契約の一般条項

契約の一般条項|誰が税金を払う?契約書の「公租公課条項」をわかりやすく解説

今回は、契約の一般条項ということで、公租公課条項について見てみたいと思います。

不動産の売買や事業譲渡などの契約書を見ていると、「公租公課の負担」といった項目を目にすることがありますよね。これは税金などの負担について定めた条項です。実際にどのように使われているのか、どんな点に注意してドラフトすべきかなどを見ていきましょう。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

公租公課条項は何のためにある?

公租公課条項とは、取引の対象となる物件などにかかる税金(固定資産税や都市計画税など)を、売主と買主のどちらが、どの期間分を負担するかを定めた規定のことです。

税金は、当事者の合意とは関係なく、法律が定める要件を満たした人に課せられます。たとえば、不動産の固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点での固定資産課税台帳に登録された名義人(所有者)に対して課税されます。

しかし、年の途中で不動産を売買して所有者が変わった場合、売主が1年分の税金を全額負担するのは不公平ですよね。

そこで、契約書において「引渡日(実行日)の前日までの分を売主が、引渡日以降の分を買主がそれぞれ負担する」旨を定めておき、後から当事者間で日割計算をして精算する、というのが一般的な取り扱いです。

日割計算の「基準」に注意

税金を日割計算して精算する際、いつからいつまでを「1年」とするかで金額が変わってきます。不動産取引の実務においては、主に2つのパターンが存在します。

  • 暦年基準(1月1日〜12月31日):関東でよく見られる方式です
  • 会計年度基準(4月1日〜翌年3月31日):関西でよく見られる方式です

具体的な違いについて、5月1日に物件の引渡しがあった場合を例に挙げて説明します。

① 暦年基準(1月1日〜12月31日)で精算する場合

暦年基準では1月1日が起算日となります。そのため、1月1日から引渡日の前日である4月30日までの期間(約4ヶ月分)を売主が負担することになります。そして、引渡日である5月1日からその年の12月31日までの期間(約8ヶ月分)を買主が負担します。

納税義務者である売主に対して1年分の税金が請求されるため、買主は自分が負担すべき期間(5月1日〜12月31日)に相当する金額を、売買代金と併せて売主に支払うことで精算を行います。

② 会計年度基準(4月1日〜翌年3月31日)で精算する場合

会計年度基準では4月1日が起算日となります。そのため、4月1日から引渡日の前日である4月30日までの期間(約1ヶ月分)のみを売主が負担することになります。そして、引渡日である5月1日から翌年の3月31日までの期間(約11ヶ月分)を買主が負担することになります。

買主は、この自分が負担すべき長期間(5月1日〜翌年3月31日)に相当する金額を売主に支払うことになります。

このように、同じ「5月1日の引渡し」であっても、暦年基準を採用した場合は買主が約8ヶ月分の公租公課を負担するのに対し、会計年度基準を採用した場合は買主が約11ヶ月分を負担することになり、買主から売主へ支払われる精算金の額が大きく変わることになります。

どちらの基準が法的に正しいというものではありませんが、契約書にどちらの基準で精算するのかを明記しておかないと、後で「計算の前提が違う!」とトラブルになる可能性があるため、しっかりと基準を規定しておく必要があります。

【ポイント】精算はあくまでも私人間の契約

 ここで整理しておきたいポイントは、不動産売買における公租公課の日割精算は、法律で義務づけられたものではなく、あくまで当事者間の任意の合意(契約)だということです。

 役所(課税主体)から見れば、1月1日時点の所有者が1年分の税金を納める義務があり、途中で売買されても知ったことではありません(課税は当事者の合意に関係なく、法定の要件を満たす者に課せられる)。しかしそれでは不公平なので、売主と買主が「契約」によって私的に負担を調整(精算)しているに過ぎません。

 したがって、暦年基準(関東方式)と会計年度基準(関西方式)のどちらが絶対に正しいというものではありません。

「公租公課」の範囲にも注意

「公租公課」に含まれる範囲にも注意が必要なケースがあります。

たとえば、土地の売買契約書に単に「公租公課」とのみ規定されていたケースで、この「公租公課」の中に特別土地保有税も含まれるかどうかが争われた裁判例があります(京都地判平成6年11月14日)。裁判所は、契約書に「公租公課」と表現されているからといって、当然に特別土地保有税が含まれるという慣行や認識が一般に存在するとは認められないとし、買主の負担を否定しました。

その理由として、特別土地保有税が土地の投機的取得を抑制し有効利用を促進するといった独自の政策目的を持って導入されたものであり、固定資産税とは性格が異なることなどが挙げられています。

▽京都地判平成6年11月14日(判時1553号109頁)

結び

公租公課条項は、不動産取引のほか、不動産が絡む取引(プラント、発電所、大型施設etc)でも広く見られる条項です。

基本的な型はあるため通常はそれほど難しいものではないですが、公租公課の精算の基準(暦年か会計年度か)を押さえるほか、後々のトラブルを防ぐためには、実際の案件に応じて、対象となる公租公課の内容を具体的に例示・列挙することが重要なケースもあるなど、いくつかのポイントを意識しておくと役に立ちます。

ひな型を常にそのまま使うのではなく、ケースに応じて目の前の取引に潜むリスクを考え、契約書の文言を作り込んでいきましょう。

契約の一般条項 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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