資金決済法

資金決済法を勉強しよう|第三者型前払式支払手段と登録

著作者:frimufilms/出典:Freepik

今回は、資金決済法を勉強しようということで、前払式支払手段のうち第三者型前払式支払手段と登録について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

第三者型前払式支払手段とは(法3条5項)

第三者型前払式支払手段とは、前払式支払手段のうち、発行者以外の第三者(加盟店)に対しても利用できるもののことです。

定義としては、発行者に対してのみ・・利用できる「自家型」以外・・のもの、という書きぶりになっています(法3条5項)。

 この章において「第三者型前払式支払手段」とは、自家型前払式支払手段以外の前払式支払手段をいう。

自家型が「発行者」と「利用者」という二者間の関係であるのに対して、第三者型では「発行者」「利用者」「加盟店」という三者の関係となります。

発行者が、事前に支払いを受けた前払式支払手段をもって、利用者加盟店(=商品・サービスの供給者)の間の決済を担う、という形態です。

具体的には、

① 利用者による前払式支払手段の購入(対価の前払と、前払式支払手段の交付)
 ↓
② 利用者による加盟店での利用(商品・サービスの購入)
 ↓
③ 発行者と加盟店間での利用料金の精算(加盟店が発行者から資金を回収)

というプロセスをたどります。

この枠組みだと、当然のことですが、利用者からすれば、商品・サービスの取引(②)とは全く無関係の発行者に対して対価を前払いしている(①)わけなので、発行者の経済的信用が強く要請されることになります(発行者が金融機能を果たしている)。

また、加盟店の数に特に制限はないので、広範な運用も可能となりますが、万一、その状態で発行者が破綻した場合には、被害も広範に及ぶことになります。

そのため、特に一定レベルの純資産額を有していることなど、事前に発行者の適格性を審査すべく、第三者型については登録制となっています。

第三者型発行者の登録

登録申請(法8条1項)

第三者型は事前の登録制なので、登録をしていない者の発行はそれだけで違法となります。

どの業法領域でも同様ですが、無許可業者、無免許業者、無登録業者、ヤミ〇〇、の類です(ニュアンスには若干の違いも見られますが)。

また、法人に限られていますので、個人(自然人)はそもそも発行が認められていません。

(第三者型発行者の登録)
第七条
 第三者型前払式支払手段の発行の業務は、内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ、行ってはならない

そのため、第三者型前払式支払手段を発行したい法人は、事前に登録を申請して、登録を受けなければなりません(法8条)。

(登録の申請)
第八条
 前条の登録を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
 (略)
 前項の登録申請書には、第十条第一項各号に該当しないことを誓約する書面、財務に関する書類その他の内閣府令で定める書類を添付しなければならない。

登録申請事由(1号~10号)

登録申請事由は、法8条1項に定められており、

  • 事業者名など(1号)
  • 資本金の額など(2号)
  • 発行業務に係る事務所など(3号)
  • 役員名など(4号)
  • 前払式支払手段の種類、名称及び支払可能金額等(5号)
  • 有効期間・期限(有効期間・期限がある場合)(6号)
  • 前払式支払手段の発行業務の内容・方法(7号)
  • 前払式支払手段の発行業務を委託する場合、委託内容・委託先名など(8号)
  • 苦情相談の受付場所・連絡先など(9号)
  • その他内閣府令で定める事項(10号)
    • 主要株主名など(前払府令15条1号)
    • 他に行っている事業(他に行っている事業がある場合)(2号)
    • 加入する認定協会名(3号)
    • 一般社団法人等(後述のように純資産額が0円で足りるとする場合)において、発行する前払式支払手段の未使用残高から供託等によって資産保全された金額を控除した金額に相当する金額以上の金額の預貯金を預け入れている口座の銀行名など(4号)

