にあっては、当該債務の額)の合計額
 資金移動業者が第一種資金移動業を営む場合であって、前項の規定により算出した額(第一種資金移動業に係るものに限る。)が履行完了額算出時点(未達債務算出時点から供託期限までの間で当該資金移動業者が定める時点をいう。第三十三条第一項第六号において同じ。)を未達債務算出時点とみなして前項の規定の例により算出した額を上回るとき  当該上回る額

「権利の実行の手続に関する費用の額」の算出(資金移動府令11条6項)

要履行保証額のうち「権利の実行の手続に関する費用の額」は、未達債務の額に応じて、以下の2パターンとされている(資金移動府令11条6項)。

未達債務の額権利実行の手続費用の額
未達債務の額が1億円以下であるとき(1号)未達債務の額の5%
未達債務の額が1億円を超えるとき(2号)(未達債務の額ー1億円)×1%+500万円

要するに、1億円までは5%、1億円を超える部分からは1%である。

条文も確認してみる。

 法第四十三条第二項に規定する権利の実行の手続に関する費用の額は、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める方法により算出した額とする。
 未達債務の額(法第四十五条の二第一項の規定の適用を受けている資金移動業者が営む第三種資金移動業にあっては、未達債務の額から当該未達債務の額に預貯金等管理割合(同項に規定する預貯金等管理割合をいう。第二十一条の四第五項第四号及び第五号並びに第二十九条の二第一項第四号において同じ。)を乗じて得た額を控除した額。次号において同じ。)が一億円以下であるとき  当該未達債務の額に百分の五を乗じて得た額
 未達債務の額が一億円を超えるとき  当該未達債務の額から一億円を控除した残額に百分の一を乗じて得た額に五百万円を加えた額

最低要履行保証額(施行令14条)

事業規模が小さな場合であっても資産保全を確実にするため、最低限満たすべき要履行保証額が定められており、これを最低要履行保証額という(法43条2項但書→施行令14条)。

最低要履行保証額は、原則として1000万円である(1号)。

複数の種別の資金移動業を営む場合は、種別の数で除する、とされているので、例えば、第一種と第二種を営む場合は、500万円と500万円の合計1000万円、第一種と第二種と第三種を営む場合は、333万円と333万円と333万円の合計999万円(※1万円未満の端数は切り捨て)、となる。

特殊なのは、第三種資金移動業の場合に預貯金等による資産保全(後述)を行っていて、その割合が100%の場合(つまり未達債務の額の全てを預貯金等によって保全している場合)である(2号)。

この場合、最低要履行保証額は0円とされている。

(最低要履行保証額)
第十四条
 法第四十三条第二項ただし書に規定する政令で定める額は、次の各号に掲げる資金移動業の種別(法第三十八条第一項第七号に規定する資金移動業の種別をいう。以下この章において同じ。)の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 次号に掲げる資金移動業の種別以外の資金移動業の種別 千万円をその資金移動業者が営む資金移動業の種別(同号に掲げる資金移動業の種別を除く。)の数で除して得た額(その額に一万円未満の端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)
 第三種資金移動業(法第三十六条の二第三項に規定する第三種資金移動業をいう。以下この号、第十七条第一項第一号及び第十七条の三第二項第二号において同じ。)(その資金移動業者が営む第三種資金移動業の預貯金等管理割合(法第四十五条の二第一項に規定する預貯金等管理割合をいう。第十七条の三第二項第二号において同じ。)が百分の百である場合に限る。) 零円

資産保全方法

資金移動業者の資産保全方法は、履行保証金の供託が基本的な方法であるが、保全契約や、信託契約の方法によること等も認められており、

  • 履行保証金の供託(法43条)
  • 金融機関等との履行保証金保全契約(法44条)
  • 信託会社等との履行保証金信託契約(法45条)
  • 預貯金等による資金の管理(※第三種資金移動業者のみ)(法45条の2)

という4種類がある。どれを使用してもよく、また複数の方法を併用してもよい。ただし、上記④は第三種資金移動業者のみに認められる方法である。

以下、順に見てみる。

履行保証金の供託(法43条1項)

履行保証金の供託とは、履行保証金を本店の最寄りの供託所に供託することである(法43条1項)。

▽供託についての参考サイト:法務局HP

供託:法務局
供託:法務局

houmukyoku.moj.go.jp

また、金銭だけでなく、債券(国債や地方債など)で供託することも認められている(代用有価証券。3項)。

(履行保証金の供託)
第四十三条
 資金移動業者は、次の各号に掲げる資金移動業の種別に応じ、当該各号に定めるところにより、資金移動業の種別ごとに履行保証金をその本店(外国資金移動業者である資金移動業者にあっては、国内における主たる営業所。第四十八条において同じ。)の最寄りの供託所に供託しなければならない
一・二 (略)

