とある法律職

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。イソ弁、複数社でのインハウスローヤー(企業内弁護士)、独立開業など経験。

不正競争防止法 法律ニュース

名称の権利化とブランディング戦略(後編)|大学の名称変更と不正競争防止法

前の記事では、名称の権利化とブランディング戦略【前編】ということで、商標権による名称の保護について見てみました。 本記事では、では商標登録してないときは何もいえないのか?という話を見てみたいと思います。 結論からいうと、このときは不正競争防止法という別の法律での保護を検討することができます。これは商標法とはまた別の法律ですので、商標登録していないときでも使うことが可能です。 少し前になりますが、こんなニュースがありました。 ▽参考リンク私立「京都芸術大」の名称差し止め認めず 市立芸大の請求棄却 大阪地裁判 ...

商標法 法律ニュース

名称の権利化とブランディング戦略(前編)|お金配りと商標権

今回は、名称の権利化とブランディング戦略、という話を書いてみたいと思います。 名称の法的保護 名称の法的保護といえば商標権です。 そうすると、商標って法律の話でしょ、法務さんお願いね、インハウスローヤーもいるしヨロシクね…、みたいな感じになりがちなこともあるかなと思いますが、本来、そういう話だけではないです。 名称の権利化っていうのは、経営戦略の話と密接に絡んでいると思うんですよね。潜在的な可能性も含めてどの方面に進出し、そのうちどの方面に重点的にコストをかけるか、という選択の問題が発生するためです。 で ...

法務一般 法律コラム

交渉の基本は「押して引くこと」

今回は、交渉の基本としての、「押して引くこと」について書いてみたいと思います。 ここでいう「交渉」というのは、どこかで話をまとめたいという気持ちがある場合のことで、自分の主張が全面的に通るまで一歩も引かないと決めている場合は、ここでいう交渉ではないです(それは紛争であり、基本的には裁判です)。 交渉の原則 さて、交渉の原則は、「押して引くこと」です。 押すだけではダメです。破談になるからです。引くだけではダメです。損するだけだからです。引いてから押してはダメです。やはり破談になるからです。(相手からすると ...

商標法 法律ニュース

「ぴえん」絵文字の商標出願ってどうなるの?

先日、「ぴえん」の絵文字が商標出願されていた、というのがネットニュースになっていました。 ▽「ぴえん」商標出願で使えなくなる? アパレル会社申請にネット物議も「保険的な意味」|J-CASTニュースhttps://www.j-cast.com/2020/11/20399418.html へえ…と思って、あんまりこういう変化球っぽいのを実際に仕事で見たことはないんですけど、ちらっと調べてみるとけっこう面白かった(興味深かった)ので、今回はこれについて見てみたいと思います。 なお、引用部分の太字、下線、改行など ...

契約書本文

契約の一般条項を勉強しよう|契約の有効期間

今回は、契約の一般条項を勉強しようということで、契約の有効期間について見てみたいと思います。 ※「契約の一般条項」というのは、ここでは、いろんな契約に共通してみられる条項、という意味で使っています ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。 一回的契約と継続的契約 契約の有効期間を定める必要があるのは、継続的契約の場合です。 継続的契約には、わかりやすい例でいうと、賃貸借契約や業務委託契約などがあります。契約に基づく給付が継続的に行われるものになります(賃貸借は”貸し続ける ...

法務一般

法務の基礎を勉強しよう|期間の計算

今回は、法務の基礎を勉強しようということで、期間の計算について見てみたいと思います。 座学のときは地味すぎてあんまり真面目にやらない分野ですが、実務では意外と必要になるのが期間の計算方法です。 そんなに難しい話ではないので、一回しっかり見ておいても損はないかと思います。また、一回はしっかりと見ておかないと、意外と頭に入ってこない分野でもあります。 ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。 期間の計算の全体構造 民法の条文 期間の計算についての一般的な方法を規定しているのは ...

