特定商取引法

特定商取引法|「訪問販売」の規制ルール~訪問販売の類型・法定書面・禁止行為など

2024年12月9日

今回は、特定商取引法ということで、訪問販売規制について見てみたいと思います。

特商法では、消費者が不意打ちを受けやすく、密室で強引な勧誘が行われやすい訪問販売について、悪質なトラブルを防ぎ公正な取引を確保するための規制を設けています。

本記事では、特商法における訪問販売の定義から、事業者に課される規制ルール、消費者の救済制度までをわかりやすく解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




どんな取引が「訪問販売」に該当するか

訪問販売というと、自宅への飛び込み営業をイメージしがちですが、特商法上の定義はそれだけにとどまりません。

  • 自宅や職場などでの取引:事業者の営業所や店舗以外の場所(自宅、勤務先、喫茶店など)で契約の申込みや締結を行うもの
  • キャッチセールス:街頭や路上で呼び止め、営業所や喫茶店などに同行させて契約させるもの
  • アポイントメントセールス:「無料体験に当たった」「特別なお知らせがある」など、販売目的を隠して営業所に呼び出して契約させるもの

消費者が自発的に店舗へ出向いて購入する場合とは異なり、不意打ち性が高く心の準備ができていない状態で勧誘される取引全般が広く対象となっています。

以下、特商法における訪問販売に該当するための要件と、法2条1項の1号と2号の構造的な違いについて、順に解説します。

特定商取引法における訪問販売の要件

特商法2条1項および関係規定(法26条等)に基づき、訪問販売としての規律(書面交付義務、クーリング・オフ、不当行為規制等)の対象となるための要件は、大きく以下の5つの要素に整理されます。

① 主体要件(当事者)

事業者と相手方の要件は以下のとおりです。

  • 事業者:販売業者または役務の提供の事業を営む者(役務提供事業者)です。営利の意思をもって反復継続して取引を行う者を指し、客観的に判断されます。
  • 相手方:購入者等(顧客、申込者、購入者、役務の提供を受ける者)です。主に一般消費者が該当します。

② 場所・態様要件

取引が「営業所等以外の場所」で行われるか(1号)、または「営業所等」であっても「特定顧客」との間で行われること(2号)です。

③ 客体要件(取引対象)

「商品」「特定権利」(保養施設利用権、語学教授を受ける権利等)または「役務(サービス)」です。

2008年の法改正(指定商品制の廃止)により、除外指定された一部の取引を除き、原則としてすべての商品・役務が対象となっています

④ 行為要件

有償の売買契約または役務提供契約の「申込みを受け、若しくは契約を締結して行う」取引です。

⑤ 適用除外(法26条)に該当しないこと

「営業のために若しくは営業として」締結する取引(事業者の事業用取引)、消費者の自発的な請求による来訪(請求訪問・来訪要請)、店舗事業者の定期的な御用聞き・お得意客訪問など、法26条の不適用事由に当たらないことが必要です。

1号(本来の訪問販売)と2号(特定顧客との取引)の違い

特商法2条1項は、訪問販売を、1号(本来の訪問販売=店舗外取引)と2号(店舗等における特定顧客との取引)の2種類の類型に分けて定義しています。

両者の違いは、「契約(申込み・締結)が行われる場所」と「顧客を店舗等へ引き入れる誘引プロセス(特定顧客)の有無」にあります。

【1号と2号の違い】

【1号】 営業所等以外の場所(自宅・路上等) ──(申込み・契約)──> 訪問販売
【2号】 路上等で誘引(特定顧客) ───> 営業所等(店舗)で申込み・契約 ──> 訪問販売

1号:本来の訪問販売(店舗外取引)

