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ファンド法務|投資事業有限責任組合における投資家のイグジット方法を解説~4つのルート・法律・LPAの構造など

2024年8月7日

今回は、ファンド法務ということで、投資事業有限責任組合における投資家のイグジットについて見てみたいと思います。

LPS(投資事業有限責任組合)における投資家(有限責任組合員:LP)のイグジット(資金回収・換金)には、大きく分けて4つのルートが存在します。本記事ではこれらを順に解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

投資事業有限責任組合(LPS)における投資家のイグジット

日本のLPSは、一般的な投資信託(いつでも基準価額で払戻しができるオープン・エンド型)とは異なり、原則として中途解約ができず流動性が極めて低いという特徴を持っています。

しかし、ファンドの運営プロセスや法的な枠組みの中で、投資家は以下のような方法で最終的な投資回収(イグジット)を図ることになります。

01|投資先企業の売却に伴う収益・元本の分配(最も王道なイグジット)

LPSにおける最も基本かつ本来的に想定されているイグジットの方法は、ファンド(組合)自身が投資先企業の価値を高めて売却し、その得られた利益を投資家に分配するというルートです。

ファンドの運営主体であるGP(無限責任組合員)が、投資先である未公開企業を株式公開(IPO)させたり、他の事業会社やファンドへ相対で売却するトレード・セール(M&A)などの方法によって、投資証券等を処分(イグジット)します。

LPSが投資先を売却して得たキャッシュ(処分収益や投資収益)は、LPS契約(LPA)にあらかじめ定められた分配ルール(ウォーターフォール)に従って、投資家に順次払い戻され、分配されます(投資家への分配)。

一度回収された資金は、原則として再投資に回されることなく、速やかに投資家へ分配されるのが原則です(再投資の制限)。

再投資の制限については、一時的なつなぎ融資であるブリッジ・ファイナンスなど、LPAに特約がある例外的な場合を除きます

02|組合員の地位(ファンド持分)の第三者への譲渡(セカンダリー)

ファンドが満期を迎える前に、投資家(LP)が自分自身の組合員としての地位(ファンド持分)を第三者に売却(譲渡)して、途中で資金を回収する方法です。これをファンドのセカンダリー取引と呼びます。

近年、投資家のExitの多様化や流動性確保のために注目されている手法ですが、実務上および法律(金融商品取引法)上、以下のようなハードルと制限が設けられています。

① GP(無限責任組合員)の承諾が必要

プライベート・エクイティ・ファンドやVCファンドのLPA(組合契約)においては、原則としてGPの書面による事前の承諾がない限り、組合員の地位を譲渡することはできないと制限されているのが通常です。

▽モデルLPA35条1項・2項

第35条 組合員たる地位の譲渡等
1. 有限責任組合員は、無限責任組合員の書面による承諾がある場合を除き、その組合員たる地位について、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権の設定その他一切の処分をすることができない。
2. 無限責任組合員は、合理的な理由なく有限責任組合員による組合員たる地位の譲渡の承諾を拒絶し得ないものとする。なお、…(略)…。

【ポイント】持分処分の禁止との関係

 一見、法律上の組合財産に対する持分処分の禁止(いわゆる組合財産の合有)と矛盾しそうに見えますが、これと組合員たる地位(ファンド持分全体)の譲渡は法的に区別されており、組合契約(LPA)で許容することによって、合有の制限と矛盾することなくセカンダリー取引(地位の譲渡)が可能と解されています。以下3つのポイントで見てみましょう。

1. 組合財産に対する個別の持分は処分できない

 LPS法16条が準用する民法676条1項により、組合財産は組合員の合有とされ、各組合員は組合財産に対する自己の持分を勝手に譲渡したり、担保に入れたり(処分)することはできないとされています。これは、ファンドの投資資産が個別の投資家の都合でバラバラに切り崩され、共同事業(ファンド運営)に支障が出るのを防ぐためです。

2. 組合員たる地位の譲渡は契約で許容できる(通説)

 一方で、個別の財産持分ではなく、組合員としての包括的な地位(ファンド持分そのもの)を第三者に譲り渡すことについては、民法やLPS法に直接の規定はありません。しかし通説では、組合契約においてあらかじめ許容されている場合(または他の組合員の同意がある場合)には、組合員たる地位を譲渡することは可能であると広く解釈されています。LPSにおいても、この民法上の通説を別異に解釈する理由はなく、組合契約(LPA)に規定を設けることで、組合員たる地位の譲渡(セカンダリー取引)は適法に行うことができると整理されています。

