公益通報者保護法

公益通報者保護法|事業者がとるべき措置等③-内部通報における「調査・是正・通知」の対応フロー

2026年8月4日

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今回は、公益通報者保護法ということで、事業者がとるべき措置等のうち、調査・是正・通知のフローについて見てみたいと思います。

前の記事で、体制整備の基盤(窓口設置・独立性確保・利益相反排除)について解説しましたが、立派な箱(インフラ)を作ったとしても、通報が届いた後の動かし方が不適切であったり、形骸化した運用であったりすれば、制度は信頼を失います。

本記事は、法定指針のなかで実際の対応フローの中核をなす調査・是正措置・是正措置の機能検証(指針第4の1-⑶)と、通報者への誠実なフィードバックを義務付けた是正措置等の通知(指針第4の3-⑴)という2つのテーマについて、令和7年改正(令和8年12月施行)基準で解説します。

今回の改正によって、対応フローは単に”処分・是正措置をとって終わり”ではなくなりました。是正が現場で機能しているかどうかの機能検証や、機能していない場合の再是正までが、体制整備義務(300人超の企業は法的義務)として組み込まれています。パブコメやQ&Aで取り上げられた法的論点まで含めて、見ていきましょう。

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。

本記事は令和7年改正法(令和8年12月施行)を基準にしています

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




公益通報対応業務の実施と機能検証・再是正(法定指針 第4-1-⑶関係)

通報が寄せられた際、従事者は、事実の解明(調査)と、不正が判明したあとの是正措置(処分や内規改定)を行います。

これが対応フローの中心ですが、改正法においては、それだけでは完結しないこと(機能検証再是正)にも留意が必要です。

▽法定指針〔令和8年3月31日版〕第4-1-⑶

⑶ 公益通報対応業務の実施に関する措置
 内部公益通報受付窓口において内部公益通報を受け付け、正当な理由がある場合を除いて、必要な調査を実施する。そして、当該調査の結果、通報対象事実に係る法令違反行為が明らかになった場合には、速やかに是正に必要な措置をとる。また、是正に必要な措置をとった後、当該措置が適切に機能しているかを確認し、適切に機能していない場合には、改めて是正に必要な措置をとる。当該内部公益通報以外の公益通報に係る通報対象事実についての調査及び是正等の対応が必要な場合においても、同様の措置をとる。

調査の開始

調査開始の場面での注意点は、匿名の通報であることは調査を拒む理由にはならないということです。匿名の通報だからといって、事実確認ができないものとして調査せずに放置すると、指針違反(体制整備義務違反)となってしまいます。

調査を実施しないことについて正当な理由が認められるのは、

  • 客観的に見て解決済みの案件に関する通報である場合
  • 通報者と連絡が一切取れず、追加の事実確認を行うことが物理的に不可能な場合

といった、例外的な場合に限られます(Q&A 内部通報体制Q19も参照)。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-1-⑶-③

● 調査を実施しない「正当な理由」がある場合の例として、例えば、解決済みの案件に関する情報が寄せられた場合、公益通報者と連絡がとれず事実確認が困難である場合等が考えられる。解決済みの案件か否かについては、解決に関する公益通報者の認識と事業者の認識が一致しないことがあるが、解決しているか否かの判断は可能な限り客観的に行われることが求められる。また、一見、法令違反行為が是正されたように見えても、案件自体が再発する場合や、当該再発事案に関する新たな情報が寄せられる場合もあること等から、解決済みといえるか、寄せられた情報が以前の案件と同一のものといえるかについては慎重に検討する必要がある。

匿名であることそれ自体は、調査を拒む正当な理由には該当しません。通報者の身元がわからなくても、メールや匿名の専用チャットツール、外部窓口等を通じて連絡が取れるのであれば、従事者は事実確認(補充聴取)を行い、調査を開始する義務を負います。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:事業者通報対応Q3

