印紙税法

印紙税法|印紙税の「所属の決定(通則3)」ルールと判定プロセスを解説~複数号の重複の整理など

今回は、印紙税法ということで、課税文書の所属の決定について見てみたいと思います。

印紙税法における課税文書の該否および税額の判断は、大きく以下の3つのステップに沿って体系的に行われます。

  • 「課税文書」に該当するかどうかの判定(ステップ1) 
    その文書に印紙税法上の課税事項(別表第一の20の分類)が記載されており、かつ、当事者間でその事実を証明する目的で作成されたものであるかを判定します
  • 「非課税文書」に該当するかどうかの判定(ステップ2) 
    課税事項が記載されていても、取引金額が少額である場合(非課税物件欄)や、作成者が国・地方公共団体、非課税法人(別表第二)等である場合に、特別に課税が免除されるかどうかを判定します
  • 課税文書の「所属の決定」(ステップ3) 
    上記をクリアした文書に複数の課税事項が記載されている場合や、1つの記載事項が複数の号にまたがって該当する場合に、最終的にどの号の文書(第1号〜第20号)として印紙税を課すかを決定します

ステップ1とステップ2はいわゆる課否判定と呼ばれるものですが、本記事で解説するのは、最も複雑でありかつ細かいルールが存在する、課税文書の所属の決定(ステップ3)についてです。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

所属の決定における大原則

印紙税は原則として、物理的形状から判断される一の文書ごとに課税されます。

一つの文書に複数の号に該当する事項(課税事項)が記載されていても、それぞれの号の税金が重ねて課される(合算される)わけではありません。印紙税法は、一の文書に対しては、最終的に決定されたいずれか一つの号の税率のみを適用するという所属の決定のルールを定めています(通則3)。

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3

 一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。
イ~ホ (略)

所属を決定するにあたり、通則3は以下の3つの基本方針に基づいて定められています。

  • 高税率優先:該当する号のうち、税率(税額)の最も高い号の文書に所属させる
  • 若番号優先:税率が同一である場合は、号数の若い(先に掲げられている)号の文書に所属させる
  • 通帳優先:証書(第1号〜第17号)と通帳等(第18号〜第20号)の双方に該当する場合は、原則として通帳等の号に所属させる

一の文書」とは、第1号文書から第17号文書までの証書等については1通、第18号文書から第20号文書までの通帳等については1冊を指し、これらを課税単位としています

具体的な所属決定ルール(通則3のイ〜ホ)

複数の号に重複して該当する文書は、具体的に以下のルール(通則3のイ〜ホ)に基づいて、最終的な所属が1つに決定されます。

「第1号または第2号文書」と「第3号〜第17号文書」の重複(通則3のイ)

不動産の譲渡や消費貸借、請負といった契約書の多くは、領収書(17号)や債権譲渡(15号)などの他の事項を併記することが多いため、最も頻繁に適用されるルールです。

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3イ

 第一号又は第二号に掲げる文書第三号から第十七号までに掲げる文書とに該当する文書は、第一号又は第二号に掲げる文書とする。ただし、第一号又は第二号に掲げる文書で契約金額の記載のないものと第七号に掲げる文書とに該当する文書は、同号に掲げる文書とし、第一号又は第二号に掲げる文書と第十七号に掲げる文書とに該当する文書のうち、当該文書に売上代金(同号の定義の欄1に規定する売上代金をいう。以下この通則において同じ。)に係る受取金額(百万円を超えるものに限る。)の記載があるもので、当該受取金額が当該文書に記載された契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額)を超えるもの又は契約金額の記載のないものは、同号に掲げる文書とする。

原則:第1号または第2号

第1号文書または第2号文書に所属が決定されます。

具体例

  • 不動産売買と、その代金にかかる売掛債権の譲渡を一書に記載した場合(第1号の1文書 兼 第15号文書)
    ➡ 第1号の1文書に決定
  • 請負契約を締結し、同時にその手付金の受領(領収)を証明した場合(第2号文書 兼 第17号の1文書。ただし契約金額がある場合)
    ➡ 第2号文書に決定

例外1(契約金額なし 兼 第7号)

第1号または第2号文書で契約金額の記載がないものと、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)の双方に該当する場合は、第7号文書に所属が決定されます。

具体例

  • :単価のみを定め、期間や総額の記載がない継続的な物品運送契約書(第1号の4 兼 第7号)
    ➡ 第7号文書

例外2(多額の売上代金受取との重複)

第1号または第2号文書と、売上代金の受取書(第17号の1文書)に該当するもののうち、受取金額が100万円を超え、かつその金額が契約金額を超える場合(または契約金額の記載がない場合)は、第17号の1文書に所属が決定されます。

「第1号文書」と「第2号文書」の重複(通則3のロ)

