今回は、景品表示法を勉強しようということで、打消し表示の表示方法のうちWeb広告(PCとスマートフォン)の判断要素について書いてみたいと思います。
打消し表示の適切な表示方法については、以下のように媒体別に判断要素が整理されていますが、
●全媒体共通の判断要素
●紙面広告の判断要素
●動画広告の判断要素
●Web広告(PC)の判断要素 ←本記事はコレと
●Web広告(スマートフォン)の判断要素 ←コレ
本記事は上記のうち黄色ハイライトを引いた箇所の話です。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。
基本的な考え方(打消し表示留意点 第2-1)
打消し表示の表示方法に関する基本的な考え方は、
打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるように適切な表示方法で表示されているか否かについては、打消し表示の文字の大きさ、配置箇所、色等から総合的に判断されるところ、この判断に当たっては、全ての媒体に共通する要素とともに、各媒体で特徴的な要素についても留意する必要がある。
とされている(打消し表示留意点 第2-1)。
全媒体共通、紙面広告、動画広告の判断要素については以下の関連記事に書いているので、
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景品表示法を勉強しよう|打消し表示の表示方法ー全媒体共通、紙面広告、動画広告
続きを見る
本記事では、Web広告(PC)、Web広告(スマートフォン)の判断要素について、順に見てみる。
判断要素(第2-2)
Web広告(PC)(2-(4))
Web広告の特徴としては、
- スクロールしないと画面全体を確認できない場合がある
- 情報を読む際に時間制限がない
- 提供できる文字数に制限がない
といった点が挙げられている。
特にスクロールについては、スクロールが必要な場所に表示された打消し表示は、強調表示と同一画面内に表示された打消し表示に比べて、一般消費者が見ない(読まない)傾向があるため、打消し表示に気付かなかったり、気付いたとしても強調表示との関連性を認識できない可能性がある。
そのため、「強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れているかどうか」(打消し表示留意点2頁参照)という点がまず重要な判断要素となる。
「下に1スクロール」とは、その時点で表示されている画面の行数分だけ「1 画面分下」に移動させることをいう、とされています(打消し表示報告書32頁脚注)。
そして、1スクロール以上離れた場所に表示された打消し表示を一般消費者が認識できるかを判断する際は、
- 強調表示の前後の文脈や強調表示の近くにある記号等から一般消費者が打消し表示の存在を連想するか否かという点に加えて、
※ Web 広告の構成(強調表示を見た一般消費者が打消し表示の場所まで誘導されるような工夫がなされているか)を含む - どの程度スクロールする必要があるのかという点等も勘案される、
とされている。
これらによれば、例えば、
- 強調表示が表示されている位置から1スクロール下に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合
- 打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合
などは、打消し表示の表示方法として適切とはいえない。
Web広告(スマートフォン)(2-(5))
Web広告のなかでもスマートフォンについては、PC等と比べて画面のサイズが小さいため、
- Web ページの表示内容全体を見るために、最初の画面から下に何画面分もスクロールする必要がある縦に長いページの構成になっていたり
- ハイパーリンクを用いてリンク先に情報が表示されたり、
- 一般消費者が画面をタップした際に表示されるアコーディオンパネルに情報が表示されたりする
といった特徴がみられる、とされている。
ハイパーリンクとは、文字列に設定されたリンクのことです。
ほかに、インラインリンクなどもありますが、これは、リンク先のウェブサイトのコンテンツがリンク元に自動的に表示されるように設定されたリンクのことです(例えば、Twitterのタイムラインで流れてくる画像リンクなどはこのインラインリンク)。
アコーディオンパネルとは、要するにクリックで開閉するパネルのことです(クリックで開く、クリックで閉じる)。
スマホ打消し表示報告書(3頁脚注)では、「初期状態では詳細な内容が表示されずに、『ラベル』といわれる項目の見出しのみが表示されており、ラベルをタップした際に、その時点で見ている画面から移動することなく、そのタップしたラベルに関する詳細な内容の表示(パネル)が画面上に表示されるものをいう。」とされています。
スマートフォンの特徴を踏まえると、Web広告(スマートフォン)の場合の判断要素としては、
- アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか
- コンバージョンボタンの配置箇所
- スマートフォンにおける強調表示と打消し表示の距離
- スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさ
