公益通報者保護法

公益通報者保護法|従事者以外に特定情報を共有する場合の適切な対応プロセス

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今回は、公益通報者保護法ということで、従事者以外に特定情報(通報者を特定させる事項)を共有する必要が生じた場合は結局どのようにすれば良いのか、その対応プロセスについて見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。

本記事は令和7年改正法(令和8年12月施行)を基準にしています

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




従事者以外に特定情報を共有する場合の対応プロセス

公益通報対応業務において、通報者を特定させる情報である特定情報は、法律上の守秘義務(法12条)および範囲外共有の防止(法11条2項および法定指針)により、原則として指定された従事者以外の者に共有することは禁じられています。

▽公通法12条:従事者の守秘義務

(公益通報対応業務従事者の義務)
第十二条
 公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。

▽公通法11条2項~4項:事業者の措置義務

 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない
 常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。
 内閣総理大臣は、第一項及び第二項(これらの規定を前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。

↓ 指針のうち該当部分

▽法定指針 第4-2-⑵

イ 事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。

▽法定指針 第2

範囲外共有」とは、公益通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有する行為をいう。

しかし、調査の進展や是正措置の実施に伴い、役員、関係部署の管理者、外部の調査協力者など、従事者以外の者に対して特定情報を共有せざるを得ない局面が生じることがあります。

そのような場合には、不法な情報漏洩(範囲外共有)や守秘義務違反となるリスクを防ぐため、以下の段階的な手順と措置を講じることが求められます。

(※注)令和2年改正(令和4年6月施行)版です

原則:特定情報を開示しない調査方法の優先

従事者以外の者に調査や対応を依頼する際は、(指針解説が推奨する取組みとして)特定情報を開示せずに目的を達成する方法を優先的に検討することが望ましいとされています。

情報の匿名化とマスキング

資料や報告書を作成する際は、通報者の氏名や部署等の固有名詞を、仮称表記やマスキングに置き換えます。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-④<受付時の取組等について>

● 公益通報の受付時には、例えば、範囲外共有を防ぐために、受付時以降も含め、入室者が適切に管理されている専用の部屋を活用することや、電子メールでのやり取りであっても注意すべき事項がないか(システム上、通報メール等が外部窓口への送信であることに起因して上司等に同報されることになっていないか、詳細についてやりとりをするに当たり、メール本文への記載ではなくパスワード付きの添付ファイルを適宜利用する等)に留意すること、通報事案に係る記録・資料に記載されている関係者(公益通報者を含む。)の固有名詞を仮称表記・マスキングにすること等も考えられる。

通報の端緒の秘匿

調査協力者等に対しヒアリングを行う際は、内部通報を契機とした調査であることを伏せ、定例監査、抜き打ち調査、ダミーの他部署調査などの形をとることで、通報者の特定を回避します。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-④<調査時の取組等について>

● 調査等に当たって通報内容を他の者に伝える際に、調査等の契機が公益通報であることを伝えなければ、基本的には、情報伝達される相手方において、公益通報がなされたことを確定的に認識することができず、公益通報者が誰であるかについても確定的に認識することを避けることができる。その場合、結果として、公益通報者を特定させる事項が伝達されるとの事態を避けられることから、必要に応じて従事者以外の者に調査等の依頼を行う際には、当該調査等が公益通報を契機としていることを伝えないことが考えられる。調査の端緒が公益通報であることを関係者に認識させない工夫としては、例えば、以下のような措置等が考えられる。
抜き打ちの監査を装う
➢ 該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う
➢ (タイミングが合う場合には、)定期的な監査、職場環境調査、上司等による人事面談などといった各種の定期的な機会と合わせて調査を行う
➢ 核心部分ではなく周辺部分から調査を開始する
➢ 組織内のコンプライアンスの状況に関する匿名のアンケートを、全ての労働者等、特定受託業務従事者及び役員を対象に定期的に行う




特定情報を共有するための「正当な理由」の確保

上記の方法では必要な調査や是正措置が実施できず、従事者以外の者に特定情報を共有せざるを得ない場合は、法12条の正当な理由を満たす必要があります。

「正当な理由」の類型は、以下の4つとされています(逐条解説 第12条-3-⑷、公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕従事者Q12参照)。

  • 公益通報者本人の同意がある場合
  • 法令に基づく場合
  • 調査等で必要な範囲において従事者間で情報共有する場合
  • 調査又は是正措置の実施に際し、従事者の指定を受けていない者に情報を伝えなければ調査・是正措置を実施できない場合(ハラスメント事案で被害者=通報者のケースが例示)

