今回は、公益通報者保護法ということで、事業者がとるべき措置等のうち、従事者の指定と守秘義務について見てみたいと思います。
公益通報者保護法において、内部通報の受付や調査を担当する公益通報対応業務従事者(以下、従事者)は、法律上、刑事罰付きの守秘義務を課された責任重大な存在です。
また、令和7年改正(令和8年12月施行)によって、従事者の指定方法が改定されるとともに、従事者指定義務を怠る企業(常時300人超)に対しては消費者庁からの是正命令(違反時は30万円以下の罰金)が下されるようになるなど、曖昧な対応が許されない状況になってきています。
本記事では、誰を、どうやって指定すべきなのか、何を漏らすと刑事罰のリスクがあるのかなどについて、詳しく解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
従事者の指定(法11条1項)
法11条1項は、常時使用する労働者が300人を超える事業者に対し、内部公益通報を受付・調査・是正する業務(=公益通報対応業務)を行う従事者を定める義務を課しています(300人以下の事業者は努力義務。同条3項)。
(事業者がとるべき措置)
第十一条 事業者は、第三条第一項第一号及び第六条第一項第一号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(第十二条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(第十二条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。
誰を従事者に指定すべきか
ここで多くの人が疑問に思うのは、「窓口担当部署の全員を従事者にすべきなのか?」、あるいは「どこまでの範囲を従事者として指定すべきなのか?」という点かと思います。
従事者として指定しなければならない2つの条件
法定指針および指針解説によると、従事者に指定すべきなのは、以下の2つの条件を実質的に満たしている人です。
- 業務の要件:内部公益通報の受付、調査、是正に必要な措置の全て又は一部を主体的に行う業務、あるいは当該業務の重要部分に関与していること
- 情報の要件:当該業務を行う中で、公益通報者を特定させる事項(特定情報)を伝達される者であること(または伝達される可能性があること)
部署の名称(法務部、コンプライアンス部、総務部など)にかかわらず、この実態がある職員は全員、従事者として指定する必要があります。
▽法定指針〔令和8年3月31日版〕第3-1
1 事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。
▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅰ-1-③
● 内部公益通報の受付、調査、是正に必要な措置の全て又はいずれかを主体的に行う業務及び当該業務の重要部分について関与する業務を行う場合に、「公益通報対応業務」に該当する。
● 事業者は、コンプライアンス部、総務部等の所属部署の名称にかかわらず、上記指針本文で定める事項に該当する者であるか否かを実質的に判断して、従事者として定める必要がある。
● 事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行うことを主たる職務とする部門の担当者を、従事者として定める必要がある。それ以外の部門の担当者であっても、事案により上記指針本文で定める事項に該当する場合には、必要が生じた都度、従事者として定める必要がある。
従事者にしなくてよい(してはならない)人
では、逆に、”調査に協力してくれる人”は全員従事者にしなければならないのかというと、そうではありません。
指針解説では、以下のような人は公益通報対応業務に主体的に、又は重要な部分で関与しているとはいえないため、従事者に指定する対象には該当しないとされています(脚注8参照)。
- 社内調査において、従事者からヒアリング(面談)を受ける調査対象部署の従業員
- 製造物の品質不正調査において、技術的な観点から品質の再検査のみを指示されて行う技術担当者(通報の内容自体は伝えられても、調査プロセス全体を主導しない者)
- 職場環境改善のための社内プロジェクトに、メンバーとして単に参加する一般社員
これらの人は、たとえ調査上の必要性から通報者が誰であるか(特定情報)を知ることになったとしても、従事者にはなりません。