3. 両者の関係:地位の譲渡に伴う持分移転は適用外

 では、組合員たる地位を譲渡すれば、当然にそのファンドが持つ財産の持分も一緒に譲受人へ移転することになりますが、これは民法の持分処分禁止のルールに違反しないのでしょうか。

 この点について解釈上は、組合員たる地位の譲渡に伴って発生する持分の移転は、民法上の持分の処分の禁止の適用外であると整理されています。つまり、ファンドの財産を切り崩して勝手に売るような持分単体の処分は許されないが、ファンドのメンバー(組合員)としての箱ごと交代するような地位の譲渡については、契約のルール(GPの承諾など)に従う限り適法であり、それに伴う財産持分の移転も合法である、という切り分けです。

▽モデルLPA34条1項

1. 組合員は、組合財産に対する持分について、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権の設定その他一切の処分をすることができない。但し、次条の規定に従って組合員たる地位を譲渡する場合はこの限りでない

② 金商法(金融商品取引法)による譲渡制限

多くのLPSは、重い登録義務を避けるためにプロ向けの適格機関投資家等特例業務(プロ向け私募の特例)の届出を行って運営されています。

この特例を維持するため、ファンド組成後に、持分が勝手に転売されて一般投資家が50名以上に増えてしまう(=公募になってしまう)ことを防がなければなりません。そこで、持分の譲渡先の制限を契約書(LPA)で課すことになります。

具体的には、投資家が最初に持分を取得する際の属性(プロか、一般か)に応じて、契約書(LPA)に異なる2つのパターンの譲渡制限条項を定めます。

投資家がプロ(適格機関投資家)の場合

適格機関投資家(プロ)が取得した持分は、プロからプロへの譲渡しか認められません。LPAの書き方としては、”適格機関投資家以外の者への譲渡を禁止する”と記載します(モデルLPA35条4項3号参照)。

これは、プロ(銀行や証券会社など)として特例の枠枠で入ってきた持分が、後からこっそり一般投資家にバラ撒かれてしまうのを防ぐため、譲渡する相手の属性を縛っているわけです。

投資家が一般投資家(個人など)の場合

一般投資家(個人など)が取得した持分は、一括譲渡(まるごと全部を1人に譲ること)しか認められません。LPAの書き方としては、”一括して他の一の者に譲渡する場合以外の譲渡を禁止する”と記載します(モデルLPA35条4項4号参照)。

これは、特例業務では「一般投資家は49名以下」という厳格な人数制限があるためです。もし一般投資家が自分の持分を10個に分割して10人の別の個人に売ってしまったら、あっという間に50名を超えて法律違反になってしまいます。これを防ぐため、分割譲渡を禁止し、譲渡の方法を縛っているわけです。

このように、プロの持分は相手の属性(プロ限定)で縛るのに対し、一般投資家の持分は譲渡の方法(分割不可・一括限定)で縛るという違いがあります

03|やむを得ない場合の任意脱退と持分の払戻し

LPS法(および民法の準用)に基づき、投資家はやむを得ない事由(場合)があるときには、組合を任意脱退することが法律上認められています。

▽LPS法11条

(任意脱退)
第十一条
 各組合員は、やむを得ない場合を除いて、組合を脱退することができない。

ちなみに、民法678条(任意脱退)および679条(非任意脱退)は、LPS法16条(民法の準用規定)による準用リストの中に含まれていません

やむを得ない場合

準用はされていませんが、LPS法11条と民法678条2項は、実質的に同じ射程とルールを持つパラレルな関係にあります。

「やむを得ない」の意義の共通性

民法678条2項は「組合の存続期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる」と定めています。

これに対し、必ず存続期間を定める必要があるLPSにおいては(LPS法3条3項7号(絶対的記載事項)など参照)、LPS法11条が「各組合員は、やむを得ない場合を除いて、組合を脱退することができない」と定めています。経済産業省の、モデルLPAとその解説においても、LPS法11条の「やむを得ない場合」は、民法678条の「やむを得ない事由があるとき」と概ね同趣旨であるとされています。

具体例としては、他の組合員による重大な契約違反によって自己の利益が著しく害された場合や、LPSの事業方針が著しく変更されて共同事業を続けることが困難になった場合などが該当するとされています。

強行法規(契約で排除できない)としての解釈の継承

民法678条2項の任意脱退権は、判例(最判平成11年2月23日)・通説において、契約によっても排除できない強行法規(強行規定)であると解釈されています。

LPS法11条の解釈においてもこの最高裁判例のロジックがそのまま引き継がれており、LPS法第11条も強行規定と解されます。したがって、たとえLPA(組合契約)において「本組合の組合員はいかなる理由があっても一切脱退できない」と合意したとしても、その合意は法律上無効となります。