場所的要件は、契約の申込みまたは締結が営業所等以外の場所で行われることです。

「営業所等」とは、店舗、代理店、露店・屋台店、固定的施設を備えた陳列販売会場(最低2~3日以上継続して自由に選択できる状態で販売する場所)などを指します。

したがって、消費者の自宅、勤務先、路上、喫茶店、ホテルの客室、1日限りのイベント会場や催眠商法(SF商法)の閉鎖会場などでの取引が1号に該当します。

店舗が存在しない場所での勧誘・契約であるため、消費者が不意打ちを受けやすく、密室性や高圧的勧誘(攻撃性)に晒されやすい点に着目し、取引場所の非店舗性をもって一律に保護対象とします。

▽特商法2条1項1号

第二条 この章及び第五十八条の十八第一項において「訪問販売」とは、次に掲げるものをいう。
一 販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供

▽特商法施行規則1条

(営業所等)
第一条
 特定商取引に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項第一号の主務省令で定める場所は、第一号から第四号まで及び第六号に掲げるものとし、法第五十八条の四において定める場所は第一号から第三号まで、第五号及び第六号に掲げるものとする。
一 営業所
二 代理店
三 露店、屋台店その他これらに類する店
四 前三号に掲げるもののほか、一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの
五 第一号から第三号までに掲げるもののほか、一定の期間にわたり、購入する物品の種類を掲示し、当該種類の物品を購入する場所であつて、店舗に類するもの
六 自動販売機その他の設備であつて、当該設備により売買契約又は役務提供契約の締結が行われるものが設置されている場所

2号:拡張された訪問販売(特定顧客に対する店舗内取引)

2号には、場所的要件のほか、誘引要件があります。

申込みや契約締結が行われる場所自体は、事業者の営業所等(店舗など)です。しかし、その顧客が自発的に来店したのではなく、事業者の積極的な働きかけによって誘引された「特定顧客」であることが要件となります。

特定顧客には以下の2類型があります。

  • キャッチセールス型:営業所等以外の場所(路上等)で呼び止めて営業所等に同行させた者
  • アポイントメントセールス型:電話、郵便、SNS、SMS、チラシ等により、「販売目的を隠して」または「他より著しく有利な条件で契約できると告げて」営業所等への来訪を要請・誘引した者(施行令1条1号・2号)

外形的には店舗(営業所等)における取引ですが、不意打ちで路上から連れ込まれたり、販売目的を隠して呼び出されたりした顧客は、心の準備がないまま店舗(密室)に入るため、店舗外取引と同等の不意打ち性・密室性・心理的圧迫を受けます。そのため、脱法防止および消費者保護の観点から「訪問販売」の概念を拡張して同等の規律を適用しています。

▽特商法2条1項2号

二 販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供

▽特商法施行令1条

(特定顧客の誘引方法)
第一条
 特定商取引に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項第二号の政令で定める方法は、次のいずれかに該当する方法とする。
一 電話、郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは法第四条第二項に規定する電磁的方法(以下「電磁的方法」という。)により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し若しくは拡声器で住居の外から呼び掛けることにより、又は住居を訪問して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること。
二 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、又は住居を訪問して、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあつた者に対して要請する場合を除く。)。

1号と2号の比較まとめ

1号と2号の違いをまとめると、以下のとおりです。

比較項目第1号(本来の訪問販売)第2号(特定顧客との取引)
申込み・契約の場所営業所等以外の場所(自宅、勤務先、路上、喫茶店等)営業所等(店舗、常設営業所等)
顧客の誘引プロセス誘引プロセスは問わない(飛び込み訪問等を含む)事業者の積極的誘引による「特定顧客」であることが必須
代表的な商法形態家庭訪問販売、点検商法、過量販売、催眠商法(SF商法)等キャッチセールス、アポイントメントセールス(就職商法、デート商法等含む)
規制の狙い店舗が存在しない場所での「不意打ち性・密室性」からの保護店舗取引を装う「誘引プロセスの悪質性・連れ込みによる不意打ち性」からの保護