ただし、従事者にならないからといって秘密を漏らしてよいわけではなく、会社としては内部規程(就業規則、公益通報保護規程等)に基づき、彼らに対しても範囲外共有(漏洩)をしてはならない義務を個別に負わせる必要があります(法11条2項の体制整備義務の一環)。
従事者指定の方法
令和7年改正に伴い公表された改正法定指針(第3の2)において、従事者の指定方法が改定されました。
指定時に刑事罰のリスクを告知する義務
改正指針では、事業者が従事者を指定する際の手続について、以下のような義務が括弧書きで明記されています。
▽法定指針〔令和8年3月31日版〕第3-2
2 事業者は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くこと(それに伴い法第12条に定める守秘義務が課されること及び法第22条に定める罰則の適用対象となり得ることを含む。)が従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない。
従事者は、万が一情報を漏洩した場合に30万円以下の罰金という刑事罰を科される立場です。そのため、国は事業者に対し、自らがそのような刑事上の守秘義務を負う立場(従事者)に就くのだということを、本人が明確に認識できる方法で指定しなさい、と義務付けたわけです。
指定の方法:従事者指定書の交付
口頭による指定も法律上不可能ではありませんが、後から「聞いていなかった」「そんなに重い義務だと思わなかった」となるリスクを避けるため、また、消費者庁から指定の事実を示す記録の提出を求められた際(法16条の報告徴求等)に対応するため、従事者指定書(書面)を作成して対象者に手渡し、署名・受領印をもらう方法が基本スタンスとなります。
消費者庁が公表している従事者指定書(サンプル)では、以下のような警告文(罰則告知)が盛り込まれており、これを雛形に取り入れることが推奨されます。
📋 消費者庁サンプルの文言(抜粋):「公益通報者保護法上、公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない(公益通報者保護法第12条)こととされており、当該規定に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象となります(公益通報者保護法第22条)。この守秘義務は、従事者として指定される期間はもとより、従事者指定が解除された後であっても遵守しなければなりません。」
つまり、有効期間というものはないので、従事者指定が解除された後(退職後等)であっても、一生涯にわたって遵守しなければならないということになります。
すでに指定済みの既存の担当者はどうすべきか
すでに何年も前から指定している既存の窓口担当者に対しても、改正法の施行に伴って改めて指定し直さなければならないのでしょうか。
この点については、一般論として、過去の指定時に書面等で本人の地位が明確にされていた場合には、必ずしも形式的に指定をし直すことまでは不要です。
ただし、従事者が予期に反して刑事罰を科されるといった不測の事態を防ぐため、また、改正法の施行日(令和8年12月1日)を機にガバナンスを点検する観点から、現在指定されている従事者全員に対し、守秘義務の内容と刑事罰のリスクを改めて通知・確認し合う機会を設けることが推奨されます。
▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q16】
当社では、既に従業員を従事者として指定していますが、その際、本法第12条に定める守秘義務が課されること及び本法第22条に定める罰則の適用対象となり得ることについて、従事者自身に明らかとなる方法で指定していなかった場合、令和7年改正の施行日である令和8年12月1日以降、再度、同じ従業員を従事者に指定し直す必要がありますか。
一般論としては、例えば、従事者に指定されたことが書面等で本人に明確になる形で行われていた場合には、必ずしも再度指定をし直すことまでは求められるものではないと考えられます。
他方で、従事者となった者が予期に反して刑事罰が科されるなどの事態とならないよう、例えば、本法第12条に定める守秘義務が課されること及び本法第22条に定める罰則の適用対象となり得ることについて、速やかに従事者として指定された者に明らかにすることが必要と考えられます。
続いて、指定された従事者が負う守秘義務(法12条)と、それに違反した際の刑事罰(法22条)の中身について解説します。
(※注)令和2年改正(令和4年6月施行)版です
従事者の守秘義務(法12条)
