労働法 法改正

同一労働同一賃金の解説②|均等待遇・均衡待遇【パート・有期労働者の場合】

今回は、同一労働同一賃金の解説ということで、パート・有期労働者における「同一労働同一賃金」の内容について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

改正前後の法令比較

いわゆる働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」平成30年法律第71号)で出来たわけだが、パート・有期労働者の同一労働同一賃金について、改正前後の法令を表で比較すると、以下のとおり(ここがごちゃごちゃしてわかりにくいところだと思う)。

 

非正規雇用の類型

同一労働同一賃金

改正前

改正後

有期労働者

待遇

なし

➢均等待遇:パート・有期労働法9条
➢均衡待遇:パート・有期労働法8条

待遇

労働契約法20条

パートタイム労働者

待遇

パート労働法9条

待遇

パート労働法8条

(※)有期雇用労働者を法の対象に含めることに伴い、法律の名称も変更された
パート労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)
 ↓
パート・有期労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)

 

表のとおり、均待遇に関する規定が有期労働者の方にはなかったのだが、改正前のパート労働法9条と8条を改定(ブラッシュアップ)するとともに、有期労働者も適用対象に含めることにして一本化したわけである。

 

これにより、同一労働同一賃金については、パート労働者、有期労働者ともに同様の規律となった。

 

 

改正後の法令等

同一労働同一賃金の基本的な考え方は、均等待遇・均衡待遇であるということは、前の記事で書いた。

 

では、もう少し具体的に、改正後の法令等では具体的にどんな感じになっているのか?を見ていきたい。

 

パート・有期労働者の同一労働同一賃金に関する改正後の法令等は、主なものを表にすると、以下のとおり。

 

パート・有期労働者

法令

告示

行政解釈
(通達、Q&A等)

解説
(マニュアル等)

同一労働同一賃金

パート・有期労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)等

パート・有期労働指針(「事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」H30告示429)
同一労働同一賃金ガイドライン(「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」H30告430)

改正法施行通達(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」)

➢「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」
➢「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~パートタイム・有期雇用労働法への対応~(業界共通編)」

(※)一部タイトルは溶込み後のものに変更
(※)パート・有期労働指針、同一労働同一賃金ガイドラインは、パート・有期労働法15条1項を受けて策定された指針(告示)
(※)上記の表は、同一労働同一賃金という側面のみ切り取ったもの(=パート・有期労働者に関する法制全般について整理したものでない)

 

表にある法令等は、以下のURLのページに載っている。なお、パート・有期労働者と、派遣労働者とでは、同一労働同一賃金のルールの構造がちょっと違っているので、派遣労働者についてはまた別記事にて…。厚労省HPでも、派遣労働者については別に特集ページが組まれている。

 

▽同一労働同一賃金特集ページ|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

 

同一労働同一賃金ガイドラインについては、以下のページがある。

 

▽同一労働同一賃金ガイドライン|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

 

 

不合理な待遇の禁止(パート・有期労働法8条)=均衡待遇

パート労働者・有期労働者に関して、均待遇を定めているのが、8条である。

 

(不合理な待遇の禁止)
第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

 

分節すると、

①短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、
②当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、
③∟ⅰ業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務内容」)
 ∟ⅱ当該職務の内容及び配置の変更の範囲(「職務内容及び配置の変更範囲」)
 ∟ⅲその他の事情(「その他の事情」)
 のうち
④当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考盧して、
⑤不合理と認められる相違を設けてはならない

という感じ。

 

 

「短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」

ここでいう「待遇」には特に限定はなく、一切の待遇が含まれる。労働時間や労働契約の期間は含まれない。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(6))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(6) 「待遇」には、基本的に、全ての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等の全ての待遇が含まれること。
 一方、短時間・有期雇用労働者を定義付けるものである労働時間及び労働契約の期間については、ここにいう「待遇」に含まれないこと。
 なお、事業主ではなく、労使が運営する共済会等が実施しているものは、対象とならないものであること。

 

 

「当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において」

ここでいう「通常の労働者」に、同一の事業所といったような限定はない。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(3))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(3) 法第8条は、事業主が、短時間・有期雇用労働者と同一の事業所に雇用される通常の労働者や職務の内容が同一の通常の労働者との間だけでなく、その雇用する全ての通常の労働者との間で、不合理と認められる待遇の相違を設けることを禁止したものであること。

 