 履行保証金は、国債証券、地方債証券その他の内閣府令で定める債券(社債、株式等の振替に関する法律第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。第四十五条第三項において同じ。)をもってこれに充てることができる。この場合において、当該債券の評価額は、内閣府令で定めるところによる。

第一種資金移動業の場合

第一種資金移動業の場合、履行保証金の算定期間は、各営業日ごととなっており(つまり営業日ごとに計算する)、供託期限は、その各営業日から2営業日以内とされている(法43条1項1号、資金移動府令11条1項)。

供託金額は、要履行保証額以上の額に相当する額、である。

▽法43条1項1号

 第一種資金移動業  各営業日における第一種資金移動業に係る要履行保証額以上の額に相当する額の履行保証金を、当該各営業日から一週間以内で内閣府令で定める期間内において資金移動業者が定める期間内に供託すること。

  ↓ 資金移動府令11条1項

(履行保証金の供託)
第十一条
 法第四十三条第一項第一号に規定する内閣府令で定める期間は、二営業日(日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、同月三日及び十二月二十九日から同月三十一日までの日数は算入しないものとし、一週間を超える場合にあっては、一週間)とする

第二種・第三種資金移動業の場合

第二種・第三種資金移動業の場合、履行保証金の算定期間は、1週間以内で資金移動業者が定める期間ごととなっており(その期間の末日を基準日と呼ぶ)、供託期限は、基準日から3営業日以内とされている(法43条1項2号、資金移動府令11条2項)。

供託金額は、上記の算定期間における要履行保証額の最高額以上の額に相当する額、である。

「要履行保証額」という概念自体は、前述のように、各営業日における・・・・・・・未達債務と権利実行費用の合計額なので(法43条2項)、要履行保証額は営業日ごとに出ます。

”最高額”というのは、そのようにして出た算定期間内の要履行保証額のうちで、最も高かったもの、ということです。

▽法43条1項2号

 第二種資金移動業又は第三種資金移動業  一週間以内で資金移動業の種別ごとに資金移動業者が定める期間ごとに、当該期間における第二種資金移動業又は第三種資金移動業に係る要履行保証額の最高額以上の額に相当する額の履行保証金を、当該期間の末日(第四十五条の二第四項及び第五項並びに第四十七条第一号において「基準日」という。)から一週間以内で内閣府令で定める期間内において資金移動業の種別ごとに資金移動業者が定める期間内に供託すること。

  ↓ 資金移動府令11条2項

 法第四十三条第一項第二号に規定する内閣府令で定める期間は、三営業日(日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、一月二日、同月三日及び十二月二十九日から同月三十一日までの日数は算入しないものとし、一週間を超える場合にあっては、一週間)とする

履行保証金保全契約(法44条)

履行保証金保全契約は、金融機関等が財務(支)局長等からの命令に応じて履行保証金を供託する旨を約する契約のことである。資金移動業者は、金融機関等に対し、保証料を支払う。

命令が出されるのは例えば資金移動業者の破綻時などであり、命令のときまでは実際には供託は行われない。実際に行うときは、命令に係る額(保全金額を上限として法46条の供託命令が出る)の発行保証金を供託することになる。

この保全金額の分については、供託をしないことができる、という定め方になっている。

(履行保証金保全契約)
第四十四条
 資金移動業者は、政令で定めるところにより、その営む資金移動業の種別ごとに履行保証金保全契約政令で定める要件を満たす銀行等その他政令で定める者が資金移動業者のために内閣総理大臣の命令に応じて履行保証金を供託する旨の契約をいう。以下この章において同じ。)を締結し、その旨を内閣総理大臣に届け出たときは、当該履行保証金保全契約の効力の存する間、保全金額(当該履行保証金保全契約において供託されることとなっている金額をいう。以下この章において同じ。)につき、当該種別の資金移動業に係る履行保証金の全部又は一部の供託をしないことができる

履行保証金信託契約(法45条)

履行保証金信託契約は、信託財産として信託しておき、信託会社等が財務(支)局長等からの命令に応じて信託財産を履行保証金の供託にあてる旨を約する信託契約のことである。

