とある法律職

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。
イソ弁、複数社でのインハウスローヤー、独立開業など経験。弁護士の転職や法務の経験などを発信中。
<背景画像>著作者:Freepik

法務転職

2016/9/28

弁護士の転職物語⑫ー最初の条件交渉が肝心ー

最近、インハウス志望の修習生と話す機会があって、インハウス転職について思い出したことがあるので、書いておきたい。(余談ですがもう修習生って69期なのですね…自分の期がどんどん古くなっていって焦る) それは、最初の条件交渉が肝心、ということである。 インハウス転職活動をしていると、どうしても、条件交渉で自分の希望を述べることについて躊躇することも多いのではないかと思う。つまり、うるせー奴だなと思われて内定とれないのではないか、という懸念である。特に、法律事務所で弁護士として仕事をしながらのインハウス転職で、 ...

法律コラム

2016/9/24

無料相談が弁護士の業務改革?

弁護士の業務改革として「各種法律相談を無償化する」(正確にいうと、有料法律相談とは別に、いろいろなカテゴリで無料法律相談を設けていく)ということが増えているが…個人的には「業務改革」としての意味はないと思う。 意図しているところは、①市民にそういった活動をしていることを知ってもらうことによって弁護士会のプレゼンス(存在感)を高める、②相談の間口を広げることで個々の弁護士としても受任件数を増やしていく、というところだと思う。 しかし、先に無料化した類型の法律相談で、どういう結果になっているのかといった検証も ...

法務転職

2016/9/4

弁護士の転職物語⑪-ミスマッチ-

弁護士の転職物語は10回で終わるはずだったのだが,ぽつぽつ書きたいことを後から思い出すことも出てきたので,続けて書いていきたい。 今回は後ろ向きだがよくある話,というわけで,別に弁護士の転職に限った話ではないが,弁護士の転職物語⑪として,ミスマッチについて書いてみたいと思う。 自分がインハウス転職をしたあと2社目にいった理由のひとつに,訴訟管理があまり面白くなかったというのがある。 自分が企業内弁護士になる前にイソ弁としてお世話になった事務所は,いわゆる一般民事の法律事務所というやつで,古き良き昔の法律事 ...

日記

2023/8/10

モラル・ハラスメント

モラル・ハラスメントが疑われる事案に接している。 モラル・ハラスメントとは、「言葉や態度によって巧みに人の心を傷つける精神的暴力」のことである。ここでいう言葉や態度には、罵倒や中傷だけではなく、沈黙、露骨な溜息といった、サイレントな圧迫も含まれる。(むしろそちらの方が多いのかもしれない。) 自分が事例で接した感想では、モラル・ハラスメントをする人には、社会的地位の高い人が多い。社長とか、所長とか、優秀な研究者とか。実体験として接した事例は3つあるが、大体そういう人である。学歴が高いとか、社会的成功を収めて ...

基礎知識

2016/4/9

法務部の仕事ってどんなの?|契約に関するもの

「法務の仕事ってどんなことをしているのか?」ということは,意外と弁護士でも実はよくわかっていないのではないだろうか。 自分は法律事務所でイソ弁として働いてから,いわゆるインハウスローヤー(企業内弁護士)に転じたが,当時は,法務部が具体的にどんなことをしているのか,法務の仕事の全体像はどんなものなのか,といったことは,正直なところよくわからなかった(想像出来なかった)。 ざっくりと,契約書見たり,労務管理とか債権管理とかしてんのかなあ,といった漠然としたイメージしか持っていなかった。(だからこそ,行ってみた ...

法務転職

2016/3/19

弁護士の転職物語⑩-弁護士業界のもう一つの変化-

弁護士界に起きていると思う2つめの変化を挙げたい。 転職活動をするなかでいろんな弁護士に会ったが,別に世間で有名になっていなくても,従来なかったような多様な働き方を切り拓いている弁護士が数多くいる(単に自分がこれまで知らなかっただけという可能性もあるが)。 例えば,もともとある業界で働いており,その後ロースクールに行って弁護士になり,途中,公認会計士にもなり,別業界のインハウスにもなって,最終的にその元々いた業界に特化した弁護士として独立し活動している人。 (どういうイメージでそのように活動してこられたん ...

