労働法 法改正

同一労働同一賃金の解説④|待遇に関する説明義務の強化

今回は、同一労働同一賃金を勉強しようということで、「公正な待遇の確保」の3本柱のうち2つ目、待遇に関する説明義務の強化について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

改正前後の法令比較

「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」に関して、改正前後の法令を整理して表にすると、以下のとおり。

 

これは、いわゆる働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」平成30年法律第71号)の「公正な待遇の確保」の3本柱のうち、2つ目である。

 

【働き方改革関連法】
Ⅰ 働き方改革の総合的かつ継続的な推進
Ⅱ 長時間労働の是正対応で柔軟な働き方の実現
Ⅲ 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
 ① 不合理な待遇差を解消するための規定の整備 
 ② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化 ←コレ
 ③ 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

 

【パート・有期労働者の場合】

非正規雇用の類型

説明タイミング

説明事項

改正前

改正後

パートタイム労働者

雇入れ時

①待遇の内容等

➢特定事項に関する文書交付等による明示
(パート労働法6条)
➢待遇の内容
(パート労働法14条1項)

➢特定事項に関する文書交付等による明示
(パート・有期労働法6条)
➢待遇の内容
パート・有期労働法14条1項)

 
 

求めに応じ

②待遇決定に際しての考慮事項

パート労働法14条2項

パート・有期労働法14条2項

 

待遇差の内容・理由

なし

有期雇用労働者

雇入れ時

①´待遇の内容等

なし

同上
パートタイム労働者と同様

 
 

求めに応じ

②待遇決定に際しての考慮事項

 

待遇差の内容・理由

 

【派遣労働者の場合】

非正規雇用の類型

説明タイミング

説明事項

改正前

改正後

派遣労働者

雇入れ時

①待遇の内容等

労働者派遣法31条の2第1項

➢待遇の内容
(労働者派遣法31条の2第1項、2項1号)
➢不合理な待遇差を解消するための措置
(同条2項2号)

 
 

派遣時

①待遇の内容等

なし

➢待遇の内容
(同条3項1号)
➢不合理な待遇差を解消するための措置
(同条3項2号)

 

求めに応じ

②待遇決定に際しての考慮事項

労働者派遣法31条の2第2項

同条4項

 

 

待遇差の内容・理由

なし

 

かえってややこしい…??まあ、要するに、パート・有期労働法の6条と14条、労働者派遣法の31条の2を見ればOKかなと。

 

ポイントを絞っていえば、要するに、
説明義務の内容に、従来はなかった「待遇差の内容・理由」の説明を追加した(「求めに応じ」)
従来は説明義務のなかった有期労働者について、パート労働者と同様の規律を導入した
ということである。

 

少し①の意味合いを補足すると、従来、説明義務の対象は基本的に「本人の待遇」に関することのみで、 正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由については説明義務なしだったのだが、それを改めた、ということである。

 

上記①②の視点で、もう一度表を見れば、フムフムとなるかなと(表の太字の部分)。

 

また、説明を求めたことに対する不利益取扱いの禁止もそれぞれの法律で新設されている(パート・有期労働法14条3項、労働者派遣法31条の2第5項)。

 

 

待遇に関する説明義務の強化【パート・有期労働者の場合】

「待遇差の内容・理由」を説明内容に追加した部分を条文で見ておくと、以下のとおり(太字かつ下線の部分)。

 

▽パート・有期労働法(14条2項)

(事業主が講ずる措置の内容等の説明)
第十四条
2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

パート・有期労働指針(「事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」(H30年告示第429号))の関連部分を参考までに以下引用する。

 

▽パート・有期労働指針(第三の二)