となっています。

条文も確認してみます。

▽法8条1項各号

 商号又は名称及び住所
 資本金又は出資の額
 前払式支払手段の発行の業務に係る営業所又は事務所の名称及び所在地
 役員の氏名又は名称
 前払式支払手段の種類、名称及び支払可能金額等
 物品等の購入若しくは借受けを行い、若しくは役務の提供を受ける場合にこれらの代価の弁済のために使用し、又は物品等の給付若しくは役務の提供を請求することができる期間又は期限が設けられているときは、当該期間又は期限
 前払式支払手段の発行の業務の内容及び方法
 前払式支払手段の発行の業務の一部を第三者に委託する場合にあっては、当該委託に係る業務の内容並びにその委託先の氏名又は商号若しくは名称及び住所
 前払式支払手段の発行及び利用に関する利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先
 その他内閣府令で定める事項

  ↓ 前払府令15条

(登録申請書のその他の記載事項)
第十五条
 法第八条第一項第十号に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
 主要株主(総株主等の議決権(令第三条第一項第二号に規定する総株主等の議決権をいう。)の百分の十以上の対象議決権(同条第二項第一号に規定する対象議決権をいう。)に係る株式又は出資を自己又は他人の名義をもって所有している者をいう。第二十条第一項第六号において同じ。)の氏名、商号又は名称
 他に事業を行っている場合にあっては、その事業の種類
 加入する認定資金決済事業者協会の名称
 令第五条第一項第二号ニに規定する預貯金が登録申請者を名義人とする口座において保有されることが当該登録申請者の定める規則に記載されている場合にあっては、当該預貯金を預け入れる銀行等の商号又は名称及び所在地

登録拒否事由(法10条)

登録拒否事由があるときは登録は拒否されますので(法10条)、実質的にこれらが審査の内容になります。

もちろん、虚偽等があった場合も登録拒否されます。

(登録の拒否)
第十条
 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
~九 (略)
 内閣総理大臣は、前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を登録申請者に通知しなければならない。

登録拒否事由は、1項各号に定められており、

  • 登録ができる主体について
    • 法人でない場合(1号)
  • 純資産額について
    • 第三者型発行者に必要とされる純資産額を有しない場合(2号イ)
  • 営利を目的としない法人について
    • 営利を目的としない法人については、政令で定める法人(登録が許容される法人)にあたらない場合(2号ロ)
  • 加盟店に対する措置、支払体制の整備について
    • 加盟店が販売する商品やサービスが公序良俗を害するものでないことを確保するために必要な措置が講じられていない場合(3号)
    • 加盟店に対する支払いを適切に行うために必要な体制が整備されていない場合(4号)
  • 法令遵守体制の整備について
    • 前払式支払手段に関する規定(第2章の規定)の遵守体制が整備されていない場合(5号)
  • 同一・類似商号規制
    • 他の第三者型発行者と同一又は類似の商号を用いようとする場合(6号)
  • 過去3年間の登録の取り消し、刑事罰
    • 過去3年以内に第三者型発行者の登録(相当する外国法令の登録を含む)を取り消されている場合(7号)
    • 過去3年以内に資金決済法(相当する外国法令を含む)の規定により罰金刑に処せられている場合(8号)
  • 役員について
    • 欠格事由を有する役員がいる場合(9号)

となっています。

条文も確認してみます(法10条1項各号)。

【登録ができる主体について】

 法人でないもの(外国の法令に準拠して設立された法人で国内に営業所又は事務所を有しないものを含む。)

【純資産額について】【営利を目的としない法人について】

 次のいずれにも該当しない法人
 イ 純資産額が、発行する前払式支払手段の利用が可能な地域の範囲その他の事情に照らして政令で定める金額以上である法人
 ロ 営利を目的としない法人政令で定めるもの

【加盟店に対する措置、支払体制の整備について】

 前払式支払手段により購入若しくは借受けを行い、若しくは給付を受けることができる物品等又は提供を受けることができる役務が、公の秩序又は善良の風俗を害し、又は害するおそれがあるものでないことを確保するために必要な措置を講じていない法人
 加盟店(前払式支払手段により購入若しくは借受けを行い、若しくは給付を受けることができる物品等の販売者若しくは貸出人又は提供を受けることができる役務の提供者をいう。第三十二条において同じ。)に対する支払を適切に行うために必要な体制の整備が行われていない法人