▽逐条解説 第12条-3-⑷

 「正当な理由」とは、「公益通報者を特定させる事項」を漏らす行為に違法性がないと考えられる場合を意味し、例えば、公益通報者本人の同意がある場合や法令に基づく場合が該当する。また、調査等に必要である範囲の公益通報対応業務従事者間で情報共有する場合も、「正当な理由」に該当する。
 さらに、調査・是正措置の実施に際し、非公益通報対応業務従事者(例えば、通報対象事実に係る業務執行部門の関係者等)に対し公益通報があったことも含めて公益通報者を特定させる事項を伝えなければ、調査・是正措置を実施することができない場合も、「正当な理由」に該当する。例えば、ハラスメント事案において刑法犯等に該当する行為が行われたため、当該ハラスメント事案の通報が公益通報に該当する場合等において、公益通報者が通報対象事実に関する被害者と同一人物である等のために、調査等を進める上で、公益通報者の排他的な特定を避けることが著しく困難であり、当該調査等が法令違反の是正等に当たってやむを得ないものである場合には、「正当な理由」が認められるといえる。
 なお、非公益通報対応業務従事者に、公益通報があったことは伝えずに、公益通報者の氏名等を含む情報を提供して調査を依頼する場合は、上記⑵のとおり、そもそも公益通報者を特定させる事項を漏らしたことにはならない。

このうち、本記事のテーマに関係するのは、主に①と④です。②もQ&Aに若干の例がありますので、この順番で見ていきましょう。

本人の自発的な同意の取得(類型①)

従事者以外の者へ特定情報を開示するにあたり、最も確実な根拠となるのは通報者本人の同意です。同意を取得する際は、以下のような事項に注意する必要があります。

  • 事前かつ具象的な説明:情報を開示する目的、開示を受ける相手の範囲、共有される情報の具体的内容、および情報を共有することにより生じ得る不利益のリスクについて、あらかじめ明確に説明する
  • 自発的な意思の確認:形だけの同意ではなく、通報者が納得した上での自発的な意思に基づく同意を得る
  • 書面等による記録の保持:後日の紛争や解釈の相違を防ぐため、同意の有無については書面や電子メールなど、客観的に確認できる形で同意を取得・保管する

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-④<受付時の取組等について>

● 外部窓口を設ける場合、例えば、公益通報者を特定させる事項は、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できない等のやむを得ない場合を除いて、公益通報者の書面や電子メール等による明示的な同意がない限り、事業者に対しても開示してはならないこととする等の措置を講ずることも考えられる。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-④<その他>

● 特に、ハラスメント事案等で被害者と公益通報者が同一の事案においては、公益通報者を特定させる事項を共有する際に、被害者の心情にも配慮しつつ、例えば、書面(30)による等、同意の有無について誤解のないよう、当該公益通報者から同意を得ることが望ましい。
30 電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。

やむを得ない事由(正当な理由)の検討(類型④)

ハラスメント事案のように通報者が被害者本人であり、事案の性質上、調査を進める中で通報者の特定を避けることが構造的に困難なケースなどにおいては、本人の明示の同意取得に努めつつも、是正のために真に不可欠な範囲で開示することが正当な理由として認められる場合があります。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q12】

・調査又は是正措置の実施に際し、従事者の指定を受けていない者(例えば、通報対象事実に係る業務執行部門の関係者等)に対し公益通報があったことも含めて公益通報者を特定させる事項を伝えなければ、調査又は是正措置を実施することができない場合(例えば、ハラスメント事案において刑法犯等に該当する行為が行われたため、当該ハラスメント事案の通報が公益通報に該当する場合等において、公益通報者が通報対象事実に関する被害者と同一人物であること等のために、調査等を進める上で、公益通報者の排他的な特定を避けることが著しく困難であり、当該調査等が法令違反の是正等に当たってやむを得ないものである場合)

ただし、単に調査がやりやすくなるといった便宜上の理由のみで特定情報を共有することは許されず、違法性が阻却されるかどうかは慎重に判断されなければなりません。

法令に基づく場合(類型②)

法令に基づく場合の例として、会社法上の調査権や報告徴求権に基づき、監査役が特定情報の提供を受ける場合が挙げられています。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q14】

 会社法上の監査役の調査権や報告徴求権に基づき、従事者が監査役に対して公益通報者を特定させる事項を共有する場合には、「正当な理由」(本法第12条)が認められ、守秘義務違反となりますか。