運送(1号の4)と請負(2号)のように、1号の課税事項と2号の課税事項が同一の文書に含まれる場合です。

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3ロ

 第一号に掲げる文書第二号に掲げる文書とに該当する文書は、第一号に掲げる文書とする。ただし、当該文書に契約金額の記載があり、かつ、当該契約金額を第一号及び第二号に掲げる文書のそれぞれにより証されるべき事項ごとに区分することができる場合において、第一号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額。以下このロにおいて同じ。)が第二号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額に満たないときは、同号に掲げる文書とする。

原則:第1号

第1号文書に所属が決定されます。

具体例

  • 機械の製作(請負=2号)と、その機械の運送(運送=1号の4)を同一書面で一括(金額を分けずに)契約した場合
    ➡ 第1号の4文書

例外(区分記載があり、かつ2号の方が高い場合)

それぞれの課税事項ごとの契約金額を区分して記載することができ、かつ、第2号文書(請負)に係る金額が、第1号文書に係る金額を超える場合は、第2号文書に所属が決定されます。

具体例

  • 機械製作費(2号)20万円、運送料(1号の4)10万円と区分記載されている契約書
    ➡ 2号の金額(20万)>1号の金額(10万)となるため、第2号文書

「第3号〜第17号文書」同士の重複(通則3のハ)

契約書(1号・2号以外)や有価証券、受取書などが重なり合う場合です。

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3ハ

 第三号から第十七号までに掲げる文書のうち二以上の号に掲げる文書に該当する文書は、当該二以上の号のうち最も号数の少ない号に掲げる文書とする。ただし、当該文書に売上代金に係る受取金額(百万円を超えるものに限る。)の記載があるときは、第十七号に掲げる文書とする。

原則:若番号優先

重複する号のうち、最も号数の少ない(若い)号に所属が決定されます(若番号優先)。

具体例

  • 継続的な金銭債権の売買取引の基本契約書(第7号 兼 債権譲渡=第15号)
    ➡ 番号の若い第7号文書に決定

例外(多額の売上代金受取との重複)

第3号〜第16号までの文書と、売上代金の受取書(第17号の1)に該当するもののうち、受取金額が100万円を超える記載がある場合は、第17号の1文書に所属が決定されます(高税率優先)。

「証書(1〜17号)」と「通帳等(18〜20号)」の重複(通則3のニ、ホ)

一度限りの事実を証明する証書と、連続して事項を付け込む通帳等の性質を併せ持つ文書(証書兼用通帳など)のルールです。

原則(通則3のニ):第18号〜第20号

通帳等(第18号〜第20号)に所属が決定されます。

具体例

  • 生命保険証券(10号)と、その保険料の受取通帳(18号)が一体となった文書
    ➡ 第18号文書

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3二

 ホに規定する場合を除くほか、第十八号から第二十号までに掲げる文書と第一号から第十七号までに掲げる文書とに該当する文書は、第十八号から第二十号までに掲げる文書とする。

例外(通則3のホ=多額の付込みがある場合)

通帳等への1回あたりの付込み(書き込み)金額が多額である場合は、通帳等への付込みではなく、独立した証書が新たに作成されたもの(みなし作成)と扱われ、所属が証書側に切り替わります。

▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則3ホ

 第十九号若しくは第二十号に掲げる文書と第一号に掲げる文書とに該当する文書で同号に掲げる文書に係る記載された契約金額が十万円を超えるもの、第十九号若しくは第二十号に掲げる文書と第二号に掲げる文書とに該当する文書で同号に掲げる文書に係る記載された契約金額が百万円を超えるもの又は第十九号若しくは第二十号に掲げる文書と第十七号に掲げる文書とに該当する文書で同号に掲げる文書に係る記載された売上代金に係る受取金額が百万円を超えるものは、それぞれ、第一号、第二号又は第十七号に掲げる文書とする。

  • 第19号・第20号通帳に、第1号文書(不動産等)の事項が書き込まれ、その金額が10万円(軽減税率適用時は50万円)を超える場合
    ➡ 第1号文書に決定
  • 第19号・第20号通帳に、第2号文書(請負)の事項が書き込まれ、その金額が100万円(軽減税率適用時は200万円)を超える場合
    ➡ 第2号文書に決定
  • 第19号・第20号通帳に、第17号の1文書(売上代金受取)の事項が書き込まれ、その金額が100万円を超える場合
    ➡ 第17号の1文書に決定

所属の決定がもたらす法的効果

通則3の規定によっていずれか一の号に所属が決定された文書については、所属した号の税率のみで印紙税が課税されます

一方で、所属しなかった号の課税事項については、印紙税法上、その文書に最初から記載がなかったものと同様に扱われます。

したがって、不採用となった事項に係る印紙税は一切発生しません。

結び

このように、印紙税法は、重複する事項をどのようなルールで整理し、最終的にどの1つの号に帰属させるか(=所属の決定)というプロセスを経て、税額を導き出す構造となっています。

今回は、印紙税法ということで、課税文書の所属の決定について見てみました。

印紙税法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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