信託財産として信託しておく部分のほかは、概ねのイメージは保全契約と共通である。

(履行保証金信託契約)
第四十五条
 資金移動業者は、信託会社等との間で、その営む資金移動業の種別ごとに履行保証金信託契約(当該信託会社等が内閣総理大臣の命令に応じて信託財産を履行保証金の供託に充てることを信託の目的として当該信託財産の管理その他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の信託契約をいう。以下この章において同じ。)を締結し、その旨を内閣総理大臣に届け出たときは、当該履行保証金信託契約に基づき信託財産が信託されている間、当該信託財産の額につき、当該種別の資金移動業に係る履行保証金の全部又は一部の供託をしないことができる
 履行保証金信託契約は、次に掲げる事項をその内容とするものでなければならない。
一 履行保証金信託契約を締結する資金移動業者が行う為替取引(当該履行保証金信託契約に係る種別の資金移動業に係るものに限る。)の利用者を受益者とすること。
二 受益者代理人を置いていること。
三 内閣総理大臣の命令に応じて、信託会社等が信託財産を換価し、供託をすること。
四 その他内閣府令で定める事項
 履行保証金信託契約に基づき信託される信託財産の種類は、金銭若しくは預貯金(内閣府令で定めるものに限る。)又は国債証券、地方債証券その他の内閣府令で定める債券に限るものとする。この場合において、当該債券の評価額は、内閣府令で定めるところによる。

供託命令(法46条)

財務(支)局長等からの供託命令は、法46条に定められている。

(供託命令)
第四十六条
 内閣総理大臣は、資金移動業の利用者の利益の保護のために必要があると認めるときは、履行保証金保全契約若しくは履行保証金信託契約を締結した資金移動業者又はこれらの契約の相手方に対し、保全金額又は信託財産を換価した額の全部又は一部を供託すべき旨を命ずることができる。

預貯金等による資金の管理(法45条の2)

資金移動業における資産保全方法で特徴的な点(前払式支払手段の場合にはない点)は、第三種資金移動業の場合、預貯金等による資産保全が認められていることである。

これは、第三種資金移動業は特に少額な送金を取り扱うため、事業者が破綻した場合のリスクも相対的に小さいので、事業者側の資金繰りの負担を軽減する観点から、供託義務の特例を認めたものである。

供託義務の特例(1項)

第三種資金移動業者は、届出によって、自己の財産と分別管理した預貯金等による資金の管理を行うことができ、その分は供託義務を免れる(法45条の2第1項)。

この場合、未達債務の額のうち預貯金等により管理する割合を決めて(「預貯金等管理割合」)、

未達債務の額×預貯金等管理割合

という形で、預貯金等による管理額が算出されることになる。

この金額については未達債務の額から控除されることになるので(前述の法43条2項括弧書き参照)、供託等を行わなければならない要履行保証額が減る(=供託義務を免れる)、というわけである。

(預貯金等による管理)
第四十五条の二
 資金移動業者(第三種資金移動業を営む者に限る。)は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出したときは、第一号に掲げる日以後、第三種資金移動業に係る履行保証金の全部又は一部の供託をしないことができる。この場合において、当該資金移動業者は、第三種資金移動業に係る各営業日における未達債務の額に第二号に掲げる割合(当該割合を変更したときは、その変更後のもの。以下この条及び第五十九条第一項において「預貯金等管理割合」という。)を乗じて得た額以上の額に相当する額の金銭を第一号に規定する預貯金等管理方法により管理しなければならない。
 第三種資金移動業に係る各営業日における未達債務の額の全部又は一部に相当する額の金銭を、銀行等に対する預貯金この項の規定により管理しなければならないものとされている金銭であることがその預貯金口座の名義により明らかなものに限る。)により管理する方法その他の内閣府令で定める方法(以下この条及び第五十三条第二項第二号において「預貯金等管理方法」という。)により管理することを開始する日
 第三種資金移動業に係る未達債務の額のうち預貯金等管理方法により管理する額の当該未達債務の額に対する割合
 その他内閣府令で定める事項

預貯金等管理に対する監査(2項)

ただし、預貯金等管理方法による管理の状況に関して、公認会計士等による外部監査が義務づけられている(2項)。

 前項の規定の適用を受けている資金移動業者は、預貯金等管理方法による管理の状況について、内閣府令で定めるところにより、定期に、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。以下同じ。)又は監査法人の監査を受けなければならない

履行保証金の取戻し(法47条)ー資金移動業者が取り戻す権利

資金移動業者は、以下のように、一定の場合、供託していた履行保証金を取り戻すことが認められている(法47条)。

取り戻せる場合(法47条各号)取り戻せる額
要供託額を超える履行保証金を保全しているとき(1号)超えている額(施行令17条1項1号)
履行保証金の還付手続が終了したとき(2号)全部の還付か一部の還付かによって異なる額(施行令17条1項2号・3号)
債務の履行を完了したとき(廃業について公告かつ知れている債権者に対する通知を行った後、債務の履行を完了または債権者から申出がない等のとき)(3号→施行令17条2項)全部の廃業か一部の廃業かによって異なる額(施行令17条3項1号・2号)

