今回は、印紙税法ということで、変更契約書等の所属の決定について見てみたいと思います。
本記事では、印紙税法における「予約」「更改」「変更」「補充」の各契約書について、それぞれの法的な定義と、最終的にどの号に所属させるかを決める所属の決定ルールを、印紙税法基本通達や国税庁の解釈に基づいて詳しく解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
予約契約書の所属の決定
定義(基本通達15条)
印紙税法上、契約にはその予約を含むと規定されています(通則5)。
予約とは、本契約を将来成立させることを約する契約をいい(基通15条)、印紙税法上は本契約と全く同一の性質を持つものとして取り扱われます。
▽法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5
5 この表の第一号、第二号、第七号及び第十二号から第十五号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。
所属の決定ルール
予約契約書は、将来成立させようとする本契約(本契約となるべき課税事項)の内容に従って、課税物件表における所属が決定されます(基通15条)。
▽基本通達15条
(予約の意義等)
第15条 通則5に規定する「予約」とは、本契約を将来成立させることを約する契約をいい、当該契約を証するための文書は、その成立させようとする本契約の内容に従って、課税物件表における所属を決定する。
具体例
- 後日、正式に不動産売買の本契約を結ぶことを約束する「不動産売買予約契約書」であれば、本契約が「不動産の譲渡(第1号の1文書)」であるため、第1号の1文書に所属が決定されます
- 後日、正式に建築工事請負契約を結ぶことを約束する「仮請負契約書(仮契約書)」であれば、本契約が「請負(第2号文書)」であるため、第2号文書に所属が決定されます
更改契約書の所属の決定
定義(基本通達16条)
契約の更改とは、契約によって既存の債務(旧債務)を消滅させ、これに代わる新たな債務(新債務)を成立させることをいいます(基通16条)。
更改には、「債権者の交替」「債務者の交替」「目的の変更」によるものがあります。
所属の決定ルール
既存の債務(旧債務)は消滅するため課税関係は生じず、新たに成立する新債務の内容に従って、課税物件表における所属が決定されます(基通16条)。
▽基本通達16条
(契約の更改の意義等)
第16条 通則5に規定する「契約の更改」とは、契約によって既存の債務を消滅させて新たな債務を成立させることをいい、当該契約を証するための文書は、新たに成立する債務の内容に従って、課税物件表における所属を決定する。
(例)
請負代金支払債務を消滅させ、土地を給付する債務を成立させる契約書 第1号文書
(注) 更改における新旧両債務は同一性がなく、旧債務に伴った担保、保証、抗弁権等は原則として消滅する。したがって、既存の債務の同一性を失わせないで契約の内容を変更する契約とは異なることに留意する。
具体例
- 目的の変更による更改:
「請負代金支払債務」を消滅させ、代わりに「土地を給付する(譲渡する)債務」を新たに成立させる契約書は、新たに成立する債務が不動産の譲渡に該当するため、第1号の1文書に所属が決定されます - 債務者の交替による更改:
既存の継続的な請負契約(警備請負契約など)について、契約上の権利義務一切を他社へ譲渡し、契約当事者を切り替える「警備請負契約の権利譲渡承諾請求書」などは更改契約書になります
この場合、新しく成立する債務は継続的な請負(第2号文書かつ第7号文書)となります。これに月額警備料金(単価)の記載はあるものの、契約期間の定めがないなどで契約金額の計算ができない場合は、通則3のイのただし書きに基づき、最終的に第7号文書に所属が決定されます
変更契約書の所属の決定
定義と課税範囲(基本通達17条)
契約の内容の変更とは、既に存在している契約(原契約)の同一性を失わせないままで、その内容を変更することをいいます(基通17条)。
変更契約書が課税対象となるのは、原契約の課税事項のうち、印紙税法基本通達別表第2に定められている重要な事項(契約金額、単価、取扱数量、支払方法、契約期間など)を変更するものに限られます(重要事項以外の軽微な変更は課税されません)。
▽基本通達17条
(契約の内容の変更の意義等)
第17条 通則5に規定する「契約の内容の変更」とは、既に存在している契約(以下「原契約」という。)の同一性を失わせないで、その内容を変更することをいう。