なお、「通常の労働者」の一般論としては、以下のとおり、正規型の社員(”正社員”)+無期雇用フルタイム労働者(”無期フルタイム”)をいう。
(※フルタイム労働者とは、事業主に雇用される者のうち、所定労働時間が最も長い労働者のこと)

 

▽改正法施行通達(第1の2の(3))

第1 総則(法第1章)
2 定義(法第2条関係)
(3) 法第2条の「通常の労働者」とは、社会通念に従い、比較の時点で当該事業主において「通常」と判断される労働者をいうこと。当該「通常」の概念については、就業形態が多様化している中で、いわゆる「正規型」の労働者が事業所や特定の業務には存在しない場合も出てきており、ケースに応じて個別に判断をすべきものである。具体的には、「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(以下「無期雇用フルタイム労働者」という。)をいうものであること。
 また、法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、「通常」の判断についても業務の種類ごとに行うものであること(「業務の種類」については後出(6)を参照。)。
 この場合において、いわゆる正規型の労働者とは、労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断するものであること。また、無期雇用フルタイム労働者は、その業務に従事する無期雇用労働者(事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者をいう。以下同じ。)のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者のことをいうこと。このため、いわゆる正規型の労働者の全部又は一部が、無期雇用フルタイム労働者にも該当する場合があること。

 

 

「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」

これは、就業の実態をみる考慮要素を示したもので、通常、
① 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務の内容」
② 当該職務の内容及び配置の変更の範囲(「職務の内容及び配置の変更範囲」
③ その他の事情(「その他の事情」
の3つに分けて判断されるので、以下それぞれについて見てみる。

 

職務の内容

「職務の内容」については、以下のとおり長い解説がある。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(4))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(4) 短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同の判断は、第1の4(2)ロ及びハに従い行うものであること。

 

で、第1の4(2)ロは以下のとおり。

 

▽改正法施行通達(第1の4の(2)のロ)

第1 総則(法第1章)
4 事業主等の責務(法第3条関係)
(2) 均衡のとれた待遇の確保の図り方について
ロ 「職務の内容」について
(イ) 定義
 「職務の内容」とは、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいい、労働者の就業の実態を表す要素のうちの最も重要なものであること。
 「業務」とは、職業上継続して行う仕事であること。
 「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指す。責任は、外形的にはとらえにくい概念であるが、実際に判断する際には、責任の違いを表象的に表す業務を特定して比較することが有効であること。
 また、責任の程度を比較する際には、所定外労働も考慮すべき要素の一つであるが、これについては、例えば、通常の労働者には所定外労働を命ずる可能性があり、短時間・有期雇用労働者にはない、といった形式的な判断ではなく、実態として業務に伴う所定外労働が必要となっているかどうか等を見て、判断することとなること。例えば、トラブル発生時、臨時・緊急時の対応として、また、納期までに製品を完成させるなど成果を達成するために所定外労働が求められるのかどうかを実態として判断すること。なお、ワークライフバランスの観点からは、基本的に所定外労働のない働き方が望ましく、働き方の見直しにより通常の労働者も含めてそのような働き方が広まれば、待遇の決定要因として所定外労働の実態が考慮されること自体が少なくなっていくものと考えられるものであること。

 

そして、職務の内容の同一性の判断が最も重要なのだが、その判断手順は以下のとおり。

 

(↓上記の続き)
(ロ) 職務の内容が同一であることの判断手順
 「職務の内容」については、法第8条において考慮され得るとともに、法第9条等の適用に当たって、通常の労働者と短時間労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となる。職務の内容の同一性については、具体的には以下の手順で比較していくこととなるが、「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるものではなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味するものであること。
 したがって、具体的には、「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断し、次いで「責任の程度」が「著しく異なって」いないかを判断するものであること。

 まず、第一に、業務の内容が「実質的に同一」であることの判断に先立って、「業務の種類」が同一であるかどうかをチェックする。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」と判断することとなること。

 他方、業務の種類が同一であると判断された場合には、次に、比較対象となる通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」と言えるものをそれぞれ抽出すること。
 「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、以下の基準に従って総合的に判断すること。
① 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、抽出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断することとなること。なお、抽出した「中核的業務」が一見すると異なっている場合には、当該業務に必要とされる知識や技能の水準等も含めて比較した上で、「実質的に同一」と言えるかどうかを判断するものであること。

