今回は、公益通報者保護法を勉強しようということで、事業者における内部通報制度の整備・運用について見てみたいと思います。
適宜、令和2年改正前の内容にも触れています。
▽令和2年改正の内容についてはこちら
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改正公益通報者保護法|令和2年改正
続きを見る
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
内部通報制度の設計
何でもそうですが、社内の制度は仕組みの設計→規程化が基本になりますので、本記事ではそのスタンスでまとめてみたいと思います。
大きく「内部通報制度の設計」→「内部通報制度の規程化」の順に見ていきます
まず、内部通報制度の設計方法は、法11条4項に基づいて策定された法定指針とその解説に書かれています。
法定指針の項目は、以下のようになっています。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
1 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備
⑴ 内部公益通報受付窓口の設置等
⑵ 組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置
⑶ 公益通報対応業務の実施に関する措置
⑷ 公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置
2 公益通報者を保護する体制の整備
⑴ 不利益な取扱いの防止に関する措置
⑵ 範囲外共有等の防止に関する措置
3 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
⑴ 労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置
⑵ 是正措置等の通知に関する措置
⑶ 記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置
⑷ 内部規程の策定及び運用に関する措置
ただ、管理人の肌感覚的には、通報制度の柱は、
- 内部通報制度の整備(=通報窓口の設置など)
- 内部通報制度の運用(=通報の受付以降のフロー)
- 通報者の保護
- 継続的な評価・改善
という4本柱とイメージしており、またその方が頭に入りやすいような気がしますので、本記事ではこの順に内容を見てみます。
①内部通報制度の整備
責任者と担当部署
何でもそうですが、社内の制度をつくるときに枠としてまず決めるべきなのは、責任者と担当部署(業務分掌上の所管部署)です。
その点、内部通報体制については、責任者は経営幹部とすることが望ましいとされ(指針解説)、また担当部署は部署横断的に通報を取り扱うことのできる仕組みとするよう求められています(法定指針 第4-1)。
内部の担当部署としては、通常は、コンプラ部門か監査部門がやるor独自の部署をつくる、会社の規模が大きくなければ総務がやるという感じかなと思います
▽法定指針 第4-1-⑴
⑴ 内部公益通報受付窓口の設置等
内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める。
▽指針解説 第3-Ⅱ-3-⑷-③
●内部公益通報の受付から調査・是正措置の実施までを適切に行うため、幹部を責任者とし、幹部の役割を内部規程等において明文化することが望ましい
上記の法定指針の趣旨としては、
- 通報対象事実に関する情報を早期にかつ円滑に把握するためには、内部公益通報を部門横断的に受け付ける窓口を設けることが極めて重要であること
- 公益通報対応業務が責任感を持って実効的に行われるためには、責任の所在を明確にする必要があるため、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関する公益通報対応業務を行う部署及び責任者を明確に定める必要があること
が挙げられています(指針解説 第3-Ⅱ-1-⑴-②)。
通報窓口について
通報受付窓口については、社内に一つ通報窓口を設けるというのを仮にスタンダードなやり方とすると、応用的な方法として、
- 事業者の外部に通報窓口を設置する(法律事務所や民間の専門機関等に委託する、親会社等に設置する)
- グループ企業共通の一元的な窓口を設置する
- 事業者団体や同業者組合等の関係事業者共通の窓口を設置する
といったものも挙げられています。外部窓口やグループ共通窓口などは、実際よくみかけると思います。
外部窓口が推奨されていますが、内部窓口のみでもよく、外部窓口のみでもよいです(また併設でもよい)。
▽内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A Q5|消費者庁HP(≫掲載ページ)
どのようなところに内部公益通報受付窓口を設置する必要がありますか。
内部公益通報受付窓口とは、内部公益通報を部門横断的に受け付ける窓口であり、個々の事業部門から独立して、特定の部門からだけではなく、全部門ないしこれに準ずる複数の部門から受け付けることが可能な部署に設置する必要があります。
その際、事業者内の部署に設置するのではなく、事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置することや、事業者の内部と外部の双方に設置すること、いわゆる企業グループの親会社等に当該企業グループの共通窓口を設置し、当該企業グループに属する会社(子会社や関連会社、関係会社等)が当該共通窓口を自社の内部公益通報受付窓口とすること、事業者団体や同業者組合等の関係事業者共通の窓口を自社の内部公益通報受付窓口として設置すること等も可能です。