 内部公益通報受付窓口では、匿名の1号通報を受け付ける必要がありますか。

 本法は、公益通報を顕名(実名)の通報に限定しておらず、匿名であっても、本法に定める要件を満たせば公益通報に該当することから、内部公益通報受付窓口では、匿名の1号通報を受け付ける必要があります。
 他方、匿名の1号通報については、例えば、公益通報者に連絡がつかないために十分な調査ができないなど、顕名の1号通報と同様の対応を行うことが難しい場合も考えられます。
 このため、指針の解説においては、匿名の1号通報であっても公益通報者と連絡を取る方法として、例えば、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える匿名での連絡を可能とする仕組み(外部窓口から事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み、チャット等の専用のシステム等)を導入すること等を求めています。顕名の1号通報のみを受け付ける内部公益通報受付窓口を設けることも可能ですが、その場合には、別途匿名の1号通報を受け付ける内部公益通報受付窓口を設置する必要があります。
 なお、調査を実施しない正当な理由がある場合の例として、公益通報者と連絡が取れず事実確認が困難である場合がありますが、事実確認が困難である実態が必要であり、匿名であることのみをもって調査を実施しない正当な理由には該当しません
 また、匿名であっても、調査等の際の対応によって公益通報者が特定されてしまうおそれがあることから、調査の実施に当たっては十分に配慮することが必要です。

調査のやり方のコツ

実際の調査を成功させるための秘訣として、以下のような指摘もあります(「内部通報制度調査担当者必携」(森原憲二)99頁、103頁等参照)。

文字情報を頭の中で映像情報に変換する

例えば、通報者から「上司から密室で10分間、人格を否定されるような酷い暴言(お前は生き方から変えろ等)を電話で言われた」という文字情報(証言)を得たとします。

調査担当者は、この文字をそのまま受け取るのではなく、「その10分間、どのようなやり取りがなされていたか」を頭の中でリアルな映像として再現します。

業務指示だけであれば通常2〜3分で終わるはずの電話が、なぜ10分(客観的な通話記録)もかかったのかという、客観的証拠(通話時間10分)と相手の言い分(業務指示だけだという否認)の不整合(ギャップ)を突き詰めていくことが、事実認定の肝となります。

通報者への補充調査(ぶつけ)を欠いた見切り発車の戒め

社内調査の良くない例では、通報者から話を聴き、被通報者(疑われている上司)に「そんなことは言っていない」と否認された時点で、双方の意見が食い違っているとして安易に真偽不明(お咎めなし)で調査を終わらせてしまうケースがあります。

しかし、被通報者が否認するのは当然です。相手の弁解を引き出した後に、「相手はこういう理由で否定していますが、これについてどう思いますか?」「当時、このメールや前後の状況はどうでしたか?」と、通報者や調査協力者に再度、補充確認を行うプロセスを挟まなければ、適正な事実認定にたどり着くことは困難といえます。

通報者探索(犯人捜し)を防ぐ調査テクニック

従事者が社内調査をするにあたり、通報者の身元を守り(法12条の守秘義務を遵守し)、かつ、犯人捜しをしている(法11条の3の探索禁止に違反している)と周囲に疑われないためのテクニックとして、ダミー調査などがあります。

”内部通報があったからその事実を調査しにきた”と直接に関係部署へ切り込んでしまうと、部署の人間は誰かが通報したとすぐに気付き、犯人捜し(通報者の特定)が始まってしまいます。そのため、従事者は以下のような工夫をして、調査の端緒(きっかけ)が内部通報であることを関係者に悟らせない工夫をすることが望ましいといえます。

消費者庁のQ&Aでは、従事者が調査時に実践すべきいくつかのカモフラージュ方法が紹介されています。

① ダミー調査の実施

不正の疑いがあるターゲットの部署だけでなく、全く関係のない他の複数の部署に対しても、同時に形式的なヒアリング(ダミー調査)を行うことで、特定の部署や個人が狙い撃ちされていることを隠します。

② 定期的な機会との合流

タイミングを合わせられるのであれば、毎年行われる「定期的な内部監査」「職場環境アンケート」「上司による定期人事面談」などの既存の定例イベントのなかに、通報事案に関する質問を混ぜ込んで事情を聴き出します。

③ 抜き打ち・特別監査の体裁を装う

「コンプライアンス強化月間に伴う、全社的な抜き打ち特別監査」といった看板を掲げて、ターゲット部署のデータやPCログ、伝票類の精査を実施します。

④ 周辺部分から外堀を埋めていく

いきなり核心部分(被通報者や、通報者が持っていた証拠のピンポイントな内容)を問い詰めるのではなく、業務プロセス全体の流れや周辺の事務処理の確認から、遠回りにヒアリングを開始します。

⑤ 調査協力者への秘密保持誓約書の徴求

事情を聴く第三者(調査協力者)に対しては、話を聴く前に必ず「ここで知り得た一切の事項を、上司を含め他人に漏洩しない」という秘密保持の誓約書をとる、また漏洩した場合は懲戒処分の対象になることを注意喚起します。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:従事者Q11