 ここまで比較した上で業務の内容が「実質的に同一である」と判断された場合には、最後に両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックすること。そのチェックに当たっては、「責任の程度」の内容に当たる以下のような事項について比較を行うこと。
① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)
② 業務の成果について求められる役割
③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
④ ノルマ等の成果への期待の程度
⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度
 この比較においては、例えば管理する部下の数が一人でも違えば、責任の程度が異なる、といった判断をするのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見るものであること。
 なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要である。

 以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」こととなること。

 

ややこしいが、これも表にするとこんな感じ。上から下へ順に判断していく、ということが書いてある。

 

概念(法の文言)

分類(法の文言)

内容(行政解釈)

職務の内容

業務の内容

業務の種類=職種(厚生労働省編職業分類)
 ↓ 業務の種類が同一といえる

中核的業務(個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なもの)
 ↓ 実質的に同一といえる

責任の程度
 ↓ 責任の程度が著しく異なっているとはいえない

職務の内容が同一

 

 

職務の内容及び配置の変更範囲

「職務の内容及び配置の変更の範囲」についても、以下のとおり長い解説がある。

 

▽改正法施行通達(第1の4の(2)のハ)

第1 総則(法第1章)
4 事業主等の責務(法第3条関係)
(2) 均衡のとれた待遇の確保の図り方について
ハ 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについて
(イ) 定義
① 「職務の内容及び配置の変更の範囲」
 現在の我が国の雇用システムにおいては、長期的な人材育成を前提として待遇に係る制度が構築されていることが多く、このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられている。法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素又は適用要件の一つとして位置付けている。人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等(以下「人事異動等」という。)の有無や範囲を総合判断するものであるが、これを法律上の考慮要素又は適用要件としては「職務の内容及び配置の変更の範囲」と規定したものであること。
 「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、現実にそれらが生じる際には重複が生じ得るものであること。つまり、「職務の内容の変更」とは、配置の変更によるものであるか、そうでなく業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合を指すこと。他方、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあるものであること。
 それらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容又は配置の広がりを指すものであること。
② 同一の範囲
 職務の内容及び配置の変更が「同一の範囲」であるとの判断に当たっては、一つ一つの務の内容及び配置の変更の態様が同様であることを求めるものではなく、それらの変更が及び得ると予定されている範囲を画した上で、その同一性を判断するものであること。
 例えば、ある事業所において、一部の部門に限っての人事異動等の可能性がある者と、全部門にわたっての人事異動等の可能性がある者とでは、「配置の変更の範囲」が異なることとなり、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとは言えないこと。
 ただし、この同一性の判断は、「範囲」が完全に一致することまでを求めるものではなく、「実質的に同一」と考えられるかどうかという観点から判断すること。
③ 「変更されることが見込まれる」
 職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)の同一性を判断することについては、将来にわたる可能性についても見るものであるため、変更が「見込まれる」と規定したものであること。ただし、この見込みについては、事業主の主観によるものではなく、文書や慣行によって確立されているものなど客観的な事情によって判断されるものであること。
 また、例えば、通常の労働者の集団は定期的に転勤等があることが予定されているが、ある職務に従事している特定の短時間・有期雇用労働者についてはこれまで転勤等がなかったという場合にも、そのような形式的な判断だけでなく、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して具体的な見込みがあるかどうかで判断するものであること。
 なお、育児又は家族介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情を配慮した結果として、その労働者の人事異動等の有無や範囲が他と異なることがあるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに当たって、そのような事情を考慮すること。考慮の仕方としては、例えば、通常の労働者や短時間・有期雇用労働者のうち、人事異動等があり得る人材活用の仕組み、運用等である者が、育児又は家族介護に関する一定の事由(短時間・有期雇用労働者についても通常の労働者と同じ範囲)で配慮がなされ、その配慮によって異なる取扱いを受けた場合、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに際しては、その取扱いについては除いて比較することが考えられること。

 

「職務の内容及び配置の変更の範囲」の判断手順は以下のとおり。

 

(↓上記の続き)
(ロ) 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことの判断手順
 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについては、法第9条の適用に当たって、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となる。法第9条に関しては、この検証は、(2)ロ(ロ)において示した手順により、職務の内容が同一であると判断された通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について行うものであること。
 まず、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。
 次に、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。
 転勤が双方ともない場合、及び双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較すること。まずは、職務の内容の変更(事業所内における配置の変更の有無を問わない。)の有無を比較し、この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断するものであること。また、法第8条における「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同についても、上記の観点から判断されるものであること。

 

これも一応先ほどのような表にしておくと、こんな感じ。

 