ただ、外部窓口の場合は、後述のように利益相反関係などのない外部にする必要があるという観点から、要するに、普段の顧問弁護士の事務所などとは別にした方がよいということになります(管理人の認識)。
▽指針解説 第3-Ⅱ-1-⑷-④
●いわゆる顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることについては、顧問弁護士に内部公益通報をすることを躊躇(ちゅうちょ)する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意する。また、顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とする場合には、例えば、その旨を労働者等及び役員並びに退職者向けに明示する等により、内部公益通報受付窓口の利用者が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供することが望ましい。
●内部公益通報事案の事実関係の調査等通報対応に係る業務を外部委託する場合には、事案の内容を踏まえて、中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが適当である。
▽参考(令和2年改正前のもの):民間事業者向けQ&A集〔平成29年2月版〕Q20|消費者庁HP〔WARP〕
通報窓口を整備中です。社内に通報窓口を設けず、法律事務所のみを通報窓口としてもよいのでしょうか。
差し支えありません。法律事務所に通報窓口を設けることは、通報者の匿名性を確保できることから、職場内で通報するより心理的負担が少なくなり、通報しやすくなる場合もあります。
ただし、中立性・公正性に疑いが生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが必要であると考えられます。
独立性・中立性の確保
内部通報制度の仕組みをつくるときの重要な視点が、2つあります。
ひとつは、経営幹部からの独立性です。
先ほど見たように責任者は経営幹部が望ましいと書かれていますが、組織の長その他幹部に関係する事案もありますので、通常の通報対応の仕組みのほか、例えば、社外取締役や監査役等への報告ルート等、経営幹部からも独立性を有する通報受付・調査是正の仕組みを整備することが適当とされています。
法定指針 | 指針解説 | |
---|---|---|
経営幹部からの独立性 | 内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に係る公益通報対応業務に関して、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとる。 (第4-1-⑵) | ●組織の長その他幹部からの独立性を確保する方法として、例えば、社外取締役や監査機関(監査役、監査等委員会、監査委員会等)にも報告を行うようにする、社外取締役や監査機関からモニタリングを受けながら公益通報対応業務を行う等が考えられる。 ●組織の長その他幹部からの独立性を確保する方法の一環として、内部公益通報受付窓口を事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置することも考えられる。単一の内部公益通報受付窓口を設ける場合には当該窓口を通じた公益通報に関する公益通報対応業務について独立性を確保する方法のほか、複数の窓口を設ける場合にはそれらのうち少なくとも一つに関する公益通報対応業務に独立性を確保する方法等、事業者の規模に応じた方法も考えられる。 (第3-Ⅱ-1-⑵-③) |
もうひとつは、中立性の確保、つまり利益相反関係の排除です。
受付担当者や調査担当者、その他通報対応に従事する者及び被通報者は、自らが関係する通報事案の調査や是正措置に関与できないルールにする必要があります。
法定指針 | 指針解説 | |
---|---|---|
利益相反の排除 | 内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関し行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる。 (第4-1-⑷) | ●「関与させない措置」の方法として、例えば、「事案に関係する者」を調査や是正に必要な措置の担当から外すこと等が考えられる。受付当初の時点では「事案に関係する者」であるかが判明しない場合には、「事案に関係する者」であることが判明した段階において、公益通報対応業務への関与から除外することが必要である。ただし、「事案に関係する者」であっても、例えば、公正さが確保できる部署のモニタリングを受けながら対応をする等、実質的に公正な公益通報対応業務の実施を阻害しない措置がとられている場合には、その関与を妨げるものではない。 (第3-Ⅱ-1-⑷-③) |
ここまで見てきたところは、法定指針では以下の部分になります。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
1 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備
⑴ 内部公益通報受付窓口の設置等 ←この部分
⑵ 組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置 ←この部分
⑶ 公益通報対応業務の実施に関する措置
⑷ 公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置 ←この部分
②内部通報制度の運用