 調査を担当する従事者が、情報管理公益通報者の特定を防ぐなどの観点から留意すべき事項の具体例として、どのような事項が考えられますか。

 例えば、以下の事項等が考えられます。

  • 公益通報者を特定させる事項、内部公益通報に関する秘密や個人情報についての情報管理を徹底する
  • 公益通報者が特定されないような方法で調査を行う
  • 公益通報者と接触するに当たって時間や場所を適切に定める
  • 自らが刑事罰を科され得る守秘義務を負う立場にあること、従事者であった期間に知り得た事項に係る守秘義務については期限の定めなく課されることを常に意識する

 また、公益通報者を特定されないための工夫として、例えば、以下の事項が考えられます。

  • 公益通報者を特定させる事項を伝達する相手にはあらかじめ秘密保持を誓約させる
  • 公益通報者を特定させる事項の漏えいは懲戒処分等の対象となる旨の注意喚起をする
  • 必要に応じて従事者以外の者に調査等の依頼を行う際には、当該調査等が内部公益通報を契機としていることを伝えない
  • 調査の端緒が公益通報であることを関係者に認識させない措置をとる(例えば、抜き打ちの監査を装う、該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う、(タイミングが合う場合には、)定期的な監査、職場環境調査、上司等による人事面談等といった各種の定期的な機会と合わせて調査を行う、核心部分ではなく周辺部分から調査を開始する、組織内のコンプライアンスの状況に関する匿名のアンケートを、全ての労働者等、特定受託業務従事者(フリーランス)及び役員を対象に定期的に行う

是正後の機能検証と再是正の義務化【★令和7年改正】

事実が認定され、問題のある上司を処分したり、業務プロセスを改善したりした後であっても、機能検証(モニタリング)再是正が要求されています(令和7年改正指針)。

機能検証のやり方

処分したから終わり、内規を変えたから完了、ではありません。

是正措置を講じたあと、一定期間(例:3か月〜半年後など)が経過したタイミングで、従事者側から「その是正措置が現場で本当に機能しているか」「不正が隠れて再発していないか」を確認(能動的調査や匿名の職場アンケートなど)する必要があります。

また、被害者である通報者に対し、問題が再発した場合にはいつでも再度申し出てよい旨、個別にフォローアップを行うことも推奨されます。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-1-⑶-③

● 是正に必要な措置が適切に機能しているかを確認する方法として、例えば、是正措置から一定期間経過後に能動的に改善状況に関する調査を行う特定の個人が被害を受けている事案においては問題があれば再度申し出るよう公益通報者に伝える等が考えられる。

再是正の義務

もし機能検証の結果、是正措置が形骸化していたり、現場でいじめや不正が再発していることが発覚した場合には、改めて別の(より強力な)是正措置を講じること(再是正)が、事業者に義務付けられています。

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕第3-Ⅱ-1-⑶-③

● 調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、例えば、必要に応じ関係者の社内処分を行う等、適切に対応し、必要があれば、関係行政機関への報告等を行う。

(※注)令和2年改正(令和4年6月施行)版です

是正措置等の通知(法定指針 第4-3-⑴関係)

調査を終え、是正措置をとった(あるいは不正がなかったと判断した)場合、会社は通報者に対してその結果を速やかに通知しなければなりません。

▽法定指針〔令和8年3月31日版〕第4-3-⑴

⑴ 是正措置等の通知に関する措置
 書面により内部公益通報を受けた場合において、当該内部公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正に必要な措置をとったときはその旨を、当該内部公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、当該内部公益通報を行った者に対し、速やかに通知する。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:内部通報体制Q44

 「是正措置等の通知」(指針第4の3⑴)は文書で行う必要がありますか。

 是正措置等の通知の方法について特段の規定はありません
 また、通知の態様についても、一律のものが想定されているものではなく、例えば、公益通報者個人に通知をする、全社的な再発防止策をとる必要がある場合に労働者等、特定受託業務従事者(フリーランス)及び役員の全員に対応状況の概要を定期的に伝えるなど、状況に応じた様々な方法が考えられます。