【法令遵守体制について】

 この章の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていない法人

【同一・類似商号規制】

 他の第三者型発行者が現に用いている商号若しくは名称と同一の商号若しくは名称又は他の第三者型発行者と誤認されるおそれのある商号若しくは名称を用いようとする法人

【過去3年間の登録の取り消し、刑事罰】

 第二十七条第一項若しくは第二項の規定により第七条の登録を取り消され、又はこの法律(この章の規定及び当該規定に係る第八章の規定に限る。以下この項において同じ。)に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録(当該登録に類するその他の行政処分を含む。第九号ホにおいて同じ。)を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない法人
八 この法律又はこの法律に相当する外国の法令の規定により罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。次号ニにおいて同じ。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない法人

【役員について】

 役員のうちに次のいずれかに該当する者のある法人
 イ 心身の故障のため前払式支払手段の発行の業務に係る職務を適正に執行することができない者として内閣府令で定める者
 ロ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者又は外国の法令上これに相当する者
 ハ 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者
 ニ この法律又はこの法律に相当する外国の法令の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者
 ホ 第三者型発行者が第二十七条第一項若しくは第二項の規定により第七条の登録を取り消された場合又は法人がこの法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内にその法人の役員であった者で、当該取消しの日から三年を経過しない者その他これに準ずるものとして政令で定める者

2号イ・ロの補足

 2号イ・ロには、上記のように、政令で定める部分があるので、その点を補足してみます。この政令は、施行令5条になります。

 第三者型発行者に必要とされる純資産額(2号イ)は、①前払式支払手段の利用可能地域が同一の市町村に限られる場合は1000万円、②一般社団法人等で所定の基準を全て満たす場合は0円、③それ以外の場合は1億円、となっています(施行令5条1項1号~3号)。

 ③が原則なので、基本的に1億円です。

▽施行令5条1項

(純資産額の下限等)
第五条
 法第十条第一項第二号イに規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 法第十条第一項の登録申請者の発行する前払式支払手段の利用が可能な地域の範囲が一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。次号において同じ。)の区域内である場合 千万円
 法第十条第一項の登録申請者が次に掲げる基準のいずれにも該当する場合 
 イ 一般社団法人若しくは一般財団法人又は特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人(以下「一般社団法人等」という。)であること。
 ロ その定款に当該登録申請者が前払式支払手段の発行の業務を行う旨及び当該登録申請者が地域経済の活性化又は当該地域の住民相互の交流の促進を図ることを目的とする旨の記載がされていること。
 ハ その発行する前払式支払手段の利用が可能な範囲が一の市町村及びこれに隣接する市町村の区域内であること。
 ニ その発行する前払式支払手段の未使用残高(法第三条第一項第一号の前払式支払手段に係る代価の弁済に充てることができる金額及び同項第二号の前払式支払手段に係る給付又は提供を請求することができる物品等又は役務の数量を金銭に換算した金額の合計額として内閣府令で定めるところにより算出した額をいう。)から法第十四条第一項の規定により供託をした発行保証金の金額並びに法第十五条及び第十六条第一項の規定により供託をしないことができる金額を控除した金額に相当する金額以上の金額の預貯金が当該登録申請者を名義人とする口座において保有されることが当該登録申請者の定める規則に記載されていること。
 ホ その発行する前払式支払手段に当該一般社団法人等の貸借対照表及び損益計算書又はこれに代わる書面の閲覧の請求ができる旨の記載がされていること。
 前二号に掲げる場合以外の場合 一億円

 次に、営利を目的としない法人の場合(2号ロ)、第三者型の登録ができるのは、金融庁長官が告示で定める法律により行政庁の認可を受けて設立される法人に限られます(施行令5条2項)。

