公益通報者保護法

公益通報者保護法を勉強しよう|事業者や行政機関の通報対応

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今回は、公益通報者保護法を勉強しようということで、通報を受けた側の対応の話、事業者や行政機関の通報対応について書いてみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

事業者内部に通報があった場合

まず、事業者内部に通報があった場合から。

これについて、条文は以下のひとつだけである。

(是正措置等の通知)
第九条 書面により公益通報者から第三条第一号に定める公益通報をされた事業者は、当該公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を、当該公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、当該公益通報者に対し、遅滞なく、通知するよう努めなければならない。

つまり、

書面により公益通報を受けた事業者は
〇通報対象事実の中止その他是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を
通報対象事実がないときはその旨を
〇当該公益通報者に対し、遅滞なく、通知するよう努めること

である(努力義務)。

「書面により」とは、紙文書によるもののほか、電子メールなど電子媒体への表示によるものも含まれる(3条3号ニの括弧書き参照)。

通知すべき内容としては、民間事業者向けガイドラインでは、以下のとおり、通報受領の通知や、調査に係る通知(調査の進捗、調査結果)などについても努めるよう推奨されている。

▽民間事業者向けガイドライン(Ⅱの2、Ⅱの3の(2))

2.通報の受付
通報受領の通知
○ 書面や電子メール等、通報者が通報の到達を確認できない方法によって通報がなされた場合には、速やかに通報者に対し、通報を受領した旨を通知することが望ましい。ただし、通報者が通知を望まない場合、匿名による通知であるため通報者への通知が困難である場合その他やむを得ない理由がある場合はこの限りでない(次項及びⅡ3(2)に規定する通知においても、同様とする。)。
(通報内容の検討)
○ 通報を受け付けた場合、調査が必要であるか否かについて、公正、公平かつ誠実に検討し、今後の対応について、通報者に通知するよう努めることが必要である。

3.調査・是正措置
(2)調査・是正措置に係る通知
調査に係る通知
〇 調査中は、調査の進捗状況について、被通報者や当該調査に協力した者(以下「調査協力者」という。)等の信用、名誉及びプライバシー等に配慮しつつ、適宜、通報者に通知するとともに、調査結果について可及的速やかに取りまとめ、通報者に対して、その調査結果を通知するよう努めることが必要である。
是正措置に係る通知
〇 是正措置の完了後、被通報者や調査協力者等の信用、名誉及びプライバシー等に配慮しつつ、速やかに通報者に対して、その是正結果を通知するよう努めることが必要である。

なお、こういったガイドライン上の通知対応は、本法律上の通知対応よりも拡大されたものである(Q&A45参照)。

民間事業者向けQ&A集(平成29年2月版)|消費者庁HP

Q45 通報者には、どのような通知を行う必要があるのでしょうか。

A 通報への対応状況を通報者に伝えることは、通報者の通報窓口への信頼を確保するために必要と考えられます。そのため、本法第9条は、事業者が、是正措置をとった旨又はその公益通報に係る通報対象事実がない旨を通知するよう努めることとするとともに、民間事業者向けガイドラインでは、通報への対応状況に応じて、例えば、調査を行うか否かに加え、調査結果是正結果などを通知するよう努めることが必要としています。

Q46 通報したときの受領の通知は文書で行うべきでしょうか。口頭でもよいのでしょうか。

A 本法や民間事業者向けガイドラインでは、通報の受領の通知の方法は特に定めていません
 通知について、民間事業者向けガイドラインにおいては、書面や電子メール等、通報者が通報の到達を確認できない方法によって通報がなされた場合には、速やかに通報者に対し、受領した旨を通知することが望ましいとしています。

なお、通報先が行政機関以外への外部通報である場合、調査をする旨の通知が20日間ないことが、保護要件である特定事由のひとつとなっている(3条3号ニ)。
(※通報先ごとの保護要件についてはこちらの記事参照)。

(解雇の無効)
第三条 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。
一~二 (略)
三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合  その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
イ~ハ (略)
ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
ホ (略)

つまり、文書による公益通報があった日から20日を経過しても調査をする旨の通知をしない場合や、正当な理由なく調査を実施しない場合には、報道機関など事業者外部への通報につながる可能性がある。

民間事業者向けQ&A集(平成29年2月版)|消費者庁

Q47 通報受付当時は公益通報ではないと判断していた通報について、後に公益通報の要件を当初から満たしていたことが判明した場合には、どのようにしたらよいのでしょうか。

A このような場合には、当初の判断が誤りであったことになり、調査を行う旨の通知や調査を行っていなければその他外部通報先への通報が本法の規定による保護の対象となる可能性があります(本法第3条第3号ニ)。
 このような事態を回避するためには、あらかじめ、本法に定める「公益通報」に該当するか否かにかかわらず、必要に応じて通知や調査を行うこととしておくことが考えられます。

 

行政機関に通報があった場合

次に、行政機関に通報があった場合について。

これについては、条文は2つである。

(行政機関がとるべき措置)
第十条 公益通報者から第三条第二号に定める公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、当該公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
 前項の公益通報が第二条第三項第一号に掲げる犯罪行為の事実を内容とする場合における当該犯罪の捜査及び公訴については、前項の規定にかかわらず、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の定めるところによる。

要するに、
必要な調査を行い、
〇通報対象事実があると認めるときは、適切な措置をとること
である。

ただ、行政機関への通報は、通報対象事実について処分や勧告の権限を有する行政機関になされる必要があるため(2条1項)、誤って権限のない行政機関に通報された場合、正しい行政機関を通報者に教示することになっている。

(教示)
第十一条 前条第一項の公益通報が誤って当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有しない行政機関に対してされたときは、当該行政機関は、当該公益通報者に対し、当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関を教示しなければならない

行政機関の通報対応については、国と地方自治体に分けて、4つのガイドラインがある。外部の労働者からの通報については、そのうち2つである。

ガイドライン|公益通報者保護法と制度の概要|消費者HP

➢国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)
➢国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(外部の労働者等からの通報)←コレ
➢地方公共団体の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)
➢地方公共団体の通報対応に関するガイドライン(外部の労働者等からの通報)←コレ

 

結び

事業者や行政機関の通報対応については以上になります。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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