印紙税法

印紙税法|「産業廃棄物の処理委託契約書」の印紙税について解説~収集運搬と処分の別・第7号文書該当性など

今回は、印紙税法ということで、各種契約書のうち産業廃棄物の処理委託契約書について見てみたいと思います。

本記事では、産業廃棄物の処理委託契約書が印紙税法上の課税文書にあたるかどうか、またどのように所属が決定されるかについて、詳しく解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

基本的な考え方

産業廃棄物処理委託に関する契約書は、主に収集・運搬に関する業務と処分に関する業務を含んでおり、それぞれ印紙税法上の異なる課税事項に該当します。

そのため、契約の内容(継続的な取引か、単発の取引か、金額の記載がどうなっているか)によって、適用される文書の号や印紙税額が異なってきます。

産業廃棄物処理委託契約書に含まれる課税事項

産業廃棄物処理委託契約書は、その業務内容に応じて以下の課税文書の性質を持ちます。

  • 収集・運搬に関する事項
    廃棄物を排出場所から収集し、処分場所へ運ぶ契約は、物品の運送契約に該当するため、第1号の4文書(運送に関する契約書)となります
  • 処分に関する事項
    報酬を得て廃棄物の中間処理や最終処分を行う契約は、仕事の完成を目的とした請負契約に該当するため、第2号文書(請負に関する契約書)となります

所属の決定と印紙税額

この契約書が最終的にどの課税文書として取り扱われるかは、契約が継続的か単発か、そして契約書上に金額がどのように記載されているかによって決まります。

継続的な基本契約として作成される場合(第7号文書となるケース)

排出業者と収集運搬・処分業者(いずれも営業者)の間で、産業廃棄物の処理を継続して委託するために、目的物の種類(廃棄物の種類)や委託単価などの基本条件を取り決め、契約期間が3か月を超えるような契約書を作成した場合、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の要件も満たすことになります。

また、後述のような単発の建設工事に関わるものであっても、「月当たり○○トン」や「1年間で○○トン」のように取扱数量(排出予定数量)を定めている場合は、2以上の取引を継続して行うものと扱われ、第7号文書に該当します

この場合、契約書は第1号の4文書、第2号文書、第7号文書の要件を同時に満たします。しかし、契約書上に契約金額(総額)の記載がなく、単価のみが記載されているような場合は、印紙税法の通則の規定により第7号文書に所属が決定されます(通則3-イ)。この場合の印紙税額は1通につき4,000円です。

▽別表第1「課税物件表の適用に関する通則」第3項イ

 一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。
 第一号又は第二号に掲げる文書と第三号から第十七号までに掲げる文書とに該当する文書は、第一号又は第二号に掲げる文書とする。ただし第一号又は第二号に掲げる文書で契約金額の記載のないものと第七号に掲げる文書とに該当する文書は、同号に掲げる文書とし、第一号又は第二号に掲げる文書と第十七号に掲げる文書とに該当する文書のうち、当該文書に売上代金(同号の定義の欄1に規定する売上代金をいう。以下この通則において同じ。)に係る受取金額(百万円を超えるものに限る。)の記載があるもので、当該受取金額が当該文書に記載された契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額)を超えるもの又は契約金額の記載のないものは、同号に掲げる文書とする。

単発の取引として作成される場合(第1号の4文書または第2号文書となるケース)

例えば、建設業者が特定の工事現場(1工事)から出る建設廃棄物の収集・運搬・処分を委託する契約書で、数量欄に種類別の全数量が記載されるような場合は、一の取引(単発の取引)と解釈されるため、第7号文書には該当しません。

この場合は、契約金額の記載方法によって判断方法が異なり、第1号の4文書または第2号文書に所属が決定されます。

  • 収集・運搬と処分の契約金額が「区分して記載」されている場合:
    それぞれの契約金額を比較し、金額の高い方の文書に所属が決定されます(同額の場合は第1号の4文書になります)(通則3-ロ)
    ※記載金額は、所属が決定された号の契約金額となります(通則4-ロ⑴)
  • 収集・運搬と処分の契約金額が「区分されていない」場合:
    収集・運搬から処分までの一連の作業を一括して請け負う契約とみなされ、原則として第2号文書に所属が決定されます(後述の【ポイント】参照)

▽別表第1「課税物件表の適用に関する通則」第3項ロ(※【 】は管理人注)