 監査役への情報提供が、会社法(平成17年法律第86号)等の法令に基づく情報提供として行われる場合であれば、正当な理由が認められることになると考えられます。ただし、公益通報者保護の観点から、例えば、監査業務遂行上の支障がない限り、公益通報者を特定させる事項は情報提供の範囲から外すなど、公益通報者を特定させる事項が共有される範囲を限定することが望ましいと考えられます。
 なお、法令に基づく情報提供として正当な理由が認められる場合であっても、当該情報提供により、監査役を従事者に指定すべき条件を満たした場合には、当該監査役を従事者に指定する必要があると考えられます。

従事者の追加指定(別ルート)

従事者が特定情報を扱うこと自体には、そもそも「正当な理由」は要らないため(それが従事者の本来の職務)、従事者として追加指定するというルートもあります。これにより、その者に対しても法12条に基づく罰則付きの守秘義務が直接課されることになります。

上記で「③調査等で必要な範囲において従事者間で情報共有する場合」が「正当な理由」の一類型として挙げられていますが、これも”従事者になってしまえば、当然に情報を扱ってよい”という考え方と方向性は同じです。

ただ、指針解説では、通報者の特定情報を伝達し従事者として調査の内側に組み入れる必要性があるかは慎重に検討すべきこと(過剰指定の防止)も示唆されています。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅰ-1-④

● 必要が生じた都度従事者として定める場合においては、従事者の指定を行うことにより、社内調査等が公益通報を端緒としていることを当該指定された者に事実上知らせてしまう可能性がある。そのため、公益通報者保護の観点からは、従事者の指定をせずとも公益通報者を特定させる事項を知られてしまう場合を除いて、従事者の指定を行うこと自体の是非について慎重に検討することも考えられる。

なお、「従事者の指定を行うこと自体の是非について慎重に検討する」と書かれていますが、従事者の2つの要件(通報対応業務への主体的関与+通報者特定情報を伝達される)を満たす者については指定が義務なので、本来は「指定するかどうか」は自由に選べません。

厳密にいえば、本当に検討すべきなのは、その前段階の、
・その者に通報者特定情報を伝える必要があるか
・公益通報を端緒とすることを知らせずに調査させられないか
・その者を従事者とするほど内部の情報共有範囲に入れる必要があるか
という部分です。

この指針解説の記載にはやや疑問もあります。従事者として指定すべき者は、公益通報対応業務を主体的に担い、かつ通報者特定情報を伝達される者です。したがって、正規の指定対象者が、当該調査が公益通報を端緒とすることを知るのは制度上当然で、「指定により事実上知らせてしまう可能性」を独立の問題とする意味は乏しいように思います。

おそらく本来の趣旨は、通報者情報を知らせずに調査させられる者まで安易に指定しない、すなわち従事者の範囲を必要最小限にする点にあるのだろうと思われ、原文の表現はややミスリーディングであるような気がします(私見)。

情報共有時に講じるべき安全管理措置

特定情報を従事者以外の者に共有することが決まった場合、情報の不必要な拡散を防ぐため、以下のような措置を組み合わせて実施します。

共有範囲の最小化

情報を共有する相手の人数および共有する情報の項目を、目的達成に必要な最小限の範囲に絞り込みます。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-③

● 範囲外共有を防ぐための措置として、例えば、以下のようなもの等が考えられる29
➢ 通報事案に係る記録・資料を閲覧・共有することが可能な者を必要最小限に限定し、その範囲を明確に確認する

秘密保持誓約と注意喚起

開示を受ける相手に対し、(指針解説が推奨する取組みとして)あらかじめ秘密保持誓約書を提出させるほか、共有された情報を他者に漏洩した場合は社内規程に基づく懲戒処分等の対象となる旨を注意喚起することが望ましいとされています。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-2-⑵-④<調査時の取組等について>

● 公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できない等のやむを得ない場合、公益通報者を特定させる事項を伝達する範囲を必要最小限に限定する(真に必要不可欠ではない限り、調査担当者にも情報共有を行わないようにする)ことは当然のこととして、例えば、以下のような措置等を講じ、公益通報者が特定されないよう、調査の方法に十分に配慮することが望ましい。
➢ 公益通報者を特定させる事項を伝達する相手にはあらかじめ秘密保持を誓約させる
➢ 公益通報者を特定させる事項の漏えいは懲戒処分等の対象となる旨の注意喚起をする




結び

今回は、公益通報者保護法ということで、従事者以外に特定情報を共有する場合の対応プロセスについて見てみました。

公益通報者保護法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考資料

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(※)上記は令和2年改正(令和4年6月施行)版です

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