- スマートフォンにおける打消し表示の文字とその背景の色や模様
- 他の画像等に注意が引きつけられるか
について留意する必要があるとされている。(打消し表示留意点2~3頁参照)
以下、順に見てみる。
①アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか
アコーディオンパネルに打消し表示が表示されており初期状態では表示されていない場合、一般消費者は、アコーディオンパネルのラベルをタップしなければ打消し表示の内容を認識できない。
そのため例えば、
- 打消し表示が表示されたアコーディオンパネルのラベルに抽象的な表現等が用いられている場合であって、他の表示によってもラベルをタップする必要性に気付かないものである場合
などは、打消し表示の表示方法として適切とはいえない。
通常の画面に強調表示をした上でアコーディオンパネルに打消し表示をする際、求められる表示方法としては、
- 強調表示を見た者がすぐに重要な情報があることを認識できるように、強調表示に近接した箇所にラベルを配置するなどして、強調表示とアコーディオンパネルに表示された打消し表示とが一体として認識されようにすること
- アコーディオンパネルに表示された打消し表示の内容を、通常の画面において強調表示に隣接した箇所に表示すること
- 強調表示が画面に表示された際に、打消し表示の表示されたアコーディオンパネルのラベルを一般消費者が必ずタップするように工夫すること
などが挙げられている。
②コンバージョンボタンの配置箇所
Web ページ上にコンバージョンボタンがある場合、一般消費者はコンバージョンボタンをタップしそのままリンク先に遷移することで、打消し表示を見落とすおそれがある。
特に、コンバージョンボタンがある画面から下にスクロールしないと打消し表示が表示されない場合など、コンバージョンボタンから離れた別の画面に打消し表示が表示されているときは、そのおそれが高い。
コンバージョンボタンとは、要するに成約ボタンのことです。
スマホ打消し表示報告書(7頁脚注)では、「コンバージョン(Conversion)とは転換を意味する言葉で、Web マーケティングの分野においては、Web サイトや広告の閲覧者が会員登録や購入等を行い、会員や顧客等に転換するという意味で用いられることがある。この報告書では、一般消費者が Web ページ上で商品・サービスの購入・申込みを行う際にタップするボタンの形状をしたハイパーリンクの文字列をコンバージョンボタンという。」とされています。
そのため例えば、
- コンバージョンボタンが強調表示と同一画面に表示されているのに対し、打消し表示は強調表示から離れた別の画面に表示されている場合であって、強調表示を見てコンバージョンボタンをタップしようとした一般消費者が、他の表示によっても打消し表示に気付かないとき
などは、打消し表示の表示方法として適切とはいえない。
強調表示と共にコンバージョンボタンを用いる際、求められる表示方法としては、
- 強調表示を見た一般消費者が、強調表示の前後の文脈の中で打消し表示の存在を認識できるように表示すること
- 同一画面に強調表示と打消し表示を表示できないような場合は、例えば、画面上に強調表示が表示された時点や、強調表示の表示された画面からスクロールした時点で、一般消費者が特に操作等を行うことなく打消し表示を認識できるようにすること
などが挙げられている。
③スマートフォンにおける強調表示と打消し表示の距離
スマートフォンは最初の画面から下に何画面分もスクロールする必要がある縦に長いページの構成になっている場合があり、強調表示と打消し表示の距離は重要な要素とされている。
スクロールのなかで次々と情報が表示されるため、記憶していた情報を途中で忘れてしまったり、他の情報に注意が引きつけられたりして、離れた別の画面に表示された情報には気付かなかったり、関連性が把握できない場合がある。また、関連性を確認するためにいちいち元の画面まで戻って内容を見直したりすることも普通はあまりない。
そのため例えば、
- 強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、強調表示から離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合であって、他の表示によっても打消し表示に気付かないとき
- 気付くことのできる表示であったとしても、その打消し表示が離れたところに表示された強調表示に対する打消し表示であることを、他の表示によっても認識できないとき
- 強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されていたとしても、他の目立つ画像等に注意が引き付けられる場合
- 打消し表示の文字の大きさ(後記④)、打消し表示の文字とその背景の色や模様(後記⑤)等が適切でない場合で、他の表示によっても打消し表示に気付かないとき
などは、打消し表示の表示方法として適切とはいえない。
求められる表示方法としては、
- 強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示すること
- 強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示する際も、例えば、強調表示と同じ文脈の中で打消し表示を表示することにより、強調表示と打消し表示とが一体として認識されるようにすること