 一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。
 第一号に掲げる文書第二号に掲げる文書とに該当する文書は、第一号に掲げる文書とする。ただし、当該文書に契約金額の記載があり、かつ、当該契約金額を第一号及び第二号に掲げる文書のそれぞれにより証されるべき事項ごとに区分することができる場合において、第一号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額。以下このロにおいて同じ。)が第二号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額に満たないときは、同号【=第二号】に掲げる文書とする。

これらの単発取引の場合、所属が決定された号の契約金額に応じた階級定額の印紙税が課され、納税義務者はその決定された号の契約当事者となります。

【ポイント】区分記載がない場合:全体で「1つの請負契約」と扱う

 通則3-ロの本文には、「第一号に掲げる文書と第二号に掲げる文書とに該当する文書は、第一号に掲げる文書とする。」という原則があり、一見、この原則ルールが適用されて第1号の4文書(運送)になってしまいそうです。

 しかし、実際には第2号文書(請負)と判定されます。これは、通則を適用する手前の段階(そもそも何号に該当するかを判定する段階)で、異なる判断がなされているためです。

 契約書上に収集・運搬の金額と処分の金額が区分されず、一括して金額が記載されている場合、国税庁は「運送」と「請負」の2つの異なる課税事項が併記されている(混合記載)とは評価しません。廃棄物を適正に処分(中間処理・最終処分)してもらうことという1つの仕事の完成(=請負)を目的とした契約であると評価されます(印紙税法基本通達3条(実質判断の原則)参照)。この場合、収集・運搬行為は、その処分の請負という主目的を達成するための一連の作業プロセス(付随的行為)という位置づけになります。

 したがって、この契約書は「1号の4」と「2号」が混ざったものではなく、契約全体が民法632条に規定する第2号文書(請負に関する契約書)単独の課税事項に該当すると判定されるため、原則として第2号文書の扱いになります。

関連する覚書(委託料の支払方法の変更など)の取り扱い

実務上、既に締結した産業廃棄物処分委託基本契約書について、処分料金の支払経路を変更する覚書を作成することがあります。例えば、処分業者への委託料を別の第三者の会社を介して支払うように変更する場合などです。

このような覚書は、原契約である処分(請負)契約の対価の支払方法を変更する事実を証明するものであるため、第2号文書および第7号文書に該当します。この覚書に契約金額の記載がない場合は、通則の規定により第7号文書に所属が決定されます。

なお、この覚書を「排出業者」「処分業者」「支払を代行する第三者」の三者で共同作成し、それぞれが保有する場合でも、第三者は請負契約の当事者ではありません。そのため、第三者は課税文書の作成者(納税義務者)にはならず、排出業者と処分業者の二者が連帯して印紙税を納める義務を負うことになります。

考え方の解説

産業廃棄物処理委託に関する契約書で判断に迷いやすいのは、「月当たり○○トン」や「1年間で○○トン」のように取扱数量(排出予定数量)を定めている場合かと思いますので、このようなケースを想定して、考え方をもう少し掘り下げて解説したいと思います(考え方自体は、前述までと同じです)。

結論からいうと、「月当たり〇〇トン」といった取扱数量が定まっている場合、その文書はほぼ間違いなく第7号文書の要件を満たす(該当する)ことになりますが、そこから金額の計算ができるかできないかによって、最終的に第1号・第2号文書になる第7号文書になるかが枝分かれします。

いわゆる課税文書の所属の決定は、印紙税法の独特な判断プロセスですが、これを①該当の判定②所属の決定に分けて、詳しく見てみましょう。

① 該当の判定:どの号の要件を満たすか(該当するか)の判定

印紙税法では、まずその契約書が20種類ある課税文書のうち、どれとどれの要件を満たしているか(該当しているか)をすべて洗い出します。

建設廃棄物の処理委託契約などで、「月当たり○○トン」や「1年間で○○トン」のように取扱数量を定めている場合、これは単発の取引ではなく、継続して行う2以上の取引について共通して適用される基本条件(取扱数量)を定めているとされます。

▽印紙税法基本通達 第7号文書の6(なお書)

 なお、エレベーター保守契約、ビル清掃請負契約等、通常、月等の期間を単位として役務の提供等の債務の履行が行われる契約については、料金等の計算の基礎となる期間1単位ごと又は支払の都度ごと1取引として取り扱う。

したがって、この文書は運送(第1号の4文書)や請負(第2号文書)の要件を満たすと同時に、継続的取引の基本となる契約書である第7号文書の要件も満たす(該当する)ことになります。