放置した場合の帰結

事業者が通報者からの連絡を無視したり、通知を怠ったりすることには、事実上のペナルティがあります。

通報者が書面(電子メールや電磁的記録等を含む)で内部通報(1号通報)を行った場合、その到達した日から20日を経過しても、会社から調査を行う旨の通知がない、あるいは会社が正当な理由なく調査を行わないことは、3号通報の保護要件である特定事由のひとつとされています(法3条1項3号ホ)。これにより通報者は、マスコミへ通報(3号通報)しても、本法によって守られることになります。

つまり、放置すれば、報道機関等への通報(3号通報)が許容されることになるということです(20日のデッドライン)。

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この20日間の数え方は、民法の初日不算入の原則(民法140条)に従います(Q&A 保護要件Q7参照)。

【期間計算(民法)に基づく「20日間」の計算例】

:通報者のメールや書面が、会社のサーバーやポストに4月1日に到達した場合

  • 起算日:到達した日の翌日である4月2日からカウントを開始します。
  • 20日目4月21日の終了(24時)をもって20日間が満了します。
  • 3号通報の解禁日:翌日である4月22日になった時点から、通知がないことを理由とする3号通報(報道機関等への外部通報)が解禁されます

ただし、通報者が完全匿名で通報し、会社側からの返信用連絡先(フリーメール等)を一切残していなかったために通知が送れなかったような場合は、通報者が「20日経っても会社から通知がなかった」という理由で3号通報を行っても、法律上の保護を受けることはできません。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:保護要件Q8

 1号通報を匿名で行い、事業者との連絡方法も有していなかったことにより、事業者から調査を行う旨の通知がなされない場合であっても、通報者は通報先から20日以上通知がないことを理由に、本法第3条第1項第3号ホの規定に基づき、その他の外部通報先へ公益通報(3号通報)を行うことができますか。

 本法第3条第1項第3号ホにおいて、「調査を行う旨の通知がない場合」が保護要件とされた趣旨は、公益通報者に対して外部公益通報をするかどうかの判断の機会を与えるためです。よって、匿名通報のため事業者から通知を行えない場合や公益通報者があらかじめ通知を不要としていた場合等、公益通報者の側が事業者からの通知を受けることがないような対応をとった場合には、調査を行う旨の通知がなかったことを理由に、3号通報をしたとしても、本法の規定による不利益な取扱いからの保護を受けることはできないと考えられます。

匿名の通報者への通知

匿名であっても可能な限り通知するインフラの構築

匿名の通報であっても、個人が特定できないメールアドレスや、外部窓口を介した仕組み・チャット等、連絡が取れるルートがある場合は、その手段を使って是正措置等の通知を行う必要があります。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:内部通報体制Q46

 公益通報者が匿名の場合にも是正措置等の通知は必要ですか。

 公益通報者が匿名でありかつ通報者から連絡先についての情報提供も拒まれているなど公益通報者への通知が実質的に困難である場合には、是正措置等の通知を行わないこともやむを得ないと考えられます。
 なお、指針の解説においては、匿名の内部公益通報であっても公益通報者と内部公益通報受付窓口の担当者が連絡を取る方法として、例えば、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える匿名での連絡を可能とする仕組み(外部窓口から事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み、チャット等の専用のシステム等)を導入すること等を求めています。

調査中に通報者の身元が「うっかり判明」した場合の注意点

匿名の通報を調査する過程で、提出された資料や文脈から「あ、これは〇〇課のAさんだな」と従事者が気付いてしまうことがあります。この場合、Aさんが自分から名乗り出ていない限り、従事者は「Aさんだと知っていること」を前提として安易に個別のメール等で通知を送ってはなりません。

本人が匿名を希望している以上、秘密保持(特定情報の非共有)の原則を優先し、当初予定されていた匿名連絡ルートのみを使って通知を行うか、不必要な共有を避けて慎重に対応する必要があります。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:内部通報体制Q47

 連絡先不明の匿名の公益通報者からの内部公益通報について、調査中に通報者の身元が判明した場合、是正措置等の通知を行うべきですか。

 指針の解説においては、匿名の内部公益通報であっても公益通報者と内部公益通報受付窓口の担当者とが連絡を取ることができる仕組みを導入することを求めており、匿名の内部公益通報であっても是正措置等の通知が可能であると考えられます。匿名の公益通報者が、こうした仕組みを使わず、内部公益通報の受付時点では連絡先が不明であったものの、調査中に当該公益通報者の身元が判明した場合に是正措置等の通知を行うかどうかは、個別の事案ごとの判断となりますが、通報者が自ら名乗り出ない限り、通報者が誰であるか判明していない前提で調査等を行うことが必要であり、通報者が誰であるかを不必要に共有するような行為は控えるべきと考えられます。
 また、匿名の公益通報者が上述の連絡の仕組みがあることを認識しているかどうかが不明である場合には、当該公益通報者の身元を誤るなどして通知をすることによって内部公益通報に係る秘密を漏えいしてしまうおそれがあるため、これらの事情を考慮して判断することが考えられます。