持分の払戻し

脱退が認められた場合、投資家は脱退時の組合財産の状況に従って、自己の持分金額の払戻しを請求することができます。

▽LPS法16条で準用→民法681条

(脱退した組合員の持分の払戻し)
第六百八十一条
 脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならない。
 脱退した組合員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
 脱退の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。

しかし、ファンドの投資・運用期間中において、LPSが保有している組合財産のほとんどは未上場の投資証券等(非公開株式など)です。そのため、脱退する投資家に支払うためのキャッシュ(払戻し資金)がファンドの口座に足りないという事態が容易に生じます。

また、その投資家のためだけに特定の未公開株を一部だけ売却(換価)することも現実的には極めて困難であるため、理論上は認められていても、実際上のハードルは非常に高いのが実態です(実務上の大きな壁=換価の困難さ)。

そのため、モデルLPA41条の後段では、払戻しの権利(債権)自体は脱退時に確定するが、現実に支払われるのは、ファンドが投資先を売却して他のLPに分配を行うタイミングとパラレル(その都度払い)にするというふうに、履行期限を合理的に調整・制限する契約設計を採用しています。

つまり、脱退によってメンバー(出資者)から債権者(払戻し請求権を有する者)へと立場が変わった投資家に対し、ファンドに現金が入ってきた都度、確定した脱退金を分割返済していくということです

▽モデルLPA41条

第41条 脱退組合員の持分及び責任
 脱退組合員は、当該脱退組合員が当該脱退の時点において有していた持分金額に相当する金額の払戻しを受けるものとする。無限責任組合員は、かかる持分金額に相当する金額の払戻しを、第29条に従い他の組合員に対し組合財産の分配を行う場合に、その都度、同条に従い当該脱退組合員に対しても現金又は投資証券等の現物をその累計額が脱退の時点における当該脱退組合員の持分金額に達するまで分配し、これを持分金額の払戻しに充てる方法により行うものとする。

【ポイント】組合員の脱退と精算の法的ルートまとめ

 ここまでの法構造と契約上の根拠をスッキリ整理すると、以下のようになります。

  • 任意脱退できるか?(脱退の可否)
    ⇒ LPS法11条が適用される(直接規定)
    (※民法678条2項は準用されないが、最判平成11年の強行法規性などの解釈はパラレルに引き継がれる)
  • 脱退した後の財産精算はどうするか?(持分払い戻しの根拠)
    ⇒ LPS法16条を介して、民法681条1項・3項が準用される
    (※脱退時の財産状況に応じた持分金額の払戻し請求権が法的に発生する)
  • 実際の契約(モデルLPA)ではどう処理するか?(実務上のドラフティング)
    ⇒ 上記の法律関係を前提としたうえで、
    ・モデルLPA37条1項でやむを得ない理由がある場合の脱退手続を規定し、
    ・モデルLPA41条で、払戻し請求権自体は脱退時に発生する(民法681条準用)が、実際のキャッシュアウトは他のLPへの分配時にパラレルに行う履行期限の調整)ことで、ファンドの破綻を防ぐ

04|組合の解散に伴う残余財産の分配

ファンドの存続期間が満期を迎えたり、目的たる事業の成功(または成功不能)、あるいは組合員全員の合意などによってLPSが解散した場合、投資家は最後の回収を行うことになります。

解散が決定すると、GPまたは選任された清算人が清算業務(現務の結了、債権の回収、債務の弁済)を行います(清算手続)。

LPSのすべての債務を弁済した後に、なお余った残余財産がある場合、清算人はこれを各組合員の出資の価額(出資履行金額)に応じて分配します(残余財産の分配)。

もし解散時点で売却しきれなかった投資先企業の株式等が残っている場合、清算人はそれらを無理に安値で処分するのではなく、時価評価を行った上で投資家へ直接、現物(株式そのもの)として分配(現物分配)し、清算を結了させることも行われます(現物分配の選択肢)。

結び

このように、LPSの投資家にとってのイグジットは、基本的には、①ファンドが投資先を売却したことによる分配金を待つ、あるいは、④ファンドが満期を迎えて解散清算されるのを待つのが大原則です。

しかし、満期前の途中でどうしても資金化したい場合には、②GPの承諾や金商法の厳しい枠内でなんとか買い手を見つけて持分を譲渡する(セカンダリー)か、あるいは、③法的なやむを得ない事由を証明して脱退・払戻しを求める(ただし現金確保のハードルあり)という、かなり限定された方法に頼ることになります。

今回は、ファンド法務ということで、投資事業有限責任組合における投資家のイグジットについて見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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