2 契約の内容の変更を証するための文書(以下「変更契約書」という。)の課税物件表における所属の決定は、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平元間消3-15改正)
⑴~⑶ (略)
⑷ ⑴から⑶までに掲げる契約書で重要な事項以外の事項を変更するものは、課税文書に該当しない。
3 前項の重要な事項は、別表第2に定める。
所属の決定ルール
原契約の性質や変更する重要事項の内容により、以下の3つのパターンに分類されて所属が決定されます(基通17条2項)。
パターン⑴:原契約が課税物件表の「一の号のみ」の課税事項を含む場合
原契約の重要な事項を変更する契約書は、原契約と同一の号に所属が決定されます。
具体例
- 消費貸借契約書(第1号の3文書)の契約金額(借入金額)を50万円から100万円に変更する契約書は、原契約と同一の第1号文書に所属が決定されます
▽基本通達17条2項1号
⑴ 原契約が課税物件表の一の号のみの課税事項を含む場合において、当該課税事項のうちの重要な事項を変更する契約書については、原契約と同一の号に所属を決定する。
(例)
消費貸借契約書(第1号文書)の消費貸借金額50万円を100万円に変更する契約書 第1号文書
パターン⑵:原契約が課税物件表の「2以上の号」の課税事項を含む場合
いずれか一方の号のみの重要な事項を変更するものは、その一方の号に所属が決定されます。
2以上の号の重要な事項を同時に変更するものは、それぞれの号に該当することになり、「適用に関する通則3」の規定を適用して所属を決定します。
具体例
- 清掃請負契約書(第2号かつ第7号に該当、当初は第2号所属)の場合
- 月額保守料(単価=2号及び7号の重要事項)を変更するもので、契約期間や総額の記載がない「変更覚書」は、金額計算ができないため通則3のイのただし書きにより、第7号文書に所属が決定されます
- 月額保守料を変更するとともに、変更後の契約期間(適用期間)が明記されている場合は、契約金額の計算ができるため通則3のイに基づき、第2号文書に所属が決定されます
▽基本通達17条2項2号
⑵ 原契約が課税物件表の2以上の号の課税事項を含む場合において、当該課税事項の内容のうち重要な事項を変更する契約書については、当該2以上の号のいずれか一方の号のみの重要な事項を変更するものは、当該一方の号に所属を決定し、当該2以上の号のうちの2以上の号の重要な事項を変更するものは、それぞれの号に該当し、通則3の規定によりその所属を決定する。
(例)
1 報酬月額及び契約期間の記載がある清掃請負契約書(第2号文書と第7号文書に該当し、所属は第2号文書)の報酬月額を変更するもので、契約期間又は報酬総額の記載のない契約書 第7号文書
2 報酬月額及び契約期間の記載がある清掃請負契約書(第2号文書と第7号文書に該当し、所属は第2号文書)の報酬月額を変更するもので、契約期間又は報酬総額のある契約書 第2号文書
パターン⑶:原契約の課税事項に該当しない事項を変更する場合
変更する事項が、原契約の所属する号以外の他の号の重要な事項に該当するときは、その他の号に所属が決定されます。
具体例
- 消費貸借契約書(第1号の3文書)の「連帯保証人」を変更する契約書は、消費貸借自体の重要事項変更ではありませんが、債務の保証(第13号文書)の重要な事項(保証の種類や保証人等)を変更するものであるため、第13号文書に所属が決定されます
▽基本通達17条2項3号
⑶ 原契約の内容のうちの課税事項に該当しない事項を変更する契約書で、その変更に係る事項が原契約書の該当する課税物件表の号以外の号の重要な事項に該当するものは、当該原契約書の該当する号以外の号に所属を決定する。
(例)
消費貸借に関する契約書(第1号文書)の連帯保証人を変更する契約書 第13号文書
補充契約書の所属の決定
定義と課税範囲(基本通達18条)
契約の内容の補充とは、原契約の内容として欠けている事項を補充することをいいます。
変更契約書と同様に、基本通達別表第2に定める重要な事項を補充するものに限り課税文書として取り扱われます。
▽基本通達18条
(契約の内容の補充の意義等)
第18条 通則5に規定する「契約の内容の補充」とは、原契約の内容として欠けている事項を補充することをいう。
2 契約の内容の補充を証するための文書(以下「補充契約書」という。)の課税物件表における所属の決定は、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平元間消3-15改正)