勧誘スタート時のルール:明示義務と再勧誘禁止

不意打ちによるトラブルを防ぐため、事業者が勧誘を始める段階で守るべきルールが定められています。

氏名等の明示義務

勧誘に入る前に、あらかじめ「事業者名(戸籍上の氏名や登記上の名称)」「販売目的である旨」「商品やサービスの種類」を消費者に明確に告げなければなりません。

「点検に来た」「アンケートに答えてほしい」などと嘘の目的を告げて家に上がり込む行為は禁止されています。

▽特商法3条

(訪問販売における氏名等の明示)
第三条
 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。

再勧誘の禁止

消費者が「必要ありません」「断ります」と契約を締結しない意思を示した場合、事業者はその場での継続勧誘や、後日の再勧誘を行うことが禁止されています。

▽特商法3条の2

(契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘の禁止等)
第三条の二
 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手方に対し、勧誘を受ける意思があることを確認するよう努めなければならない。
2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。




契約時のルール:法定書面の交付義務

取引内容の曖昧さによる後日の紛争を防ぐため、事業者は契約の申込みや成立の段階で法定の書面を交付する義務を負っています。

  • 書面の交付タイミング:申込みを受けた際や契約が成立した際に、直ちに交付しなければなりません
  • 書面の記載事項:事業者名・住所・電話番号、担当者名、商品名・数量、支払価格・支払時期、商品の引渡時期に加え、クーリング・オフに関する事項などを明確に記載する必要があります
  • 記載形式のルール:クーリング・オフなどの特に重要な事項については、消費者の注意を引くよう赤枠の中に赤字で記載することが義務付けられています

事業者が書面を交付しない場合や記載漏れ(書面不備)がある場合は、行政処分の対象となるほか、後述するクーリング・オフ期間が延長される民事上の効果が生じます。

申込書面(法4条)と契約書面(法5条)

特商法では、訪問販売において取引条件を明確にし、後日のトラブルを防止するとともに、消費者にクーリング・オフの熟慮期間を与える目的で、事業者に対して法定書面の交付を義務付けています。

  • 法4条(申込み時の書面交付義務):
    訪問販売により、消費者が契約の申込みを行った段階で、事業者が直ちに交付しなければならない書面(いわゆる申込書面)について定めています
  • 法5条(契約締結時の書面交付義務):
    訪問販売により、売買契約や役務提供契約が成立(締結)した段階で、事業者が交付しなければならない書面(いわゆる契約書面)について定めています

申込書面と契約書面の主な相違点(対比構造)

両規定は、取引の段階(フェーズ)、交付のタイミング、記載事項、およびクーリング・オフ起算点との関係において、以下のような違いがあります。

取引の段階(対象となるフェーズ)の違い

法4条(申込み段階)は、販売員にその場で契約を完結させる権限がなく、消費者の申込みを持ち帰って会社で審査・承認する場合や、クレジット会社の与信審査を挟む場合など、契約が未だ成立しておらず申込みにとどまる段階を対象とします。

これに対して、法5条(契約締結段階)は、事業者の承諾や審査が完了し、売買契約や役務提供契約が正式に成立・締結した段階を対象とします。

交付時期(タイミング)の違い

法4条(申込書面)は、「直ちに」 とされており、申込みが完了したその場(対面している現場)で直ちに交付しなければなりません。

法5条(契約書面)は、「遅滞なく」 とされています(原則(5条1項):通常取引・クレジット等)。事業者が持ち帰って契約書を作成・処理する取引実態を考慮し、通常3〜4日以内の交付で足りるとされています。

ただし、例外として、法5条(契約書面)でも、「直ちに」とされる場面が2つあります。

  • 例外①(4条1項ただし書):申込みと同時にその場で契約締結に至った場合は、4条書面の交付は不要となり、5条1項の契約書面をその場で「直ちに」交付します
  • 例外②(5条2項:現金取引):契約締結と同時に商品の引き渡し(役務提供)と代金全額の受領が完了する即時現金取引の場合は、その場で「直ちに」交付しなければなりません