職務の内容・配置の変更の範囲

転勤の有無及び範囲
 ↓ 実質的に同一

事業所内における職務の内容の変更の有無及び範囲
 ↓ 実質的に同一

職務の内容・配置の変更の範囲が同一

 

 

その他の事情

「その他の事情」については、以下のとおり。

 

ちなみに、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないとされている点や、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることが「その他の事情」にあたりうるとされている点は、長澤運輸最高裁判決の判旨と同様である。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(5))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(5) 「その他の事情」については、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないこと。
 具体例としては、職務の成果能力経験合理的な労使の慣行事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯などの諸事情が「その他の事情」として想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。
 また、ガイドラインにおいて「有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない」とされていることに留意すること。
 さらに、法第 14 条第2項に基づく待遇の相違の内容及びその理由に関する説明については労使交渉の前提となりうるものであり、事業主が十分な説明をせず、その後の労使交渉においても十分な話し合いがなされず、労使間で紛争となる場合があると考えられる。「その他の事情」に労使交渉の経緯が含まれると解されることを考えると、このように待遇の相違の内容等について十分な説明をしなかったと認められる場合には、その事実も「その他の事情」に含まれ、不合理性を基礎付ける事情として考慮されうると考えられるものであること。

 

 

「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考盧して」

これは、3つの考慮事情を全て考慮しないといけないということではなく、不合理性の判断にあたって、個別の待遇の趣旨との関連性を検討すべき考慮事情だけを考慮すればよい(必要な範囲で取り上げればよい)、といった意味である。

 

 

「不合理と認められる相違を設けてはならない」

待遇差の理由は「期間の定めがあることにより」生じたもの、というのが改正前・労働法20条にはあったのだが、そこは自明なので改正法では書かれていないとされている。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(2))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(2)(略) 
 また、法第8条の不合理性の判断の対象となるのは、待遇の「相違」であり、この待遇の相違は、「短時間・有期雇用労働者であることに関連して生じた待遇の相違」であるが、法は短時間・有期雇用労働者について通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ろうとするものであり、法第8条の不合理性の判断の対象となる待遇の相違は、「短時間・有期雇用労働者であることに関連して生じた」待遇の相違であることが自明であることから、その旨が条文上は明記されていないことに留意すること。

 

また、パート・有期労働法8条違反の効果としては、待遇差を設ける部分は無効になるが、自動的に「通常の労働者」の労働条件と同一になるのではないこと、実際の救済としては、不法行為に基づく損害賠償が認められ得ること、とされている。

 

ちなみに、これはハマキョウレックス最高裁判決の判旨と同様である。

 

▽改正法施行通達(第3の3の(7))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
3 不合理な待遇の禁止(法第8条関係)
(7) 法第8条は、(1)のとおり、整備法による改正前の労働契約法第 20 条を統合しつつ、その明確化を図った規定であること。法第8条については、私法上の効力を有する規定であり、短時間・有期雇用労働者に係る労働契約のうち、同条に違反する待遇の相違を設ける部分は無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との待遇の相違が法第8条に違反する場合であっても、同条の効力により、当該短時間・有期雇用労働者の待遇が比較の対象である通常の労働者の待遇と同一のものとなるものではないと解されるものであること。ただし、個々の事案に応じて、就業規則の合理的な解釈により、通常の労働者の待遇と同一の待遇が認められる場合もあり得ると考えられるものであること。

 

 

参考:改正前の議論ー労働契約法20条の解釈

なお、改正前は、有期労働者について均衡待遇に相当する規定が労働契約法20条(※改正により削除)に定められていたのだが、これに関する2つの最高裁判決がある。

 

非正規訴訟のハマキョウレックス事件長澤運輸事件の最高裁判決がそれなのだが、改正法はこの2つの判決を色濃く反映したものとなっていて、パート・有期労働法の8条の解釈についても引き継がれると予想される。

 

これらの判決については、以下の別記事のとおり。

 

▽参考記事|ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件最高裁判決

 

 

差別的取扱いの禁止(パート・有期労働法9条)=均等待遇

次は均待遇の規定である。

 

(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

分節すると、

①職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、
②当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、
(※①②を両方満たす者を「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という)
③短時間・有期雇用労働者であることを理由として、
④基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない

という感じ。

 

判断方法は、以下でシンプルに示されている。要するに、「職務内容」の同一性(上記①)と、「職務内容・配置の変更範囲」の同一性(上記②)が肯定されれば、9条が適用される、ということである。

 