不正競争防止法

不正競争防止法を勉強しよう|混同惹起行為と著名表示冒用行為

今回は、不正競争防止法を勉強しようということで、不正競争行為のうち混合惹起行為と著名表示冒用表示について見てみたいと思います。 混同惹起行為と著名表示冒用行為は、どちらも他人のマークにただ乗りする行為の規制(商標法とも関連する)ということで、セットで見た方がわかりやすいかと思います。 なお、ネットでも見られるテキストとして、経産省HPに「不正競争防止法テキスト」(スライド形式)と「逐条解説 不正競争防止法」が掲載されています。 ▷不正競争防止法(知的財産室)|経産省HP ではさっそく。なお、引用部分の太字 ...

不正競争防止法 営業秘密管理

不正競争防止法を勉強しよう|営業秘密に係る不正行為-行為類型

今回は、不正競争防止法を勉強しようということで、不正競争行為のうち営業秘密に係る不正行為について見てみたいと思います。 なお、ネットでも見られるテキストとして、経産省HPに「不正競争防止法テキスト」(スライド形式)と「逐条解説 不正競争防止法」が掲載されています。 ▷参考リンク:不正競争防止法(知的財産室)|経産省HP ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。 基本構造 営業秘密に係る不正行為は、「営業秘密」の定義(3要件)と、これに関する「不正行為」の類型(6類型)が定 ...

法律コラム

結婚しないと「いけない」の?-「結婚」制度をシステム的に見たときの意味

先日、元でんぱ組.incの最上もがさんが妊娠を発表されてましたね。ニュースによれば、結婚する予定はないということでした。 理由はわからないですし、管理人自身は是とか非とかの感想はないですが、これからこういう選択をする男女も増えていくんだろうなぁと思いました。 実際のところ、結婚の法的な意味っていうところでいうと、実は、法定相続権を発生させること以外にさほど大きな意味はないんですよね。(←私見です) 結婚の社会的意味は普遍的になくなることはないと思うんですけど、価値観が多様化するなかにあって、結婚の社会的意 ...

インターネット 法改正

発信者情報開示制度の改正論|11月最終取りまとめ案

ネット誹謗中傷の問題に関して、発信者情報開示制度の改正論が引き続き注目されていますが、総務省の「発信者情報のあり方研究会」から、先日、11月を目途と言われていた最終取りまとめの案が出されていました。 ニュースとしては、たとえばこちら。 ▽ネット中傷、訴訟しなくても投稿者を開示 総務省が検討|朝日新聞デジタルhttps://www.asahi.com/articles/ASNCD6G17NCDULFA018.html 最終とりまとめ(案)の原文はこちらから。 ▽発信者情報開示の在り方に関する研究会(第10回 ...

公益通報者保護法

公益通報者保護法を勉強しよう|事業者における内部通報制度-整備と運用

今回は、公益通報者保護法を勉強しようということで、事業者における内部通報制度の整備・運用について見てみたいと思います。 適宜、令和2年改正前の内容にも触れています。 ▽令和2年改正の内容についてはこちら ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。 内部通報制度の設計 何でもそうですが、社内の制度は仕組みの設計→規程化が基本になりますので、本記事ではそのスタンスでまとめてみたいと思います。 大きく「内部通報制度の設計」→「内部通報制度の規程化」の順に見ていきます まず、内部通 ...

公益通報者保護法

公益通報者保護法を勉強しよう|事業者における内部通報制度-法的位置づけ

今回は、公益通報者保護法を勉強しようということで、事業者における内部通報制度の法的位置づけについて見てみたいと思います。 令和2年改正によって新設されたものが多いですが、記事の後半部分では、令和2年改正前の内容にも参考として言及しています。 ▽令和2年改正の内容についてはこちら ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。 内部通報制度の法的な位置づけ 内部通報制度の整備は、従業員が300人を超える事業者の場合には法的義務となっています(300人以下の事業者の場合は努力義務) ...