条文も確認してみる。

▽法47条(※【 】は管理人注)

(履行保証金の取戻し)
第四十七条
 一の種別の資金移動業に係る履行保証金は、次の各号のいずれかに該当する場合には、政令で定めるところにより、その全部又は一部を取り戻すことができる
 直前の基準日(第一種資金移動業にあっては、各営業日)における要供託額(資金移動業者が第四十三条第一項の規定により供託しなければならない履行保証金の額をいう。)が、当該基準日における履行保証金の額、保全金額及び第四十五条第一項に規定する信託財産の額の合計額を下回るとき
 第五十九条第一項の権利の実行の手続【=還付手続が終了したとき
 為替取引に関し負担する債務の履行を完了した場合として政令で定める場合

  ↓ 施行令17条2項

 法第四十七条第三号に規定する政令で定める場合は、資金移動業者が法第六十一条第三項の規定による公告【=廃業の公告】(事業譲渡、合併又は会社分割その他の事由による当該業務の承継に係る公告を除く。)をし、かつ、廃止しようとする資金移動業として行う為替取引に関し負担する債務に係る債権者のうち知れている者には、各別にこれを通知した場合であって、次の各号のいずれかに該当するときとする。
一 廃止しようとする資金移動業として行う為替取引に関し負担する債務を履行したとき
二 資金移動業者がその責めに帰することができない事由によって廃止しようとする資金移動業として行う為替取引に関し負担する債務の履行をすることができない場合であって、内閣府令で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該債務に係る債権者から申出がないとき

履行保証金の還付(法59条)ー利用者が優先弁済を受ける権利

資金移動業に係る為替取引の債権者は、供託等がされている履行保証金について、優先弁済を受ける権利を有する(法59条1項)。

ただし、一定の申出期間内に債権の申出を行わなかった場合、還付手続から除斥され、還付を受けることはできなくなる(2項参照)。

(履行保証金の還付)
第五十九条
 資金移動業者がその営む一の種別の資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務に係る債権者は、当該種別の資金移動業に係る履行保証金について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。ただし、第四十五条の二第一項の規定の適用を受けている資金移動業者がその行う為替取引(第三種資金移動業に係るものに限る。)に関し負担する債務に係る債権者は、当該債務に係る債権については、当該債権の額から当該債権の額に預貯金等管理割合を乗じて得た額を控除した額を限度として、当該権利を有するものとする。
 内閣総理大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合において、資金移動業の利用者の利益の保護を図るために必要があると認めるときは、前項の権利を有する者に対し、六十日を下らない一定の期間内に内閣総理大臣に債権の申出をすべきこと及びその期間内に債権の申出をしないときは当該公示に係る履行保証金についての権利の実行の手続から除斥されるべきことを公示する措置その他の同項の権利の実行のために必要な措置をとらなければならない。
一 前項の権利の実行の申立てがあったとき。
二 資金移動業者について破産手続開始の申立て等が行われたとき。
 (略)

早い話が、資金移動業者が倒産してしまったときは、利用者は、送金のために入れているお金について、履行保証金から還付を受けられる、ということである。ただし、申出期間内に申出しないといけないし、また、全額が戻ってくるとは限らない。

日本資金決済業協会HPに、還付手続の掲載ページがある。
資金移動業還付手続のお知らせ|日本資金決済業協会HP

結び

今回は、資金決済法を勉強しようということで、資金移動業のうち資産保全に関する義務(履行保証金)について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Gov又は金融庁HPの資料(▷掲載ページはこちら)に遷移します

  • 資金決済法(「資金決済に関する法律」)
  • 資金決済法施行令(「資金決済に関する法律施行令」)
  • 前払府令(「前払式支払手段に関する内閣府令」)
  • 資金移動府令(「資金移動業者に関する内閣府令」)
  • 協会府令(「認定資金決済事業者協会に関する内閣府令」)
  • 発行保証金規則(「前払式支払手段発行保証金規則」)
  • 前払ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5.前払式支払手段発行者関係)」)
  • 資金移動ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14.資金移動業者関係)」)
  • 令和2年パブコメ(令和2年4月3日付「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」)
  • 令和3年パブコメ(令和3年3月19日付「『令和2年資金決済法改正に係る政令・内閣府令案等』に関するパブリックコメントの結果等について」)

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