二 待遇の相違の内容及び理由の説明
(一)比較の対象となる通常の労働者
 事業主は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等が、短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近いと事業主が判断する通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由について説明するものとする。
(二)待遇の相違の内容
 事業主は、待遇の相違の内容として、次のイ及びロに掲げる事項を説明するものとする。
 イ 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇に関する基準の相違の有無
 ロ 次の(イ)又は(ロ)に掲げる事項
 (イ)通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の待遇の個別具体的な内容
 (ロ)通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の待遇に関する基準
(三)待遇の相違の理由
 事業主は、通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務の内容職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇の相違の理由を説明するものとする。
(四)説明の方法
 事業主は、短時間・有期雇用労働者がその内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により説明することを基本とするものとする。ただし、説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えない。

 

 

待遇に関する説明義務の強化【派遣労働者】

「待遇差の内容・理由」を説明内容に追加した部分を条文で見ておくと、以下のとおり(太字かつ下線の部分)。

 

▽労働者派遣法(31条の2第4項)

(待遇に関する事項等の説明)
第三十一条の二
4 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者から求めがあったときは、当該派遣労働者に対し、当該派遣労働者と第二十六条第八項に規定する比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第三十条の三から第三十条の六までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考盧した事項を説明しなければならない。

 

派遣元指針(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(H30年告示第427号))の関連部分を参考までに以下引用する。

 

▽派遣元指針(第二の九)

九 派遣労働者の待遇に関する説明等
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に対し、労働者派遣法第三十一条の二第四項の規定による説明を行うに当たっては、次の事項に留意すること。
(一)派遣労働者協定対象派遣労働者を除く。以下この及び (一)及び(二)において同じ。)に対する説明の内容
 イ 派遣元事業主は、労働者派遣法第二十六条第七項及び第十項並びに第四十条第五項の規定により提供を受けた情報(十一及び十二において「待遇等に関する情報」という。)に基づき、派遣労働者と比較対象労働者(労働者派遣法第二十六条第八項に規定する比較対象労働者をいう。以下この九において同じ。)との間の待遇の相違の内容及び理由について説明すること。
 ロ 派遣元事業主は、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容として、次の(イ)及び (ロ)に掲げる事項を説明すること。
 (イ)派遣労働者及び比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項の相違の有無
 (ロ)次の(ⅰ)又は(ⅱ)に掲げる事項
  (ⅰ)派遣労働者及び比較対象労働者の待遇の個別具体的な内容
  (ⅱ)派遣労働者及び比較対象労働者の待遇に関する基準
 ハ 派遣元事業主は、派遣労働者及び比較対象労働者の職務の内容職務の内容及び配置変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇の相違の理由を説明すること
(二)協定対象派遣労働者に対する説明の内容
 イ 派遣元事業主は、協定対象派遣労働者の賃金が労働者派遣法第三十条の四第一項第二号に掲げる事項であって同項の協定で定めたもの及び同項第三号に関する当該協定の定めによる公正な評価に基づき決定されていることについて説明すること。
 ロ 派遣元事業主は、協定対象派遣労働者の待遇(賃金、労働者派遣法第四十条第二項の教育訓練及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号)第三十二条の三各号に掲げる福利厚生施設を除く。)が労働者派遣法第三十条の四第一項第四号に基づき決定されていること等について、派遣労働者に対する説明の内容に準じて説明すること。
(三)派遣労働者に対する説明の方法
 派遣元事業主は、派遣労働者が説明の内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により説明することを基本とすること。ただし、説明すべき事項を全て記載した派遣労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えないこと。
(四)比較対象労働者との間の待遇の相違の内容等に変更があったときの情報提供
 派遣元事業主は、派遣労働者から求めがない場合でも、当該派遣労働者に対し、比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに労働者派遣法第三十条の三から第三十条の六までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項に変更があったときは、その内容を情報提供することが望ましいこと。

 

なお、派遣労働者の同一労働同一賃金は別のページになっていて、上記の派遣元指針はこちらのページにある。

 

▽派遣労働者の同一労働同一賃金について|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

 

 

結び

「公正な待遇の確保」のうち、待遇に関する説明義務の強化については以上になります。

 

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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