記載事項の違い

制定当初は記載事項に粗密がありましたが、現行の省令上、法4条(申込書面)と法5条1項(契約書面)の記載事項は実質的にほぼ同一です(事業者情報、商品・役務の種類、販売価格、支払時期・方法、引渡時期、クーリング・オフ事項など)。

細かい話になりますが、法定書面におけるクーリング・オフに関する記載について、条文の文言上、4条は「申込みの撤回又は解除」と表現するのに対し、5条1項は契約成立後であるため「契約の解除」に限る旨が念押し的に規定されています。

【ポイント】法5条2項(即時現金取引書面)の特例

 即時現金取引書面では、契約締結時に代金全額の受領と商品の引き渡しが完了しているため、4条1項3号(代金等の支払時期・方法)や同項4号(商品の引渡時期等)など、将来の履行に関する記載事項が免除・簡略化されています。

クーリング・オフ期間(8日間)の起算点との関係

法9条1項ただし書により、クーリング・オフができる8日間の起算日は以下のように規定されています。

  • 原則:5条(契約書面)を受領した日から起算
  • 特例:その日より前に4条(申込書面)を受領している場合は、4条書面を受領した日から起算

したがって、申込み時に4条書面が適切に交付されていれば、契約締結前の申込み段階であっても、その書面受領日からクーリング・オフの8日間のカウントが始まります。

法4条・法5条の相違点・比較まとめ

申込書面と契約書面の違いをまとめると、以下のとおりです。

比較項目法4条(申込書面)法5条1項(契約書面:通常)法5条2項(契約書面:即時現金取引)
取引の段階契約の申込みを受けた段階契約が成立(締結)した段階契約が成立し、引渡し・代金全額受領が完了した段階
交付時期直ちに(その場で)遅滞なく(通常3〜4日以内)
※その場締結時は「直ちに」
直ちに(その場で)
相手方の呼称申込みをした者購入者又は役務の提供を受ける者購入者又は役務の提供を受ける者
主な記載事項共通主要項目全般(支払時期・引渡時期含む)4条と基本同一(クーリング・オフ表現の整理のみ)支払時期・引渡時期等の記載を省略
クーリング・オフ起算点4条書面受領日が起算日となる4条書面がない場合、5条書面受領日が起算日となる5条2項書面受領日が起算日となる(※3,000円未満除く)

実際の運用と背景

なぜ特商法が申込みと契約締結をわざわざ分けて規定しているかというと、訪問販売においては、販売員にその場での契約締結権限がないケース(クレジット審査や本社の承諾が必要なケース)が多いためです。申込み段階で放置される消費者の不安定な立場を保護するため、4条による先行書面交付が義務付けられました。

なお、現在(特にクレジット契約を利用する訪問販売等)では、申込みの段階で複写式の「申込書兼契約書(お客様控え)」を交付し、後日クレジット会社や事業者から承諾通知が届いた時点で、最初に渡した4条書面が自動的に5条の契約書面としての効力を兼ねるような運用が広く行われています。

悪質な勧誘等の禁止(禁止行為)

消費者の適切な判断を狂わせるような不当行為が禁止されており、罰則や行政処分の対象となります。

訪問販売における禁止行為は、

  • 法律が直接禁止している禁止規定(直罰等の対象)
  • 是正指示・業務停止処分の対象となる不当行為(指示等の対象行為)

という2つの枠組みで構成されています。以下、この順番で見てみましょう。

01|直接の禁止行為(法6条)

直接の禁止行為は法6条に規定されており、以下の4つがあります。

  • 不実告知(嘘の説明)の禁止(法6条1項):
    勧誘時やクーリング・オフ等の解約妨害時に、商品の性能・価格・支払時期・解約条件・契約が必要な事情など、重要事項について嘘の説明をする行為
  • 故意の事実不告知(重要事項を隠す行為)の禁止(同条2項):
    勧誘時に、商品や価格、解約条件などの重要な事実について、消費者に不利益になると知りながら意図的に告げない行為
  • 威迫・困惑行為の禁止(同条3項):
    契約させたり解約を妨害するために、大声を出す・入れ墨を見せる・不気味な言動をするなどして消費者を脅し、困惑させる行為
  • 目的隠匿誘引による公衆の出入りしない場所での勧誘禁止(同条4項):
    販売目的を告げずに路上で呼び止めたり(キャッチセールス)、電話等で呼び出したり(アポイントメントセールス)した上で、個室や事務所など一般人が自由に出入りできない場所(例:営業所やカラオケボックスなど)へ連れ込んで勧誘する行為