次は、枠ではなく制度の中身を見てみます。
内部通報制度の運用ルール、つまり通報の受付以降のフローの検討です。
大まかな流れは、通報の受付→調査の要否の検討→調査→是正措置→是正措置等の通知、というイメージになります。
この流れに、通報者への対応状況の通知というのが、適宜並んで走っている感じですね。
対応状況の通知は指針解説での”望ましい措置”という位置づけですが、是正措置等の通知は法定指針で義務づけられたものになります
法定指針では以下の部分になります。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
1 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備
⑴ 内部公益通報受付窓口の設置等
⑵ 組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置
⑶ 公益通報対応業務の実施に関する措置 ←この部分
⑷ 公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置
3 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
⑴ 労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置
⑵ 是正措置等の通知に関する措置 ←この部分
⑶ 記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置
⑷ 内部規程の策定及び運用に関する措置
通報の受付
書面や電子メール等、公益通報者が通報の到達を確認できない方法によって通報がなされた場合には、速やかに公益通報者に対し、通報を受領した旨を通知することが望ましいとされています(ただし、通報者が望まない場合や、匿名であるなどの理由で困難な場合は除く)(指針解説 第3-Ⅱ-3-⑵-④、脚注41,42)。
通報を受け付けたら、調査の要否を検討し、今後の対応についても通報者に通知するよう努めることが望ましいとされています(指針解説 第3-Ⅱ-3-⑵-④、脚注43)。
▽内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A Q33|消費者庁HP(≫掲載ページ)
内部公益通報を受け付けた際、その旨を公益通報者に通知する必要がありますか。また、通知をするに当たって、公益通報者から通知は不要との意思表示があった場合は、どのようにすればよいですか。
内部公益通報の受付の通知について特段の規定はありません。しかし、指針の解説においては、公益通報の受付や調査の開始についても通知することを推奨される取組として示し、また、行政機関向けガイドラインでは、通報を受理したときは受理した旨、受理しないときは受理しない旨及びその理由を、通報者に対し、遅滞なく通知することを定めています。
なお、指針の解説及び行政機関向けガイドラインにおける公益通報者への通知に関する規定は、公益通報者との信頼関係の確保等の観点から定めたものであるため、公益通報者から通知は不要との意思表示があれば、公益通報者の意向を尊重し、通知を行わないこととしても差し支えありません。
匿名の通報についても、通報対応の実効性を確保する観点からも、受け付けることが必要とされています(指針解説 第3-Ⅱ-1-⑶-③)。
▽事業者における通報対応に関するQ&A Q2|消費者庁HP(≫掲載ページ)
内部公益通報受付窓口では、匿名の公益通報を受け付ける必要がありますか。
本法は対象となる通報を顕名(実名)の通報に限定しておらず、匿名であっても、本法に定める要件を満たせば公益通報に該当することから、内部公益通報受付窓口では、匿名の公益通報を受け付ける必要があります。
他方、匿名の内部公益通報については、公益通報者に連絡がつかないために十分な調査ができないなど、顕名に基づく内部公益通報と同様の対応を行うことが難しい場合も考えられます。このため、指針の解説においては、匿名の内部公益通報であっても公益通報者と通報窓口担当者が連絡を取る方法として、例えば、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える、匿名での連絡を可能とする仕組み(外部窓口から事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み、チャット等の専用のシステム等)を導入すること等を求めています。顕名の通報のみを受け付ける内部公益通報受付窓口を設けることも可能ですが、その場合には、別途匿名の通報を受け付ける内部公益通報受付窓口を設置する必要があります。
なお、調査を実施しない正当な理由がある場合の例として、公益通報者と連絡が取れず事実確認が困難である場合がありますが、事実確認が困難である実態が必要であり、匿名であることのみをもって調査を実施しない正当な理由には該当しません。
また、匿名であっても、調査等の際の対応によって公益通報者が特定されてしまうおそれがあることから、調査の実施に当たっては十分に配慮することが必要です。
調査・是正措置
調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、速やかに是正措置及び再発防止策を講じるとともに(法定指針)、必要に応じ関係者の社内処分を行う等、適切に対応することが必要とされています(指針解説 第3-Ⅱ-1-⑶-③)。
また、公益通報者保護法には、事業者内部で発生した法令違反行為について行政機関に報告しなければならないという規定はありませんが、必要に応じて、関係行政機関への報告等を行うことが必要とされています(指針解説 第3-Ⅱ-1-⑶-③)。なお、個別の法律に報告義務があるものや監督行政機関から報告を求められている事案については、関係行政機関に報告する必要があります。