【補足】単発取引の分割履行(個別契約)との違い

 なお、これは、全体の総数量・総金額が確定していない(変動する)場合の話であることに注意してください。

 例えば「特定のA工事現場から出る、合計1,200トンの建設廃棄物の処分を委託する。ただし、搬出は毎月100トンずつ、12か月に分けて行う。」というように、契約時点で全体の総数量や取引の総額(請負金額)が確定しているものは、単発取引の分割履行(1の取引)であり、第7号文書には該当しません。

 これに対して、「月当たり〇〇トン」という定め方は、契約の時点では、最終的に何年間続いて、累計で何トン処分することになるのかという契約全体の総量(または総額)が未確定です。 これは、毎月発生する廃棄物について「1か月あたりこれくらいの目安(取扱数量)で、その都度、処理取引を繰り返しましょう」という共通の取引条件(基本ルール)を定めるものです。つまり、毎月行われる処理行為は、それぞれが独立したその月の取引であり、それが反復継続されるため、「2以上の取引を継続して行うもの」に該当するということです。

② 所属の決定:最終的にどの号として扱うか(所属の決定)の判定

該当性の判定で複数の号(今回の場合は第1号の4、第2号、第7号)の要件を同時に満たした場合、二重に課税されるわけではなく、印紙税法上のルール(通則3)に従って最終的にどの号の文書として印紙税を納めるか(所属の決定)を決めます。

ここでの分岐点が、契約金額(記載金額)が計算できるかどうかです。

パターンA:予定数量から「契約全体の総額」が計算できる場合

「月当たり10トン」という取扱数量のほかに、「単価は1トン1万円」「契約期間は1年間」といった記載がすべて揃っている場合です。この場合、単価×予定数量(期間)で、契約全体の予定金額が計算できます。

印紙税法のルールでは、「第1・2号文書」と「第7号文書」の両方に該当する場合、契約金額がある(計算できる)ときは、「第1・2号文書」に所属が決定されることになっています(前述の通則3-イ本文)。

したがって、第7号文書の要件は満たしていたものの、最終的には第7号文書から外れ、第1号の4文書または第2号文書として印紙税を納めることになります(前述のように収集・運搬と処分の契約金額が「区分できる」「区分できない」かで異なる)。

【ポイント】予定数量と単価から「記載金額」が算出される

 印紙税法では、契約書に「総額〇〇円」というふうに契約金額が直接に記載されていなくても、単価と数量が記載されており、それらを掛け合わせて契約金額の計算ができるときは、その計算により算出した金額がその文書の記載金額になるというルールがあります(通則4-ホ)。

 さらに、その数量が確定したものではなく予定数量であったとしても、計算して算出された予定金額は、印紙税法上の記載金額として扱われます(基通26条)。

▽印紙税法基本通達26条4号

(予定金額等が記載されている文書の記載金額)
第26条
 予定金額等が記載されている文書の記載金額の計算は、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。
 記載されている単価及び数量、記号その他によりその記載金額が計算できる場合において、その単価及び数量等が、予定単価又は予定数量等となっているとき ⑴から⑶までの規定を準用して算出した金額
(例)
予定単価1万円、予定数量100個 100万円
概算単価1万円、概算数量100個 100万円
予定単価1万円、最低数量100個 100万円最高単価1万円、最高数量100個 100万円
単価1万円で50個から100個まで 50万円

パターンB:予定数量は書いてあるが、「契約全体の総額」が計算できない場合

「月当たり10トン(取扱数量)」と「単価は1トン1万円」という記載はあるものの、契約期間の記載がない場合などがこれに当たります。期間がわからないため、契約全体の総額を計算することができません。

  • 契約期間が書かれていない場合
    「月当たりの予定数量は10トン」と書かれていても、契約期間の定めがない場合は全体の数量が不明となり、契約金額が計算できないため、記載金額はないもの(=第7号文書)として扱われます
  • 数量が抽象的な場合
    「毎月の予定数量は、各月における注文により決定する」といったように、具体的な数値がなく計算できない場合も、記載金額がないもの(=第7号文書)として扱われます

印紙税法のルールでは、「第1・2号文書」と「第7号文書」の両方に該当するが、契約金額の記載がない(計算できない)場合は、「第7号文書」に所属が決定されることになっています(前述の通則3-イただし書)。この場合、最終的に第7号文書として印紙税(1通4,000円)を納めることになります。

結び

今回は、印紙税法ということで、産業廃棄物の処理委託契約書の印紙税について見てみました。

印紙税法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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