▽特商法6条

(禁止行為)
第六条
 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第九条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。
3 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。
4 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所等以外の場所において呼び止めて同行させることその他政令で定める方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。

02|指示等の対象行為(法7条)

指示等対象行為については、法7条1項各号に規定されており、以下のようになっています。

  • 債務の履行拒否・不当遅延(法7条1項1号):
    商品の引き渡しを行わなかったり、クーリング・オフや中途解約に伴う返金(原状回復債務)を拒否したり不当に遅らせたりする行為
  • 重要事項の故意の事実不告知(その他重要事項)(同項2号・3号):
    法6条2項で直罰対象となっていない重要事項(例:会員制クラブの実際の混雑状況・利用困難性など)について、勧誘時(2号)や解約妨害時(3号)に故意に告げない行為
  • 過量販売(過量契約)の勧誘(同項4号→規則17条):
    1回の契約で通常必要とされる分量を著しく超える場合や、過去の購入蓄積・すでに過量となっていることを知りながら追加で勧誘する行為
  • その他主務省令で定めるもの(同項5号→規則18条)
    1. 迷惑な勧誘・解約妨害(規則18条1号):
      迷惑を覚えさせるような仕方(例:深夜・早朝(午後9時〜午前8時)の訪問、長時間の居座り、何度も執拗に訪問するなど)で勧誘をし、または申込みの撤回・解除を同様の仕方で妨げる行為
    2. 判断力不足に乗じた販売(同条2号):
      高齢者、若年者、認知症や知的障害のある人など、判断力が不十分な状態に乗じて不必要な契約を締結させる行為
    3. 適合性の原則違反(同条3号):
      顧客の知識、経験、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行う行為(年収に見合わない高額クレジット契約の勧誘等)
    4. 契約書類への虚偽記載の強要・指示(同条4号):
      与信審査などを通すため、消費者に年齢・職業・年収などの嘘の内容を契約書面やクレジット申込書に記入させる行為
    5. 生命保険契約への同意条項の不適切使用(同条5号):
      所定の様式(独立した署名・押印欄、赤枠赤字表示)によらずに、消費者を生命保険等の被保険者とする同意をさせる行為
    6. 支払能力の虚偽申告強要・強制連行・借入誘導(同条6号):
      契約に基づく債務を履行させるため、①年収・預貯金・借入状況等について虚偽の申告をさせる行為、②意に反して貸金業者の営業所や銀行支店等に連行する行為、③個別クレジット契約や金銭借入契約の締結・預貯金引き出しを、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘する行為
    7. 立ちふさがり・つきまとい行為(同条7号):
      路上等の公共の場所において、顧客の進路に立ちふさがったり、しつこくつきまとって勧誘する行為(主にキャッチセールス)
    8. 消耗品の誘導開封(クーリング・オフ妨害)(同条8号):
      クーリング・オフさせない目的で、契約した消耗品(化粧品や健康食品等)をその場で開封・使用させる行為
    9. 電磁的方法による書面交付時の不適切行為(同条9号):
      法定書面の交付に代えて電磁的方法(電子交付)により事項を提供するに際して行う、次のような不適切な行為(イ〜リの9類型)
      • 電磁的提供を希望しないと表示した者に対し手続を進める行為
      • 判断に影響する事項について不実を告げる行為
      • 威迫して困惑させる行為
      • 財産上の利益を供与する行為
      • 書面交付に関し費用徴収等の不利益を与える行為
      • 承諾確認の際に不正な手段で不当な影響を与える行為
      • 確認をせず、またはできない者に電磁的提供をする行為
      • 不正な手段で承諾や受領を代行する行為
      • その他、意に反して承諾・受領させる行為