▽内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A Q18|消費者庁HP(≫掲載ページ)
調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、どのように対応すればよいですか。
調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、法令違反行為の是正に必要な措置をとるとともに是正措置が機能しているか否かを確認する必要があります。また、必要に応じ、関係者の社内処分を行うほか、関係行政機関への報告等を行うこと等が考えられます。
是正措置等の通知
以下のように内部通報者に対して是正措置等の通知義務があります。
▽法定指針 第4-3-⑵
⑵ 是正措置等の通知に関する措置
書面により内部公益通報を受けた場合において、当該内部公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正に必要な措置をとったときはその旨を、当該内部公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、当該内部公益通報を行った者に対し、速やかに通知する。
通報者への通知対応については、以下の関連記事に書いています。
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公益通報者保護法を勉強しよう|事業者や行政機関の通報対応
続きを見る
③通報者の保護
通報者の保護は、法定指針では以下の部分になります。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
2 公益通報者を保護する体制の整備
⑴ 不利益な取扱いの防止に関する措置 ←この部分
⑵ 範囲外共有等の防止に関する措置 ←この部分
不利益取扱いの防止
不利益取扱いの禁止は法律自体に定められていますが(法3条~6条)、法定指針では、防止措置を通報制度に盛り込むという切り口での記載があります。
範囲外共有等の防止に関する措置
通報者が誰であるかとかどの部署の者かといったことが職場内に漏れることは、それ自体が通報者に対する不利益になります。また、内部通報への信頼そのものを損なう事態となります。
そのため、
- 情報共有が許される範囲を必要最小限に限定する、
- 通報者の特定につながり得る情報は、通報者の書面やメールなどによる明示の同意がない限り、情報共有が許される範囲外には開示しない、
といった、秘密保持の徹底を図ることが重要となります。
法定指針の内容は、以下のようになっています。
▽法定指針 第4-2-⑵
⑵ 範囲外共有等の防止に関する措置
イ 事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
ロ 事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。
ハ 範囲外共有や通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。
④制度の継続的な評価・改善など
法定指針では、内部通報制度自体の評価を通した継続的な改善や、運用実績の開示などについても記載されています。以下の部分になります。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
3 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
⑴ 労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置
⑵ 是正措置等の通知に関する措置
⑶ 記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置 ←この部分
⑷ 内部規程の策定及び運用に関する措置
内容は以下のようになっており、「制度の継続的な改善」はいわゆるPDCAのイメージ、「運用実績の開示」は通報件数や是正の有無といった事項の可能な範囲での共有のことになります。
法定指針 | 指針の解説 | |
---|---|---|
制度の継続的な改善 | 内部公益通報対応体制の定期的な評価・点検を実施し、必要に応じて内部公益通報対応体制の改善を行う (3-⑶-ロ) | ●定期的な評価・点検の方法として、例えば、以下のようなもの等が考えられる ➢労働者等及び役員に対する内部公益通報対応体制の周知度等についてのアンケート調査(匿名アンケートも考えられる。) ➢担当の従事者間における公益通報対応業務の改善点についての意見交換 ➢内部監査及び中立・公正な外部の専門家等による公益通報対応業務の改善点等(整備・運用の状況・実績、周知・研修の効果、労働者等及び役員の制度への信頼度、本指針に準拠していない事項がある場合にはその理由、今後の課題等)の確認 (第3-Ⅱ-3-⑶-③) |
運用実績の開示 | 内部公益通報受付窓口に寄せられた内部公益通報に関する運用実績の概要を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において労働者等及び役員に開示する (3-⑶-ハ) | ●運用実績とは、例えば、以下のようなもの等が考えられる ➢過去一定期間における通報件数 ➢是正の有無 ➢対応の概要 ➢内部公益通報を行いやすくするための活動状況 なお、開示の内容・方法を検討する際には、公益通報者を特定させる事態が生じないよう十分に留意する必要がある ●運用実績の労働者等及び役員への開示に当たっては、公益通報とそれ以外の通報とを厳密に区別する必要はない (第3-Ⅱ-3-⑶-③) |