法務転職

2016/3/18

弁護士の転職物語⑨-弁護士業界の変化-

今回は,弁護士界に起きていると思う変化を2つ挙げてみたい。 自分はこれまでに2回転職活動を行ったことがあるが,2回目はなんというか大分慣れてきて,比較的落ち着いて色んな事務所・企業の方々とお話しさせていただくことができ,そういった中で感じた感想である。 ひとつは,全国展開型の法律事務所の台頭である。いまさら改めて指摘するまでもないが,業界の人ならいくつかの名前がすぐ浮かぶはずである。また,そこまでメジャーでなくても,同様の方向性を目指しているであろう中規模事務所も多数存在する。 こういった法律事務所は,弁 ...

法務転職

2016/3/17

弁護士の転職物語⑧-インハウスの果たすべき役割-

今回は,インハウスの働き方の具体例をひとつ挙げたい。 自分としては非常に感銘を受けた,ある記事がある。それは,法テラスのスタッフ弁護士が,社会福祉法人のインハウスとして活動し,これを振り返って書いた記事である。(だから正確にいうとインハウス転職の記事ではないのだが。) 具体的には,『自由と正義』2013年6月号99頁,「社会福祉法人の組織内弁護士として」という,浦﨑寛泰弁護士の記事である。 この記事には,社会福祉法人における現場の実情のひとつとして,虐待と虐待でない支援との間にはかなり広いグレーゾーンがあ ...

法律コラム

2016/3/16

法曹人口問題

法曹人口問題,というのは新聞紙上に載ることもしばしばで,そこそこホットな議論であると思うが…。自分は,この議論を聞くたび少々萎える。 どのグループにも,これからこうしたいので人口はこうあるべきなのだ,というポリシーが見えない。数を議論する前に、”こういうことがしたい、だから、数はこういう風であるべきだ”という議論が必要であると思うが、まったく見えない。弁護士界でも,基本的には急激に増えすぎたことへの弊害にどう対応するかという消極的なことしか視野に入っていない。”法曹人口を緩やかに減らすべきか,劇的に減らす ...

法務転職

2016/3/15

弁護士の転職物語⑦-訟務と法務の違い-

前回(転職物語⑥)に続いて,インハウス転職のポジティブな面を指摘したい。 前回,「法律事務所ではできない経験ができる」と書いたが,「訟務」(訴訟業務の意)と「法務」の違いを,2点,対比的に書いてみたい。 ① 隣接分野との関わりの多さ ひとつは,法務の方が訟務よりも法律外の隣接分野との関わりが多い,ということである。 もちろん訟務の方も,事実認定レベルにおいて,あらゆる部分社会の経験則に精通しなければ(首を突っ込まねば)ならないので,法律外の分野との関わりはある。 ただ,個別事例の処理に必要な限度で切り取る ...

法務転職

2016/3/15

弁護士の転職物語⑥-インハウス転職のポジティブ面-

今回はインハウス転職の,ポジティブな面を指摘したい。 それは端的にいうと,「法律事務所ではできない経験ができる」ということである。 (※ここでは「法律事務所」=「紛争処理」という前提) 法務にいくというと,よく周りからある反応は,「紛争のことよくわかってないと法務もできないでしょ」というものであるが,それは違う。 違う,とまでいうと言い過ぎなのだが,法務には法務固有の性質のようなものがあり,紛争からの逆算だけを考えれば良い訳ではない。 トラブルになったときはこうだから…というのは考慮要素のひとつにすぎず, ...

法務転職

2016/3/12

弁護士の転職物語⑤-インハウス転職のネガティブ面-

今回はインハウス転職の,ややネガティブな面を指摘したい。 最近はインハウスローヤー(組織内弁護士)の数も急激に増え(自分もその1人だったが),JILA(ジャイラと読む。日本組織内弁護士協会)の会員も増えて,「インハウス盛り上がってる!」という風潮である。 それはそれで結構なことであるし,よくもわるくも何らかの変化は生まれるだろう。 ただ,なぜ現在こういう風に世の中が動いているのかというと,それは残念ながら端的にいって,弁護士の大量発生による弁護士の値崩れである。 要は会社で勤務するときの年収とそんなに変わ ...