- 打消し表示の文字の量が多く、強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示できないような場合は、画面上に強調表示が表示された時点や、強調表示の表示された画面からスクロールした時点で、一般消費者が特に操作等を行うことなく打消し表示を認識できるようにすること
などが挙げられている。
④スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさ、⑤スマートフォンにおける打消し表示の文字とその背景の色や模様、⑥他の画像等に注意が引きつけられるか
これらは、全媒体共通の判断要素とだいたい似通っており、相互に関連しつつ問題となる。
④スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさについては、
スマートフォンにおいては、例えば、白色の背景に、対照的な黒い文字で打消し表示を行った場合であっても、小さな文字の打消し表示を見にくいと感じる者が一定数いることに注意する必要がある。
とされている。背景とのコントラストが見やすい場合でも、もともと画面が小さいので文字が小さいと打消し表示が見にくいということである。
⑤スマートフォンにおける打消し表示の文字とその背景の色や模様については、
画像を背景に打消し表示の文字を表示する場合、画像の背景の色彩が入り組んでいるようなときは、打消し表示の文字と背景の区別がつきにくく、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがある。
とされている。背景が無地ではなく画像である場合があり、背景画像の色彩が入り組んでいるときは打消し表示が見にくいということである。
⑥他の画像等に注意が引きつけられるかについては、
たとえ、打消し表示の文字と背景の区別がつきやすいように表示されていたとしても、スマートフォンにおいては、一般消費者が自身の関心のある情報だけを拾い読みする特徴があることからも、より印象の強い色の他の表示に注意が引き付けられ、目立たない色で表示された打消し表示に注意が向かないときがある。
とされている。ここでは色が例示されているが、他に目立つ表示がある場合、打消し表示に注意が向かないということである。
求められる表示方法としては、
- 強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示するとともに、例えば、強調表示と打消し表示の文字の色や背景の色を統一することにより、強調表示と打消し表示とが一体として認識できるようにすること
などが挙げられている。
結び
今回は、景品表示法を勉強しようということで、打消し表示の表示方法のうちWeb広告(PCとスマートフォン)について書いてみました。
打消表示留意点と実態調査報告書
強調表示と打消し表示に関する詳細かつ公式な解説としては、平成30年6月7日に消費者庁が公表している「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(当ブログでは「打消し表示留意点」と表記)があります。
「打消し表示留意点」は、それまでに公表されている以下の3つの実態調査報告書の総まとめになっています。
- 「打消し表示に関する実態調査報告書」(平成29年7月14日公表)
【当ブログでは「打消し表示報告書」と表記】 - 「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」(平成30年5月16日公表)
【当ブログでは「スマホ打消し表示報告書」と表記】 - 「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」(平成30年6月7日公表)
【当ブログでは「消費者視線報告書」と表記】
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
参考文献
リンクをクリックすると、Amazonのページ又は消費者庁HPの掲載ページに飛びます
主要法令等
リンクをクリックすると、法令データ提供システム又は消費者庁HPの掲載ページに飛びます
- 景品表示法
- 定義告示(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)
- 定義告示運用基準(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)
- 不実証広告ガイドライン(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針-」)
- 価格表示ガイドライン(「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」)
- 将来価格二重価格表示執行方針(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」)
- 比較広告ガイドライン(「比較広告に関する景品表示法上の考え方」)
- No.1表示報告書(「No.1表示に関する実態調査報告書」)
- 打消し表示留意点(「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」)
- 表示に関するQ&A(消費者庁)