 法第十条第一項第二号ロに規定する政令で定めるものは、法律の規定(金融庁長官が告示をもって定めるものに限る。)により行政庁の認可を受けて設立される営利を目的としない法人であって、その定款に前払式支払手段の発行の業務を行う旨の記載がされているものとする。

 この告示は平成22年金融庁告示第17号(▷告示一覧のExcelの掲載ページはこちら)であり、告示で定める法律は、①農業協同組合法、②消費生活協同組合法、③水産業協同組合法、④中小企業等協同組合法、⑤商工会議所法、⑥生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律、⑦中小企業団体の組織に関する法律、⑧商工会法、⑨商店街振興組合法、となっています。

登録(法9条)

上記のような登録拒否事由がなければ、登録がされることになります。

▽法9条1項2項

(第三者型発行者登録簿)
第九条
 内閣総理大臣は、第七条の登録の申請があったときは、次条第一項の規定によりその登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を第三者型発行者登録簿に登録しなければならない。
一 前条第一項各号に掲げる事項
二 登録年月日及び登録番号
2 内閣総理大臣は、前項の規定による登録をしたときは、遅滞なく、その旨を登録申請者に通知しなければならない。

名義貸しの禁止(法12条)

以上で見たように、第三者型では登録制が採られていますので、名義貸しは禁止されています。

これを許すと、事前チェックの意味がなくなるからです(事前の審査を受けず、名義だけ借りて発行業務を行う業者が出てくる)。

(名義貸しの禁止)
第十二条
 第三者型発行者は、自己の名義をもって、他人に第三者型前払式支払手段の発行の業務を行わせてはならない。

第三者型発行者(法3条7項)に対する規制内容

登録をしたら、「第三者型発行者」となり(法3条7項)、資金決済法上の各種の義務を課せられることになります(行為規制)。

 この章において「第三者型発行者」とは、第七条の登録を受けた法人をいう。

行為規制には、主として、

  • 情報提供に関する規制(法13条)
  • 資産保全に関する規制(法14条~19条)
  • 払戻しに関する規制(法20条)
  • 情報管理に関する規制(法21条~21条の3)
  • 監督に関する規制(法22条~29条)

といったものがあります。

書きぶりとしては、「自家型発行者」と「第三者型発行者」を合わせたものとして「前払式支払手段発行者」という用語が設けられていて(法2条1項)、この「前払式支払手段発行者」に対して上記のような行為規制がかけられる、という形になっています(法13条~29条)。

登録業者一覧の公表(法9条3項)

第三者型の登録がなされた業者(第三者型発行者)については、名簿が公表されることになっています(法9条3項)。

 内閣総理大臣は、第三者型発行者登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。

具体的には、金融庁HPの以下のページに掲載されています。
免許・許可・登録等を受けている業者一覧|金融庁HP

結び

今回は、資金決済法を勉強しようということで、前払式支払手段のうち第三者型前払式支払手段と登録について見てみました。

書式については、金融庁HPに、Word版などで提供しているページがあります。
各種手続きにかかる申請様式について|金融庁HP

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

主要法令等

リンクをクリックすると、e-Gov又は金融庁HPの資料(▷掲載ページはこちら)に遷移します

  • 資金決済法(「資金決済に関する法律」)
  • 資金決済法施行令(「資金決済に関する法律施行令」)
  • 前払府令(「前払式支払手段に関する内閣府令」)
  • 資金移動府令(「資金移動業者に関する内閣府令」)
  • 協会府令(「認定資金決済事業者協会に関する内閣府令」)
  • 発行保証金規則(「前払式支払手段発行保証金規則」)
  • 前払ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5.前払式支払手段発行者関係)」)
  • 資金移動ガイドライン(金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14.資金移動業者関係)」)
  • 令和2年パブコメ(令和2年4月3日付「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」)
  • 令和3年パブコメ(令和3年3月19日付「『令和2年資金決済法改正に係る政令・内閣府令案等』に関するパブリックコメントの結果等について」)

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