従事者または元従事者は、正当な理由がなく、公益通報者を特定させる情報(特定情報)を漏らしてはならないという守秘義務を課されています。
▽公通法12条
(公益通報対応業務従事者の義務)
第十二条 公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。
何が特定させる事項(特定情報)に該当するのか
法12条で漏らしてはならないと定められている「公益通報者を特定させるもの」(特定情報)の定義は、思っているよりも広いです。
属性情報の照合
通報者の本名や社員番号、メールアドレスをそのまま伝えることがアウトなのは言うまでもありません。 しかし、法律が定める「特定させるもの」とは、その情報を聞いた者が、誰が通報したかを排他的に認識できるすべての情報を指します。
▽指針解説〔令和8年3月31日版〕脚注6
6 「公益通報者を特定させる事項」とは、公益通報をした人物が誰であるか「認識」することができる事項をいう。公益通報者の氏名、社員番号等のように当該人物に固有の事項を伝達される場合が典型例であるが、性別等の一般的な属性であっても、当該属性と他の事項とを照合させることにより、排他的に特定の人物が公益通報者であると判断できる場合には、該当する。「認識」とは刑罰法規の明確性の観点から、公益通報者を排他的に認識できることを指す。
例えば、公通法Q&A(従事者Q13)では、”ある支店において、女性社員が1名しか在籍していない会社において、 従事者が「大阪支店の女性社員から、部長の不正請求についての内部通報がありました」と他の役職員に伝えた”という事例が挙げられています。
この場合、従事者は通報者の「氏名」を直接漏らしてはいませんが、「大阪支店には女性が1人しかいない」という客観的事実と照合することで、聞いた者は通報者が誰であるかを特定(排他的に認識)できてしまいます。 したがって、これは守秘義務違反(法12条違反)を構成し、刑事罰の対象となります。
▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q13】
「従事者が公益通報者を特定させるものを漏らす」(本法第12条)とは、具体的にどのような行為を指しますか。
「公益通報者を特定させるもの」とは、公益通報をした人物が誰であるか「認識」することができる事項をいい、「認識」とは刑罰法規の明確性の観点から、公益通報者を排他的に認識できることを指します。公益通報者の氏名、社員番号等のように当該人物に固有の事項が典型例ですが、性別等の一般的な属性であっても、当該属性と他の事項とを照合させることにより、排他的に特定の人物が公益通報者であると判断できる場合には該当します。例えば、大阪支店における女性社員が1名のみの事業者において、「大阪支店の女性が内部公益通報を行った」という情報は、公益通報者を特定させる事項に該当すると考えられます。
また、「漏らす」とは、一般に知られていない事実を一般に知らしめること、又は知らしめるおそれのある行為をすることを指します。「漏らす」方法については、文書であるか口頭であるか問わず、また、作為であるか不作為であるか問わず該当します。公益通報者を特定させる事項を漏らす対象は、不特定多数の人々である場合はもちろん、特定の人を対象とした場合であっても、その者を通じて広く流布されるおそれがある以上「漏らす」に該当することになるため、例えば、上司、同僚等の他の労働者や社外の知人・家族等に知らせること等も、「漏らす」に該当することになると考えられます。
通報内容のディテール自体が特定情報になるケース
「営業部の男性社員から通報がありました」とぼかして伝えたとしても、通報内容が「〇月〇日の〇〇会議で、部長が〇〇と発言した件について」といった、その会議のその場にいた特定の人物にしか知り得ない具体的な事実であった場合、それを聞いた関係者はすぐに”犯人”を特定できてしまいます。
このように、通報の中身(ディテール)そのものが通報者の排他的特定につながる場合、その中身を安易に他人に伝えることも守秘義務違反になります。
守秘義務に期限はない
前述のように、この守秘義務には、一切の有効期限がありません。
人事異動によって窓口担当部署から離れた場合、あるいは会社を退職して全く別の会社に転職した場合であっても、従事者であった期間に知り得た情報についての守秘義務は一生涯継続します。
▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q15】
従事者であった者は、いつまで守秘義務が課されますか。