令和5年(2023年)の契約書面電子化に伴う改正で、規則18条に新しい号(6号・9号)が追加されています。

条文(法7条→規則18条)も確認してみます。

▽特商法7条

(指示等)
第七条
 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項、第四条第一項、第五条第一項若しくは第二項若しくは第六条の規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一 訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約に基づく債務又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。
二 訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(第六条第一項第一号から第五号までに掲げるものを除く。)につき、故意に事実を告げないこと。
三 訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除を妨げるため、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げないこと。
四 正当な理由がないのに訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約であつて日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品若しくは特定権利(第二条第四項第一号に掲げるものに限る。)の売買契約又は日常生活において通常必要とされる回数、期間若しくは分量を著しく超えて役務の提供を受ける役務提供契約の締結について勧誘することその他顧客の財産の状況に照らし不適当と認められる行為として主務省令で定めるもの
五 前各号に掲げるもののほか、訪問販売に関する行為であつて、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの
2 主務大臣は、前項の規定による指示をしたときは、その旨を公表しなければならない。

▽施行規則18条




消費者を守る民事救済ルール

訪問販売で意図しない契約をしてしまった場合、特定商取引法では、消費者を保護するための民事ルールが用意されています。

これらの救済制度は以下の関連記事で詳しく解説していますので、本記事では要点のみ概観します。

あわせて読みたい
特定商取引法|訪問販売規制における民事救済ルール~クーリングオフ・過量販売解除・取消権など

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クーリング・オフ(無条件解約)(法9条)

法定の契約書面を受け取った日から起算して8日間以内であれば、理由を問わず無条件で契約の申込み撤回や解除ができます。

違約金や損害賠償を支払う必要はなく、商品の引き取り費用も事業者負担となります(費用負担ゼロ)。

契約書面が交付されていない場合や記載不備がある場合、あるいは「クーリング・オフはできない」と嘘をつかれて妨害された場合は、8日間が過ぎていてもクーリング・オフを行使できます(書面不備・妨害時の期間延長)。

過量販売の解除権(法9条の2)

通常必要な分量を著しく超える過量販売が行われた場合、契約締結から1年間は契約を解除することができます。

これには、1号(単体過量型)と2号(累積過量型)という、2つの異なる類型が規定されています。

  • 単体過量型(1号):その1つの契約だけで見て、目的物の分量(商品の数量、役務の回数・期間・分量)が、その日常生活において通常必要とされる分量を著しく超えること
  • 累積過量型(2号):個々の契約自体は過量でなくても、既に締結済みの同種契約と合算すると、通常必要とされる分量を著しく超えることとなる、または既に著しく超えていること。この場合は、事業者が過量の事実を知っていたという主観的要件が必要です

不実告知等による取消権(法9条の3)

事業者から嘘の説明(不実告知)を受けたり、重要な事実を隠された(事実不告知)ことにより、勘違い(誤認)して契約してしまった場合、その意思表示を取り消すことができます。

取消権は、追認できる時から1年間(契約時から5年間)行使可能です。

結び

特定商取引法における訪問販売の規制は、

  • 「最初の段階で目的を明示させる」「書面で条件をオープンにさせる」「悪質な勧誘を禁止する」というプロセスへの規制
  • 万が一の際の、クーリング・オフや取消権という救済制度

が、セットになって消費者を守っているものといえます。

今回は、特定商取引法ということで、訪問販売規制について見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

消費者庁「特定商取引法ガイド」に法令等の一覧ページがあります ⇨特定商取引法の条文

参考資料

リンクをクリックすると、特定商取引法ガイドのページに遷移します
  • 逐条解説(「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)」)(消費者庁)

参考サイト・関連団体

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