⑴~⑶ (略)
⑷ 1から3までに掲げる契約書で重要な事項以外の事項を補充するものは、課税文書に該当しない。
3 前項の重要な事項は、別表第2に定める。
所属の決定ルール
所属の決定ロジックは、変更契約書と完全にパラレル(同様)に設計されています(基本通達18条2項)。
パターン⑴:原契約が課税物件表の「一の号のみ」の課税事項を含む場合
原契約の重要な事項を補充する契約書は、原契約と同一の号に所属が決定されます。
具体例
- 売買の目的物のみを特定していた不動産売買契約書(当初は記載金額のない第1号の1文書)について、後日、売買価額(重要事項である契約金額)を決定する合意書は、第1号文書に所属が決定されます
▽基本通達18条1号
⑴ 原契約が課税物件表の一の号のみの課税事項を含む場合において、当該課税事項の内容のうちの重要な事項を補充する契約書は、原契約と同一の号に所属を決定する。
(例)
売買の目的物のみを特定した不動産売買契約書について、後日、売買価額を決定する契約書 第1号文書
パターン⑵:原契約が課税物件表の「2以上の号」の課税事項を含む場合
いずれか一方の号のみの重要な事項を補充するものは、その一方の号に所属が決定されます。
2以上の号の重要な事項を補充するものは、それぞれの号に該当することになり、「通則3」の規定を適用して所属を決定します。
具体例
- 料金未定の清掃請負契約書(第2号かつ第7号に該当、当初は第7号所属)の場合
- 後日、月額保守料(単価)及び契約期間を決定する補充契約書を交わす場合、これは単価(2号・7号の重要事項)と契約期間(2号・7号の重要事項)を補充するもので、かつ全体の契約金額が計算できる状態になるため、通則3のイに基づき、最終的に第2号文書に所属が決定されます
▽基本通達18条2号
⑵ 原契約が2以上の号の課税事項を含む場合において、当該課税事項の内容のうちの重要な事項を補充する契約書については、当該2以上の号のいずれか一方の号のみの重要な事項を補充するものは、当該一方の号に所属を決定し、当該2以上の号のうちの2以上の号の重要な事項を補充するものは、それぞれの号に該当し、通則3の規定によりその所属を決定する。
(例)
契約金額の記載のない清掃請負契約書(第2号文書と第7号文書に該当し、所属は第7号文書)の報酬月額及び契約期間を決定する契約書 第2号文書
パターン⑶:原契約の課税事項に該当しない事項を補充する場合
補充する事項が、原契約の所属する号以外の他の号の重要な事項に該当するときは、その他の号に所属が決定されます。
具体例
- 消費貸借契約書(第1号の3文書)に、後日、新たに連帯保証人の保証を追加して付す契約書は、消費貸借自体の重要事項補充ではありませんが、債務の保証(第13号文書)の重要な事項を補充することになるため、第13号文書に所属が決定されます
▽基本通達18条3号
⑶ 原契約の内容のうちの課税事項に該当しない事項を補充する契約書で、その補充に係る事項が原契約書の該当する課税物件表の号以外の号の重要な事項に該当するものは、当該原契約書の該当する号以外の号に所属を決定する。
(例)
消費貸借契約書(第1号文書)に新たに連帯保証人の保証を付す契約書 第13号文書
結び
本記事のハイライトをまとめます。
予約・更改・変更・補充契約書の所属の決定ルール
- 予約:本契約となるべき事項の号に所属
- 更改:新たに成立する新債務の号に所属(消滅する旧債務は不問)
- 変更・補充:重要な事項を書き換える(付け足す)内容によって所属を決定
➡原契約が複数号にまたがる場合は、金額計算ができる状態になるかで「1・2号」か「7号」に最終決定される
「変更」「補充」における重要事項の判定は、実務上の覚書や合意書の印紙税判断において誤解が生じやすい部分ですので、慎重な判断が必要になります。本記事が何かの参考になれば幸いです。
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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- 施行令(「印紙税法施行令」)
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- 基本通達(「印紙税法基本通達」)
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