▽改正法施行通達(第3の4の(3))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
4 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止(法第9条関係)
(3) 法第9条の判断に当たっては、具体的には、以下のイ及びロの事項について(4)から(9)までにより行うこととなること。
 イ 職務の内容が通常の労働者と同一であること
 ロ 職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一であること

 

 

「職務の内容が通常の労働者と同一」であること

8条の「職務の内容」の判断方法と同様とされているので、省略する。

 

 

職務の内容及び配置の変更の範囲が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一であることが見込まれる

これも8条の「職務の内容及び配置の変更の範囲」の判断方法と基本的には同様である(以下の、第1の4(2)ハで示したとおり…云々)。

 

▽改正法施行通達(第3の4の(5))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
4 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止(法第9条関係)
(5) (3)ロの「職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一であること」とは、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものであることであり、職務の内容や配置が将来にわたって通常の労働者と同じように変化するかについて判断することとなるものであること。これは、我が国における雇用管理が長期的な人材育成を前提になされていることが多い現状に鑑み、差別的取扱いの禁止の規定の適用に当たっては、ある一時点において短時間・有期雇用労働者と通常の労働者が従事する職務が同じかどうかだけでなく、長期的な人材活用の仕組み、運用等についてもその同一性を判断する必要があるためであること。
 具体的には、第1の4(2)ハで示したとおり同一であるかどうかを判断するものであること。

 

いくつか9条に特有のものもある。以下のとおり。

 

▽改正法施行通達(第3の4の(6))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
4 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止(法第9条関係)
(6) 「当該事業所における慣行」とは、当該事業所において繰り返し行われることによって定着している人事異動等の態様を指すものであり、「その他の事情」とは、例えば人事規程等により明文化されたものや当該企業において、当該事業所以外に複数事業所がある場合の他の事業所における慣行等が含まれるものであること。
 なお、ここでいう「その他の事情」とは、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)を判断するに当たって、当該事業所における「慣行」と同じと考えられるべきものを指すものであり、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する考慮要素としての法第8条の「その他の事情」とは異なるものであること。
(7) 「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」とは、当該短時間・有期雇用労働者が通常の労働者と職務の内容が同一となり、かつ、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が通常の労働者と同一となってから雇用関係が終了するまでの間であること。すなわち、事業主に雇い入れられた後、上記要件を満たすまでの間に通常の労働者と職務の内容が異なり、また、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が通常の労働者と異なっていた期間があっても、その期間まで「全期間」に含めるものではなく、同一となった時点から将来に向かって判断するものであること。
(8) 「見込まれる」とは、将来の見込みも含めて判断されるものであること。したがって、有期雇用労働者の場合にあっては、労働契約が更新されることが未定の段階であっても、更新をした場合にはどのような扱いがされるかということを含めて判断されるものであること。

 

 

基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない

「差別的取扱いをしてはならない」の意味は、以下のとおり(=全ての待遇について差別的取扱いをしてはならない。均待遇)。

 

また、解雇の必要が出てきたときに、パート・有期であることのみをもって先に解雇対象にすることも、差別的取扱いにあたるとされている。

 

▽改正法施行通達(第3の4の(9))

第3 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等(法第3章)
4 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止(法第9条関係)
(9) 法第9条の要件を満たした場合については、事業主は短時間・有期雇用労働者であることを理由として、全ての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等の全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)について差別的取扱いをしてはならないものであること。
 この場合、待遇の取扱いが同じであっても、個々の労働者について査定や業績評価等を行うに当たり、意欲、能力、経験、成果等を勘案することにより個々の労働者の賃金水準が異なることは、通常の労働者間であっても生じうることであって問題とはならないが、当然、当該査定や業績評価は客観的かつ公正に行われるべきであること。また、労働時間が短いことに比例した取扱いの差異として、査定や業績評価が同じである場合であっても賃金が時間比例分少ないといった合理的な差異は許容されることは、言うまでもないこと。
 なお、経営上の理由により解雇等の対象者の選定をする際は、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者については、労働時間が短いことのみをもって通常の労働者より先に短時間労働者の解雇等をすることや、労働契約に期間の定めのあることのみをもって通常の労働者よりも先に有期雇用労働者の解雇等をすることは、解雇等の対象者の選定基準において差別的取扱いがなされていることとなり、法第9条違反となるものであること。

 

 

結び

パート・有期労働者における「同一労働同一賃金」の内容=均等待遇・均衡待遇については以上になります。

 

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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