従事者であった者が、従事者であった期間に知り得た事項に係る守秘義務については、期限の定めなく課されることとなります。そのため、従事者指定が解除された後も守秘義務は引き続き課されることになります。
”もう会社を辞めたから、あの時のタレコミを居酒屋で話しても大丈夫”といった誤解は禁物です。
開示が許される正当な理由
一方で、社内調査を適切に進めるためには、どうしても他の調査担当者に情報を共有したり、対象者に事実確認をしたりしなければならない場面があります。
法12条は、正当な理由がある場合には、守秘義務が解除されると定めています。正当な理由とは、「公益通報者を特定させる事項」を漏らす行為に違法性がないと考えられる場合を意味するとされていますが(逐条解説 第12条参照)、どのような場合が「正当な理由」に該当するのでしょうか。
公通法Q&A(従事者Q12)では、正当な理由が認められる代表的な4つのケースが挙げられています。
① 公益通報者本人の明示的な同意がある場合
本人が「名前を出して調査して構いません」と明確に合意している場合です。トラブル防止のため、必ず同意書(書面)を取得しましょう。
ただし、十分な説明をせずに形式的に同意を強要したような場合は、正当な理由と認められない可能性があります。
② 法令に基づく情報開示
裁判所からの文書提出命令や、捜査機関からの刑事訴訟法に基づく照合・照会に対して情報を開示する場合です。
③ 従事者間で必要最小限の範囲において情報共有する場合
窓口の従事者が、同じく従事者に指定されている別の調査担当者に、調査の必要上、情報を共有するケースです。
④ 極めて限定的な、調査是正のためにやむを得ない場合
例えばハラスメント事案のように、被害者(通報者)を特定しなければ物理的に事実確認の調査が全く進められず、本人の同意が得られないものの、法令違反を是正するために重大な必要性がある、といった極限的な状況です。
▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者に関するQ&A【Q12】
・調査又は是正措置の実施に際し、従事者の指定を受けていない者(例えば、通報対象事実に係る業務執行部門の関係者等)に対し公益通報があったことも含めて公益通報者を特定させる事項を伝えなければ、調査又は是正措置を実施することができない場合(例えば、ハラスメント事案において刑法犯等に該当する行為が行われたため、当該ハラスメント事案の通報が公益通報に該当する場合等において、公益通報者が通報対象事実に関する被害者と同一人物であること等のために、調査等を進める上で、公益通報者の排他的な特定を避けることが著しく困難であり、当該調査等が法令違反の是正等に当たってやむを得ないものである場合)
なお、行政機関が2号通報を受けた場合も同様の考え方によると考えられます。
ただし、この場合であっても、伝える範囲は必要最小限に留め、相手方に守秘誓約をさせるなどの措置が望ましいと考えられます。
守秘義務違反に対する刑事罰(法22条)
刑事罰の対象:従事者個人の30万円以下の罰金
従事者(または元従事者)が、正当な理由なく、公益通報者を特定させる事項を漏らした場合、30万円以下の罰金に処されます(法22条)。
▽公通法22条
第二十二条 第十二条の規定に違反して同条に規定する事項を漏らした者は、三十万円以下の罰金に処する。
この刑事罰は会社に対するものではなく、漏らした担当者個人に対して科される刑事罰です。起訴されて罰金刑が確定すれば、その個人には前科がついてしまうことになります。
過失(うっかり漏洩)は刑事罰の対象になるか
例えば、”うっかりメールを誤送信してしまい、結果的に通報者の名前が漏れてしまった”という過失のケースです。
刑事上の責任
過失犯は処罰されません。
日本の刑法上、過失犯を処罰するためには法律に特別な規定が必要ですが、公益通報者保護法には過失を処罰する規定はありません。したがって、故意(わざと、あるいは漏れても構わないと思って漏らしたこと)がない限り、罰金刑を受けることはありません。
▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:罰則その他事項に関するQ&A【Q3】
従事者が過失により、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らした場合、刑事罰の対象となりますか。
本法には過失犯処罰の規定がなく、その場合は刑事罰の対象とはなりません。ただし、行為態様によっては、範囲外共有として各事業者の内部規程に基づく懲戒処分その他適切な措置の対象となる場合も想定されると考えられます。