通知内容と利害関係人のプライバシー等

通報者に是正措置の内容を通知する際、何でも詳細に開示してよいわけではありません。法定指針では、適正な業務の遂行および利害関係人の秘密・信用・名誉・プライバシー等の保護に支障がない範囲で行うよう、ブレーキ(制限)もかけています。

利害関係人の範囲は広い

ここで守るべき利害関係人には、被通報者(不正を疑われた人)だけでなく、調査に協力して証言してくれた同僚(調査協力者)や、関係する取引先事業者など、広く含まれます。

▽公通法Q&A〔令和8年5月29日時点〕:内部通報体制Q48

 是正措置等の通知に関して留意すべき「利害関係人」(指針第4の3⑴)には具体的にどの程度の範囲の者が含まれますか。

 利害関係人には、内部公益通報に関して利害関係を有する関係者が広く含まれます。具体的には、被通報者のほか、調査協力者(調査の過程で聞き取り調査を行った被通報者の上司・同僚等)、取引先事業者等も含まれます。

通知すべきでない情報の具体例

通知すべきでない情報の例としては、以下のようなものが挙げられています。

  • 誰が、調査でどのように証言したかという具体的な供述内容(人間関係の崩壊や報復に繋がる)
  • 被通報者に対する人事処分の詳細な中身(「〇〇部長を、〇月〇日付で懲戒解雇処分とした」等のプライベートな制裁情報は、原則としてプライバシー保護の観点から詳細を伝えるべきではなく、「就業規則に基づき厳正な処分を行った」等の抽象的な通知にとどめる)

▽指針解説〔令和8年3月31日版〕脚注31

31 調査過程において誰が何を証言したか人事処分の詳細な内容等はプライバシーに関わる場合もあるため、公益通報者に内部公益通報への対応結果を伝えるべきではない場合も想定される。




結び

本記事のハイライトとして、要点をチェックリスト風にまとめます。

調査・是正・通知フローのチェックリスト

  • 20日以内の受領・開始通知】 書面やメール等で内部通報を受理した際、3号通報への駆け込みを防ぐため、到達した日の翌日から20日以内に、調査を開始する旨の通知を確実に送るプロセスがマニュアル化されているか
  • 匿名の受付・連絡手段の確保】 匿名通報に対して名乗らないからという理由だけでスルーせず、匿名性を維持したままやり取りができるフリーメールや専用チャット等のシステムを整備し、対話を行っているか
  • 機能検証・再是正のプロセス化】 問題行為の是正後、一定期間後にその是正が現場で本当に機能しているかを確認する機能検証(モニタリング)の予定日をあらかじめ案件管理表にセットし、機能していない場合の再是正の手順を規程に定めているか
  • プライバシーを保護した通知】 通報者への結果通知の際、被通報者の詳細な人事処分内容や、調査協力者の具体的な証言内容など、利害関係人のプライバシーを不当に侵害する情報をマスキングするルールになっているか
  • 調査端緒の秘匿(カモフラージュ)】 従事者が関係部署に調査に入る際、犯人捜しを誘発しないよう、ダミー調査や定例監査との合流などのカモフラージュ措置を講じる手順を調査マニュアルに組み込んでいるか

通報を受け付ける(端緒) ➜ 調査を行う(ダミー調査等のカモフラージュ) ➜ 改善する(是正措置) ➜ 根付かせる(機能検証・再是正) ➜ 誠実に返す(プライバシーに配慮した是正通知)という、実際の対応フローは、内部通報制度におけるメイン部分といえます。

どれほど整備された箱を作っても、この実際の対応が不調であれば、不正は社外(マスコミや行政)に向かって表面化することになります。

令和7年の法改正も機に、内部規程の見直しだけでなく、従事者の調査・認定・通知のスキルを向上させていくことが期待されます。

公益通報者保護法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

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参考資料

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(※)上記は令和2年改正(令和4年6月施行)版です

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