内部通報制度の規程化
仕組みを設計したら、次は、規程化です。
これは内部通報制度に限った話ではなく何でもそうですが、仕組みを作ったら、内部規程化するのがひとつの定石です。
内部通報制度の場合、法定指針に規程化の定めがあるわけですが、文字にしてオープンにしないとルールとしての意味をなさないわけですので、普通に(一般的に)必要なことだと思われます。
マニュアルといった位置づけのものでも文字にはなりますが、違反の場合の効果など就業規則等との関係が不明確になる可能性もありますし、重要な制度に関しては規程が適すると思います(もちろん企業の規模などにもよりますが)。これは一般論で、余談です
また、これも何でもそうですが、仕組みを作ったら、当然、社内への周知が必要です(普通は規程化のあと)。
法定指針では以下の部分になります。
▽法定指針 第4(※項目を抜粋)
3 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
⑴ 労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置 ←この部分
⑵ 是正措置等の通知に関する措置
⑶ 記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置
⑷ 内部規程の策定及び運用に関する措置 ←この部分
⑷の内容は以下のようになっており、当者が交代することによって対応が変わることや、対応がルールに沿ったものか否かが不明確となる事態等が生じないようにすることが重要という趣旨です(指針解説 第3-Ⅱ-3-⑷-②参照)。規程化の一般的な趣旨もそのようなものだといえます。
法定指針 | 指針の解説 | |
---|---|---|
内部規程の策定及び運用 | この指針において求められる事項について、内部規程において定め、また、当該規程の定めに従って運用する (3-⑷) | ●内部公益通報の受付から調査・是正措置の実施までを適切に行うため、幹部を責任者とし、幹部の役割を内部規程等において明文化することが望ましい ●労働者等及び役員は、例えば、担当部署による調査に誠実に協力しなければならないこと、調査を妨害する行為はしてはならないこと等を、内部規程に明記することが望ましい (第3-Ⅱ-3-⑷-③) |
内部規程例
内部通報規程例として、消費者庁HPに以下のものが掲載されています。
上記で見たような検討事項が形になっていますので、読むとわかりやすいかと思います。
参考:令和2年改正前
モデル内部規程
なお、令和2年改正前の内容としては、①内部通報規程のモデル規程として、消費者庁HPに以下のものが掲載されていました。
このモデル規程の検討段階のものや、検討内容などについては以下のとおりです。
▽公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会|消費者庁HP〔WARP〕
内部通報規程集
また、②内部通報規程集として、以下のものが掲載されていました(2019年10月版)。令和2年改正後の内部規程例として掲載されているのは、このアップデート版になります。
▽民間事業者向け説明会|消費者庁HP〔WARP〕
民間事業者における規程集
また、③民間事業者の規程を集めた資料として、以下のものが掲載されていました。
参考記事(令和2年改正前)
そのほか、内部通報制度の運用に関して、BUSINESS LAWYERSのサイトに実務的な記事が載っていますので、参考までに紹介しておきます(令和2年改正前の内容です)。
▽ 参考リンク
【連載】実効性のある内部通報制度の運用に向けて|BUSINESS LAWYERS
結び
今回は、公益通報者保護法を勉強しようということで、事業者における内部通報制度の整備・運用について見てみました。
本記事で見た内容に関しては、消費者庁HPに以下のQ&A集があります。
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公益通報者保護法を勉強しよう|事業者や行政機関の通報対応
続きを見る
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
公益通報者保護法に関するその他の記事(≫Read More)
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 公益通報者保護法
- 通報の対象法律を定める政令(「公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令」)
- 法定指針(「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(令和3年内閣府告示第118号))|消費者庁HP
- 指針解説(「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」)|消費者庁HP
- Q&A集|消費者庁HP
参考文献
- 公益通報ハンドブック〔改正法(令和4年6月施行)準拠版〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 逐条解説(消費者庁)|消費者庁HP
- 民間事業者向け説明会 資料|消費者庁HP
- 裁判例の収集(概要/裁判例一覧/論点整理表)〔2022年度調査〕|消費者庁HP(≫掲載ページ)
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