民事・労務上の責任
当然、ただでは済みません。刑事罰は免れたとしても、うっかり漏洩(過失)は事業者にとって体制整備義務違反(法11条2項違反)を構成します。
また、通報者個人に対する不法行為責任(民法709条)に基づき、担当者個人や会社に対して損害賠償(慰謝料)請求が認められるリスクがあります(※過去には、フランチャイズ本部が設置した相談窓口で情報が漏洩した事案において、本部の守秘義務違反を認めて慰謝料支払いを命じた判例(大阪高判平成24年6月15日:日本マクドナルド事件)が存在します)。
もちろん、上記Q&Aのように、社内での懲戒処分の対象にもなり得ます。
役員・管理職のリスク:犯人を聞き出そうとする場合の教示・教唆犯
従事者以外の役員や管理職が知っておかなければならない注意点は、教唆犯(刑法61条1項)の成立です。
内部通報によって自らの不正やパワハラが疑われた上司や役員は、激怒して、あるいは焦って、窓口の担当者(従事者)に対し、”俺の噂をチクったのは誰だ?部長の俺の命令だ、教えろ” "今後の指導のために、通報者が誰なのか教えるのが筋だろう"などと問い詰める(要求する)ケースが、実際上後を絶ちません。
【教唆犯の成立プロセス】
[不正を疑われた上司]
「通報者が誰なのか教えろ」と従事者を強く問い詰めて要求する
▼
[気弱な従事者(部下)]
上司の命令に逆らえず、やむなく通報者(Xさん)の名前を教えてしまう
▼
[法的な評価]
① 従事者は、法12条(守秘義務)違反の正犯として処罰(30万円以下の罰金)
② 問い詰めた上司も、刑法61条1項に基づき守秘義務違反の教唆犯(共犯)として、従事者と同等の刑事罰(30万円以下の罰金・前科)が科される
法律上の守秘義務(名宛人)を負っているのは従事者だけですが、その従事者に対して特定情報を漏らすようそそのかした・要求した部外者の上司や経営幹部も、同じペナルティを背負うことになります。
これは、役員や管理職が、会社の秩序維持のための正当な行為だと自己弁護したところで、言い訳の通用しない犯罪行為です。全社的な管理職研修等で、このリスクを周知しておく必要があります。
結び
本記事のハイライトとして、要点をチェックリスト風にまとめます。
従事者・守秘義務のチェックリスト
- 【刑事罰の書面告知】 窓口担当者に対し、法律上の従事者であり、秘密を漏らした場合は退職後も含めて、刑事罰(罰金30万)の対象になる旨を明記した従事者指定書を交付して指定しているか
- 【実質的なメンバーの指定】 法務・コンプライアンスのメイン担当だけでなく、実際に通報受付メールの受信フォルダにアクセスでき、特定情報を目にし得るシステム管理者やアシスタント、社外の委託先弁護士等も漏らさず従事者に指定しているか
- 【教唆犯リスクの研修】 経営陣、役員、管理職に対して、窓口担当者から犯人の名前を聞き出そうとする行為そのものが、刑事罰(教唆犯)の対象になり得るという事実を教育・周知しているか
- 【属性情報の厳守】 社内調査報告書等において、本名を伏せていたとしても、部署や性別、会議の日時などの属性情報の照合によって、実質的に通報者が特定されるような記載(範囲外共有)を行っていないか
- 【証拠化された同意取得】 調査のために通報者の氏名を開示せざるを得ない場合、口頭のやり取りだけで済ませず、開示の目的と開示先、生じ得るリスクを説明した上で、開示同意書(書面・電子メール等)を確実に取得しているか
従事者と守秘義務は、企業が社会的な信用を保ち、経営陣や担当者を刑事上のリスクから守るための、デリケートで重要な防衛線です。「誰が通報したか」という秘密を守り抜くルールと、それを支える指定プロセスを定着させることが、従業員が安心して不正を社内で告発できる信頼のインフラへと繋がります。
本記事の内容も活用しつつ、自社の従事者指定と守秘義務ルールをより良い状態へとアップデートしていただければ幸いです。
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
参考資料
- 公益通報ハンドブック〔令和8年12月施行版〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 逐条解説(消費者庁)|消費者庁HP
- 裁判例の収集(概要/裁判例一覧/論点整理表)〔2022年度調査〕|消費者庁HP(≫掲載ページ)
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(※)上記は令和2年改正(令和4年6月施行)版です
(※)上記は令和2年改正(令和4年6月施行)版です