著作権法

著作権法を勉強しよう|実演家の権利-著作隣接権

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今回は、著作権法を勉強しようということで、実演家の権利のうち著作隣接権について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

実演家の著作隣接権

著作隣接権は、無断で実演を利用している者がいたら、それを排除できることができるという禁止権です(著作権と同様に排他的独占権)。

▽著作権法112条1項

(差止請求権)
第百十二条
 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる

もちろん(対価をとって)許諾することもできます。つまり、対価をとって許諾するor無許諾で利用する者がいたらやめさせる、ということです

実際は、特に映画の著作物の場合にワンチャンス主義(こちらの記事参照)により適用除外されているケースが多いので、文字どおり働くケースは意外と少なくなっています

実演家の有する著作隣接権は、

  • 録音権・録画権
  • 放送権・有線放送権
  • 送信可能化権
  • 譲渡権
  • 貸与権

の5つになります。以下、順に見てみます(※特定実演家に関する記述は本記事では割愛)。

録音権・録画権(91条1項)

(録音権及び録画権)
第九十一条
 実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。

「録音」と「録画」の定義は、以下のようになっています。

▽著作権法2条1項13号・14号

十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

要するに、実演の固定です(「物に固定」)。

また、最初の固定だけではなく、固定物から再生して別の固定物に固定することや、固定物を複製することも含まれます(「固定物を増製」)。

放送権・有線放送権(92条1項)

(放送権及び有線放送権)
第九十二条
 実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。

「放送」と「有線放送」の定義は、以下のようになっています。

▽著作権法2条1項8号・9の2号

 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

送信可能化権(92条の2第1項)

(送信可能化権)
第九十二条の二
 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。

送信可能化というのは、要するにアップロードのことです(厳密にいうと、それより少し広い概念)。

①インターネットに接続しているサーバーに→データをアップロード(以下のイ)、②データが記録・入力されているサーバーを→インターネットに接続(以下のロ)、の両方が「送信可能化」とされています(「著作権法」〔第3版〕(中山信弘)318頁参照)。

▽著作権法2条1項9の5

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
 その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

譲渡権(95条の2第1項)

(譲渡権)
第九十五条の二
 実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

「公衆に提供する」なので、特定の人に譲渡するだけのケースはそもそも譲渡権に含まれません。

もちろん無償の場合も含まれますが、実際問題としては要するに、”販売権”(録音物・録画物の販売)のことだと思った方がイメージしやすいかと思います。

貸与権(95条の3第1項)

(貸与権等)
第九十五条の三
 実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。

貸与は、身近な言葉でいうと、レンタルのことです。

貸与権も「公衆に提供する」なので、特定の人に貸与するだけのケースはそもそも貸与権に含まれません。

注意すべきは、貸与権の客体は「商業用レコード」のみ、つまり「音」のみである点というです。

映画など録画物に関する貸与権はそもそもありません

「商業用レコード」の定義は、以下のようになっています。

▽著作権法2条1項7号(含む5号)

 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
 ↓
 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

まとめ

表でざっとまとめてみると、以下のようになります。

著作隣接権内容
録音権・録画権実演を録音し、又は録画する権利
放送権・有線放送権実演を放送し、又は有線放送する権利
送信可能化権実演を送信可能化する権利
譲渡権実演を実演の録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利
貸与権実演を実演が録音されている商業用レコード貸与により公衆に提供する権利

実演家は、これらの権利を専有している(独占的に有している)ということです。

結び

今回は、著作権法を勉強しようということで、実演家の権利のうち著作隣接権について見てみました。

実際は、特に映画の著作物の場合にワンチャンス主義(次の記事参照)により適用除外されているケースが多いため、文字どおり働くケースは意外と少なくなっています。

▽次の記事

著作権法を勉強しよう|実演家の権利-著作隣接権の例外(ワンチャンス主義など)

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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